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頻繁な下痢と腹痛の症状|内視鏡検査による原因の特定方法

頻繁な下痢と腹痛の症状|内視鏡検査による原因の特定方法

頻繁な下痢や腹痛でお悩みではありませんか。これらの症状は、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

原因は様々で、ストレスや食生活の乱れから、感染症や炎症性腸疾患などの病気が隠れていることもあります。

この記事では、頻繁な下痢と腹痛の主な原因、ご自身でできる対処法、そして医療機関で行う内視鏡検査による原因特定方法について詳しく解説します。

目次

頻繁な下痢と腹痛 考えられる主な原因

頻繁な下痢や腹痛は、多くの方が一度は経験する症状かもしれませんが、続く場合には、背景に何らかの原因が潜んでいる可能性があります。原因を正しく理解することが、適切な対処への第一歩です。

食生活の乱れと下痢・腹痛

現代社会において、食生活の乱れは下痢や腹痛を引き起こす一般的な原因の一つです。暴飲暴食、脂肪分の多い食事、香辛料などの刺激物の過剰摂取は、消化器官に負担をかけ、腸の動きを活発にしすぎることで下痢を誘発します。

また、冷たいものの摂りすぎも、腸を刺激し、腹痛や下痢の原因となることがあり、不規則な食事時間や早食いも消化不良を招き、症状を悪化させる要因となります。

注意したい食品成分

成分含まれる食品例影響
脂質揚げ物、脂身の多い肉消化に時間がかかり、腸を刺激
カフェインコーヒー、紅茶、エナジードリンク腸の蠕動運動を亢進
人工甘味料一部の清涼飲料水、菓子類浸透圧性の下痢を引き起こす可能性

バランスの取れた食事を心がけ、消化の良いものを適切な量、適切な時間に摂取することが重要です。症状があるときは、消化器官を休ませるためにも、刺激の少ない食事を選びましょう。

ストレスと腸の不調

精神的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、腸の機能に大きな影響を与え、ストレスを感じると、腸の動きが過敏になったり、逆に動きが鈍くなったりすることがあり、下痢や便秘、腹痛といった症状が現れます。

特に、過敏性腸症候群(IBS)はストレスとの関連が深い疾患です。日常生活におけるプレッシャー、不安、緊張などが、腸の不調を起こすトリガーとなることがあります。

ストレスを完全に避けることは難しいかもしれませんが、自分なりのリラックス方法を見つけ、心身の緊張を和らげることが大切です。

感染性胃腸炎による症状

ウイルスや細菌などの病原体に感染することで発症する感染性胃腸炎も、急な下痢や腹痛の主な要因です。ノロウイルス、ロタウイルス、カンピロバクター、サルモネラ菌などが代表的な原因となります。

病原体は、汚染された食品や水を介して、あるいは感染者との接触を通じて体内に侵入し、腸管内で炎症を起こし、症状としては、下痢、腹痛の他に、嘔吐や発熱を伴うこともあります。

抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は重症化しやすいため注意が必要です。

主な感染経路

  • 汚染された食品の摂取(生牡蠣、加熱不十分な鶏肉など)
  • 感染者からの飛沫感染・接触感染
  • 汚染された水の使用

感染性胃腸炎の予防には、手洗いの徹底、食品の十分な加熱、調理器具の衛生管理などが重要で、症状が出た場合は、脱水症状を防ぐために水分補給をこまめに行い、安静にすることが基本です。

症状が強い場合や長引く場合は、医療機関を受診しましょう。

炎症性腸疾患の可能性

頻繁な下痢や腹痛が長期間続く場合、炎症性腸疾患(IBD)の可能性も考慮する必要があります。炎症性腸疾患は、腸管に原因不明の慢性的な炎症を引き起こす病気の総称で、代表的なものは潰瘍性大腸炎やクローン病です。

このような疾患は、免疫系の異常が関与し、遺伝的な要因や環境要因も発症に影響するといわれています。

症状は下痢や腹痛のほか、血便、体重減少、発熱など多岐にわたり、治療を行わないと、症状が悪化し、生活の質を著しく低下させます。

炎症性腸疾患の初期症状

症状潰瘍性大腸炎クローン病
下痢粘血便を伴うことが多い水様性または脂肪便
腹痛左下腹部痛が多い右下腹部痛が多い
発熱時に見られる比較的多く見られる

下痢や腹痛が続く場合に考えられる病気

一時的なものではなく、下痢や腹痛が慢性的に続く場合、特定の病気が原因となっていることがあります。

過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)は、大腸や小腸に炎症や潰瘍などの器質的な異常が見られないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感、便通異常(下痢、便秘、またはその両方)が慢性的に続く状態です。

ストレス、生活習慣の乱れ、腸内細菌叢のバランスの崩れなどが関与していると考えられ、症状の現れ方によって、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型に分けられます。

特に下痢型IBSでは、通勤中や試験前など、特定の状況下で急な便意や腹痛に襲われることがあり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

IBSの診断基準(ROME IV基準の概要)

過去3ヶ月間、月に4日以上腹痛があり、以下のうち2つ以上を満たすこと。

  • 排便に関連する
  • 排便頻度の変化に関連する
  • 便の形状(外観)の変化に関連する

IBSの治療は、生活習慣の改善、食事療法、薬物療法などを組み合わせて行い、症状をコントロールし、生活の質を向上させることが目標です。

潰瘍性大腸炎の特徴と症状

潰瘍性大腸炎は、主に大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の慢性炎症性疾患で、直腸から連続的に上方へ広がる特徴があり、炎症の範囲によって症状の程度も異なります。

主な症状は、持続する下痢、粘血便(血液、粘液、膿が混じった便)、腹痛、しぶり腹(便意があるのに便が出ない、または少量しか出ない)などです。

重症化すると、発熱、体重減少、貧血などを伴うこともあります。症状が良くなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)を繰り返すことが特徴です。

潰瘍性大腸炎の主な症状

症状特徴
下痢・軟便頻回で、しばしば粘血を伴う
腹痛主に左下腹部、痙攣性の痛み
血便鮮血便、粘血便

診断は、症状の経過、血液検査、便検査、そして大腸内視鏡検査と生検(組織を採取して調べる検査)によって総合的に行い、治療は、炎症を抑えるための薬物療法が中心となります。

クローン病の特徴と症状

クローン病は、口腔から肛門までの消化管のあらゆる部位に炎症や潰瘍が起こりうる原因不明の慢性炎症性疾患で、特に小腸と大腸が好発部位とされています。

炎症は非連続性(病変と正常な部分が混在する)で、消化管の壁深くまで達し、主な症状は、腹痛、下痢、体重減少、発熱、全身倦怠感などです。また、痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍などの肛門病変を高頻度に合併します。

栄養吸収障害による栄養失調や、腸管の狭窄(狭くなること)、穿孔(穴が開くこと)、瘻孔(腸と他の臓器や皮膚がつながること)などの合併症を引き起こすこともあります。

クローン病の診断も、症状、血液検査、画像検査(CT、MRIなど)、内視鏡検査(上部消化管内視鏡、大腸内視鏡、小腸内視鏡など)と生検を組み合わせて行います。

治療は、栄養療法、薬物療法が基本となり、場合によっては外科手術が必要となることもあります。長期的な管理が重要となる疾患です。

大腸がんの初期症状としての可能性

頻繁な下痢や腹痛は、大腸がんの初期症状として現れることもあります。

大腸がんは、早期の段階では自覚症状が乏しいことが多いですが、進行するにつれて便通異常(下痢と便秘を繰り返す、便が細くなる)、血便、腹痛、腹部膨満感、体重減少などの症状が現れます。

これまで便通に問題がなかった方が、急に下痢や便秘を繰り返すようになった場合や、原因不明の腹痛が続く場合は注意が必要です。

大腸がん検診の重要性

検査方法対象(推奨)目的
便潜血検査40歳以上便に混じった微量の血液を検出
大腸内視鏡検査精密検査、高リスク者ポリープや早期がんの発見・治療

大腸がんは、早期に発見し適切な治療を行えば治癒率の高いがんです。定期的な検診を受けることが、早期発見・早期治療につながります。

ご自身でできる下痢・腹痛の対処法と注意点

頻繁な下痢や腹痛に悩まされているとき、医療機関を受診する前にご自身でできる対処法がありますが、症状によっては自己判断が危険な場合もあるため、注意点を理解しておくことが大切です。

安静と水分補給の重要性

下痢や腹痛があるときは、まず体を休めることが重要です。無理に活動すると、症状が悪化したり、体力の消耗を早めたりする可能性があります。

下痢が続くと、体から水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が失われやすくなり、脱水症状を起こすことがあり、脱水は倦怠感や頭痛、めまいなどを起こし、重症化すると意識障害に至ることもあります。

そのため、こまめな水分補給を心がけましょう。経口補水液やスポーツドリンクは、水分と電解質を効率よく補給できるため有用です。白湯や麦茶なども良いでしょう。

ただし、冷たい飲み物は腸を刺激することがあるため、常温か温かいものを選ぶと良いです。

食事内容の見直しと消化の良い食事

下痢や腹痛の症状があるときは、消化器官に負担をかけない食事が基本です。脂肪分の多い食事、香辛料などの刺激物、食物繊維の多い野菜や豆類、乳製品などは、症状を悪化させる可能性があるため、一時的に避けましょう。

おかゆ、うどん、白身魚、鶏のささみ、豆腐、バナナ、りんごのすりおろしなど、消化が良く、腸に優しい食品を選びます。

消化の良い食事のポイント

ポイント具体例
柔らかく煮込むおかゆ、煮込みうどん
油分を控える蒸し料理、茹で料理
刺激物を避ける香辛料、炭酸飲料を控える

食事は少量ずつ、よく噛んで食べることを心がけ、症状が改善してきたら徐々に普段の食事に戻していきます。急に元の食事に戻すと、再び症状が現れることがあるため注意が必要です。

市販薬を使用する際の注意点

下痢や腹痛に対して、市販薬を使用することを考える方もいるでしょう。整腸剤や一部の下痢止めは、症状の緩和に役立つ場合がありますが、自己判断での薬の使用には注意が必要です。

細菌やウイルスによる感染性の下痢の場合、下痢止めで無理に下痢を止めると、病原体や毒素が体外に排出されるのを妨げ、かえって症状を長引かせたり悪化させたりする可能性があります。

また、腹痛の原因がはっきりしないまま鎮痛剤を使用すると、本来の病気の診断が遅れることもあります。

市販薬を使用する際は、薬剤師に相談し、用法・用量を守って使用しましょう。数日間使用しても症状が改善しない場合や、症状が悪化する場合は、使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。

症状が悪化する場合の受診の目安

ご自身での対処法を試みても症状が改善しない場合や、以下のような症状が見られる場合は、医療機関の受診を検討してください。

受診を考慮すべき症状

  • 激しい腹痛、我慢できないほどの痛み
  • 高熱(38℃以上)を伴う下痢
  • 血便(便に血が混じる、黒っぽい便が出る)
  • 頻回の嘔吐があり、水分が摂れない
  • 強い脱水症状(口の渇き、尿量の著しい減少、意識がもうろうとするなど)
  • 症状が2~3日以上続く、または悪化する傾向がある
  • 体重が急激に減少する

高齢者や乳幼児、持病のある方は、症状が急変しやすいため、早めの受診を心がけましょう。どの診療科を受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、内科または消化器内科を受診することをお勧めします。

医療機関で行う検査の種類と流れ

頻繁な下痢や腹痛の原因を特定するために、医療機関では様々な検査を行い、ここでは、一般的な検査の種類とその流れについて説明します。

問診と身体診察

医療機関を受診すると、まず医師による問診が行われ、問診では、症状(いつから、どのような症状か、頻度、程度など)、食事内容、生活習慣、既往歴、家族歴、服用中の薬などについて詳しく尋ねられます。

情報は、原因を推測し、必要な検査を選択する上で非常に重要です。続いて、身体診察が行われ、視診、聴診(聴診器でお腹の音を聞く)、触診(お腹を触って圧痛の有無やしこりなどを調べる)、打診などにより、お腹の状態を確認します。

血液検査・便検査でわかること

血液検査では、炎症の程度(白血球数、CRPなど)、貧血の有無、肝機能、腎機能、電解質のバランスなどを調べられ、感染症の有無、炎症性腸疾患の活動性、脱水の状態などを評価します。

特定の疾患が疑われる場合には、抗体検査などの特殊な項目を追加することもあります。

便検査では、便中の血液の有無(便潜血検査)、細菌やウイルスの感染(便培養検査、ウイルス抗原検査)、寄生虫の有無などを調べ、感染性胃腸炎の原因特定や、大腸がんのスクリーニングなどを行います。

炎症性腸疾患が疑われる場合には、便中のカルプロテクチンという物質を測定することもあり、これは腸管の炎症の程度を反映するマーカーです。

便検査で調べる主な項目

検査項目主な目的わかることの例
便潜血検査消化管出血の有無大腸がん、ポリープ、炎症など
便培養検査細菌性腸炎の原因菌特定サルモネラ菌、カンピロバクターなど
便中カルプロテクチン腸管炎症の評価炎症性腸疾患の活動性評価

画像検査(レントゲン・超音波)

腹部レントゲン検査(腹部単純X線検査)は、腸管内のガスや便の分布、腸閉塞(イレウス)の有無、異常な石灰化などを確認するために行います。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)は、超音波を用いて腹腔内の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、腸管など)の状態を観察する検査で、腸管壁の肥厚や炎症、腹水の有無、腫瘍性病変のスクリーニングなどに有用です。

体に負担が少なく、繰り返し行える利点があります。ただし、腸管内のガスが多いと観察が難しい場合があります。

内視鏡検査の必要性と種類

問診、身体診察、血液検査、便検査、画像検査などを行っても原因が特定できない場合や、より詳しい情報が必要な場合には、内視鏡検査を検討します。

内視鏡検査は、先端に小型カメラが付いた細い管を体内に挿入し、消化管の内部を直接観察する検査です。

炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変を詳細に確認できるだけでなく、必要に応じて組織の一部を採取(生検)して病理診断も行えます。

主な消化管内視鏡検査

  • 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):食道、胃、十二指腸を観察
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):大腸全体(直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)と小腸の一部を観察
  • 小腸内視鏡検査、カプセル内視鏡検査:小腸の病変が疑われる場合

頻繁な下痢や腹痛の原因究明には、大腸内視鏡検査が重要な役割を果たします。

内視鏡検査(大腸カメラ)でわかること

大腸内視鏡検査は、大腸の病変を直接観察し、診断や治療を行う上で非常に有用な検査です。ここでは、大腸カメラ検査で何がわかるのか、検査の流れなどについて詳しく説明します。

大腸カメラ検査の目的とわかる病気

大腸カメラ検査の主な目的は、大腸の粘膜を隅々まで観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変を発見することです。

頻繁な下痢や腹痛、血便などの症状がある場合、原因を特定するために行われ、また、大腸がん検診で便潜血陽性となった場合の精密検査としても実施されます。

大腸カメラで発見可能な主な病気

病気の種類特徴的な所見
大腸ポリープ粘膜の隆起性病変、良性・悪性の鑑別が必要
大腸がん早期がんは平坦なことも、進行すると潰瘍や腫瘤を形成
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)粘膜の炎症、びらん、潰瘍、縦走潰瘍など
感染性腸炎粘膜の発赤、浮腫、びらん、偽膜形成など
虚血性大腸炎粘膜の蒼白、浮腫、出血、縦走潰瘍など(特定の部位に好発)

検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除(ポリペクトミー)することも可能です。切除したポリープや疑わしい病変からは組織を採取し(生検)、病理検査で良性か悪性かなどを詳しく調べます。

検査前の準備と当日の流れ

大腸カメラ検査を安全かつ正確に行うためには、事前の準備が重要です。検査前日は、消化の良い食事を摂り、夜には下剤を服用します。

検査当日は、朝から絶食とし、腸管洗浄液(洗腸剤)を約1~2リットル、数時間かけて服用し、大腸内をきれいにし、便が透明な液体になるまで排便を繰り返します。

医療機関に到着したら、検査着に着替えます。検査室では、血圧や酸素飽和度などを測定し、体調を確認し、その後、検査台に横になり、鎮静剤や鎮痛剤を使用する場合は点滴を行います。

医師が肛門から内視鏡をゆっくりと挿入し、大腸の奥(盲腸)まで進め、抜きながら大腸全体を観察し、検査時間は通常20~30分程度ですが、ポリープ切除などを行う場合はもう少し時間がかかることがあります。

検査中の鎮静剤使用について

大腸カメラ検査に対して、「痛い」「苦しい」といったイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、検査中の苦痛を軽減するために、多くの医療機関では鎮静剤(意識下鎮静法)や鎮痛剤を使用する選択肢があります。

鎮静剤を使用すると、うとうとしたリラックスした状態で検査を受けられます。完全に眠ってしまうわけではありませんが、検査中の不快感や痛みを大幅に和らげることが期待できます。

鎮静剤を使用した場合は、検査後しばらくリカバリールームで安静にする必要があり、また、当日は車やバイク、自転車の運転はできませんので、公共交通機関を利用するか、ご家族に送迎を依頼してください。

検査後の注意点と結果説明

検査終了後は、鎮静剤の効果が覚めるまでリカバリールームで休憩し、ガスでお腹が張ることがありますが、排ガスとともに徐々に楽になります。飲食は、医師の指示に従って開始し、通常、検査当日から軽い食事は可能です。

ポリープを切除した場合は、数日間はアルコールや刺激物を避け、激しい運動も控える必要があります。

内視鏡検査で原因を特定した後の対応

内視鏡検査によって頻繁な下痢や腹痛の原因が特定された後は、その診断に基づいて対応を行い、治療方針は疾患の種類や重症度によって異なります。

検査結果に基づく診断

内視鏡検査の所見や生検の病理結果などを総合的に判断し、医師が最終的な診断を下し、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、感染性腸炎、虚血性大腸炎、大腸ポリープ、大腸がんなどが診断されることがあります。

また、特に明らかな器質的疾患が見つからないものの症状がある場合には、過敏性腸症候群(IBS)と診断されることもあります。

生活習慣の改善指導

診断された疾患によっては、薬物療法と並行して、あるいは薬物療法が主体とならない場合でも、生活習慣の改善が重要です。

過敏性腸症候群(IBS)や、軽度の炎症の場合などでは、食事内容の見直し、ストレス管理、十分な睡眠、適度な運動などが症状の緩和に繋がることが期待されます。

生活習慣改善のポイント

項目具体的な内容
食事バランスの取れた食事、刺激物や高脂肪食を避ける、規則正しい食事時間
ストレス管理リラックスできる時間を作る、趣味、適度な休息
運動ウォーキングなどの有酸素運動を習慣的に行う

医師や管理栄養士から、個々の状態に合わせた具体的なアドバイスを受けることが大切です。

薬物療法による治療

多くの消化器疾患では、薬物療法が治療の中心で、炎症性腸疾患では、5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを用いて炎症をコントロールします。

感染性腸炎の場合は、原因となる病原体に応じて抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します(ただし、ウイルス性腸炎の多くは対症療法が中心)。

過敏性腸症候群では、症状に応じて消化管運動機能改善薬、下痢止め、便秘薬、抗不安薬などが用いられます。大腸がんと診断された場合は、進行度に応じて内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法などを組み合わせて治療を行います。

頻繁な下痢と腹痛に関するよくある質問(Q&A)

頻繁な下痢や腹痛に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

下痢止めは飲んでも良いですか?

原因によっては下痢止めが症状を悪化させる可能性があります。特に、細菌やウイルスによる感染性の下痢の場合、下痢止めで無理に下痢を止めると、体外への病原体の排出を妨げ、回復を遅らせることがあります。

自己判断で安易に使用せず、症状が続く場合は医療機関を受診し、医師の指示に従うことが大切です。

内視鏡検査は痛いですか?

大腸内視鏡検査では、お腹の張りや多少の不快感を感じることがありますが、多くの医療機関では、患者さんの苦痛を軽減するために鎮静剤や鎮痛剤を使用する選択肢があります。

鎮静剤を使用すると、うとうとしたリラックスした状態で検査を受けることができ、痛みや不快感を大幅に軽減できます。

検査時間はどのくらいかかりますか?

大腸内視鏡検査自体の時間は、通常20分から30分程度です。ただし、これは観察のみの場合で、ポリープの切除などの処置を行う場合は、もう少し時間がかかることがあります。

また、検査前の準備(腸管洗浄液の服用など)や、検査後の休憩時間(鎮静剤を使用した場合など)を含めると、半日程度の時間を見ておくと良いでしょう。

検査後、すぐに食事はできますか?

検査当日の飲食については、医師の指示に従ってください。通常、観察のみで鎮静剤を使用しなかった場合は、検査後1時間程度で飲水が可能となり、その後問題がなければ食事も可能です。

鎮静剤を使用した場合は、完全に覚醒してからとなります。ポリープを切除した場合は、消化の良い食事から始め、数日間はアルコールや刺激物、脂っこいものは避けるように指示されることが一般的です。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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