大腸検査を受けるにあたって、事前の食事内容は非常に大切です。
腸に負担の少ない食事を心がけると、内視鏡検査当日の洗浄時間が短くなり、スムーズに検査を受けられます。
食物繊維の多い野菜や海藻類などが残りやすい一方、白米やうどん、豆腐など消化しやすい食材を選ぶと腸内がきれいになりやすいです。
ここでは、前日や当日の食事の考え方、避けたい食材やおすすめのメニュー、注意点や疑問点などを詳しくお伝えします。
大腸検査と前日食事の重要性
大腸カメラや内視鏡検査は、前日にどのような食事をするかによって、当日の検査の精度だけでなく、所要時間や負担も変わってきます。
大腸内視鏡検査の目的
大腸内視鏡検査は、内視鏡というカメラで大腸内部を直接観察し、病変や異常がないかを確認する方法なので、便がたくさん残っていると視野が遮られ、粘膜の観察が不十分となるおそれがあります。
消化の良い食事と十分な下剤による洗浄を行えば、小さな病変や炎症を見落としにくくなります。
食事が検査結果に与える影響
前日の食事に繊維質や脂質が多いと、便が硬くなったり腸内に残ったりして、内視鏡検査時の視認性が悪くなります。
検査時に腸内に残っている食物片があれば、スコープで観察しづらくなるだけでなく、洗浄液の追加が必要になり、結果的に検査時間が延びやすくなるので注意が必要です。
食事を調整する意義
前日の食事を消化の良いもの中心にすることで、洗浄がスムーズに進みます。
検査前の腸内洗浄は下剤を飲んで大腸をきれいにする作業ですが、前日の食事を適切に調整すると、腸内がすぐにきれいになり、検査が早く終わりやすくなります。
また、ポリープ切除などが必要になった場合にも、消化の良い食事を摂っておくと、リスク管理がしやすくなるのです。
クリニック来院時の負担軽減
前日の食事により、腸内が整った状態で来院すれば、検査当日の流れがスムーズになり、待ち時間も短縮できます。
検査後は一定時間、院内で休むことが多いですが、トラブルが少ないほど早めの帰宅が見込め、逆に、前日の食事が消化に悪いと、当日に追加の処置が必要になり、検査が長引くリスクがあります。
前日に摂りたい食材と避けたい食材
前日の食事選びは、大腸検査を受ける患者さんにとって大切なポイントです。ここでは、具体的な食材について、摂るとよいものと避けたいものを示します。
消化しやすい食品と避けたい食品
食材グループ | 消化しやすい(前日OK) | 避けたい(前日NG) |
---|---|---|
主食 | 白米、おかゆ、うどん、そうめん、パン(耳なし) | 玄米、雑穀米、胚芽パン、ライ麦パン |
タンパク質 | 白身魚、豆腐、卵、鶏肉(脂肪少なめ) | 脂肪の多い肉、ベーコン、焼肉、脂身たっぷりの部位 |
野菜 | よく煮込んだ人参や大根、かぼちゃなど | キノコ類、海藻類、ゴボウ、ネギ、キャベツなど葉物系 |
果物 | バナナ(少量)、りんごのすりおろしなど | 柑橘系果物(皮を含む)、繊維が多いパイナップルなど |
乳製品 | ヨーグルト(無糖)、牛乳(少量) | チーズ、バター、クリーム類、アイスクリーム |
消化に負担をかけにくい調理法
調理法を考慮するとより消化にやさしい食事になります。焼くよりも、煮る、茹でる、蒸すなど、食材を柔らかくすると腸内での分解がスムーズです。味付けは薄めにすると、胃や腸への刺激が少なくなります。
油分を控える理由
油脂分が多いと、胃腸の消化に時間がかかり、便が残りやすくなるので注意が必要です。
揚げ物やラーメンなどは避け、低脂肪の調理を意識し、脂質だけでなく、辛い調味料なども胃腸を刺激するので、前日は避けましょう。
食材の切り方
野菜や肉なども、大きく切ったままだと消化が進みにくいので、細かく刻む、薄切りにする、スープなどに入れると食材がやわらかくなり、腸にたまりにくくなります。
前日から当日にかけてのタイムスケジュール
大腸検査では、前日夜に食事を終わらせる時間帯や、当日の下剤の飲み方が非常に大切です。無理なく進めるために、大まかな流れを把握してください。
前日~当日の一般的な流れ
時間帯 | 目安と行動 |
---|---|
前日朝~昼 | 消化に良いものを摂取し、過度な食物繊維を控える |
前日夕方~夜 | 早めの時間に夕食を済ませる(19時~20時頃まで) |
前日夜 | 水分補給はOKだが、アルコールは避ける |
就寝前 | 医師の指示がある場合、緩下剤などを服用 |
当日朝~検査前 | 指示どおりに下剤を飲み始める |
検査実施 | 排便状況を確認しながら内視鏡検査へ |
検査後 | しばらく院内で安静に過ごし、その後帰宅 |
夕食を早めに済ませるメリット
前日の夕食を20時頃までに終わらせると、胃腸の負担が軽減し、就寝中にある程度消化が進みます。夜遅い時間に食べるほど胃腸に負担がかかり、翌朝の洗浄や検査に影響が出やすいので気をつけましょう。
当日の下剤服用
大腸検査当日は、医師の指示に基づき下剤を飲みながら、こまめにトイレへ行く流れが一般的で、便が透明に近い黄色い水様便になるまで洗浄を進める必要があります。
食事をうまく調整できていれば、下剤を飲む時間も短縮しやすいです。
検査当日の水分補給
腸を洗浄するときは大量の水分を失うので、こまめな水分摂取が必要です。スポーツドリンクなども良いですが、糖分を含む飲み物と併用できない下剤もありますので、検査前にご確認下さい。カフェイン入りの飲み物は避けたほうが無難です。
アルコールを避ける理由
前日の夜、アルコールを飲むと胃腸への刺激が強くなるだけでなく、脱水になりやすいため、洗浄や検査中の体調管理が難しくなります。
また、血液がサラサラになる影響などが予期せぬトラブルを引き起こす可能性もあるので、検査前日は控えてください。
消化を助けるおすすめメニュー例
前日に摂取すると良い食材について触れましたが、ここでは実際にどのような食事をとればよいか、メニュー例を示します。
前日朝食の例
メニュー | ポイント |
---|---|
おかゆ+梅干し | ご飯よりもさらに消化しやすい |
卵豆腐 | タンパク質を簡単に摂取できる |
具なし味噌汁 | 野菜や海藻を入れる場合は控えめに |
薄切りバナナ | 食物繊維が少なめ |
前日昼食の例
メニュー | ポイント |
---|---|
うどん(刻みネギなし) | 消化の良いうどんで腹部負担を減らす |
白身魚の煮物 | 油を使わず、煮る調理法で食べやすい |
豆腐ハンバーグ | 繊維質が少ない豆腐で作ったハンバーグ |
緑茶など | カフェインは弱めのものかノンカフェインを選ぶ |
前日夕食の例
メニュー | ポイント |
---|---|
おかゆ+白身魚のスープ | 熱を通した白身魚は消化しやすい |
茹で鶏のささみ | 脂肪が少なく高タンパク |
ほうれん草のポタージュ | 裏ごしするなど工夫して繊維を減らす |
水かお茶 | 就寝前までに十分な水分を確保 |
加工食品やお惣菜を上手に選ぶ
忙しくて自炊が難しい場合は、コンビニやスーパーで売っている消化に良さそうな食品を選ぶと便利で、塩分が控えめのスープやおかゆパウチ、ゼリー飲料、レトルトの雑炊などが挙げられます。
成分表示を確認し、繊維や脂質の少ないものを選びましょう。
外食するときの工夫
外食せざるを得ない場合も、ラーメンや揚げ物中心の定食ではなく、うどんやそば(ネギや天かすを控える)、お粥メニューなどを選び、野菜は加熱されたものを少量とり、スープ類は脂分の少ないものにしてください。
食事制限が難しい場合
どうしても前日食事の調整ができないという方は、医師やクリニックスタッフに早めに相談してください。腸管洗浄剤や追加の緩下剤を工夫したり、在宅での洗浄スケジュールを調整したりすることで対応が可能な場合があります。また、レトルトの検査食もありますので、お気軽にご相談ください。
当日の朝食は控える
大腸検査を受ける場合は、朝食を摂らずに来院することが基本です。もし検査が午後の場合でも、医師の指示がない限りは朝食を摂るのは避けますが、水やお茶は適度に摂って水分補給を行います。
検査を受けるうえで気になる疑問
大腸検査前日の食事に関して、患者さんからよく寄せられる疑問についてまとめます。来院前に知っておくと安心できるでしょう。
「普段から便秘がちでも問題ない?」
便秘がちの方は、前日だけでなく1週間程度前から意識して食物繊維を調整しつつ、腸の動きを整える工夫が重要です。慢性的な便秘がある場合は、事前に医師と相談し、追加の下剤や医薬品の使用を検討するとスムーズです。
「前日はアルコールを少量でもダメ?」
少量であってもアルコールは避けたほうがよいです。アルコールは消化器に刺激を与えたり、検査時の鎮静剤と相性が悪かったりします。検査の精度だけでなく、安全性の面でも注意が必要です。
「どうしても夕食後にお腹が空く場合は?」
我慢できないほど空腹を感じる場合は、水や白湯、ノンカフェインの温かいお茶などで満たす方法がおすすめです。検査前に余計なカロリーを摂取すると消化が十分に進まず、当日の洗浄効率が落ちます。
「検査中にお腹が痛くなる心配はないの?」
前日の準備と当日の下剤服用が適切であれば、検査中に大きな痛みを感じるケースは少ないです。鎮静剤を使用して検査を行う場合もあるので、強い不安を感じる方は医師に相談してください。
大腸カメラ後の食事と注意点
前日の食事をうまく調整し、検査を終えたら一段落と考える方が多いですが、検査後の食事や体調管理にも留意します。
検査後に配慮したいポイント
状況 | 注意点 |
---|---|
ポリープ切除を行った場合 | 1~2週間程度、刺激の少ない食事をとり、アルコールは避ける |
腹部に違和感が残る場合 | 無理に固形物を摂らず、医師の指示を仰ぐ |
便に血が混じる場合 | すぐにクリニックに連絡し、診察や処置を受ける |
検査中に強い鎮静剤を使用した場合 | 車の運転や激しい運動は避け、可能な限り安静に過ごす |
検査後の食事例
腸に空気を入れて検査を行うため、検査直後はお腹の張りや腹痛を感じることがあるので、消化に良い柔らかい食事を少量ずつ摂りましょう。
おかゆやうどん、スープなどがよい選択肢ですが、ポリープ切除を行った場合は、医師の指示に従ってください。
翌日以降の生活
大腸に関する症状が特になければ、翌日から通常の食生活に戻して差し支えありません。ただし、揚げ物や脂の多い料理、アルコールなどは胃腸に刺激が強いので、数日間は控えめにするのが望ましいです。
大腸がんやポリープの経過観察
もし検査中にポリープが見つかり、切除した場合は、経過観察のために再度内視鏡検査や診療を受ける可能性もあります。大腸がんの早期発見・治療のためには定期的な受診が重要なので、医師の指示に従いましょう。
日常生活での腸のメンテナンス
普段から食物繊維のバランスを意識し、水分を多く摂ることで便通が安定しやすくなりますが、過度に繊維を取りすぎるとお腹が張りやすくなるので、自身の体調に合わせることが大切です。
腸に違和感や痛みなどを感じたら、早めに受診を検討してください。
まとめ
大腸検査は、大腸がんやポリープなどの早期発見・治療に役立つ大切な検査ですが、精度を左右するのは前日食事の調整と当日の洗浄です。
消化にやさしい食材を選び、脂質や食物繊維を控えめにするだけで、腸内がきれいになりやすく、検査がスムーズに進みます。
前日の夕食を早めに済ませ、アルコールを避けることが、より良い結果へとつながります。
事前の予約や問診時に、自身の食事傾向や持病、服用中の薬をしっかり医師やスタッフに伝えることで、アドバイスを受け、安心して当日に臨んでください。
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