朝、目が覚めるとお腹の不調を感じ、急いでトイレに駆け込む、そんな朝の下痢に悩んでいませんか。通勤や通学前など、一日の始まりに下痢が出るのは本当につらいものです。
このような症状が続くと、なぜ下痢が出るのか、何か悪い病気ではないかと不安になります。
この記事では、朝に下痢が起こりやすい理由を探り、背景にある可能性のある原因について解説し、症状の原因を正確に把握するために大腸内視鏡検査(大腸カメラ)がどのように役立つのか、その重要性について詳しく説明します。
なぜ朝に下痢が出やすいのか
朝の時間帯は、体が活動を始める準備段階であり、自律神経の切り替わりや朝食による消化管の活発化など、複数の要因が重なり下痢を起こしやすくなります。睡眠中とは異なる体のリズムが、お腹の不調として現れます。
自律神経のバランスと腸の動き
体は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経という2つの自律神経によってコントロールされています。
睡眠中は副交感神経が優位になり消化管の動きは比較的穏やかですが、朝の起床とともに交感神経が優位な活動モードへと切り替わります。
この自律神経のバランスがストレスや生活習慣の乱れによってうまくいかないと、腸が過剰に動いてしまい、下痢を起こす理由になるのです。
朝食による胃結腸反射
朝食をとると、胃に食べ物が入った刺激が大腸に伝わり、大腸全体の動きが活発になり(胃結腸反射)、これは、便を直腸へ送り出すための正常な生理現象です。
しかし、反射が何らかの理由で過剰に強く出すぎると、食べた物が十分に消化・吸収される前に腸を通過してしまい、水分を多く含んだままの便、下痢として排出されます。
睡眠中の腸内環境の変化
夜間、睡眠中は消化管の動きが比較的穏やかですが、腸内にある多数の腸内細菌の活動は続いています。
人によっては、睡眠中に腸内でガスが過剰に発生したり、腸内環境のバランスが一時的に変化したりすることがあり、朝の覚醒時の腸の状態に影響を与え、排便リズムを乱し、下痢を起こすことがあります。
起床時のストレスとホルモンの影響
朝起きること自体が、体にとっては一つの生理的なストレス(覚醒ストレス)です。また、出勤や登校、朝の忙しい準備など、一日の活動に対する心理的なプレッシャーが加わることも少なくありません。
ストレスに対応するため、体はコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌し、腸の動きを過敏にしたり、腸の知覚を敏感にしたりして、下痢が出る原因となることがあります。
下痢が続く場合に考えられる原因
下痢が一時的なものではなく、朝に集中して続く場合、背景には特定の生活習慣や体質、あるいは何らかの疾患が関わっている可能性があります。
過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に明らかな炎症や潰瘍、腫瘍などの異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘などの便通異常が慢性的に続く状態で、腸の機能的な問題と考えられています。
特にストレスが症状の引き金となりやすく、朝の緊張する場面(通勤電車、学校、会議前など)で症状が悪化することが多いのが特徴です。
IBSの主な分類
IBSは、主な便の形状によっていくつかのタイプに分類されます。
| 分類 | 主な症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| 下痢型(IBS-D) | 腹痛を伴う下痢 | 朝や食後、ストレス時に症状が出やすい |
| 便秘型(IBS-C) | 腹痛を伴う便秘 | 硬く、兎糞状の便が出ることが多い |
| 混合型(IBS-M) | 下痢と便秘を繰り返す | 症状が日によって変動する |
ストレスとIBSの関係
脳と腸は、自律神経やホルモンなどを介して密接に関連していて、これが脳腸相関と呼ばれるものです。
精神的なストレスを感じると、情報が脳から腸に伝わり、腸の運動異常(動きすぎたり、動きが鈍くなったり)や、腸の知覚過敏(通常では感じない刺激を痛みとして感じる)を起こします。
IBSの診断基準
IBSの診断は、主に症状の詳しい聞き取りに基づいて行われます。
国際的な診断基準があり、例えば「過去3ヶ月間、月に4日以上腹痛があり、その腹痛が排便に関連する、排便頻度の変化に関連する、便の形状の変化に関連する、のうち2つ以上を満たす」といった項目を満たすかどうかで判断します。
炎症性腸疾患(IBD)の可能性
炎症性腸疾患(IBD)は、腸に慢性的な炎症が起こる病気の総称で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病が含まれます。自己免疫の異常が関わっていると考えられており、単なる下痢とは異なり、腸の粘膜に実際の炎症や潰瘍が生じます。
下痢や血便、腹痛などが主な症状であり、良くなったり悪くなったり(寛解と再燃)を繰り返すのが特徴です。
潰瘍性大腸炎の症状
潰瘍性大腸炎は、基本的に大腸の粘膜に炎症が起こる病気で、直腸から始まり、奥に向かって連続的に炎症が広がります。主な症状は、粘液や血液の混じった下痢(粘血便)、腹痛、しぶり腹(便意があるのに出ない)、発熱などです。
クローン病の症状
クローン病は、口から肛門までの消化管のあらゆる場所に非連続的な炎症が起こる可能性がありますが、特に小腸や大腸に好発し、炎症は粘膜の浅い層だけでなく、腸の壁の深い層にまで達することがあります。
下痢や腹痛のほか、体重減少、発熱、全身倦怠感、痔ろうなどを伴うこともあります。
IBSとIBDの症状の比較
どちらも下痢や腹痛を起こしますが、いくつかの違いがあります。
| 項目 | 過敏性腸症候群(IBS) | 炎症性腸疾患(IBD) |
|---|---|---|
| 主な原因 | 腸の機能異常、ストレスなど | 免疫の異常による腸の慢性的な炎症 |
| 主な症状 | 腹痛、下痢または便秘(血便は稀) | 腹痛、下痢、血便、体重減少、発熱 |
| 内視鏡所見 | 明らかな異常なし | 炎症、潰瘍、びらんなど |
食生活や生活習慣の影響
日々の食生活や生活リズムの乱れも、朝の下痢が出る大きな理由となりま、夜遅くの食事や、腸に負担をかける刺激物の多い食事は、消化管の調子を狂わせる原因です。
刺激物や脂質の多い食事
アルコール、カフェイン(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)、香辛料(唐辛子など)といった刺激物は、腸の粘膜を直接刺激し、蠕動運動を過剰にします。
また、脂質の多い食事(揚げ物、こってりした肉料理など)は消化に時間がかかり、腸に負担をかけるため、下痢の原因となり、前日の夜に摂取すると、翌朝の不調につながりやすいです。
前夜の暴飲暴食
夜遅くに大量に食事をとること(ドカ食い)や、飲酒後のラーメンなどは、睡眠中も消化管を休ませないことになります。
胃腸が十分に働けないまま朝を迎え、未消化の食べ物が腸内に残ることで、翌朝の腸の活動が過剰になり、下痢を起こしやすいです。
睡眠不足と不規則な生活
睡眠不足や昼夜逆転などの不規則な生活は、自律神経のバランスを乱す最大の要因の一つです。自律神経が乱れると、腸のコントロールもうまくいかなくなり、腸が過敏な状態になり、少しの刺激でも下痢が出やすくなります。
朝の下痢を引き起こすその他の要因
過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、生活習慣以外にも、朝の下痢が出る理由となる要因はいくつかあり、服用している薬の影響や、特定の食物に対する体の反応、あるいは感染症なども考慮に入れる必要があります。
薬剤性の下痢
病気の治療のために服用している薬が、副作用として下痢を起こすことがあります。
抗生物質(抗菌薬)は、病気の原因となる細菌だけでなく、腸内の善玉菌まで減少させてしまい、腸内環境のバランス(腸内フローラ)が崩れることで下痢が出やすい薬剤です。
他にも、痛み止めの一部や、血圧の薬、糖尿病の薬など、下痢の原因となり得る薬剤は多くあります。
食物アレルギーや不耐症
特定の食べ物に対してアレルギー反応が起こると、腸が炎症を起こし下痢をすることがあり、また、アレルギーとは異なりますが、特定の食物成分をうまく消化・吸収できない不耐症も下痢の原因です。
乳糖不耐症の例
代表的な不耐症に乳糖不耐症があり、牛乳や乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクターゼ)の活性が低い、あるいは持っていないために生じます。
分解されなかった乳糖が大腸に達すると、腸内の水分量が増えたり、腸内細菌によって発酵されてガスが発生したりして、下痢や腹痛を起こします。
日本人はこの酵素の活性が低い人が多く、朝食に牛乳やカフェオレ、ヨーグルトを摂取した後に下痢が起こる場合、乳糖不耐症が理由である可能性も考えることが必要です。
感染性腸炎
ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど)や細菌(サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌など)に感染することで起こる腸炎です。
急性の下痢、腹痛、嘔吐、発熱などを伴うことが多く、通常は朝に限らず一日中症状が続きますが、回復期や軽症の場合、朝の排便時に症状が目立つこともあり得ます。
下痢が続くときのセルフケアと注意点
朝の下痢が続く場合、日常生活の中でできる対処法(セルフケア)を試すことで、症状が和らぐことがありますが、セルフケアで改善しない場合や、特定の兆候が見られる場合は、放置せずに医療機関を受診することが重要です。
食生活の見直し
下痢の症状を悪化させないためには、消化管に負担をかけない食事が基本で、腸を刺激するものを避け、消化の良い食べ物を選ぶことが大切です。
消化に良い食事の工夫
症状があるときは、胃腸を休ませることを優先します。おかゆやよく煮込んだうどん、白身魚、豆腐、ささみ、卵、バナナなどは消化管に比較的優しい食品です。
また、冷たい飲み物や食べ物は腸を刺激するため、常温や温かい飲み物(白湯、麦茶など)をとるように心がけると良いでしょう。
避けるべき食品の例
下痢の時には、腸の蠕動運動を亢進させたり、消化に時間がかかったりする食品は避けるのが賢明です。
| 食品の分類 | 避けるべき食品の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 脂質の多いもの | 揚げ物、脂身の多い肉、生クリーム | 消化に時間がかかり腸に負担をかける |
| 刺激物 | 香辛料、アルコール、カフェイン、炭酸飲料 | 腸の粘膜を刺激し動きを活発にする |
| 食物繊維が多いもの | ごぼう、きのこ類、海藻類、玄米 | 消化されにくく腸の負担になる(※) |
※食物繊維は本来腸内環境に良いものですが、下痢がひどい時には消化の負担になるため、一時的に控えるのが良い場合があります。
生活リズムの整備
自律神経のバランスを整えることは、腸の調子を整える上で非常に重要です。規則正しい生活を送り、十分な睡眠時間を確保することが、ストレスを軽減し、朝の下痢の改善につながります。
睡眠の質を高める
毎日なるべく同じ時間に寝て、同じ時間に起きることを心がけ、休日でも極端な寝坊は避け、生活リズムを一定に保つことが大切です。寝る前のスマートフォン操作やカフェイン摂取は、交感神経を刺激し、睡眠の質を下げるため避けましょう。
ストレス管理の方法
日常生活でストレスをゼロにすることは困難ですが、自分に合った方法で心身の緊張をほぐす時間を持つことは大切です。
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
- 軽いウォーキングやストレッチを行う
- 趣味の時間(音楽鑑賞、読書など)を確保する
- 深呼吸や瞑想を試してみる
医療機関を受診すべき兆候
セルフケアを行っても下痢が改善しない場合や、単なる下痢ではない可能性を示す以下の表のような症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
警戒すべき症状(レッドフラッグサイン)
| 症状 | 考えられる主な背景 |
|---|---|
| 血便(便に血が混じる、便器が赤くなる) | 炎症性腸疾患、大腸がん、感染症、痔など |
| 意図しない体重の急激な減少 | 慢性的な炎症、吸収不良、悪性腫瘍など |
| 続く発熱(38度以上など) | 感染性腸炎、炎症性腸疾患など |
| 夜間も眠れないほどの腹痛や下痢 | 重度の炎症、腸閉塞など |
下痢の原因究明と大腸内視鏡検査
続く下痢の原因を正確に突き止めるためには、医療機関での詳しい検査が必要で、大腸の状態を直接確認できる大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、下痢が出る理由を明らかにする上で非常に重要な役割を果たします。
診察で確認すること
医療機関では、まず症状がいつから続いているか、便の回数や形状、色、腹痛の有無、他に症状はないかなどを詳しく問診します。
その後、必要に応じて便検査(細菌、ウイルス、潜血反応など)や血液検査(炎症反応、貧血の有無など)を行い、感染症や全身の炎症状態などを調べます。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の重要性
大腸内視鏡検査は、先端に高性能カメラがついた細くしなやかなスコープを肛門から挿入し、直腸から盲腸まで(大腸全体)の粘膜を直接目で見て詳細に観察する検査です。
下痢が出る理由が、炎症、潰瘍、ポリープ、がんなど、大腸の形態的な異常によるものでないかを正確に確認できます。
過敏性腸症候群(IBS)の診断における役割
IBSは、他の病気がないことを確認して初めて診断されます(除外診断)。
大腸内視鏡検査を行い、炎症性腸疾患や大腸がん、あるいは感染性腸炎の後など、症状の原因となる他の重篤な病気がないことを確認することは、IBSの診断を下し、安心して治療に進む上で非常に重要です。
炎症性腸疾患(IBD)の発見
潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患は、大腸内視鏡検査で特徴的な粘膜の炎症(赤み、むくみ、びらん、潰瘍など)を直接確認することで診断につながります。
また、炎症の範囲や程度を正確に把握し、治療方針を決定するためにも必要です。疑わしい部分の組織を少量採取(生検)し、顕微鏡で調べる病理検査も同時に行えます。
大腸ポリープや早期がんの確認
慢性的(あるいは急性的)な下痢の症状が、大腸ポリープや早期の大腸がんによって起きている可能性もゼロではありません。特に便に血が混じる場合や、便が細くなった場合などは注意が必要です。
内視鏡検査は病変を早期に発見し、必要であればその場で切除(内視鏡治療)することもできます。
大腸内視鏡検査で分かることの比較
大腸を調べる検査にはいくつか種類がありますが、大腸内視鏡検査は他の検査方法と比べて得られる情報の質と量が異なります。
他の検査との主な違い
| 検査方法 | 確認できること | 確認が難しいこと |
|---|---|---|
| 大腸内視鏡検査 | 粘膜の微細な変化、色調、炎症、平坦な病変 | (特になし。ただし小腸の状態は一部除く) |
| 注腸X線検査(バリウム検査) | 大腸の全体像、大きな隆起や狭窄(きょうさく) | 粘膜の平坦な病変、微細な炎症、色調の変化 |
| CTコロノグラフィ(大腸CT) | 大腸の立体的な画像、大腸以外の臓器も評価可能 | 粘膜の色調、ごく小さなポリープ、平坦な炎症 |
大腸内視鏡検査の実際
大腸内視鏡検査を受けるにあたり、どのような準備が必要で、検査がどのように進むのかをあらかじめ知っておくことは、不安の軽減につながります。最近では、患者さんの苦痛を最小限に抑えるための様々な工夫が進んでいます。
検査前の準備
正確な検査のためには、大腸の中を便のないきれいな状態にしておく必要があり、検査前日は消化の良い食事(検査食など)をとり、当日は下剤(腸管洗浄剤)を服用して腸内を空にします。
食事制限について
検査前日は、消化が悪く腸に残りやすい食べ物は避ける必要があります。医療機関から具体的な指示がありますが、一般的には以下のような食品に注意してください。
- 繊維の多い野菜(ごぼう、きのこ類など)
- 種のある果物(いちご、キウイ、ぶどうなど)
- 海藻類(わかめ、こんぶなど)
- こんにゃく、豆類
下剤(腸管洗浄剤)の服用
検査当日の朝(または前日の夜から)、約1〜2リットルの液体状の腸管洗浄剤を数時間かけて飲み、何度も排便を促し、最終的に便が透明な水様になるまで腸内を洗浄します。
下剤の服用が検査準備の中で最も大変と感じる方も多いですが、最近では錠剤タイプの下剤や、飲む量が比較的少ないもの、味を工夫したものなど、選択肢が増えています。
検査当日の流れ
検査当日は、指定された時間に下剤の服用を開始します。便がきれいになったことを確認した後、検査室に移動し、お尻の部分に穴が開いた検査専用のズボンに着替えて検査台に横になります。
検査中の体勢と時間
通常、体の左側を下にして横になり、膝を軽く曲げた体勢で検査を始め、肛門からスコープをゆっくり挿入し、大腸の一番奥(盲腸)まで到達させます。その後、スコープを抜きながら大腸の粘膜を隅々まで詳しく観察します。
検査時間自体は、個人差(腸の長さや曲がり具合など)がありますが、通常15〜30分程度です。
苦痛を和らげるための工夫
大腸内視鏡検査は苦しい、あるいは痛いというイメージがあるかもしれませんが、現在は患者さんの負担を軽減するために鎮鎮静剤(静脈麻酔)を使用することが一般的です。
鎮静剤(静脈麻酔)の使用
鎮静剤を静脈注射で使用すると、うとうとと眠っているような、あるいはぼんやりとリラックスした状態で検査を受けられます。検査中の腹部の張りやスコープが曲がり角を通る際の不快感をほとんど感じることなく検査を終えることが可能です。
検査終了後は、鎮静剤の効果が覚めるまでリカバリールームで休む時間が必要です。
二酸化炭素(CO2)の使用
検査中は、腸のひだを伸ばして粘膜を詳しく観察するために、腸内にガスを送って膨らませます。従来は空気が使われていましたが、空気は腸管に吸収されにくく、検査後のお腹の張りの原因となっていました。
現在は、空気に比べて腸管から速やかに吸収される二酸化炭素(CO2)を使用する施設が増えていて、検査後のお腹の張りを大幅に軽減できます。
検査後の注意点と結果説明
大腸内視鏡検査が無事に終了した後も、いくつか注意すべき点があります。また、検査で何が分かったのか、結果を正確に理解し、今後の対策や治療につなげることが何よりも重要です。
検査当日の過ごし方
鎮静剤を使用した場合は、検査後1〜2時間程度リカバリールームなどで十分休んでから帰宅となりますが、鎮静剤の影響が残る可能性があるため、当日は車やバイク、自転車の運転はできません。
また、重要な判断を伴う仕事や契約なども避ける必要があります。
食事の再開
検査が終了し、特に問題がなければ食事を再開できます。
ただし、腸は下剤や検査の影響で敏感になっている可能性があるため、最初は消化の良いもの(おかゆ、うどん、スープなど)から始め、アルコールや香辛料などの刺激物はその日は避けるのが無難です。
ポリープ切除後の注意点
検査中にポリープを切除(内視鏡的ポリープ切除術)した場合、日帰り手術にあたります。
切除した部分の傷口から出血したり、まれに腸に穴が開いたりする(穿孔)合併症を防ぐため、検査後数日間は食事制限(消化の良いもの)や生活上の制限(激しい運動、長時間の入浴、飲酒の禁止など)が必要です。
医療機関からの指示に必ず従ってください。
ポリープ切除後の制限(例)
| 項目 | 制限の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 食事 | 数日〜1週間程度、消化の良い食事 | 腸管を安静に保ち、傷の治癒を促すため |
| 飲酒 | 1週間程度禁止 | 血流が良くなり出血のリスクが高まるため |
| 運動 | 1週間程度、腹圧のかかる運動は禁止 | 腹圧により出血や穿孔のリスクが高まるため |
検査結果
検査の結果は通常検査当日に、内視鏡で撮影した実際の画像を見ながら、大腸の状態について詳しい説明を受けます。
異常がなかった場合
検査で明らかな異常(炎症やポリープ、がんなど)が見つからなかった場合、朝の下痢が出る理由は過敏性腸症候群(IBS)である可能性が高いです。
器質的な病気(形に異常がある病気)ではないことが確認できたため、今後はIBSの症状をコントロールするための治療(生活習慣の改善、食事指導、腸の動きを整える薬や便の硬さを調整する薬による治療)を検討します。
異常が見つかった場合
炎症性腸疾患やポリープ、がんなどが見つかった場合は、結果に応じた専門的な治療方針を立てる必要があります。
生検(組織の一部を採取)を行った場合は、病理検査(顕微鏡での詳しい検査)の結果が後日(通常1〜2週間後)判明してから、最終的な診断が確定し、詳細な治療計画が決まります。
よくある質問
- 下痢が続く場合、市販の下痢止めを飲み続けても良いですか?
-
自己判断で市販の下痢止めを長期間使用し続けることは推奨しません。下痢は、体にとって有害なものを体外に排出しようとする防御反応である場合もあります。
細菌やウイルスによる感染性腸炎の場合、下痢止めで腸の動きを無理に止めると、かえって病原体や毒素が腸内にとどまり、症状を悪化させたり、回復を遅らせたりする可能性があります。
続く下痢の背景には様々な理由が考えられるため、まずは原因を特定することが重要です。
- 大腸内視鏡検査はどのくらいの頻度で受けるべきですか?
-
検査を受けるべき頻度は、その人の年齢、過去の検査結果、大腸ポリープの有無や種類、大腸がんの家族歴などによって異なります。
今回の検査で全く異常がなく、特にリスク要因もない場合は、数年に一度の検査で十分な場合もあります。一方で、ポリープを切除した場合は、そのポリープのタイプや個数に応じて1〜3年後の再検査が必要です。
炎症性腸疾患の経過観察中の方は、医師の指示に基づいた定期的な検査が大切です。
- 検査のための下剤を飲むのがつらいのですが?
-
大腸内視鏡検査の準備で最も大変なのが、腸管洗浄剤の服用であると感じる方は少なくありません。味が苦手な方や、指定された量(1〜2リットル)を飲むのが難しい方もいます。
最近では、従来のものより少ない量で効果が得られる下剤や、味を工夫したもの、あるいは複数の下剤を組み合わせる方法、錠剤タイプの下剤など、様々な選択肢が増えています。
準備の方法についても、医療機関で率直に相談することで、ご自身に合った負担の少ない方法を提案してもらえる場合があります。
- 検査で異常がなくても下痢が続くのはなぜですか?
-
大腸内視鏡検査は、大腸の粘膜の形態的な異常(目に見える炎症、潰瘍、ポリープ、がんなど)を見つけるための非常に精度の高い検査です。
検査で異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢が続く場合、腸の機能的な問題、つまり腸の動きや知覚に問題がある状態、過敏性腸症候群(IBS)が理由である可能性が高いと考えられます。
IBSは、ストレスや自律神経の乱れ、腸内環境の変化などが複雑に関わり、腸が過敏になって下痢を起こす状態です。
以上
参考文献
Yamauchi Y, Arai M, Akizue N, Ohta Y, Okimoto K, Matsumura T, Fan MM, Imai C, Tawada A, Kato J, Kato N. Colonoscopic evaluation of diarrhea/colitis occurring as an immune-related adverse event. Japanese Journal of Clinical Oncology. 2021 Mar;51(3):363-70.
Kinoshita Y, Ariyoshi R, Fujigaki S, Tanaka K, Morikawa T, Sanuki T. Endoscopic diagnosis of chronic diarrhea. DEN open. 2022 Apr;2(1):e53.
Matsumoto Y, Nadatani Y, Otani K, Higashimori A, Ominami M, Fukunaga S, Hosomi S, Kamata N, Kimura T, Fukumoto S, Tanaka F. Prevalence and risk factor for chronic diarrhea in participants of a Japanese medical checkup. JGH Open. 2022 Jan;6(1):69-75.
Shah RJ, Fenoglio-Preiser C, Bleau BL, Giannella RA. Usefulness of colonoscopy with biopsy in the evaluation of patients with chronic diarrhea. The American journal of gastroenterology. 2001 Apr 1;96(4):1091-5.
Yusoff IF, Ormonde DG, Hoffman NE. Routine colonic mucosal biopsy and ileoscopy increases diagnostic yield in patients undergoing colonoscopy for diarrhea. Journal of gastroenterology and hepatology. 2002 Mar;17(3):276-80.
Cai J, Yuan Z, Zhang S. Abdominal pain, diarrhea, constipation-which symptom is more indispensable to have a colonoscopy?. International Journal of Clinical and Experimental Pathology. 2015 Jan 1;8(1):938.
Shen B, Khan K, Ikenberry SO, Anderson MA, Banerjee S, Baron T, Ben-Menachem T, Cash BD, Fanelli RD, Fisher L, Fukami N. The role of endoscopy in the management of patients with diarrhea. Gastrointestinal endoscopy. 2010 May 1;71(6):887-92.
Limburg PJ, Ahlquist DA, Sandborn WJ, Mahoney DW, Devens ME, Harrington JJ, Zinsmeister AR. Fecal calprotectin levels predict colorectal inflammation among patients with chronic diarrhea referred for colonoscopy. Official journal of the American College of Gastroenterology| ACG. 2000 Oct 1;95(10):2831-7.
Kagueyama FM, Nicoli FM, Bonatto MW, Orso IR. Importance of biopsies and histological evaluation in patients with chronic diarrhea and normal colonoscopies. ABCD. Arquivos Brasileiros de Cirurgia Digestiva (São Paulo). 2014;27(3):184-7.
Filliettaz SS, Juillerat P, Burnand B, Arditi C, Windsor A, Beglinger C, Dubois RW, Peytremann-Bridevaux I, Pittet V, Gonvers JJ, Froehlich F. Appropriateness of colonoscopy in Europe (EPAGE II)–chronic diarrhea and known inflammatory bowel disease. Endoscopy. 2009 Mar;41(03):218-26.

