MENU

逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群を同時に改善する生活習慣|今日からできる対策

逆流もいびきも防ぐ「寝方」と「食事」|左向き寝とダイエットの科学

「夜、胸焼けがして目が覚めてしまう」「家族からいびきが止まっていると言われた」——もしあなたが、逆流性食道炎による胸の不快感と、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による睡眠トラブルの両方に悩んでいるとしたら、それは偶然ではないかもしれません。

この2つの疾患は密接に関連しており、互いの症状に影響を与え合う傾向があります。しかし、裏を返せば、生活習慣を見直すことで両方の症状を同時に和らげられる可能性があるということでもあります。

この記事では、医学的な根拠に基づいた「今日から実践できる生活習慣の改善方法」について解説します。

目次

逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群が併発しやすい理由

「胃腸の病気」と「呼吸器の病気」は別物と考えがちですが、医学的にはこの2つは合併しやすい疾患として知られています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、逆流性食道炎が見られる頻度が高いという報告があります。

互いに影響を与え合うメカニズム

この2つの疾患が同時に起こりやすい理由には、体の構造と圧力の関係が深く関わっています。

無呼吸が逆流を招く可能性(SAS → GERD)として、睡眠中に呼吸が止まると、息を吸おうとして胸の中(胸腔内)に強い陰圧がかかります。この吸い上げる力が、胃の中にある胃酸を食道へ引き上げてしまう可能性があると考えられています。

胃酸が呼吸に影響する可能性(GERD → SAS)として、逆流した胃酸がのどや気道の入り口を刺激すると、粘膜に炎症が起きたり、反射的に気道が収縮したりすることがあります。これが空気の通り道を狭め、無呼吸やいびきを悪化させる要因になる可能性があります。

睡眠時無呼吸による胸腔内陰圧が胃酸逆流を招き、胃酸刺激が気道を狭める「負の連鎖」を示した医療イラスト図解。

共通するリスク要因

この2つの疾患には共通のリスク要因があります。それが「肥満」と「加齢」です。

肥満については、内臓脂肪が増えるとお腹の圧力(腹圧)が高まり胃を圧迫します。これが逆流の原因となります。同時に、首回りの脂肪が気道を狭めることが、無呼吸の原因となります。

加齢については、年齢とともに食道の入り口を締める筋肉やのどの筋肉が衰えるため、両方の疾患が発症しやすくなる傾向があります。

対策①:寝る姿勢と枕の工夫

生活習慣の改善の中で、比較的すぐに効果が期待できるのが「就寝時の姿勢」の工夫です。重力を味方につけることで、物理的に逆流と気道の閉塞を防ぐことができます。

逆流性食道炎対策として推奨される、左側を下にして上半身を少し高くした姿勢で眠る女性のイメージ。

左側を下にして寝る(左側臥位)

寝るときは、体の左側を下にして寝ることが推奨されています。

人間の胃は、食道からつながった後、袋状に左側へ膨らんでいます。左側を下にして寝ると、胃酸が胃の底部(胃底部)に溜まりやすくなり、食道への逆流が起こりにくくなります。逆に、右側を下にすると、食道の入り口付近に胃酸が溜まりやすくなり、逆流のリスクが高まる傾向があります。

また、横向きで寝ることは、仰向けに比べて舌の付け根(舌根)がのどに落ち込むのを防ぐため、無呼吸の予防にも有効とされています。

上半身を少し高くする

完全に平らな状態で寝るよりも、上半身を少し高くすることも有効です。

逆流性食道炎用の枕(ウェッジピロー)や、背中からなだらかに傾斜がつくクッションを活用する方法があります。頭だけでなく、背中から傾斜をつけることがポイントです。

ただし、頭だけを高くする枕は、首が曲がって気道を圧迫し、いびきや無呼吸を悪化させる可能性があるため避けた方がよいでしょう。

対策②:夕食のタイミングと内容

「いつ、何を食べるか」も、その夜の症状に影響します。特に重要なのは、胃の中に食べ物が残った状態で横にならないことです。

夕食から就寝まで3時間空けることの重要性を示したイラスト。7時に食事をして10時以降に寝るタイムスケジュール。

就寝3時間前までに食事を終える

食べた物が消化され、胃から十二指腸へ送り出されるまでには、通常約3時間かかるとされています。胃の中に食べ物が残ったまま横になると、重力の影響を受けやすくなり、胃酸とともに食べ物が逆流しやすくなります。

仕事で帰宅が遅くなる場合は、夕方の休憩時間に主食(おにぎりなど)を軽く済ませ、帰宅後は消化の良いスープや野菜料理だけにする「分食」を取り入れる方法もあります。

アルコールを控える

寝る前のアルコール(寝酒)は、逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群の両方にとって避けるべき要因です。

アルコールには筋肉を弛緩させる作用があります。これにより、胃の入り口(下部食道括約筋)が緩んで逆流しやすくなるだけでなく、のどの筋肉も緩んで気道を塞ぎやすくなります。また、アルコールは寝付きを良くする一方で、睡眠を浅くし、途中覚醒を増やす傾向があります。

晩酌をする場合は、就寝の4時間前までには切り上げ、適量を守ることが大切です。

対策③:体重コントロール

寝方や食事のタイミングに加えて、長期的に両方の症状の改善を目指すためには、適正体重への減量が有効なアプローチとなります。

腹囲をメジャーで測定し、減量による健康改善を実感している男性のイメージ。

内臓脂肪が与える影響

肥満、特に内臓脂肪型肥満は、物理的に体を内側から圧迫します。

逆流性食道炎への影響として、腹部に溜まった脂肪が胃を圧迫し、胃内圧を上昇させます。これにより、胃酸が食道へ押し出されやすい状態が作られます。

睡眠時無呼吸症候群への影響として、首回りや舌についた脂肪が、仰向けになった際に重力でのどに落ち込み、気道を狭くしてしまいます。

無理のない減量を心がける

急激なダイエットはリバウンドのリスクがあるだけでなく、ストレスによって胃酸分泌が増加することもあります。医学的に推奨されるのは、1ヶ月に「現体重の3%」程度を落とすペースです。例えば、体重70kgの方であれば、まずは2kg程度の減量を目指します。

数キロの減量でも、腹圧と首回りの脂肪が減少し、症状が改善するケースが報告されています。

対策④:服装と喫煙

意外と見落としがちなのが、日中の服装や嗜好品の影響です。

締め付けの強い服を避ける

お腹を締め付ける服装は、常に腹圧をかけた状態を作り出します。

きついベルト、補正下着、ウエストがきついズボンやスカートなどは避けた方がよいでしょう。特に食後や就寝時は、お腹周りがゆったりとした服やパジャマを選ぶことで、胃にかかる圧力を下げ、逆流のリスクを減らすことができます。

お腹を締め付けるきついベルトと、胃に優しいゆったりした服装を比較したイラスト。

禁煙を検討する

喫煙(ニコチン)は、胃と食道のつなぎ目にある「下部食道括約筋」の働きを弱め、緩めてしまいます。また、タバコの煙がのどの粘膜を刺激し、炎症やむくみを引き起こすため、睡眠時の呼吸を妨げる要因にもなります。

禁煙は、逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群の改善だけでなく、食道がんのリスク低減にもつながるため、検討されることをお勧めします。

医師へ相談すべきタイミング

生活習慣の改善は有効ですが、それだけですべての症状が解決するわけではありません。以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

早めの受診をお勧めする症状として、食事のつかえ感や飲み込みにくさがある場合(食道の狭窄やがんの可能性)、日中の強い眠気や居眠りがある場合(重度の睡眠時無呼吸症候群の可能性)、吐血や黒色便がある場合(消化管からの出血の可能性)、急激な体重減少がある場合(悪性腫瘍などの可能性)が挙げられます。

逆流性食道炎だと思っていたら狭心症だったというケースもあります。自己判断せず、専門医の診断を受けることをお勧めします。

まとめ

逆流性食道炎と睡眠時無呼吸症候群は、「左向きで寝る」「就寝3時間前までに食事を終える」「適正体重を目指す」といった生活習慣の改善で、同時にケアできる可能性があります。

今日からできることを一つずつ取り入れてみてください。ただし、症状が長引く場合や改善が見られない場合は、我慢せずに専門医にご相談ください。適切な診断と治療が、症状の改善につながります。

どんな枕を使えばいいですか?

首だけが高くなる枕ではなく、背中からなだらかに角度がつく「逆流性食道炎用枕(ウェッジピロー)」や、大きめのクッションを背中に当てる方法が推奨されています。首が曲がりすぎて気道が塞がらないよう注意してください。

痩せれば必ず改善しますか?

肥満が主な原因である場合、減量によって症状が改善するケースは多く報告されています。ただし、骨格(あごが小さいなど)や加齢による筋力低下が原因の場合は、減量だけでは十分に改善しないこともあります。その場合は、CPAP療法やマウスピース、薬物療法などの併用が必要になることがあります。ご自身に合った治療方針について、医師にご相談ください。

次に読むことをおすすめする記事
【睡眠時無呼吸症候群と逆流性食道炎の「負の連鎖」|原因と治療法】
寝方や食事の工夫で対策できることが分かったら、『そもそもなぜこの2つの病気が同時に起こるのか』を知っておくと全体像が見えてきます。医学的な背景と治療の考え方を整理したい方に向いた内容です。

【睡眠時無呼吸症候群で心筋梗塞・脳梗塞に?死亡リスクと予防法を解説】
いびきや胸やけだけでなく、睡眠時無呼吸が心筋梗塞や脳梗塞のリスクとも関係することをご存じでしょうか。睡眠と全身の健康のつながりを知ることで、生活習慣の見直しや治療の重要性をより立体的に捉えられます。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、放置すると生活の質だけでなく
命に関わる病気を引き起こすリスクがあります。

当院ではご自宅での簡易検査からスタートできます。
検査の流れ・費用・治療法は、SAS総合ページでわかりやすくまとめています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)総合ページを見る

参考文献

  • [胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)] – 日本消化器病学会, 2021
  • [睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020] – 日本呼吸器学会, 2020
  • [ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease] – Katz PO, et al., The American Journal of Gastroenterology, 2022
  • [Obstructive Sleep Apnea and Gastroesophageal Reflux Disease: A Review of Mechanisms and Common Genetic Pathways] – Wang L, et al., Nature and Science of Sleep, 2021
  • [Effect of continuous positive airway pressure on gastroesophageal reflux in patients with obstructive sleep apnea: a meta-analysis] – Wu X, et al., Sleep and Breathing, 2020
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を監修した医療機関

この記事は、睡眠時無呼吸症候群に関する正しい知識を広くお届けすることを目的として作成しています。
記事の内容についてご不明な点や、ご自身の症状についてご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

金沢消化器内科・内視鏡クリニック(野々市中央院・金沢駅前院)

消化器内視鏡専門医が、消化器と睡眠を同時に診る新しい内科診療に取り組んでいます。 「薬を飲んでも治らない胸やけ」「改善しない脂肪肝」「鎮静下内視鏡の不安」—— こうしたお悩みの背景に睡眠時無呼吸症候群が関わっていないか、あわせて評価・治療いたします。

当院の睡眠時無呼吸症候群の診療について

お電話でのご予約・ご相談 野々市中央院:076-259-0378 / 金沢駅前院:076-210-7140

この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

目次