
「お酒は飲まない」
「がんばって痩せた」
のに、なぜ?
肝臓は毎晩「酸欠」
で苦しんでいるかも。
「お酒は飲まないのに、健康診断で肝臓の数値を指摘された」 「いびきがひどく、最近体重が落ちにくくなった」
実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脂肪肝(MASLD)は、互いに悪影響を及ぼし合う「危険なパートナー」であることをご存知でしょうか?
睡眠中の「無呼吸」による酸素不足は、肝臓に直接的なダメージを与え、肝臓の悪化はさらなる肥満と呼吸障害を招きます。この「負の連鎖(Vicious Cycle)」を断ち切るには、片方だけでなく、両方を同時にケアする視点が不可欠です。
本記事では、最新の疾患概念であるMASLD(代謝機能障害関連脂肪肝疾患)の視点から、SASとの深い関係性と、具体的な改善ルートを包括的に解説します。
「意思が弱い」のではなく、肝臓が「代謝しにくい状態」にあるのかもしれません。
脂肪肝の治療において、生活習慣の改善が基本であることは間違いありません。しかし、患者様の中には「お酒も飲まない」「食事も気をつけている」にもかかわらず、病状が進行してしまうケース(NASH/MASHなど)が存在します。
近年の研究で、こうした「治りにくい脂肪肝」の増悪因子として、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による「夜間の低酸素」が深く関わっていることが明らかになってきました。
夜間の「低酸素」が、脂肪合成を促進するメカニズム

睡眠中に呼吸が止まり、体内の酸素濃度が低下(間欠的低酸素)すると、肝臓では以下のような反応が起こることが報告されています。
- 遺伝子レベルでの変化: 低酸素ストレスが加わると、肝臓内で「KLF9」と呼ばれる遺伝子の発現が上昇します 。
- 脂肪合成のスイッチが入る: この遺伝子の働きにより、脂肪を分解する経路が抑制され、逆に脂肪を合成する経路(p38 MAPK経路の阻害など)が活性化してしまうことが示唆されています 。
- インスリン抵抗性の悪化: 低酸素状態はインスリンの効きを悪くし、血糖値のコントロールを難しくする要因ともなります 。
つまり、無呼吸の状態を放置することは、寝ている間に「肝臓に負担をかけ続けている」可能性があるのです。
肝臓へ「酸素」を届ける、という治療の選択肢。
もし脂肪肝の原因の一つが「夜間の低酸素」にあるとすれば、呼吸状態を改善することが肝機能のサポートにつながると考えられます。
睡眠時無呼吸症候群の標準治療であるCPAP(シーパップ)療法を行うことで、睡眠中の酸素状態を正常に保ちます。 実際に、CPAP治療を適切に行うことで、肝臓の炎症を示す数値(AST/ALT)が改善したという臨床データも報告されています 。
このような傾向はありませんか?
- アルコール摂取量は少ないのに脂肪肝と診断された
- 食事制限を頑張っているが、数値があまり下がらない
- 朝起きた時に疲れが取れていない、頭が重い
- 家族から「いびき」や「呼吸が止まっている」と指摘された
- 高血圧や糖尿病の治療も受けている
脂肪肝(MASLD)患者さんの約半数以上に、睡眠時無呼吸が合併しているといわれています 。
「肝臓のために、睡眠を調べる」。それは決して遠回りではありません。お心当たりのある方は、一度ご相談ください。
専門医が執筆:いびき・脂肪肝コラム
この記事の監修者
医療法人社団心匡会 理事長 中村 文保
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
