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腹痛でまずCT?内視鏡との違いと受診の目安を解説

腹痛でまずCT?内視鏡との違いと受診の目安を解説

「お腹が痛い。内視鏡検査を受けたほうがいいのかな…」と思って検索されている方も多いかもしれません。しかし実は、症状によっては内視鏡より先にCT検査が必要なケースがあります。

この記事では、消化器内科で「まずCTを優先する」症状の特徴、緊急性の見きわめ方、受診の流れをわかりやすく解説します。急性腹症診療ガイドラインや医学的エビデンスに基づいた一般的な情報をお伝えしますので、ご自身の症状と照らし合わせながら、受診のタイミングを考える参考にしてください。

【この記事でわかること】

  • CTが優先される「危険サイン」の具体例
  • 診察で医師がチェックするポイント
  • CTと内視鏡の役割の違い
  • 受診時に持参すると役立つ情報

目次

「腹痛でまずCT」が必要になるのはどんなとき?

急性腹症診療ガイドライン(2015年初版、2025年改訂)では、発症1週間以内の急性発症で、手術などの迅速な対応が必要な腹部疾患を「急性腹症」と定義しています。こうした状態が疑われるとき、内視鏡よりも先にCT検査が優先されることがあります。

ランダム化比較試験(Sala et al., 2007)では、急性腹痛患者に対する早期CTが診断の確実性を向上させることが示されています。

CTが先になりやすい症状パターン

以下のような症状がある場合、消化管穿孔(せんこう:腸に穴が開くこと)、腸閉塞、虚血(血流が悪くなる状態)など、緊急性の高い病態を除外するためにCTが優先されることが一般的です。

  • 突然発症の激しい腹痛:数分〜数時間で急激に悪化した痛み
  • 発熱を伴う腹痛:明らかな発熱(目安として38℃前後以上)と腹痛が同時にある
  • 嘔吐を繰り返す:食事が全くとれない、何度も吐いてしまう
  • お腹が板のように硬い:触ると筋肉が緊張している(筋性防御)
  • 血圧低下・冷や汗・顔色不良:全身状態が明らかに悪い

【重要】 上記の症状は一般的な目安です。症状の程度や組み合わせによって緊急度は変わりますので、最終的には医師の診察を受けて判断することが大切です。

危険サインチェック:すぐに受診すべき症状

救急車を呼ぶべき状態

以下のような症状がある場合は、119番で救急要請を検討してください。これらは生命に関わる可能性がある症状として、一般的に知られています。

  • 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応が鈍い
  • 呼吸が苦しい、息が荒い
  • 吐血(血を吐く)、大量の下血(黒色便・鮮血便)
  • 顔面蒼白、冷や汗が止まらない
  • 腹痛が急激に悪化し、動けないほど強い

当日〜翌日には受診を検討すべき状態

  • 明らかな発熱+腹痛が続く
  • 食事がとれない状態が半日以上続く
  • 痛みが徐々に強くなっている
  • 便やガスが全く出ない

よくある相談パターン

例1:「朝から右下腹部が痛く、熱も37.8℃ある。虫垂炎(盲腸)が心配」 → このような場合、腹部CTで虫垂の状態を確認することが多いです。

例2:「昨日の夜から上腹部が激しく痛み、何度も吐いた。膵臓が悪いのでは」 → 急性膵炎の可能性を評価するためにCTが行われることがあります。

例3:「便秘気味だったが、今朝から腹痛と吐き気がある。お腹が張っている」 → 腸閉塞の可能性を確認するためにCTが優先されることがあります。

【注意】 これらは一般的な傾向であり、実際の検査の要否は医師が状態を見て判断します。


診察で医師が確認すること

問診で聞かれること

医師は以下のような点を確認し、緊急性の評価と検査の優先順位を判断します。

  • いつから・どのように始まったか:突然か、徐々にか
  • 痛みの場所・性質:どこが、どんなふうに痛むか
  • 随伴症状:発熱、嘔吐、下痢、便秘、血便の有無
  • 既往歴:過去の手術、持病、服用中の薬
  • 最終食事・最終排便:いつ何を食べたか、便は出ているか

身体診察のポイント

  • 視診:お腹の膨らみ、手術痕の有無
  • 聴診:腸の動き(腸蠕動音)の確認
  • 打診:お腹を軽くたたいて響きを確認
  • 触診:痛みの部位、筋性防御、反跳痛(押して離したときの痛み)の有無

急性腹症診療ガイドラインでは、バイタルサイン(血圧・脈拍・体温・呼吸など)の異常がある場合は、診断確定前でも緊急処置の可能性を考慮して対応することが推奨されています。

CTでわかること・内視鏡が後回しになる理由

CTでわかる代表的な所見

腹部CT検査では、以下のような状態を確認できます。

所見疑われる病態
腹腔内遊離ガス(free air)消化管穿孔(腸に穴が開いている)
腸管の拡張・液体貯留腸閉塞・イレウス
腸管壁の肥厚・造影不良腸管虚血(血流障害)
虫垂の腫大・周囲脂肪織濃度上昇急性虫垂炎
膵臓周囲の炎症所見急性膵炎

なお、2023年のJAMA Surgery掲載の研究(Shaish et al.)では、非造影CTは造影CTに比べて約30%診断精度が低いことが報告されています。造影剤の使用は腎機能やアレルギーの有無を考慮して判断されます。

急性腹症診療ガイドラインでは、超音波検査やCT検査が急性腹症のスクリーニングとして推奨されており、単純X線検査のみでは診断精度が十分でない場合が多いとされています。実際、複数の研究で腹部単純X線は急性腹痛の評価において感度・精度が低いことが示されています(Gans 2012、van Randen 2011)。

内視鏡が後回しになる理由

内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)は、消化管の内側(粘膜)を直接観察できる優れた検査ですが、以下のような状況では先にCTが行われることが一般的です。

  1. 穿孔が疑われるとき:内視鏡を入れると悪化させる可能性がある(ASGE、WSESガイドラインで禁忌と明記)
  2. 腸閉塞があるとき:前処置(下剤)ができない、検査が困難
  3. 全身状態が不安定なとき:検査に耐えられない可能性がある
  4. 腸管虚血が疑われるとき:早急な診断と治療方針決定が必要

特に、腸管壊死が疑われる場合は大腸内視鏡検査により穿孔のリスクが高まるため、CTで状態を確認してから検査の適否を判断することが推奨されています。

【ポイント】 CTと内視鏡は「どちらが優れている」というものではなく、症状や疑われる病態によって使い分けるものです。慢性的な症状や、がん検診目的の場合は内視鏡が第一選択となることが多いです。

受診の流れと持参すると役立つもの

一般的な受診の流れ

  1. 来院・受付:症状を伝え、問診票を記入
  2. 医師の診察:問診・身体診察で緊急度を評価
  3. 検査オーダー:必要に応じて血液検査、CT、超音波など
  4. 検査結果の説明:診断と治療方針の相談
  5. 治療・経過観察:状態に応じた対応

持参すると役立つもの

  • マイナンバーカード・健康保険証・お薬手帳
  • これまでの検査結果(健診結果、他院での検査など)
  • 症状の経過メモ:いつから、どんな症状があるか
  • アレルギー情報:造影剤や薬のアレルギー歴

まとめ:症状別の受診目安

この記事では、消化器内科で「内視鏡より先にCTを優先する」ケースについて解説しました。

受診目安の整理

症状の特徴推奨される対応
意識障害、呼吸困難、大量出血、激しい腹痛で動けない救急車(119番)
明らかな発熱+腹痛、嘔吐が続く、お腹が硬い当日受診を検討
持続する腹痛、食欲不振、便通異常が数日続く近日中の受診を検討
健診で異常を指摘された、慢性的な症状がある予約して内視鏡検査を検討

【最後に】 「この程度で受診していいのかな」と迷われる方も多いですが、症状が気になるときは早めに相談することで、重症化を防げることがあります。まずはお気軽にご連絡ください。

金沢・野々市・白山市エリアの方へ

当院では、症状に応じてCT検査や超音波検査を行い、必要な場合は内視鏡検査へとつなげる体制を整えています。両院とも女性医師による診療・内視鏡検査が可能ですので、女性の方もお気軽にご相談ください。
▶ [当院のCT検査の詳細はこちら]

腹痛でCTを撮る必要があるのはどんなとき?

突然の激しい腹痛、明らかな発熱を伴う腹痛、嘔吐を繰り返す、お腹が硬くなっているなどの症状があるときは、CTで緊急性の高い病態を確認することがあります。医師が診察のうえ判断します。

CTと内視鏡、どちらが先に必要かはどう決まる?

消化管穿孔や腸閉塞、腸管虚血など緊急性の高い病態が疑われる場合はCTが優先されます。慢性的な症状やがん検診目的の場合は内視鏡が第一選択となることが多いです。

CTで何がわかりますか?

腹腔内の遊離ガス(穿孔の所見)、腸閉塞、虫垂炎、膵炎、腸管虚血など、緊急性の高い病態を短時間で評価できます。内視鏡では見えない腸管の外側や周囲の状態も確認できます。

発熱と腹痛があるとき、すぐに病院に行くべき?

明らかな発熱と腹痛が同時にある場合は、当日中の受診を検討してください。特に痛みが強くなっている、食事がとれない場合は早めの相談をおすすめします。

CTを撮るのに予約は必要?

緊急性が高い場合は当日対応できることもありますが、状況によります。まずはお電話またはWeb予約でご相談ください。症状をお伝えいただければ、適切な対応をご案内いたします。

CT検査は痛いですか?体への負担は?

CT検査自体は痛みはありません。検査時間も数分程度です。造影剤を使用する場合は、アレルギーや腎機能を事前に確認します。被ばく量は検査の有益性と比較して判断されます。

女性医師に診てもらえますか?

金沢消化器内科・内視鏡クリニックでは、両院とも女性医師による診療・内視鏡検査が可能です。野々市中央院では女性医師による乳腺外科の診療も行っています。

参考文献

急性腹症診療ガイドライン2025 第2版
急性腹症診療ガイドライン2025 改訂出版委員会(編).医学書院,2025.DOI: 10.11477/9784260657730.

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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