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腹部CT検査|造影剤が必要なケース・不要なケースを解説

腹部CT検査|造影剤が必要なケース・不要なケースを解説

「腹部CTを受けることになったけれど、造影剤を使うと言われて少し不安…」「単純CTと造影CT、何が違うの?」——こうした疑問や心配を抱えている方は少なくありません。

CT検査は、お腹の中の臓器や血管の状態を詳しく調べるために広く行われている画像検査です。ただし、同じCT検査でも造影剤を使う場合と使わない場合があり、それぞれに適した病態や注意点が異なります。

この記事では、消化器内科の視点から「造影CTと単純CTの違い」「どんなときに造影が必要になるのか」「造影剤が使えないケース」などを、医学知識がなくてもわかりやすく解説します。検査を受ける前の不安を少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。

目次

単純CTと造影CTの基本的な違い

単純CTと造影CTの画像の違いを示す図解イラスト

CT(コンピュータ断層撮影)は、X線を使って体の断面を撮影する検査です。撮影した画像から、臓器の形や大きさ、異常の有無を確認することができます。

CT検査には大きく分けて単純CT造影CTの2種類があります。

単純CT(造影剤を使わないCT)とは、造影剤を使用せずにそのまま撮影する方法です。骨や空気、脂肪など、X線の透過しやすさが大きく異なる組織は、単純CTでも十分に区別できます。

造影CT(造影剤を使うCT)とは、静脈から造影剤(ヨード系造影剤)を注入してから撮影する方法です。造影剤が血管内や血流の豊富な組織に集まることで、臓器や病変がより鮮明に描出されます。

【重要】単純CTでは見分けにくい小さな病変や、正常組織と区別がつきにくい腫瘍なども、造影CTでは明瞭に描出されることがあります。

たとえば、肝臓にできた腫瘍は単純CTでは周囲の組織と同じような色(グレー)に見えることがありますが、造影剤を使うと腫瘍部分が白く際立って見えるようになります。これは、腫瘍に血流が多く集まる性質を利用した診断法です。

消化器内科で造影CTが必要になる主なケース

消化器内科の診療では、以下のような場面で造影CTが選択されることが一般的です。

腫瘍や腫瘤の評価

肝臓、膵臓、胆道系、消化管などに腫瘍が疑われる場合、造影CTは非常に有用です。とくに肝細胞がんでは、造影剤を注入してから時間を変えて複数回撮影する「ダイナミック造影CT」が行われることがあります。これにより、腫瘍特有の血流パターン(動脈相で濃く染まり、門脈相で周囲より暗くなる)を捉えることができます。

炎症の広がりを確認する場合

急性虫垂炎、憩室炎(けいしつえん:腸壁にできた袋状のくぼみに起こる炎症)、急性膵炎などでは、炎症がどの範囲まで広がっているかを確認するために造影CTが役立ちます。炎症を起こしている部位は血流が増えるため、造影剤でより鮮明に描出されます。

血管の評価

腹部大動脈瘤や腸管の血流障害(虚血)が疑われる場合には、血管の走行や狭窄・閉塞の有無を確認するために造影CTが必要になります。

よくある相談パターン(一般例)

  • 「健診で肝臓に影があると言われた」→ 精密検査として造影CTを検討
  • 「右下腹部が急に痛くなった」→ 虫垂炎などを疑い、造影CTで炎症の範囲を確認
  • 「膵臓の数値が高いと指摘された」→ 膵炎や膵腫瘍の評価に造影CTを実施

単純CTで十分に診断できるケース

造影剤を使わない単純CTでも、十分に診断できる病態は多くあります。

尿路結石の確認

尿管結石や腎結石は、カルシウムを多く含むためX線をよく吸収し、単純CTで白くはっきりと映ります。尿路結石が疑われる場合の初期評価では、単純CT(非造影CT)が標準的な検査として位置づけられています。

腸閉塞・イレウスの評価

腸管が詰まって拡張しているかどうか、ガスや液体の貯留の程度は、単純CTでも評価できます。緊急性の高い腸閉塞では、まず単純CTで全体像を把握し、必要に応じて造影を追加することもあります。

消化管穿孔(せんこう:腸に穴があくこと)の確認

胃や腸に穴があいて腹腔内にガスが漏れ出している状態(腹腔内遊離ガス)は、単純CTで明瞭に確認できます。CTは少量の遊離ガスにも高い感度を持っています。

出血の初期評価

腹腔内出血も、新鮮な血液は単純CTで白く(高吸収域として)描出されます。活動性の出血があるかどうかを確認する場合には、造影CT(CTA)で造影剤の血管外漏出を捉えることもあります。

【重要】単純CTで診断がつく場合には、造影剤を使う必要はありません。検査の目的に応じて、医師が最適な撮影方法を判断します。

造影剤を使えない・慎重になるケース

造影剤は安全性の高い薬剤ですが、すべての方に使用できるわけではありません。以下のような場合には、造影剤の使用を避けるか、慎重に判断する必要があります。

造影剤アレルギーの既往がある方

過去にヨード造影剤で蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下などのアレルギー反応を起こしたことがある方は、再度使用すると同様の反応が起こるリスクがあります。軽度の副作用であれば、ステロイドの前投薬などで対処できる場合もありますが、必ず事前に申告してください。

腎機能が低下している方

ヨード造影剤は腎臓から排泄されるため、腎機能が低下している方では造影剤関連急性腎障害(PC-AKI)のリスクが検討されます。日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会による『腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018』や、ACR(米国放射線学会)とNKF(全米腎臓財団)の合同声明では、eGFR(推算糸球体濾過量:腎臓の働きを示す指標)が低い方への造影剤使用について慎重な判断を求めています。

気管支喘息のある方

喘息のある方は、造影剤による過敏反応が出やすいとされています。現在喘息をお持ちの方や、過去に喘息の既往がある方は、必ず事前にお伝えください。

特定の糖尿病治療薬を服用中の方

ビグアナイド系糖尿病薬(メトホルミンなど)を服用している方は、造影剤との併用により乳酸アシドーシス(体内に乳酸がたまり重篤な状態になること)を起こすリスクがまれにあります。ただし、腎機能が正常であれば休薬が不要なケースも多く、一律に休薬が必要というわけではありません。服用中のお薬を必ず医師にお伝えいただき、個別に判断を受けてください。

妊娠中・授乳中の方

妊娠中の方へのヨード造影剤使用は、胎児への影響(胎盤通過や胎児甲状腺への配慮)を考慮して慎重に判断されます。必要性が上回る場合に使用されることがあります。授乳中の方は、造影剤投与後も授乳を継続できる場合が多いですが、心配な場合は24時間程度授乳を控えることも選択肢の一つです。

【重要】造影剤が使用できるかどうかは、検査前の問診と血液検査(腎機能など)をもとに医師が判断します。ご自身の体調や服薬状況を正確にお伝えください。

検査当日の流れと準備のポイント

CT検査を受ける際の一般的な流れと準備について説明します。

CT検査当日の流れを示すタイムラインイラスト

検査前の食事制限について

検査前の食事制限については、施設ごとの指示に従ってください。従来は「腹部CTや造影CTでは絶食」とされることが多かったのですが、近年のガイドライン(ACR Manual on Contrast Media 2024など)ではルーチンの絶食は推奨しないという見解も示されています。実際の準備は、検査を受ける医療機関の案内に沿って行うのが確実です。

検査当日の流れ(目安)

  1. 受付・問診:アレルギーの有無、服用中の薬、腎機能の検査結果などを確認
  2. 着替え:金属類(ベルト、アクセサリーなど)を外し、検査着に着替え
  3. 点滴確保(造影CTの場合):造影剤を注入するための点滴ルートを確保
  4. 撮影:CT装置の台に横になり、10〜15秒程度の息止めを数回行いながら撮影
  5. 検査終了・安静:造影CTの場合は、副作用確認のため少し待機してから帰宅

検査時間の目安

  • 単純CT:数分〜10分程度
  • 造影CT:前後の準備・待機を含めて数十分程度(施設やプロトコルにより異なります)

造影剤注入時の感覚

造影剤を注入すると、体が一時的に熱く感じることがあります。これは正常な反応で、数秒〜1分程度で消失しますので心配いりません。ただし、かゆみや息苦しさなど普段と違う症状を感じた場合は、すぐにスタッフにお知らせください。

検査後の注意点

造影剤は腎臓から尿として排泄されます。検査後は、可能であれば普段より多めに水分を摂取して、造影剤の排泄を促すとよいでしょう。ただし、心不全や腎不全などで水分制限がある方は、主治医の指示を優先してください。


症状が続くときは消化器内科へ相談を

CT検査は、お腹の症状の原因を調べるうえで非常に有用な検査です。単純CTと造影CTの違いや、どちらが必要かは、状や疑われる病気に応じて医師が判断します。

以下のような症状が続く場合は、早めに消化器内科への相談をご検討ください。

受診を検討したほうがよい症状

  • お腹の痛みが数日以上続く
  • 便に血が混じる、黒っぽい便が出る
  • 食欲がない、体重が減ってきた
  • 健診で肝臓や膵臓の異常を指摘された
  • お腹が張る、吐き気が続く

【重要】吐血、激しい腹痛、意識がぼんやりする、高熱を伴う腹痛などがある場合は、早急に医療機関を受診してください(必要に応じて救急対応も含む)。


まとめ

造影CTと単純CTは、それぞれに得意とする診断領域があります。

  • 造影CT:腫瘍の評価、炎症の広がり、血管の状態を詳しく見たいときに有効
  • 単純CT:結石、腸閉塞、穿孔(穴があく)、出血など、造影剤なしでも十分に診断できる病態がある
  • 造影剤が使えないケース:アレルギー歴、腎機能低下、喘息、特定の糖尿病薬服用中など

どちらの検査が適しているかは、症状や既往歴、血液検査の結果などを総合的に判断して医師が決定します。ご自身で「造影が必要かどうか」を判断する必要はありませんので、気になる症状があればまずは消化器内科にご相談ください。

造影CTと単純CTはどう違いますか?

単純CTは造影剤を使わずに撮影し、造影CTは静脈から造影剤を注入して撮影します。造影CTは血流の多い腫瘍や炎症をより鮮明に描出できますが、造影剤が不要な病態もあるため、医師が状態を見て判断します。

腹部CTで造影剤が必要になるのはどんなときですか?

肝臓や膵臓の腫瘍を詳しく評価したいとき、炎症の広がりを確認したいとき、血管の状態を調べたいときなどに造影CTが選択されることがあります。個々の症状や目的によって医師が判断します。

造影CTを受けられない人はいますか?

過去に造影剤でアレルギー反応を起こした方、腎機能が低下している方、喘息のある方、特定の糖尿病薬を服用中の方などは、造影剤の使用を避けるか慎重に判断する必要があります。事前に医師にご相談ください。

造影剤を注入すると体が熱くなるのはなぜですか?

造影剤が血管内に入ると、浸透圧の影響で血管が拡張し、一時的に体が熱く感じることがあります。これは正常な反応で、数秒〜1分程度で治まりますのでご安心ください。

CT検査の前は食事を抜く必要がありますか?

施設によって異なります。従来は絶食を指示されることが多かったですが、近年のガイドラインではルーチンの絶食を推奨しない見解もあります。検査を受ける医療機関の案内に従ってください。水やお茶は多くの場合飲んで問題ありません。

単純CTだけで診断がつくこともありますか?

はい、あります。尿路結石、腸閉塞、消化管穿孔、出血などは単純CTでも十分に診断できる場合があります。造影剤を使うかどうかは、検査の目的に応じて医師が判断します。

造影CTの副作用はどのくらいの頻度で起きますか?

現在主流の非イオン性低浸透圧造影剤では、軽い反応(熱感、吐き気など)は比較的まれ〜時にみられる程度で、重い反応(ショックなど)は非常にまれです。頻度は定義や集計方法によって差がありますが、万が一に備えて医療スタッフがすぐ対応できる体制を整えています。

造影CT後に気をつけることはありますか?

造影剤は腎臓から尿として排泄されます。可能であれば普段より多めに水分を摂取してください。心不全や腎不全で水分制限がある方は主治医の指示を優先してください。数時間〜数日後にかゆみや発疹などが出た場合は、検査を受けた医療機関にご連絡ください。

当院でのCT検査対応について

金沢・野々市・白山市エリアにお住まいの方で、お腹の症状が気になる場合は、当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)でもCT検査に対応しています。野々市中央院・金沢駅前院ともにCT装置を備えており、医師が症状を診察したうえで適切な検査方法を選択いたします。

▶ [当院のCT検査の詳細はこちら]

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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