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胃・大腸カメラ異常なしでも腹痛が治らない|CT検査で分かること

胃・大腸カメラ異常なしでも腹痛が治らない|CT検査で分かること

「胃カメラも大腸カメラも受けたのに『異常なし』と言われた。でも、お腹の痛みが続いている…」

このような経験をされている方は少なくありません。内視鏡検査で問題が見つからなかったのに症状が続くと、「見落としではないか」「何か重大な病気が隠れているのでは」と不安になるのは当然のことです。

この記事では、内視鏡検査で分かること・分からないこと、そしてCT検査で確認できる領域について、消化器専門医の視点から解説します。検査を組み合わせることで安心につながる場合がありますので、次のステップを考える参考にしていただければ幸いです。

【この記事で分かること】

  • 内視鏡検査の守備範囲と限界
  • CT検査で確認できる膵臓・胆道・腸の外側の病変
  • 画像検査で原因が見つからない場合に考えられること
  • 追加で行うことが多い検査の種類
  • 受診の目安と危険サイン
目次

内視鏡で「異常なし」でも腹痛が続く理由

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は、消化管の粘膜(内側の表面)を直接観察できる優れた検査です。胃潰瘍、胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなど、多くの消化管疾患を発見することができます。

しかし、内視鏡検査で「異常なし」と診断されても腹痛が続くケースは珍しくありません。日本消化器病学会のガイドラインでも、慢性的な腹部症状の原因として、内視鏡検査では見つけにくい病態が存在することが示されています。

よくある相談パターン

ケース1:上腹部の痛みが続く方 「胃カメラでは胃炎もなく、ピロリ菌もいないと言われました。でも食後にみぞおちが重くなる感じが取れません」

ケース2:下腹部の違和感がある方 「大腸カメラでポリープも炎症もないと言われました。でも便通のたびにお腹が張って痛みます」

ケース3:腹痛の場所が移動する方 「痛みが右のお腹から背中に抜ける感じがします。胃カメラでは分からなかった」

これらのケースでは、消化管の「外側」や「別の臓器」に原因がある可能性があります。


内視鏡検査で分かること・分からないこと

内視鏡検査の強みと限界を正しく理解することが、次の検査を考える上で大切です。

脳と腸のつながりを示す機能性疾患の概念図

内視鏡検査で分かること

  • 胃・十二指腸・大腸の粘膜の状態:炎症、潰瘍、ポリープ、がんなど
  • 出血の有無と部位:消化管出血の原因検索
  • 組織の採取(生検):がんの確定診断や炎症の原因特定

胃カメラでは食道から胃、十二指腸の入り口まで、大腸カメラでは肛門から盲腸(大腸の終点)までを観察できます。

内視鏡検査では分かりにくいこと

分かりにくい領域具体例
消化管の壁の「外側」腸管外の腫瘤、リンパ節腫大
膵臓膵炎、膵のう胞、膵臓がん
胆道系(胆のう・胆管)胆石、胆のう炎、胆管結石
小腸の大部分通常の内視鏡では到達困難
腹腔内の炎症・膿瘍虫垂炎の一部、憩室炎など

【重要】 通常の内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)は「消化管の内側を見る検査」です。消化管の壁を越えた部分や、膵臓・胆道といった別の臓器は、通常の内視鏡だけでは十分に評価できません。

※超音波内視鏡(EUS)など特殊な内視鏡検査では膵臓や胆道の評価が可能な場合がありますが、一般的な健診や初期検査で行われる胃カメラ・大腸カメラとは異なります。

このため、内視鏡検査で異常がなくても腹痛が続く場合は、画像検査(CT検査など)を組み合わせて評価することが、原因究明の次のステップとして一般的に行われています。

CT検査で確認できる領域(膵臓・胆道・腸の外)

CT検査(コンピュータ断層撮影)は、X線を使って体の断面画像を撮影する検査です。内視鏡検査とは異なり、消化管の壁の外側や周囲の臓器を広範囲に評価できます。

CT検査で確認できる腹部臓器の図解(膵臓・胆道・肝臓など)

CT検査で確認できる主な領域

1. 膵臓の病変

  • 急性膵炎・慢性膵炎の炎症所見
  • 膵のう胞(膵臓にできる袋状の病変)
  • 膵臓がんの疑い

膵臓は胃の裏側にある臓器で、胃カメラでは直接見ることができません。上腹部から背中に抜けるような痛みがある場合、膵臓の病気が隠れている可能性があり、CT検査が有用です。日本消化器病学会の慢性膵炎診療ガイドライン2021でも、CT検査は膵臓の形態評価に有用とされています。

2. 胆道系の病変

  • 胆石(胆のう結石・総胆管結石)
  • 胆のう炎・胆管炎
  • 胆道系の腫瘍

右上腹部の痛み、特に脂っこい食事の後に痛みが出る場合は、胆石症や胆のう炎の可能性があります。胆石症診療ガイドライン2021では、胆石の診断には超音波検査が第一選択とされていますが、CT検査は胆のうや胆管の状態、周囲への炎症の広がりを評価する際に補助的に用いられます。

3. 腸管の外側・腹腔内の病変

  • 虫垂炎(盲腸)の炎症の広がり
  • 大腸憩室炎(腸の壁にできたくぼみの炎症)
  • 腹腔内膿瘍(お腹の中の膿のたまり)
  • 腸閉塞(腸の詰まり)の原因検索

成人の虫垂炎診断では、CT検査は高い精度を持ち、しばしば第一選択として用いられます。

4. その他の臓器

  • 肝臓、脾臓、腎臓、副腎の病変
  • 大血管の異常(動脈瘤など)
  • リンパ節の腫大

【重要】 CT検査は「お腹全体を見渡す検査」として、内視鏡検査で分からなかった原因を探る上で重要な役割を果たします。ただし、CT検査にも得意・不得意があり、すべての病気がCTで分かるわけではありません。

画像で原因が見つからない場合:機能性疾患の可能性

内視鏡検査やCT検査を行っても、画像上は「異常なし」と判断されるケースがあります。これは検査が無意味だったわけではなく、「重大な器質的疾患(形のある病気)がないことを確認できた」という重要な情報です。

脳と腸のつながりを示す機能性疾患の概念図

機能性疾患とは

検査で形の異常が見つからないのに症状が続く場合、機能性消化管疾患の可能性があります。

機能性ディスペプシア(FD)

  • 胃カメラで異常がないのに、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みが続く
  • 調査方法や診断基準によって報告値に幅がありますが、胃もたれなどのディスペプシア症状を経験する人は健診受診者の数%〜10%台という報告があり、決して珍しい症状ではありません

過敏性腸症候群(IBS)

  • 大腸カメラで異常がないのに、腹痛と便通異常(下痢・便秘・交代)が続く
  • 機能性消化管疾患診療ガイドライン2020では、ストレスや脳腸相関(脳と腸の神経的なつながり)が病態に関与するとされています

機能性疾患の特徴

  • 画像検査や血液検査では「異常なし」と出ることが多い
  • ストレス、睡眠不足、食生活の乱れが症状に影響しやすい
  • 「気のせい」ではなく、実際に症状があり生活の質に影響する
  • 適切な治療により症状が改善する場合がある

【重要】 「検査で何も見つからなかった」=「病気ではない」ではありません。機能性疾患は画像では見えにくいものの、国際的な診断基準(Rome基準など)で定義された疾患概念です。症状が続く場合は、消化器内科の専門医に相談し、適切な診断と治療について話し合うことをお勧めします。

追加で行うことが多い検査(採血・エコーなど)

腹痛の検査フローチャート(血液検査・超音波検査・CT・内視鏡)

内視鏡検査で異常がなく、さらに詳しく調べる場合、CT検査以外にもいくつかの検査を組み合わせることがあります。

血液検査

  • 炎症反応(CRP、白血球数):体のどこかに炎症がないか確認
  • 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ):膵臓の炎症の有無を評価
  • 肝機能・胆道系酵素(AST、ALT、γ-GTP、ALP):肝臓・胆道の異常を確認
  • 腫瘍マーカー:がんの診断補助や経過観察の参考(※一般集団のスクリーニングには限界があり、あくまで参考所見として扱われます)

血液検査は、症状の原因を絞り込むための基本的な検査です。

腹部超音波検査(エコー)

  • 胆のう・胆管の観察(胆石の発見に優れる)
  • 肝臓の状態確認
  • 膵臓の一部の観察
  • 放射線被ばくがなく、繰り返し検査可能

特に胆石が疑われる場合、超音波検査は第一選択の検査とされています(胆石症診療ガイドライン2021)。

その他の検査

  • 便検査:感染性腸炎や炎症性腸疾患のスクリーニング
  • 尿検査:尿路系の異常確認
  • フィブロスキャン:肝臓の硬さを測定(慢性肝疾患の評価)

受診の目安と当院での検査の流れ

早めの受診をお勧めする「危険サイン」

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

【緊急性が高い症状】

  • 激しい腹痛、痛みがどんどん強くなる
  • 発熱(38度以上)を伴う腹痛
  • 吐血、黒色便(タール便)、血便
  • 嘔吐が止まらない、便やガスが全く出ない
  • 顔色が悪い、冷や汗、意識がもうろうとする

これらの症状がある場合は、救急対応が可能な医療機関への受診を検討してください。

受診を検討いただきたい方

  • 内視鏡検査で「異常なし」と言われたが、腹痛が2週間以上続いている
  • 食事のたびにお腹の調子が悪くなる
  • 体重が減ってきた、食欲がない
  • 便通の異常(下痢・便秘)が続いている
  • 原因が分からず不安が続いている

検査の流れ(一般的な例)

  1. 問診・診察:症状の内容、いつから続いているか、これまでの検査歴などを確認
  2. 必要な検査の提案:血液検査、超音波検査、CT検査、内視鏡検査など、症状に応じて組み合わせを検討
  3. 検査の実施:同日または後日予約にて実施
  4. 結果説明と今後の方針:検査結果に基づき、治療や経過観察について相談

まとめ

胃カメラ・大腸カメラで「異常なし」と言われても腹痛が続く場合、内視鏡検査だけでは見えない領域に原因がある可能性があります。

  • CT検査は、膵臓・胆道・腸の外側など、内視鏡では評価できない領域を確認できます
  • 血液検査や超音波検査を組み合わせることで、より詳しい原因検索が可能です
  • 検査で形の異常が見つからない場合、機能性疾患の可能性もあり、適切な診断と治療により症状が改善することがあります

「検査を受けても原因が分からない」という状態が続くと不安になりますが、検査を重ねることで「除外できた病気」が増え、原因の絞り込みにつながります。症状が続く場合は、消化器内科の専門医に相談し、次のステップについて一緒に考えていくことをお勧めします。

胃カメラで異常なしでも胃がんの可能性はありますか?

胃カメラは胃がんの発見に優れた検査ですが、ごく早期のがんや特殊な形態のがんは見つけにくい場合があります。症状が続く場合は、一定期間後の再検査や他の検査を検討することがあります。自己判断せず、医師に相談してください。

大腸カメラで異常なしでも腸の病気が隠れていることはありますか?

大腸カメラでは大腸の粘膜を観察しますが、小腸の大部分や腸の壁の外側は見えません。また、炎症性腸疾患の一部は早期には異常が見つかりにくいことがあります。症状が続く場合は追加検査を検討します。

CT検査を受ければ腹痛の原因は必ず分かりますか?

CT検査で多くの器質的疾患を発見できますが、すべての原因が分かるわけではありません。機能性疾患のように画像では見えない病態もあります。「異常なし」は重大な病気がないことを確認できた重要な情報です。

機能性ディスペプシア(FD)とは何ですか?

胃カメラで異常がないのに、胃もたれや早期満腹感、みぞおちの痛みが続く状態です。このような症状を経験する方は少なくなく、適切な治療により症状が改善する場合があります。

過敏性腸症候群(IBS)かどうかはどうやって分かりますか?

IBSは、大腸カメラなどで他の病気を除外した上で、腹痛と便通異常のパターンから診断されます。ストレスや食事が症状に影響しやすいのが特徴です。専門医の診察を受けることをお勧めします。

内視鏡検査とCT検査、どちらを先に受けるべきですか?

症状の内容によって異なります。消化管の粘膜の異常が疑われる場合は内視鏡、膵臓・胆道や腸の外側の病変が疑われる場合はCTが優先されることがあります。医師の判断に基づいて検査順序を決めます。

腹痛が続いていますが、どのような症状があれば早めに受診すべきですか?

激しい痛み、発熱を伴う痛み、吐血・血便、嘔吐が止まらない、便やガスが出ない、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は早急に受診してください。それ以外でも2週間以上続く腹痛は医師への相談をお勧めします。

金沢・野々市エリアで内視鏡とCTの両方を受けられる医療機関はありますか?

金沢消化器内科・内視鏡クリニックでは、野々市中央院・金沢駅前院ともに内視鏡検査とCT検査に対応しています。症状に応じて検査を組み合わせた総合的な評価が可能です。

金沢・野々市・白山市エリアで腹痛にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)では、内視鏡検査とCT検査を同じ施設で受けることができ、総合的な評価が可能です

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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