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CPAPが辛い・続かない方へ|楽に続けるための5つの調整法

目次

「もう続けられない」は珍しい悩みではない

朝起きると顔にマスクの跡がくっきり。喉はカラカラ。夜中に圧迫感で目が覚めて、気づけばマスクを外してしまっていた――。

CPAP(シーパップ)を使い始めた方から寄せられる相談は、だいたいこのあたりに集中します。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療として効果が広く認められている機器ですが、毎晩つけて眠るとなると、小さな不快感がじわじわ効いてきます。「自分には合わないのかもしれない」と感じるのも無理はありません。

ただ、この壁にぶつかっているのは自分だけではないということは知っておいてほしいところです。CPAPのアドヒアランス(治療をきちんと続けられているかの指標)は世界中の研究で繰り返し課題に挙げられていて、十分な時間使えていない方が一定数いるのはどの調査を見ても共通しています。

そして、調整ひとつで不快感がぐっと減るケースも少なくありません。この記事では、現場でよく聞く5つの悩みと、それぞれの対処法を整理しました。

悩みの多くは「リーク」でつながっている

CPAP治療の継続(アドヒアランス)を表す概念図

CPAPの不快感は大きく5つ。マスクの跡が残る、鼻や頬が痛い、口が乾く、喉がイガイガする、そして息苦しい。

このうち最初の3つは、じつは「リーク(空気漏れ)」という共通の原因を抱えています。マスクと顔のすき間から空気が漏れる。乾燥するし音もうるさい。だからストラップをぎゅっと締める。すると今度は跡がつくし、鼻の頭が痛くなる。よくある悪循環です。

ここがやっかいなのですが、裏を返せば、リーク対策さえうまくいけば乾燥・跡・痛みがまとめて軽くなる可能性があるということでもあります。

よくある5つの悩みと原因

CPAPでよくある5つの悩み(マスク跡・鼻の痛み・口の乾燥・喉の痛み・圧迫感)を示すアイコン図解

CPAPの不快感には、大きく分けて5つのパターンがあります。それぞれ原因が異なるため、対処法も変わってきます。

悩み主な原因
①マスクの跡が残るストラップの締めすぎ、マスクサイズの不一致
②鼻の頭・頬が痛いマスクの圧迫、素材との相性
③口が乾燥する口呼吸による空気漏れ、加湿不足
④喉がイガイガする加湿設定が低い、室内の乾燥
⑤圧迫感・息苦しさ圧力設定が体感に合っていない、慣れの問題

解消法① マスクの跡が残る → ストラップをゆるめる

マスク跡の原因は、ほとんどの場合ストラップの締めすぎです。漏れが怖くてつい力を入れたくなる気持ちは分かりますが、締めすぎるとクッション部分がつぶれて、かえってフィットしなくなります。

やってみてほしいのは、仰向けの状態でマスクをつけて、ストラップの下に指が1本入るくらいまでゆるめること。そこから空気を流して、漏れが最小限になるポイントを探ります。寝返りで大きくずれなければ十分。「こんなにゆるくて大丈夫?」と最初は不安になりますが、一晩試してみると、翌朝の顔の跡がだいぶ違うはずです。

ちなみに、マスク跡・鼻の痛み・口の乾燥の3つは「リーク(空気漏れ)」という共通の原因でつながっています。ストラップを強く締める → クッションがつぶれて隙間ができる → そこから空気が漏れる → 乾燥する → もっと締める、という悪循環。ストラップをゆるめるだけで3つまとめて軽くなることもあるので、まずはここから手をつけてみてください。

解消法② 鼻や頬が痛い → マスクの種類を変える

ストラップを調整しても鼻の頭が赤くなる、頬に圧迫跡が消えないという場合は、マスク自体が顔の形に合っていない可能性が高いです。

CPAPのマスクには大きく3タイプあります。鼻だけ覆うネーザルマスク、鼻の穴に直接あてる鼻ピローマスク、鼻と口の両方を覆うフルフェイスマスク。最初に処方されたものがベストとは限りません。

なかでも、鼻の頭の痛みに悩んでいる方は鼻ピロータイプへの変更で一気に解決することがあります。顔に触れる面積が小さいので、圧迫そのものが減る。跡も残りにくい。シリコン製のマスクパッドやジェルクッションを今のマスクに追加する方法もありますが、根本的に形が合っていないなら、タイプごと替えたほうが早いです。

「なんとなく合わない気がする」くらいの相談で構いません。医療機関では別のタイプを試させてもらえることがほとんどなので、痛みを我慢して使い続けるより、早めに声をかけてみてください。

解消法③ 口が乾く → 口呼吸対策をする

「朝起きると口の中がカピカピで、水を飲まないと声が出ない」。この悩み、かなり多いです。

原因はたいてい、寝ている間に口が開いて空気が抜けていること。鼻マスクを使っている場合、口から空気が漏れると加湿された空気が口を素通りしてしまうので、喉も口も一気に乾きます。

対策はいくつかあります。まずはチンストラップ(顎を支えるバンド)。口が開かないよう物理的に押さえるもので、鼻マスクとの組み合わせでよく使われます。それでもだめなら、フルフェイスマスクへの切り替え。鼻と口を両方覆うので、口が開いても空気が外に逃げません。

そもそも鼻がつまっているから口で呼吸してしまう、というケースも多い。花粉症やアレルギー性鼻炎を放置したまま鼻マスクで頑張っても苦しいだけなので、鼻づまりが慢性的にある方は、そちらの治療を先に医師へ相談したほうがいいかもしれません。

調整法④ 喉がイガイガする → 加湿設定を上げる

口の乾燥とセットで語られがちですが、「口はそこまでじゃないのに喉だけ痛い」というパターンもあります。この場合、加湿器の設定が追いついていない可能性が高いです。

CPAP機器にはたいてい加湿機能が内蔵されています。送り込む空気に水分を加えて喉や鼻の粘膜を守る仕組みですが、初期設定のまま使っている方が意外と多い。特に冬場や暖房を使う時期は室内の湿度自体が下がるので、加湿レベルを1段階か2段階上げるだけで朝の喉の不快感がだいぶ変わることがあります。

加温チューブ(ヒーテッドチューブ)付きの機種を使っている方は、チューブ内の結露にも注意してください。加湿を上げすぎるとチューブの中に水滴がたまって、顔に水が飛んでくることがあります。加温チューブの温度設定を少し上げると結露を抑えられます。

水タンクの水は衛生面から毎日入れ替えが基本。タンクやチューブの洗浄もこまめに。マスクのクッションやフィルターも消耗品なので、へたってきたら交換を。クッションは数週間〜数か月、チューブは3か月前後が一般的な交換目安ですが、漏れが増えたり肌が荒れたりしたら時期を待たず替えて構いません。

解消法⑤ 息苦しい・圧迫感がある → ランプ機能を使う

CPAPのスイッチを入れた瞬間の「うっ」とくる風圧。あれが苦手で眠れないという方は少なくありません。

頼りになるのがランプ機能です。使い始めは弱い圧力からスタートして、15〜30分ほどかけて処方圧までじわじわ上げていく仕組みで、たいていの機種に入っています。眠りに落ちるころには体が慣れているので、圧迫感をあまり意識せずに済む。寝つきが悪い方はランプ時間を長めに設定するなど、自分の入眠ペースに合わせて調整してみてください。

「吸うのは平気だけど吐くときがつらい」という場合は、呼気圧リリーフ機能も確認を。メーカーごとにEPR、Flex、A-Flexなど名前が違いますが、息を吐くタイミングだけ圧を下げてくれる機能です。対応している機種かどうか、次の受診で聞いてみてください。

ひとつだけ注意点。圧力の数値そのものを自分でいじるのはやめてください。無呼吸の重症度に応じて処方された値なので、変更は必ず担当医に相談を。ランプ機能や呼気圧リリーフは「処方圧を変えずに体感を楽にする」工夫なので、こちらは安心して試せます。

それでも改善しないときは

ここまでの5つを試しても変わらない場合や、マスクで肌がただれている、使用中に胸が痛い、日中の眠気が一向に取れないといった場合は、早めに医療機関を受診してください。

「もうやめたい」と思ったときこそ、中断する前に一度だけ相談してみてほしいのです。マスクを替える、圧力を再調整する、使い方のちょっとしたコツを教えてもらう――まだ試していない手が残っているかもしれません。

CPAPをやめるとどうなるか。日中の眠気や集中力の低下が戻ってくる可能性がありますし、長期的には高血圧や心疾患のリスクが高まるという報告もあります。ただ、だからといって「つらくても我慢しなさい」という話ではありません。「しんどい」と正直に伝えれば、医療スタッフも一緒に対策を考えてくれます。遠慮はいりません。

まとめ

CCPAPは慣れるまで時間がかかる治療です。でも、不快感の正体がわかれば対処のしようがある。ストラップをゆるめる、マスクを替える、口呼吸を防ぐ、加湿を上げる、ランプ機能を使う。5つの悩みにはそれぞれ5つの入口があります。

何を試してもだめなら、我慢せず医療機関へ。CPAPは一度決まったら終わりの治療ではなく、使いながら自分に合う形を探っていくものです。やめてしまう前に、できることはまだあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、いびきや日中の眠気だけでなく、
高血圧・心疾患・脳卒中など深刻な合併症につながることがあります。

「自分も当てはまるかも」と感じた方は、
まずはSAS総合ページで検査の流れ・費用・治療法をまとめてご確認ください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)総合ページを見る
CPAPのマスク跡を目立たなくする方法はありますか?

ストラップを締めすぎないことが基本です。仰向けでフィッティングし、指1本入る程度のゆるさに調整してください。鼻ピロータイプのマスクは顔への接触面が少なく、跡が残りにくい傾向があります。

朝起きると喉がカラカラになるのはなぜですか?

加湿が不足しているか、口呼吸で空気が漏れている可能性があります。加湿器の設定を上げる、チンストラップを使う、フルフェイスマスクに変更するなどの対策が考えられます。

CPAPの圧力が強くて眠れません。自分で下げてもいいですか?

圧力設定は無呼吸の重症度に応じて処方されているため、自己判断での変更は避けてください。ランプ機能で開始時の圧力を下げる方法や、呼気圧リリーフ機能の活用について医師に相談することをおすすめします。

CPAPを使っても日中の眠気が取れません。

マスクの装着時間が短い、リークが多いなどの理由で治療効果が十分でない可能性があります。機器のデータを医療機関で確認してもらうことで、原因を特定しやすくなります。

CPAPのマスクやチューブはどのくらいで交換すべきですか?

交換目安はメーカーや保険制度によって幅があります。マスククッションは数週間〜数か月、チューブは約3か月程度が目安とされることが多いですが、漏れや劣化、皮膚トラブルがあれば早めの交換が推奨されます。具体的な時期は医療機関やメーカーの案内を確認してください。

CPAPをやめたらどうなりますか?

治療を中断すると、日中の眠気や集中力低下が再発する可能性があります。長期的には高血圧や心臓病のリスクが高まるとする研究報告もあるため、中断を検討する前に医師に相談することをおすすめします。

CPAPに慣れるまでどのくらいかかりますか?

個人差がありますが、1〜2週間で慣れる方もいれば、数ヶ月かかる方もいます。最初から長時間使おうとせず、昼間に短時間装着して練習する方法も有効です。

参考文献

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この記事を監修した医療機関

この記事は、睡眠時無呼吸症候群に関する正しい知識を広くお届けすることを目的として作成しています。
記事の内容についてご不明な点や、ご自身の症状についてご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

金沢消化器内科・内視鏡クリニック(野々市中央院・金沢駅前院)

消化器内視鏡専門医が、消化器と睡眠を同時に診る新しい内科診療に取り組んでいます。 「薬を飲んでも治らない胸やけ」「改善しない脂肪肝」「鎮静下内視鏡の不安」—— こうしたお悩みの背景に睡眠時無呼吸症候群が関わっていないか、あわせて評価・治療いたします。

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お電話でのご予約・ご相談 野々市中央院:076-259-0378 / 金沢駅前院:076-210-7140

この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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