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水っぽい下痢と腹痛の有無から判断する大腸疾患の可能性

水っぽい下痢と腹痛の有無から判断する大腸疾患の可能性

水っぽい下痢が続いている場合や、腹痛を伴わないまま下痢がおさまらないとき、大腸のトラブルが潜んでいるかもしれません。

大腸の不調は原因によって対策が異なり、対応が遅れるとより深刻な病気に発展する例もあります。

症状に不安を感じた段階で、早めに原因を探り、必要に応じて内視鏡検査や大腸カメラ検査などを検討することが重要です。

目次

下痢が水っぽいときに考えられる原因

水っぽい下痢に悩む方は多く、その背後にある原因は多岐にわたり、食生活の乱れや細菌・ウイルスなどの感染症だけでなく、大腸に起因する病気が潜んでいることもあります。

食あたりだと思って放置すると、見えないところで症状が進行する恐れがあるため十分に注意しましょう。

感染症による急性の下痢の可能性

突然の水っぽい下痢で、多くの場合に見受けられるのが感染症で、ノロウイルスやロタウイルス、細菌性の腸炎などでは激しい下痢が起こりやすい傾向があります。

発熱や嘔吐を伴うケースもあるため、「下痢 水っぽい」という症状が続く場合は、医療機関を早めに受診して原因を調べることが必要です。

過敏性腸症候群の可能性

過敏性腸症候群(IBS)はストレスや生活習慣の乱れなどが引き金になり、水っぽい便が続くことがあります。腹痛が強く出るタイプと、下痢だけが続くタイプに分かれるため、腹痛の有無で自分の症状を把握すると診断の助けになるでしょう。

消化管の炎症や病変

大腸炎や潰瘍などの炎症性腸疾患があると、水分の吸収がうまくいかず水っぽい下痢となることがあります。

慢性的に続くようなら、疾患の進行を疑って専門的な検査が必要で、潰瘍性大腸炎やクローン病のように、炎症が大腸内に広がっている場合には精密な検査による評価が大切です。

水っぽい下痢に影響を与える主な要因と症状の特徴

要因主な症状と特徴
細菌・ウイルス感染嘔吐や発熱を伴うことが多く、急な発症がみられる
過敏性腸症候群ストレスや食生活の乱れなどで悪化しやすく、腹痛の有無は個人差がある
炎症性腸疾患血便や長期にわたる下痢がみられ、慢性化すると症状が増悪する場合がある
食生活の偏り高脂質や刺激物の摂取過多で腸への負担が増し、水分吸収がうまくいかなくなる

腹痛の有無が大腸のトラブルを見極めるカギ

腹痛があるかないかは、大腸の不調を見分けるうえで重要な手がかりです。

強い腹痛が続く場合は腸管の炎症や病変が進んでいる可能性が高い一方、腹痛がなくても油断は禁物で、痛みを感じにくい形で炎症や病気が進行しているケースもあります。

腹痛が激しい場合に疑うべき病気

強い腹痛を伴う場合は、急性の感染性腸炎や、大腸憩室炎、潰瘍性大腸炎などを疑うことが多いです。さらに出血を伴う場合、緊急性が高まる可能性もあります。

腹痛がない水っぽい下痢の盲点

一方で「下痢 お腹 痛くない」という症状からも、大腸や小腸での吸収障害や慢性炎症を想定できますが、腹痛がないからといって軽視していると、病気の発見が遅れる懸念があるので注意が必要です。

食事や運動習慣の乱れの関与

食生活の乱れによる腸内環境の悪化や、日常生活における運動不足などでも、腹痛の有無に関係なく大腸は影響を受け、大腸の蠕動運動が乱れると、水分吸収や便の形成に支障が出やすくなります。

腹痛の有無をもとにした大腸疾患の目安

病名腹痛の特徴下痢の性状
急性感染性腸炎突然の強い腹痛が起こりやすい水っぽく悪臭を伴うことが多い
潰瘍性大腸炎持続的な腹痛とともに血便を伴うことも粘液が混じる場合もある
過敏性腸症候群(下痢型)ストレスで腹痛が強くなる場合がある水様性の便が続く
腹痛が伴わない吸収障害など腹痛がほとんど感じられない場合もある便が水分を多く含む
  • 腹痛と下痢のセットは急性疾患や重症化のサインである可能性がある
  • 腹痛を感じない場合にも慢性疾患が潜んでいることがある
  • 水分補給や食生活の見直しでは改善しにくい下痢は早期受診が大切

腹痛なしの水っぽい下痢と大腸疾患の関連

下痢が水っぽい状態にもかかわらず腹痛がない場合、大腸疾患を含めたさまざまな要因が関与している可能性があります。

この段階で大腸の検査を考えるのは早いと思う方もいるでしょうが、無症状や軽症のうちに病気の芽を摘むことが健康維持には大切です。

無症状で進行しやすい大腸ポリープ

大腸ポリープは、自覚症状がないまま成長し、ポリープのサイズが大きくなると出血などの症状が出ます。初期段階では腹痛がほとんどなく、水っぽい下痢も時々起こるだけなので見逃されやすいです。

一過性の下痢なのか慢性的なものか

「下痢 腹痛 なし」の状態が続いていても、たまたま食生活が乱れた日だけ一時的に起こる下痢もありますが、何度も繰り返すようなら大腸を中心とした精密検査が必要です。特に1週間以上続く場合は医療機関への相談を検討してください。

検査を先延ばしにするリスク

腹痛がない場合は切実感に欠けるため、受診を後回しにする方が多いです。

大腸カメラや内視鏡検査を行えば、腸の内部を詳細に確認でき、問題がある場合は早い段階で対処できるので、検査のハードルを下げて、自分の腸の状態を知ることが病気の予防に役立ちます。

腹痛なしでも疑われる大腸のトラブル

症状・病名特徴
大腸ポリープ痛みや下痢などの症状が出にくく、発見が遅れる可能性がある
虫垂炎(慢性)急性ほど激しい痛みは伴わないが、軽い下痢が続く例がある
潰瘍性大腸炎の軽症期腹痛がほとんど出ず、粘液便や軽い下痢だけが続くことがある
大腸がんの初期段階下痢・便秘の繰り返しや血便などがわずかにみられるが、痛みは軽度

自己判断が危険な理由

水っぽい下痢を放置してしまうと、大きな病気を見落とす原因になりかねません。インターネット情報や市販薬だけで対処する方もいますが、症状が改善しない場合や繰り返すケースでは、やはり医師の診断が必要です。

下痢止めの自己使用の落とし穴

下痢止め薬は確かに一時的に症状を抑える効果があるものの、原因が大腸にある場合は根本的な解決にはならず、病気の発見を遅らせる原因になり得ます。

病院に行くタイミングを逃すときのリスク

急性の感染症であれば、多くは数日~1週間程度で改善しやすいですが、長期にわたる水っぽい下痢は別の原因を考えたほうがいいでしょう。自己判断で様子を見続けると、慢性化や重症化リスクが高まります。

適切な検査を行う意義

内視鏡検査や大腸カメラを行うことで、潰瘍や炎症、ポリープや腫瘍など目に見える形で腸内の状態を把握し、さらに組織を一部採取して調べることで、病変があるかどうかを確定的に診断し、必要な治療へと移行できます。

自己判断と医療機関の対応の違い

比較項目自己判断医療機関での診察・検査
原因の特定症状やネット情報を参考に推測血液検査・便検査・内視鏡検査で詳細を調べられる
対応策の選択市販薬やサプリを試す検査結果に基づいた専門的な治療や処方
リスク管理見落としや誤った対策の可能性再発リスク・合併症の有無を踏まえた包括的アプローチ
治療の速さ病気を見逃すと治療開始が遅くなる早期発見・早期治療につながりやすい
  • 下痢が長引く場合、思い込みで対処するのは避けて医師に相談したほうがいい
  • 大腸カメラや内視鏡検査を行えば目視で腸を確認できる
  • 問題が大きくなる前に原因を特定すれば体への負担も軽減できる

大腸カメラや内視鏡検査で何がわかるのか

大腸カメラや内視鏡検査を利用すると大腸の粘膜や形状を詳細に観察でき、水っぽい下痢や腹痛があるときだけでなく、腹痛がなくても「下痢 腹痛 なし」といった形で不調が続く際に受けるメリットは大きいです。

ポリープや炎症、腫瘍の有無などを直接確認できるため、原因を特定しやすくなります。

カメラで直接腸内を観察する利点

大腸カメラはカメラのついた細長い管を肛門から挿入し、大腸内部を観察する検査で、視覚的に状態を把握できるため、レントゲンやCTでは見つけにくいような小さな病変にも気づきやすいです。

病理検査との併用でさらに正確な診断

内視鏡検査の際、疑わしい部分があれば一部の組織を採取して病理検査を行え、組織を顕微鏡で観察することで、炎症性腸疾患や大腸がんなどをより精密に診断可能です。

無症状のうちに受ける意義

強い症状が出てから検査する方が多いですが、自覚症状があまりない段階で定期的に大腸カメラを受けると、早い段階で病変を発見できます。

大腸ポリープや早期がんは無症状であることが多く、健康診断などでのスクリーニングを併用すると発見率が高まります。

大腸カメラや内視鏡検査で確認できる主な項目

確認項目特徴
粘膜の炎症の有無大腸炎・潰瘍の存在や炎症の程度を詳しく評価できる
ポリープや腫瘍の発見早期がんや良性ポリープを発見し、その場で切除もできる場合がある
出血やびらん粘膜のただれや出血箇所を直接確認して治療方針を立てられる
大腸の形状や動きヘルニアや狭窄など、腸の形状異常も視覚的に把握しやすい

胃カメラも検討するべき理由

大腸の症状だと感じていても、実は胃や十二指腸など上部消化管の不調が影響している可能性があります。

胃カメラは食道や胃、十二指腸の状態を直接観察する検査で、吐き気やもたれだけでなく慢性的な下痢との関連を調べる手段としても有用です。

胃や十二指腸のトラブルと下痢の関係

胃酸の過剰分泌やピロリ菌感染があると、消化全体のバランスが乱れて腸に負担をかけ、胃や十二指腸の炎症が進んでいると、食物の消化が不十分になり、水分吸収にも影響が及ぶかもしれません。

上部消化管の炎症が原因の場合

腹痛がないのに下痢が続いているケースでは、上部消化管の軽い炎症が原因のこともあり、慢性的な胃炎や逆流性食道炎があると、食事の仕方が変わってしまい、腸への影響が発生しやすいです。

胃カメラとの同日検査のメリット

大腸カメラと胃カメラを同日に行う医療機関も少なくありません。1度の来院で上下両方の消化管をチェックできると、検査の準備や負担が軽減され、総合的に消化管の問題を確認しやすくなります。

胃のトラブルから下痢に影響が及ぶ例

原因下痢への影響
胃酸の過剰分泌腸への刺激が強まり、消化不良を起こしやすくなる
ピロリ菌感染による慢性胃炎食物の消化が乱れ、大腸への負担が増加する
消化性潰瘍(十二指腸潰瘍など)栄養吸収が不十分になり便が水っぽくなる場合がある
逆流性食道炎食後の姿勢や食習慣が変化して腸内環境に影響する
  • 慢性的な下痢が続くときは大腸だけでなく胃もチェックすると原因が判明しやすい
  • 消化管は連動するため、1つの部位の不調が別の部位へ波及することがある
  • 同時検査を行うと効率的に原因を特定しやすい

症状の対処法と生活習慣の見直し

水っぽい下痢が長引くときは、医療機関での受診が大切ですが、生活習慣の見直しも同時に行うと回復や再発防止に役立ちます。腸内環境を整える食事や適度な運動など、日常のケアで改善するケースも少なくありません。

水分補給と食事内容の工夫

脱水を防ぐために水分摂取は欠かせませんが、冷たい飲み物ばかり飲むと腸を刺激して下痢が続くこともあるので、常温や温かいスープなどでやさしく水分補給を行います。

食事では、高脂質・高刺激のものを避け、消化にやさしい食材を中心に選ぶと腸に負担をかけにくいです。

下痢時に試したい食事

食材特徴
白身魚やささみなどの低脂質たんぱく質消化しやすく、胃腸への負担が少ない
おかゆやうどん炭水化物でエネルギー補給ができ、胃腸への刺激が少ない
発酵食品(ヨーグルト・味噌など)腸内環境を整える働きが期待できる
野菜スープビタミンやミネラルを補給しやすく、水分補給にもなる

ストレス対策と腸内環境のバランス

ストレスは自律神経の乱れを誘発し、大腸の蠕動運動に影響を与え過敏性腸症候群の原因にもなりやすいため、十分な睡眠や趣味の時間を取り入れて、ストレスを緩和すると良いでしょう。

乳酸菌やビフィズス菌を含む食品、または整腸剤などを活用するのも1つの方法です。

  • 十分な睡眠時間を確保して、自律神経のバランスを整える
  • 軽い運動やストレッチで腸の動きを促進する
  • 定期的な休息やリフレッシュ時間をとってストレスを管理する

自宅での対処と受診のタイミング

市販薬で下痢を抑えることも可能ですが、長期化するときや血便が見られる場合は医師の診断が必要です。「下痢 お腹 痛くない」というケースでも慢性化のリスクを考慮して、1週間以上続くならば専門機関の受診をおすすめします。

日常生活で心がけたい習慣

項目具体的な実践例
食事のバランス高脂質や刺激物を控え、野菜や果物をバランスよく取り入れる
水分の取り方こまめに常温水やお茶などで補給し、冷えを防ぐ
運動ウォーキングや軽い筋トレなどを継続して腸の動きを活性化
ストレスケア十分な休養や深呼吸、趣味の時間確保で精神的な負担を減らす

よくある質問

大腸の不調にまつわる疑問は多岐にわたり、水っぽい下痢が続いている方や、腹痛がないのに便通が乱れて困っている方などが抱えやすい質問を整理しました。症状との付き合い方や検査を受けるタイミングの参考にしていただければ幸いです。

水っぽい下痢が1週間以上続く場合は大腸カメラを受けたほうがいいですか?

1週間以上下痢が続くときは、大腸が原因の可能性を否定できません。特に食事や生活習慣を見直しても改善しないときは、医療機関での検査が有用です。

大腸カメラなら、腸内を直接確認して炎症やポリープなどの有無を的確に調べられます。

下痢がお腹が痛くない状態でも消化器内科に行くべきでしょうか?

腹痛を感じない下痢は軽視しがちですが、原因が大腸や小腸などに存在する可能性は十分にあります。

食事の改善や水分補給でよくならない、あるいは下痢と便秘を繰り返すといった状況になれば、早めに消化器内科を受診して原因を突き止めることを推奨します。

大腸の検査は痛いイメージがありますが、負担を減らす方法はありますか?

大腸カメラ検査は準備や検査手技に負担を感じる方がいますが、医療機関によっては鎮静剤を使ってリラックスした状態で受けられることがあります。事前に検査方法や鎮静について相談すると不安を軽減できるでしょう。

胃カメラも一緒に受けたほうがいいのはどのような場合ですか?

上腹部の不快感や吐き気、胃の痛みを感じる場合だけでなく、特に症状がなくても定期的に胃カメラを受けるメリットはあります。大腸と同様、胃や十二指腸の病変も早期発見が大切です。

同日に実施できる施設もあるため、時間や身体への負担を考慮して検討するといいでしょう。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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