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大腸検査 麻酔で負担を軽減

大腸検査 麻酔で負担を軽減

大腸検査に麻酔を併用すると、「痛みを強く感じないか」「本当に安全なのか」などの不安を抱く方が少なくありません。

実際には、鎮静剤を使用することで身体的・精神的な苦痛を大幅にやわらげられ、検査時間を短縮できるケースも多いです。

ここでは、麻酔を使用した大腸検査の流れやメリット・デメリット、検査当日の注意点などを詳しく紹介します。

目次

麻酔の基本的な考え方

大腸カメラや胃カメラで麻酔を使うかどうかは人によって異なり、痛みや恐怖を大きく感じる方には鎮静剤を併用し、検査時の負担を軽減することが多いです。

麻酔を使う目的

麻酔(鎮静剤)を併用すると、内視鏡を挿入する際の不快感や痛みを軽くし、不安を和らげます。腹部にガスを入れたり腸を曲げたりする過程で痛みを感じる方が多いので、心身の緊張を和らげるための手段として鎮静剤が有用です。

大腸検査と鎮静剤の仕組み

静脈に注射する麻酔薬を使うケースが一般的で、投与量は医師や看護師が患者の体重・状態を見ながら調整し、必要以上の意識低下が起きないよう管理します。眠くなる程度のレベルを保ちながら、検査をスムーズに行っていきます。

鎮静剤と痛みの関係

鎮静剤で眠っている間は意識がぼんやりした状態になり、痛みや怖さをほとんど感じません。

ただし、あまりに強い麻酔で完全に意識を失うと呼吸管理が必要になり、全身麻酔に近い状態になるので、通常の大腸検査麻酔は、軽度から中程度の鎮静レベルが目標です。

安全管理の重要性

鎮静剤を使う場合は、投与中に血圧や呼吸状態、心拍数を監視し、酸素濃度を測る機械を指先につけ、異常が出れば速やかに医師やスタッフが対応します。

クリニックや医療機関を選ぶ際は、鎮静中のモニタリング体制がしっかりしているかを確認すると安心です。

麻酔の種類と特徴

大腸検査で使用する麻酔(鎮静剤)は複数あり、患者の年齢や持病、アレルギーの有無によって使い分けます。

主な鎮静剤と特徴

薬剤名効果の強さ投与方法特徴
ミダゾラム中程度~強めの鎮静静脈注射比較的扱いやすく、安全性が高い
プロポフォール強い鎮静~短時間静脈注射速やかに眠気をもたらすが管理が重要
レミマゾラム中程度の鎮静静脈注射麻酔時間が調整しやすく回復が早い
ペンタゾシン鎮痛効果強め静脈注射鎮痛重視のため、一部の施設で使用

ミダゾラム

ベンゾジアゼピン系の薬剤で、古くから内視鏡検査で広く使用されてきました。鎮静作用と健忘効果があり、検査時の記憶が曖昧になるので痛みや不快感のトラウマが残りにくいのが特徴です。

プロポフォール

手術室などで全身麻酔にも使用される薬剤です。強い鎮静作用がある分、血圧低下や呼吸抑制などのリスク管理が重要です。医師やスタッフが酸素飽和度や呼吸状態を厳重に監視しながら投与します。

レミマゾラム

比較的新しい薬剤で、麻酔状態の深さを調整しやすく、回復も早く、高齢者や基礎疾患がある方にも使いやすい面がありますが、導入している施設はまだ多くありません。

ペンタゾシンやペチジン

主に鎮痛目的で併用され、内視鏡挿入時の痛みを抑えることで、患者がリラックスしやすくなります。副作用として吐き気やめまいなどが起こるケースもあるため、医師が患者の状態を見ながら投与します。

麻酔を使うメリットとデメリット

大腸検査で麻酔を使うと大きなメリットがありますが、一方でリスクやデメリットもあるので、両方を理解したうえで、自分に合った検査方法を選びましょう。

麻酔を使うメリット

  • 痛みや不安が軽減される
  • 腹部を大きく圧迫された時の不快感を緩和できる
  • 医師が検査に集中しやすい
  • 下剤を飲んだ後のストレスが少ない

麻酔を使うデメリット

  • 検査後に眠気やふらつきが残ることがある
  • 車やバイク、自転車での帰宅ができない場合が多い
  • 血圧低下や呼吸抑制などの副作用リスク
  • 麻酔なしに比べて費用が増えるケースがある
観点メリットデメリット
身体への負担痛みや不安が少ない血圧低下・呼吸抑制などの副作用リスク
検査効率医師が手技に集中しやすいスタッフの管理体制が必要
検査後の行動検査中の記憶が曖昧でストレスが少ない当日車を運転できないことが多い
費用・時間面検査時間短縮の可能性保険負担が異なる場合があり、費用が増えることがある

麻酔を使用する際に知っておきたいポイント

当日は公共交通機関の利用か、付き添いの方に車の運転を依頼し、アレルギーや持病があれば事前に医師へ伝えてください。

また、検査後の意識回復に個人差があるので、予定は余裕をもって組み、血圧が低い方や心疾患のある方は、投与量を調整したり別の検査方法を検討したりする場合があります。

検査前の準備と注意点

麻酔を使用する大腸検査を安全に進めるには、前日や当日の事前準備が大切です。

下剤の服用方法

大腸検査では、腸内をきれいにするために下剤を使い、種類や服用スケジュールはクリニックや医師の方針によって異なりますが、指示通り飲むことが重要です。

途中で吐き気や腹痛が強くなった場合は、無理せず医療機関に連絡してください。

食事制限と水分補給

前日や当日は、消化にやさしい食事を心がけ、繊維の多い野菜や海藻類は避け、白米やうどん、卵などを中心に取りましょう。

水やお茶などの水分補給はこまめに行い、腸の動きを整えます。

前日・当日の食事例

時間帯食事の例
前日朝食おかゆ、卵豆腐、薄い味噌汁
前日昼食うどん(具は少なめ)、白身魚の煮物
前日夕食おかゆまたは軟飯、味付けは薄めの煮物 (野菜を細かく刻む)
当日朝医師の指示がない限り、飲食は避ける(必要な水分補給のみ)

服薬の確認

普段から飲んでいる薬がある方は、検査予約の際に医師やスタッフに相談してください。

血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、ポリープ切除などの可能性を考慮して服用の調整が必要になるケースがあります。また、糖尿病の薬を飲んでいる方も低血糖を起こすリスクがあるため、注意が必要です。

麻酔に対するアレルギー

過去に麻酔薬でアレルギー反応があった場合や、他の薬に対して強いアレルギーがある場合は必ず事前に申告してください。代替の検査方法や別の鎮静剤を選択してもらえます。

当日の流れと検査の実際

大腸検査当日は、受付から検査終了後の帰宅までどのような流れで進むのかを知っておくと安心です。ここでは、大まかなタイムラインを示します。

大腸検査麻酔を使用する際の当日の流れ

段階内容
受付問診票や保険証の確認。呼吸や血圧の測定、アレルギーの有無のチェック
前処置室下剤の残りを飲む場合もある。便の状態を確認し、腸がきれいかを判断
麻酔説明医師が薬剤や手技の説明を行い、同意を得る
検査室ベッドに横になり、点滴などで鎮静剤を投与
検査約15~30分程度。状態によってはポリープ切除を行うことも
回復室麻酔が切れるまで安静に過ごし、医師が状態を確認してから退出
会計・説明会計後、検査結果や注意点を説明。問題がなければ帰宅

検査中の姿勢と声かけ

検査中は基本的に左側を下にして横たわり、大腸カメラを挿入します。腹部に痛みや違和感を感じた場合は、鎮静剤によって意識が低下しているため自分では伝えにくいことがあります。

モニターや機器で呼吸や心拍をチェックしつつ、スタッフが適宜声をかけるので、痛みが強そうなら鎮静剤を追加します。

ポリープ切除の可能性

検査中に小さなポリープが見つかれば、その場で切除することがあります。スネアとよばれるリング状のワイヤーを使用し、入院せずに切除できる場合が多いです。出血や合併症が起きないかどうかを確認しながら進めます。

回復室での過ごし方

検査が終わったら、回復室やベッドでしばらく休憩します。麻酔が切れても、すぐに立ち上がるとふらつくことがあるため、看護師の指示を受けながらゆっくり行動してください。点滴や酸素投与が行われる場合もあります。

検査後の注意点とアフターケア

麻酔を使用した大腸検査が無事に終わっても、しばらくは身体に変化が生じやすいタイミングです。ここでは、検査後に気をつけたいポイントや、体調管理の方法を紹介します。

当日の帰宅方法

当日は、車やバイク、自転車の運転を控え、公共交通機関や家族・友人の送迎を活用してください。運転することで事故のリスクが高まるので注意が必要です。

食事と水分補給

検査当日は腸にガスが残っている場合があり、腹部の張りや違和感を感じる方もいるので、内視鏡検査後は、消化にやさしい食事を少しずつ摂り、痛みや下痢などの症状がないか様子を見てください。

水分補給を怠ると便秘や脱水につながる恐れがあるため、こまめに水やお茶を飲むことが大切です。

検査後の食事の目安

食事のタイミング注意点
検査直後無理に食べず、腸の調子を見ながら少量ずつ
数時間後軽めの食事(おかゆ、スープなど)
翌日以降普段通りの食事で問題なし。ただし刺激物や脂質の多い食事は控えめに

ポリープ切除後の注意

ポリープを切除した場合は、出血や腹痛が起こる可能性があり、血が混ざった便が出ることがあれば、医療機関に連絡してください。

また、アルコールや激しい運動は数日間控えたほうがよい場合がありますので、医師の指示を確認します。

検査結果の確認

大腸内視鏡検査で組織の一部を採取(生検)した場合は、後日結果の説明を受ける必要があり、癌や炎症性疾患などが疑われるケースでは、追加検査や治療方針を話し合うことが大切です。

よくある疑問とQ&A

初めて麻酔を使った大腸検査を受ける方や、過去に不快な経験がある方にとっては、さまざまな疑問が浮かぶかもしれません。ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。

「麻酔で完全に眠り込むのか?」

一般的な大腸検査では、完全な全身麻酔ではなく静脈鎮静と呼ばれる方法を用いるため、ぐっすり眠るほどの深い意識消失にはならないことが多いです。

ただし、プロポフォールなど強い薬剤を使うと、ほぼ眠った状態に近くなる場合もあります。

「高齢でも麻酔を受けられるか?」

高齢の方でも体調や基礎疾患の有無によっては麻酔を安全に使えます。医師が血圧や心臓・呼吸の状態を確認しながら投与量を調整するので、事前にしっかり診察を受けておくとよいでしょう。

「検査後に仕事はできるか?」

麻酔後は眠気やふらつきが残ることがあるため、その日の業務や作業は控えめにし、できれば休暇を取るのがおすすめです。仕事の内容によっては、医師と相談して安全を優先してください。

「費用はどのくらいかかるのか?」

大腸内視鏡検査自体は保険適用になることが多いですが、麻酔(鎮静剤)の種類によって費用が異なる場合があります。

自己負担の割合(1割~3割)や検査の内容(生検、ポリープ切除など)により変わるため、あらかじめ確認すると安心です。

クリニックの選び方と予約の流れ

麻酔を使用した大腸検査を受ける際には、医師やスタッフの技量や設備が整った施設を選ぶことが大切です。

安全管理の体制

鎮静剤を使った検査では、呼吸や血圧、心電図の監視が必須で、担当医が救急対応の経験を持ち、トラブル時の設備(酸素投与や緊急用の薬剤など)をそろえているかどうかを確認しましょう。

安心して受けられるクリニックを選ぶポイント

  • 内視鏡専門医や経験豊富な医師が常駐している
  • 徹底した衛生管理や器具の洗浄システムがある
  • 鎮静剤使用時のモニタリング体制(血圧計、心電図、酸素飽和度)がある
  • 看護師やスタッフが多く、丁寧に対応してくれる
  • web予約や電話予約など、スムーズな予約システムが整っている

医師とのコミュニケーション

検査前に麻酔の使い方やリスクを説明してもらい、不安や疑問を解消しておくと安心です。特に過去の手術歴や持病、服薬状況は正確に伝えてください。

予約から来院までの流れ

  • 電話やwebで大腸検査の予約を行う
  • 検査希望日までに問診や初診を実施し、健康状態をチェック
  • 検査前日の下剤や食事制限についての指示を受ける
  • 当日来院して受付、前処置、検査、回復室での休憩、会計・説明の順に進む

検査後のフォローアップ

ポリープ切除などを行った場合は、医師と再診や治療方針を相談する必要があります。結果説明や病理検査の有無など、フォローアップ体制が整っているクリニックを選ぶと、不安を抱えずに過ごせます。

まとめ

麻酔は、痛みや不安を軽減しながら大腸内視鏡検査を受けるうえで有効な手段で、身体への負担や緊張を減らすことで、検査精度の向上やポリープ・大腸がんなどの早期発見につながります。

下剤の服用方法や検査当日の流れ、検査後の過ごし方などをしっかり確認したうえで、自分の体質や生活スタイルに合った検査方法を医師と話し合って決めてください。

安全管理が整った環境であれば、麻酔を使用した大腸検査は比較的安心して行えます。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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