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大腸検査 下剤で腸を整える手順と注意点

大腸検査 下剤で腸を整える手順と注意点

大腸検査前の下剤の服用は「腸をきれいにする」という目的がありますが、上手に飲まないと検査に時間がかかったり、体調を崩したりする心配があります。

ここでは、下剤の種類、飲み方のコツ、検査前後の注意点などを幅広くまとめ、消化器内科での経験や実際の患者さんの声も踏まえながら説明します。

目次

大腸検査において下剤が必要な理由

大腸検査ではカメラ(内視鏡)を使って大腸内を直接観察しますが、腸の粘膜がきれいに見えないと、ポリープや炎症、大腸がんなどの病変を見つけにくくなるので、下剤の使用が必須です。

大腸内視鏡検査と腸の洗浄

検査当日は下剤を飲んで、大量の排便を促すことで腸内を洗浄します。

便が残ると視野が悪くなり、何度も体位を変えたり内視鏡を抜き差ししたりするため、検査時間が延びることがあるので、下剤をしっかり飲んで腸の中をきれいにすることが大切です。

下剤が見落としを減らす

病気の早期発見や早期治療にとって、大腸内視鏡検査での腸内洗浄は重要で、下剤の飲み方が不十分だと便が残り、ポリープや病変が隠れてしまう場合があります。

下剤をきちんと飲むことは、大腸がんなどの重篤な病気のリスクを見逃さないためにも重要です。

下剤を飲むタイミングと服用場所

下剤は、当院やクリニックの院内で服用する方法と在宅で服用する方法があり、患者さんの体調や通院の都合を考慮し、医師やスタッフが判断します。

不安があれば医師やスタッフに相談

便秘の方や高齢の方、腎臓や心臓に持病がある方など、下剤を飲む際に不安を感じる場合は、事前に医師へ相談してください。患者さん一人ひとりに合う方法を一緒に見つけることが大切です。

下剤の種類と特徴

多くの医療機関で使われている大腸検査用の下剤はさまざまあり、味や飲む量、費用などが異なります。ここでは主要な下剤の特徴を紹介し、患者さんの好みや体調に合わせた選択肢を説明します。

経口腸管洗浄剤と錠剤タイプ

経口腸管洗浄剤は水に溶かして飲むタイプが主流ですが、錠剤タイプが処方される場合もあり、飲む量が多いものや、味を調整しやすいものなど、さまざまです。

下剤を使うことで腸内をできるだけ効率よく洗浄し、排便を促すことを目指します。

主な下剤の種類

  • モビプレップ
  • サルプレップ
  • マグコロール
  • ニフレック
  • ピコプレップ(場合によっては使用)

これらの下剤は、それぞれ異なる電解質バランスや味の工夫があります。

大腸検査で用いる下剤の費用

保険診療内で使用する下剤の費用は、それぞれ大きく変わず、自己負担額は保険種別によって異なります。

下剤以外に検査そのものの費用もあるので、合計金額は受診前の予約時にスタッフに確認してください。

選ぶポイント

下剤を選ぶときは、味や飲む量、飲む速度などを考慮し、医師からは腎臓や心臓の状態、過去に下剤で体調が崩れた経験などを踏まえた提案があります。

患者さんご自身でも飲みやすさや飲む時間帯などに希望があれば遠慮なく伝えてください。

下剤を飲む前に心がけたいこと

下剤を飲む前の食事や日常生活の調整が、下剤の効果を高めるので、食事や水分摂取などの注意点や、下剤当日までに準備しておくと便利なものをまとめます。

検査数日前からの食事の工夫

大腸検査前は、消化の良い食事を心がけます。

繊維質の多い野菜や海藻類、キノコ類、豆類などは排便に良い反面、検査時に腸内に残りやすいこともあるので、白米やうどんなどの消化の良い主食や煮込み料理を中心にすると、下剤の効果が得られやすいです。

下剤前に摂取をすすめる食事と控えたい食事

内容積極的に摂りたい控えたい
炭水化物白米、うどん、パスタなど玄米、胚芽米、雑穀米
タンパク質鶏肉(脂身少なめ)、白身魚、豆腐など脂身の多い肉、揚げ物
野菜よく煮込んだ野菜、カボチャなど生野菜、ゴボウ、キノコ類、海藻類
飲み物水、お茶、スポーツドリンク(糖分少なめ)牛乳、アルコール
調理法煮込む、茹でる焼く・揚げるが中心のメニュー

水分摂取の大切さ

大腸検査当日は、たくさん排便をするので脱水状態になりがちなので、前日から十分な水分補給を心がけます。

アルコールは避けて、身体にやさしい飲み物を選んでください。

また、下剤の種類によっては糖分を含んだ飲み物の摂取を避ける必要があります。

準備しておくと便利なもの

下剤を飲む前、飲んでいる途中、飲んだ後はトイレに行く回数が多くなります。以下のようなものを用意すると快適に過ごせます。

持っておくと便利な物

  • お尻をやさしく拭けるウェットティッシュ
  • トイレの近くで使えるタオルや着替え
  • ベッドやソファなど、すぐに横になれる場所
  • 好きな雑誌や音楽(リラックスしたいときに有効)

実際の下剤の飲み方と注意点

下剤の飲み方は、主に当院やクリニックで処方する説明書や医師・看護師の指示に従ってください。ただし、実際に飲み始める前に知っておくと役立つコツがあります。

飲むペースを一定に保つ

下剤は短時間で一気に飲むより、医師が指示したペースに合わせて飲むことが大切です。大量の水分と合わせて摂取するので、お腹が張りやすくなるので、少しずつ飲み進めると、過度の吐き気や腹痛を軽減できます。

吐き気や腹痛を感じたら

下剤を飲むときは、体質や体調によって吐き気をもよおしたり腹痛が出たりする場合があり、症状が強い場合は、少し休んでから再開したり、医療スタッフに連絡してください。

無理をして飲み続けると、嘔吐につながるほか、腸閉塞をきたすおそれがあります。

味が気になるときの工夫

下剤の味が苦手な方もいますが、ストローで飲んだり、冷やした状態で飲んだりすると飲みやすく感じる場合があります。

また医師が特定の飲み物と一緒に下剤を内服することを避けるように指示した場合は従ってください。

トイレの確保と体位

下剤を飲み始めると短時間のうちに何度も排便が起こることがあり、家で飲む場合はトイレに行きやすい服装を選び、移動が負担にならないよう周囲の環境を整えてください。

院内で飲む場合も、移動距離や段差に気をつけましょう。

主な下剤の特徴と違い

ここでは、代表的な経口腸管洗浄剤を簡単に比較します。どの下剤を使うかは医師が提案し、患者さんが選ぶことが多く、既往歴や体調、嗜好によって使い分けます。

主な下剤の比較表

下剤名味の特徴飲む量メリット注意点
モビプレップ少し塩味がある約2L量が標準的で、腸内洗浄効果を期待できる飲み慣れないと塩味が気になることも
サルプレップレモン風味約1L+水など飲む量が比較的少なく、味も調整しやすい味に個人差があり、苦手な方もいる
マグコロールやや甘みがある約2L腸管洗浄力が安定している
ニフレックわずかな塩味+甘み約2L多くの施設で実績がある味に慣れないと飲むのがつらい場合あり
ピコプレップオレンジ風味水分追加が必要飲む量を抑えやすい洗浄力がやや弱め

サルプレップ

飲む量が1L程度と少ないので、たくさん飲むのが苦手な方に向いていて、飲んだ後に水やお茶などを追加で飲んで腸を洗浄します。味はレモン風味ですが、個人差によって好みに分かれます。

モビプレップ

2L前後を摂取し、味は薄い塩味があるため、苦手な方もいますが冷やすことでやわらぎます。腸内洗浄力は広く認められており、多くの施設で使われています。

マグコロールやニフレック

2L程度を摂取し、マグコロールはやや甘みがあり、ニフレックは軽い塩味と甘みを感じるという方が多いです。便秘が強い方や体型などに合わせ、追加の下剤や腸管運動促進剤を併用するケースがあります。

ピコプレップ

量を抑えられるため、一度にたくさん飲むのが難しい方に向いています。フルーツ系の風味とはいえ酸味が感じられ、人によっては飲みにくい可能性もあります。

検査前後の過ごし方と注意点

大腸検査を受ける当日は、下剤の服用に加えて検査後の体調管理にも配慮が必要で、検査当日や検査後に気をつけたいことを紹介します。

検査当日のスケジュール

当日は予約時間に合わせて下剤を家で飲み始めるか、院内で飲むかを決定します。

服用終了後、数回の排便を確認してから検査に移り、検査中は鎮静剤を使うことが多いので、検査後はしばらく院内で休み、意識がはっきりしてから帰宅します。

検査当日の流れを示す表

時間帯流れ
朝~午前中起床後、指示どおりに下剤を飲む
午前中~昼頃排便が透明に近づいたら準備完了(便が黄色水様)
検査前トイレを済ませ、検査室に案内
検査中カメラで大腸内部を観察(鎮静剤使用の場合もある)
検査後院内で安静を保ち、しばらく休む
帰宅移動に注意(鎮静剤使用の場合、車の運転は禁止)

検査後の食事と水分補給

検査が終わった後は、お腹にガスが溜まっていることがあるので、消化にやさしい食事を取りながら、水分をこまめに補給してください。検査直後に刺激の強い食事をすると、腹痛や下痢を引き起こすことがあります。

ポリープ切除があった場合

検査中に大腸ポリープを見つけ、切除を行った場合は、医師の指示に従って過ごす必要があります。

出血や腹痛などのリスクがあるため、激しい運動やアルコール摂取などは控え、自己判断で無理をせず、異変を感じたらすぐに連絡してください。

再診や他の検査の予約

大腸内視鏡検査で異常があった場合は追加の検査や外来受診の予約が必要です。

検査結果や治療方針については、医師からの説明をしっかり聞いてください。

不安や疑問があれば、その場で質問すると安心です。

下剤に関するQ&Aとよくある不安

初めて大腸検査を受ける方や、過去に下剤がつらかったという方には、不安や疑問が多いと思います。ここでは、実際によくある質問とその答えをまとめます。

「普段の便秘がひどいのですが、下剤は効きますか?」

便秘が強い方は検査の約1週間前から便通を整えるための薬を併用することがあります。

医師に相談すると、適切な下剤や浣腸などを追加で取り入れる場合があり、検査当日に急に下剤を飲むより、計画的に準備すると腸内がきれいになりやすいです。

「下剤がどうしても飲めません。ほかの方法はありますか?」

医療機関によっては、下剤を胃カメラ経由で注入するなどの方法を提案することがあります。ただし、多くは経口での服用が基本です。味や量にこだわりがある場合は、選択肢として主治医に相談してください。

「検査当日に体調が悪くなったらどうしますか?」

嘔吐やめまい、激しい腹痛などがあれば、飲むのを中断して連絡してください。我慢して飲み続けると、脱水や循環不良につながるおそれがあります。医師が必要と判断すれば点滴などの対処を行います。

「検査前後で運転は可能ですか?」

鎮静剤を使用した場合は、その日の運転を控えてください。判断力が低下している可能性があるため、家族や友人に送迎を頼むか、公共交通機関を利用したほうが安心です。

医師やスタッフとの連携と受診の流れ

大腸検査下剤は、患者さんにとって負担が大きいと感じられることもあります。安心して検査を受けるためには、医師や看護師とスムーズにコミュニケーションを取りましょう。

検査の予約と事前説明

電話やWebでの予約ができるクリニックも増えているので、事前説明では、既往歴やアレルギー、現在服用中の薬について詳しく伝えてください。安全に下剤を飲むために必要な情報がそろうと、当日の流れがスムーズになります。

予約時の確認事項リスト

  • 服用中の薬(血圧・糖尿病・抗凝固薬など)
  • 便秘や腎疾患など、基礎疾患の有無
  • 妊娠の可能性
  • 過去の大腸検査の有無とその結果
  • アレルギー(薬剤・食品など)

再診や治療方針の相談

大腸内視鏡検査でポリープや潰瘍性大腸炎などが見つかった場合、治療や再診が必要になり、担当医と一緒に治療方針や再検査のタイミングを決めると安心です。

生活習慣の指導や食事・運動指導も含めて行う場合があるので、遠慮なく相談してください。

まとめ

大腸内視鏡検査での下剤は腸をきれいにして、正確に検査を行うために重要で、下剤をきちんと飲むと、検査時間の短縮や病変の早期発見につながります。

下剤の種類は複数あり、味や飲む量などで選ぶことが可能です。

検査当日は、食事や水分摂取に注意しながら、気になることや不安を医師やスタッフとこまめに共有すると、より安心して検査に臨めます。

検査後も体調や傷の状態に気を配り、疑問や異常があればすみやかに連絡してください。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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