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大腸検査ポリープ切除で大腸がんを予防 治療の流れや注意点

大腸検査ポリープ切除で大腸がんを予防 治療の流れや注意点

大腸検査におけるポリープ切除は、大腸ポリープを早期に取り除くことで大腸がんの発生リスクを低減し、健康な腸を保つために重要です。

しかし「ポリープはどのくらいの大きさなら切除が必要なのか」「切除後の生活はどうなるのか」「入院や麻酔は必要なのか」など、具体的な疑問や不安を抱える方が多いでしょう。

ここでは、大腸内視鏡を使って行うポリープ切除の流れ、治療方法、合併症のリスク、切除後の食事制限や注意点などをまとめます。

目次

大腸ポリープ切除の必要性とポリープの特徴

大腸ポリープ切除は、大腸内視鏡検査によって発見されたポリープを早期に取り除き、大腸がんにつながる可能性を下げるために欠かせない治療手段です。

ポリープと大腸がんの関係

大腸に生じるポリープにはさまざまなタイプがあり、多くは良性の腫瘍ですが、その中にはがん化リスクがあるものも含まれます。

特に腺腫性ポリープと呼ばれるタイプは、経年で大腸がんに進行する場合があり、大きさが大きいほどそのリスクが高いです。

大腸検査時に発見したポリープが腺腫性の場合、予防的に切除することでがん化を防げる可能性があります。

サイズ別にみるがん化の可能性

大腸ポリープは小さいうちに切除すると、出血や痛みのリスクを低く抑えつつ治療が行えますが、サイズが大きくなるほど切除における出血リスクや穿孔リスクが上がるうえ、がん化の確率も高くなります。

大腸ポリープのサイズとがん化リスク

サイズ(直径)がん化リスクの目安備考
5mm未満リスクは比較的低め場合によっては経過観察を選ぶことも
5~10mm中程度のリスクがあり内視鏡切除が検討される
10mm以上リスクが高まる早期切除が重要
20mm以上さらに高いがん化リスク内視鏡での対応が困難な場合もある

ポリープ切除で得られるメリット

ポリープ切除は、見た目に症状がなくても大腸がんになる前段階で腫瘍を取り除く予防的役割を担い、次のようなメリットがあります。

  • 大腸がんに進行する可能性を抑える
  • 内視鏡手術で済む場合が多く、大がかりな手術を避けられる
  • 入院を要さない日帰り対応が可能なケースもある
  • 切除後の経過観察で腸内を継続的に管理しやすい

切除しなくてもよいポリープはあるか

ポリープの種類や大きさによっては、すぐに切除が必要でない場合もあります。

例えば、非常に小さいポリープや非腺腫性(がん化リスクが低い)ポリープの場合は、経過観察を選択するケースがあり、医師が総合的に判断します。

ただし、形状や組織の特徴によってリスクが変わるため、勝手に自己判断をせず、専門家の意見を聞くことが大切です。

大腸内視鏡検査によるポリープの発見と切除の流れ

大腸ポリープを見つけて切除するためには、大腸内視鏡検査が欠かせません。ここでは、検査を受ける過程と、ポリープが発見された場合の切除までのステップを紹介します。

受診から検査までの準備

大腸検査を受けるには、まずはクリニックや消化器内科を受診し、問診や初診を行います。

事前の血液検査を行う場合があり、医師が患者の全身状態や既往歴を確認して、安全に内視鏡検査ができるかどうかを判断します。

検査前の準備ポイント

  • 食事制限:検査前日は繊維質の少ない食事を意識する
  • 下剤の使用:当日または前日に下剤(腸管洗浄液)を飲んで腸内を清浄にする
  • 持病や服用中の薬:医師に申告し、必要に応じて服用を一時調整する
  • 副作用対策:鎮静剤や消泡剤など、検査時の快適さを考慮した薬を使用する場合も

大腸内視鏡検査の手順

検査当日、来院後に下剤の服用を完了して腸内がきれいになったら、内視鏡検査へ移行します。検査の流れはおおむね以下のようになります。

  1. 更衣:検査着に着替える
  2. 前処置:点滴ルートを確保し、鎮静剤を使用する場合は投与
  3. 内視鏡挿入:肛門からスコープを入れ、大腸全体を観察
  4. ポリープ発見:必要に応じて拡大観察等を行い、ポリープの性質を評価
  5. 画像撮影・組織採取:疑わしい病変があれば組織検査
  6. 検査終了:腸内のガスを抜き、内視鏡を抜去

大腸内視鏡検査で使う機器

機器名称特徴
内視鏡挿入部カメラとライトが先端に付いた細い管
内視鏡操作部内視鏡の向きや水・空気の送出を操作する
モニターカメラ映像をリアルタイムで確認可能
吸引装置腸内の液体や粘液を吸い取り視野を確保
内視鏡スネアポリープを切除する際に使用

ポリープをその場で切除するケース

検査中に小さめのポリープ(10mm以下など)が見つかった場合、多くはそのまま内視鏡を使って切除することが可能です。

これを「内視鏡的ポリープ切除術」または「ポリペクトミー」と呼び、入院を必要としない日帰り対応ができることが多いです。

大きめのポリープや癌が疑われる場合は、EMR(内視鏡的粘膜切除術)、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)など、さまざまな方法を駆使して切除します。

切除できない場合の対応

ポリープが非常に大きい、または病変が腸壁の深い部分にまで及んでいるなど、内視鏡での安全な切除が難しいと医師が判断する場合は、外科手術の検討が必要になることもあります。

ポリープ切除の具体的な手術方法と合併症リスク

大腸ポリープ切除にはいくつかの術式があり、ポリープの大きさ・形状・部位によって最適な方法を選びます。

ポリペクトミー(内視鏡的ポリープ切除術)

最も基本的な方法で、輪っか状のスネアと呼ばれる器具でポリープを挟みます。

高周波電流を流して焼き切り、大きさがおおむね10mm程度以下のポリープに適用され、比較的短時間で切除でき、通常は鎮静剤を使うことで痛みを軽くできます。

ポリペクトミーの特徴リスト

  • スネアで絞り切るだけのシンプルな手技
  • 10mm以下のポリープに適している
  • 合併症として出血や穿孔のリスクはあるが、低め
  • 日帰りでの対応が可能なことが多い

EMR(内視鏡的粘膜切除術)

ポリペクトミーでは切除が難しい10mmを超えるポリープや、表面が平坦な病変に対して行う方法です。病変の下に生理食塩水や専用の液体を注入して粘膜を持ち上げ、その上をスネアで囲んで切除することで安全性を高めます。

EMRのメリット・デメリット

項目メリットデメリット
適用範囲比較的大きな病変や平坦型に対応可能極端に大きい病変には不向き
安全性粘膜を浮かせることで穿孔リスク減注入量や操作が複雑
合併症出血・穿孔の可能性がある大きな病変で切除範囲が広いとリスク増加

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

さらに大きい病変や、EMRでは一括切除が難しいケースに適用される高度な技術で、内視鏡下で特殊なメスを使用して粘膜下層を剥離していきます。

がん化の疑いが高いポリープを含め、まとまった範囲を一度に切除するメリットがありますが、技術的に高度であり、合併症リスクがやや高めです。

合併症とリスク対策

ポリープ切除には出血や穿孔、感染などのリスクが伴い、特に出血は、切除直後や数日後に起こる場合があり、以下のような注意点が挙げられます。

  • 切除後は数時間または数日間の経過観察が必要
  • 血液をサラサラにする薬を服用している方は、医師と相談して一時的な休薬を検討
  • 便に鮮血が混ざるなど出血のサインがある場合は、すぐに医療機関へ連絡

切除後の過ごし方と注意点

大腸ポリープを切除した後は、腸の傷が回復するまで生活面でいくつかの制限や注意事項があり、合併症の発生を防ぎ、スムーズに日常生活へ戻るために知っておきたいポイントをまとめます。

当日の安静と帰宅

ポリープ切除を日帰りで行った場合でも、検査や手術が終了してから数時間は院内で安静に過ごし、出血や体調不良の兆候がないかを確認することが一般的です。

鎮静剤を使った場合は、意識がはっきりするまで待ち、ふらつきや眠気が収まってから帰宅し、帰りの交通手段には公共交通機関や送迎を利用し、車やバイクの運転は避けてください。

ポリープ切除当日の行動

  • 検査後はリカバリールームやベッドで休む
  • 医師や看護師がバイタルサインや腹痛の有無を確認
  • 出血や強い痛みがないか数時間観察
  • 問題がなければ会計と術後の生活指導を受けて帰宅

食事制限とアルコールについて

大腸ポリープを切除した後、腸粘膜に傷がついた状態が数日間続き、出血や傷口の刺激を避けるため、消化にやさしい食事を意識し、刺激物やアルコールは避けたほうが安全です。

目安としては1週間ほどの間、脂っこいものや辛い食事、アルコールを控えることが推奨されます。

切除後の食事制限例

期間食事のポイント
切除当日おかゆやうどんなど、できるだけ柔らかく消化にやさしいもの
翌日~数日野菜や果物は加熱し、脂質や繊維の多い食品は少量ずつ
1週間後徐々に普段の食事へ戻す。ただし激辛や高脂肪食はやや控えめ
以降とくに制限なしだが、暴飲暴食は避ける

入浴や運動の制限

ポリープ切除後の出血を予防するため、当日はシャワー程度にとどめ、翌日以降も2~3日間は湯船につかる時間を短めにするよう勧められる場合があります。

運動は軽めのストレッチや散歩は問題ありませんが、激しい運動や重い物を持ち上げる行為は1週間程度控えるよう指示されることが一般的です。

大腸ポリープ切除後の制限

  • 入浴:当日はシャワーだけにして湯船は翌日以降
  • 激しい運動:ランニングや筋トレなどは1週間控える
  • 旅行や出張:万一の出血に備えて数日は遠出を避ける
  • 飲酒:切除後1週間はできるだけ禁酒

出血と腹痛への対処

切除後の出血は、当日だけでなく、数日経ってから起こることもあり、便に赤い血が混じっている、小豆色の出血が続く、または腹痛やめまいを感じる場合は、すぐに医療機関へ連絡し、指示を受けることが大切です。

出血の程度によっては緊急処置が必要になることがあります。

切除後の経過観察と再検査のタイミング

大腸ポリープの切除後、経過が良好であっても再びポリープが発生する可能性や見逃しがんのリスクを考慮し、定期的な検査が推奨されます。

病理検査と結果の受け取り

切除したポリープは病理検査に出され、約1~2週間後に結果が判明するのが通常で、大腸がんや高度異形成の有無などを確認し、治療の必要性や再発リスクを評価します。

結果によっては追加治療や、より短期間での再検査が必要です。

病理検査の結果報告で話し合う項目

  • ポリープの組織型(腺腫性かどうか)
  • 異形成の程度(軽度・中等度・高度)
  • 切除断端(取り残しがあるか)
  • 再検査の時期や追加治療の方針

再検査の目安

初回の切除後、追加の異常がない場合は1年後~3年後の間隔で再び大腸内視鏡検査を受けることが多いです。ただし、切除したポリープが大きかった場合や悪性所見があった場合は、より短いスパンで検査を勧められる場合があります。

ポリープ切除後の再検査目安

ポリープの性状再検査までの目安備考
良性の小さなポリープ(5mm以下)2~3年後リスクが低め
10mm前後の腺腫性ポリープ1年~2年後中程度のリスク。定期検査が望ましい
大きな腺腫性ポリープ(20mm以上)半年~1年後リスクが高く、再検査間隔が短くなることも
悪性所見あり数ヵ月~半年後より念入りなフォローが必要

切除後の生活習慣と再発予防

大腸ポリープの発生には、食習慣や運動不足、喫煙、飲酒などの生活習慣が影響し、切除後も以下のような点に気をつけると、再発リスクを減らしたり、早期発見につながります。

  • 野菜や果物を適度に摂り、過度な脂質摂取を控える
  • 適度な運動で腸の動きを良好に保つ
  • タバコや過度なアルコールを控える
  • 定期検診や人間ドックで便潜血検査や内視鏡検査を続ける

日帰りポリープ切除のメリットと注意点

最近では、軽度~中等度の大腸ポリープを日帰りで切除することが増えていて、入院不要で身体的・経済的負担を減らせる利点がある一方、術後の管理を自己責任で行う必要もあります。

日帰り切除のメリット

  • 入院費や通院回数の削減につながり、経済的負担が軽い
  • 仕事や家事などの日常生活への復帰が早い
  • 病院やクリニックのベッド数を圧迫しない

日帰り切除を選ぶ人が増えている理由

  • スコープや医療機器の向上で安全性が高まった
  • 医師やスタッフの技術が成熟して短時間の手術が可能になった
  • 病院側の負担減や患者の快適性向上を目指す傾向

日帰り切除の注意点

入院せずに帰宅するということは、万が一合併症(主に出血)が起きた場合に自宅で対応しなければいけません。以下のような点に留意しておくと安心です。

  • 術後しばらくは激しい運動や遠出を避ける
  • 深夜や休日も対応可能な連絡先を控えておく
  • 出血や腹痛が持続した際にはすぐ医療機関に連絡
  • ポリープの大きさや数によっては入院が推奨されることもある

入院を伴うケース

大きいポリープ、複数個の切除を同時に行う、既往症などで出血リスクが高い場合は、医師が安全を考慮して入院を勧めることがあります。

術後しばらくは点滴や血圧管理を行い、出血の兆候がないかを慎重に見極めたうえで退院の判断をします。

まとめ

大腸検査ポリープ切除は、大腸がんの予防や早期発見において重要な治療方法であり、内視鏡検査で発見されたポリープを日帰りで切除できる場合も多く、身体的・経済的負担を軽減しやすいメリットがあります。

腸管洗浄や鎮静剤を使用するなどの下準備が必要ですが、医師やスタッフのフォローを受けながら進めると比較的スムーズです。

切除の術式はポリープの大きさや形状、がん化リスクによって選択し、出血や穿孔などの合併症への備えが求められます。

切除後は数日から1週間程度の食事・生活制限を行い、出血や腹痛など異常があれば早めに受診することが大切です。

また、切除したポリープの病理結果を踏まえ、再発を防ぐための定期検査を継続的に受ける必要があります。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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