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大腸がん検査を受けるべき初期症状とは – おならや腹痛との関係

大腸がん検査を受けるべき初期症状とは - おならや腹痛との関係

大腸がんは早期に発見しやすいがんの1つといわれる一方で、初期段階では自覚症状が乏しく見過ごされてしまうケースが少なくありません。

特におならや腹痛などの変化は、一時的な腸内環境の乱れと誤解されやすく、大腸がん検査を先延ばしにしてしまう要因にもなっています。

大腸がんは放置すると腸管の狭窄や出血、さらに他の臓器への転移を引き起こす可能性が高くなるため、少しの体調変化を感じた段階で検査を検討することが大切です。

この記事では、大腸がんの初期症状がどのように現れるのか、おならや腹痛などの具体的なサインと大腸がん検査の必要性、検査の種類や流れ、さらに生活習慣で気をつけたいポイントまでを詳しく解説します。

目次

大腸がんと初期症状の見落とし

大腸がんは日本人に多いがんの1つでありながら、初期症状が比較的軽微な場合が多く、気づきにくい特性があります。

異常な便通や血便などは自覚しやすい一方、おならの変化や軽度の腹痛などはストレスや食生活が原因と考えられやすく、見過ごされてしまいがちです。

大腸がんと検診の現状

日本では大腸がんの死亡率が年々増加傾向にあり、特に食生活の欧米化などに伴って大腸がんの発症率が高まっていると報告されています。

定期的な便潜血検査や大腸内視鏡検査によって早期発見が期待できますが、検診の受診率はまだ十分とはいえません。自覚症状がないときでも検査を受けることで、早期発見と治療が可能になる例が多くあるため、検査の必要性は高いです。

おならや腹痛の異常に注目

おならの回数やにおい、腹痛の種類や頻度の変化は、大腸がん初期のサインとして知られていますが、これは、腸管内に腫瘍ができることで通過障害が起き、ガスの発生や便通リズムに異常をもたらすことがあるからです。

もちろん一時的な腸内環境の乱れも同様の症状を起こし得るため、それらを区別するのが難しい点が問題となります。

初期症状を見逃すリスク

初期症状があっても「便秘気味だから」「ストレスでお腹が張りやすい」などの理由で放置すると、腫瘍が成長して進行期に入り、リンパ節や肝臓などへ転移する可能性が高まります。

大きくなった腫瘍は腸閉塞や大量出血を引き起こす恐れがあるため、わずかな変化でも検査を受ける意識を持つことが必要です。

大腸がんの部位別特徴

大腸は結腸と直腸に大別され、発生部位によって症状がやや異なります。右側結腸(盲腸から上行結腸)では初期に下痢や貧血が起きやすいとされ、左側結腸(下行結腸からS状結腸)では便通異常や血便が顕著になることが多いです。

直腸付近のがんは肛門に近いため、排便痛や血便が特に目立ちやすいと報告されています。

大腸がんの主な発生部位と特徴

部位主な症状・特徴
盲腸~上行結腸下痢や貧血、比較的症状が出にくい
横行結腸腹痛やガスの異常発生
下行結腸~S状結腸便通異常、細い便、腹痛など
直腸血便、排便時の痛み、便の性状変化が顕著

おなら・腹痛が大腸がんと関係する理由

腸内環境の変化がガスの性質や腹痛を起こし、大腸がんの存在を示唆する場合があるため、大腸がん初期の症状として、おならや腹痛の異常が注目されます。通常のおならや軽い腹痛とどう区別すればいいのか考えてみましょう。

ガスの通過障害

大腸がんの腫瘍が大腸内腔を狭くすると、腸管内にガスが溜まりやすくなり、おならの回数やにおいが変わる可能性があります。

普段よりおならが多い、においがきつい、または逆におならが出にくくなるなどの変化が続く場合は、腸内の通過に問題が生じているかもしれません。

おならの変化を感じるポイント

観点具体的な変化
回数突然増えたり極端に減ったりする
におい腐敗臭が強くなった
音の大きさ異様に大きくなったり出にくくなった
状況食生活を変えていないのに変化がある

腸壁が刺激されて腹痛が起こる

腫瘍がある部分は血行や腸の動きが乱れやすく、少し食事を摂っただけでも腸が過剰に収縮して痛みをもたらすことがあります。また、狭窄があると便やガスが通過するときにひっかかり感が生じ、差し込むような腹痛を起こす場合があります。

腹痛が起こりやすいタイミング

  • 食後しばらくして腸が動き出すとき
  • 便意を催したとき
  • ガスが溜まったまま長時間経ったとき

頻度や継続期間

おならや腹痛に変化を感じたとしても、それが1日限り、2日限りの症状なら単なる腸内環境の乱れかもしれません。

1週間~数週間にわたって同じような異常が続く、他にも便通異常が併発しているなどの要素があれば、大腸がんを疑って検査を受けることを考えましょう。

他の病気との見分け方

過敏性腸症候群や食物不耐症などでも、おならや腹痛が起きやすく、これらの疾患は比較的若い人にも多いですが、大腸がんとの大きな違いは血便や持続的な体重減少が少ない点などが挙げられます。

ただし、確実な判断は専門医による診断が重要です。

腸のトラブルと主な特徴

疾患・状態おなら・腹痛の特徴
大腸がん長期的な便通障害、血便、持続的な腹痛など
過敏性腸症候群下痢や便秘が交互に現れ、ストレスで悪化することが多い
食物不耐症特定の食品摂取後にガス・腹痛発生、日常的には問題ない
便秘腹痛やおならは起こりやすいが、他の症状は限定的

便の変化にも着目したい理由

大腸がん初期症状として注目されるのはおならや腹痛だけではありません。便の形状や色、頻度にも兆候が隠れている場合があるため、普段から自分の便を観察する習慣は他の健康問題同様、早期発見に役立つ習慣です。

便の形状や太さ

通常より細い便が続く場合、大腸がんによる腸管狭窄が疑われる可能性があり、また、コロコロとした便や下痢が交互に起きるなど、便の形状が大きく変化し始めたら注意が必要です

便の変化でチェックしたい点

  • 細い便が長期間続く
  • 下痢と便秘を繰り返す
  • 黒色便や赤色便が出る

血液の混入や粘液便

がん部位が出血している場合、血液が便に混じったり表面についたりすることがあります。

痔と見分けがつきにくい場合も多いですが、痔とは異なる真っ赤な血液が多量に混ざるケースや、粘液が絡むことも大腸がんの可能性を示唆する要素です。

便のにおい

においの変化はおならだけでなく便にも現れる可能性があります。強烈な腐敗臭やアンモニア臭が続く場合、腸内細菌バランスの乱れや潜血との関連が考えられることもあり、異常感を覚えたときは注意が必要です。

便に現れやすい異常の種類と特徴

異常の種類特徴
血が付着した便痔か大腸がんか鑑別が必要、がんは粘液便や持続的出血あり
黒色便消化管の上部出血や鉄剤服用で起こるが、要検査
細く長い便腸管内の狭窄が考えられる
異臭・強い腐敗臭腸内細菌のバランス破綻、病変からの出血や炎症の可能性

便秘や下痢と大腸がん

慢性的な便秘や下痢が続くときも、生活習慣の問題ではなく大腸がんが背景にある場合があります。特に短期で大きく変動する場合や体重減少、貧血など他の症状を伴う場合は、自己判断だけに頼らず専門医の診察を受けてください。

大腸がん検査の種類と選択

大腸がんの疑いがある、もしくは定期検診を考えている方が受けられる検査は複数あり、それぞれの特徴やメリット・デメリットを把握し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

便潜血検査

便に混ざる微量の血液を調べる簡易検査で、集団検診などで広く実施されています。

大腸がんのリスクを手軽にスクリーニングできる一方で、精度に限界があり陰性でもがんが隠れている可能性、陽性でも痔や他の理由で出血している可能性があるため、確定には内視鏡検査が必要です。

便潜血検査の特徴

項目内容
検査方法自宅で便を採取し、提出
メリット簡単、安価、集団検診で大勢が受けられる
デメリット偽陰性や偽陽性が生じる可能性がある
次のステップ陽性なら大腸内視鏡検査を検討

大腸内視鏡検査

直接大腸内部を観察し、病変があれば組織を取って病理検査を行う最も確実な検査で、ポリープや初期がんが見つかった場合、その場で切除や治療が可能な場合もあります。

下剤などの事前準備が必要で、受診に抵抗を感じる方も多いですが、早期発見の精度は高いです。

CTコロノグラフィー

バーチャル大腸内視鏡と呼ばれ、CTスキャンのデータから3D映像で大腸の内部を再現します。

侵襲性が低く、下剤の負担が軽いのが利点ですが、微小な病変の見落としリスクや正確性で大腸内視鏡に及ばない面もあり、異常が疑われれば結局大腸内視鏡が必要となる場合があります。

大腸がん検査の代表的な選択肢

  • 便潜血検査
  • 大腸内視鏡検査
  • CTコロノグラフィー
  • バリウムを使った注腸X線検査(近年は頻度低下)

どの検査を選ぶか

初期スクリーニングとして便潜血検査が普及していますが、確実な診断には大腸内視鏡が必要です。

下剤の辛さや時間的負担を感じる方もいますが、早期発見と同時にポリープ切除などのメリットが得られる点を考慮し、リスクと照らし合わせながら選択するとよいでしょう。

大腸がん検査の流れと注意点

実際に大腸がん検査を受ける場合、どのような手順で進むのか、どんな点に気をつければいいのかを把握しておくと、受診へのハードルが下がります。ここでは主に大腸内視鏡検査の流れを中心に説明します。

検査前の準備

大腸内視鏡検査では腸内を空っぽにする下剤を服用し、腸の内容物を排出し、前日から脂質や食物繊維が多い食べ物を避け、消化にやさしい食事を摂るよう指示されることが多いです。

当日は下剤をゆっくりと飲み、何回かトイレに行き、便が透明に近くなるまで腸をきれいにします。

下剤準備のポイント

準備項目具体的な内容
前日の食事軟らかい物中心、油もの・野菜や海藻は控える
当日の朝指定の下剤を数時間かけて飲み排便を繰り返す
水分補給下剤で脱水しやすいため、水やスポーツ飲料を少量ずつ
排便の状態色がほぼ透明に近い黄色い水様便になるのが理想

検査時の流れ

検査当日、問診や血圧測定などを行い、必要に応じて鎮静剤を使いながら内視鏡検査を受けます。内視鏡は肛門から挿入され、医師がモニターを見ながら大腸全体を確認し、ポリープや怪しい病変があれば生検や切除を行います。

大腸内視鏡検査の手順

  • 着替えて検査台に横になる
  • 肛門から内視鏡を挿入
  • 腸内を空気や炭酸ガスで膨らませ観察
  • 必要に応じて生検やポリープ切除

検査後の注意

検査終了後はしばらく安静にし、重篤な出血や腹痛がないかを確認してから帰宅できますが、ポリープ切除をした場合、出血が起こりやすいため、数日は運動や飲酒を避けるように指示されることが多いです。

費用や所要時間

保険適用の場合、大腸内視鏡検査のみなら数千円~1万円程度、ポリープ切除など処置が加わるとその分費用が上がります。所要時間は15~30分ほどですが、前準備や説明、術後休憩などを含めると半日程度かかることが一般的です。

大腸内視鏡検査の概要

項目内容
検査費用数千円~1万円程度(保険適用時)、処置で加算あり
検査時間15~30分前後
事前準備下剤服用、食事制限
術後の注意出血に配慮し、激しい運動や飲酒を控える

大腸がんを防ぐための日常対策

おならや腹痛などの初期サインに敏感になるだけでなく、普段から大腸がんを防ぐ生活習慣を意識することで、リスクを下げる効果が期待できます。

とくに食事や運動などは腸の健康に直結するため、毎日の生活に取り入れられる工夫を考えましょう。

食生活の改善

食物繊維を豊富に含む野菜や果物、発酵食品、適量の水分摂取など、腸内環境を整える食事を心がけることが大切です。一方、高脂質・高カロリーな食事の過剰摂取やアルコールの過度な摂取は、大腸がんのリスクを高める要因とされています。

食習慣で意識したいポイント

  • 野菜や果物などの食物繊維を多めに
  • 肉類は過度にならないよう量を調整
  • 適量の水分摂取で便秘を防止
  • アルコールや甘い飲料を控えめに

適度な運動

運動不足は腸の動きを低下させ、便通を乱す要因の1つで、有酸素運動や軽い筋トレなどを週に数回行うことで、血行や腸蠕動が促され便秘予防につながります。

激しい運動でなくとも、歩く時間を増やすなど簡単な方法から始めるのがおすすめです。

運動による便通改善の仕組み

運動種目期待できる効果
ウォーキング腹筋や骨盤底筋を適度に刺激して腸を活発にする
軽い筋トレ腹部の筋力向上で便の排出をスムーズに
ストレッチ血行促進とリラックス効果、腸の動きにも好影響

禁煙と節酒

喫煙は血管を収縮させて体全体の血流を悪化させ、がんリスクを上げる可能性があり、大腸がんだけではなく、他のがんや心疾患のリスクも増加するため、禁煙を検討すると健康面で多くのメリットが得られます。

アルコールは適量なら血行促進につながるという意見もありますが、過度な飲酒は肝臓や消化器への負担が大きく、腸内環境を乱す一因です。

定期的な検診の継続

大腸がんは早期に発見して治療すれば高い治癒率を期待できるがんです。おならや腹痛の変化が落ち着いたとしても、年齢や家族歴などのリスクを考慮して定期的に検診や内視鏡検査を受けることは、将来の安心につながります。

定期検診を習慣にする理由

  • 便潜血検査や内視鏡検査で早期発見が可能
  • 小さなポリープなら切除でリスク減少
  • 症状がなくても病変を発見できる

よくある質問

血の混じった便が出たら必ず大腸がんなのか

痔や肛門裂傷など、良性の原因で出血している可能性もあります。ただし便に血が混じるのは重要なサインの1つであり、大腸がんなど重大な疾患の可能性を否定できません。自分で判断せず、医師に相談するのが安全です。

おならのにおいや回数が増えたら即受診が必要か

数日~1週間程度の腸内環境の乱れによっておならの状態が変わることはよくあります。

便秘や食事の変化など一過性の原因が考えられる場合もあるため、長期化したり他の症状(血便、体重減少など)が併発していないか確認してから判断するとよいでしょう。

大腸がん検査は痛みが強いか

大腸内視鏡検査に対する痛みのイメージはあるかもしれませんが、鎮静剤を使用することで検査中の苦痛を大幅に軽減できます。

医療機関によっては細径の内視鏡を採用し、痛みを感じにくい工夫をしているところも多いため、事前に相談すると安心です。

他の治療中でも検査を受けられるか

他の病気の治療中であっても、大腸検査を制限されることは通常ありません。服用中の薬の有無や注意点を問診時に医師に伝える必要はありますが、体調が許せば受けられるケースがほとんどです。

体への負担や副作用が心配な場合も、担当医に相談してください。

検査費用はどれくらいか

保険適用の場合、大腸内視鏡検査のみなら数千円~1万円ほどで、ポリープ切除や生検を行うと追加費用が発生します。通院する医療機関や検査内容、個室対応の有無などにより変動するため、詳細は直接問い合わせると確実です。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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