健診の結果票に「胸部X線:異常影あり、要精査」と書かれていて、不安を感じていらっしゃいませんか。
「肺がんかもしれない」「すぐに病院に行かないといけないのだろうか」と心配になるのは当然のことです。しかし、要精査という結果は「がんが確定した」という意味ではありません。
この記事では、胸部X線で異常影を指摘された方に向けて、結果票の見方から精査(精密検査)の具体的な流れ、受診すべき診療科、そして緊急で受診が必要な症状まで、消化器内科専門医の監修のもと解説します。
【この記事でわかること】
- 「異常影」「要精査」が意味すること
- 胸部CTとX線の違いと検査の流れ
- 受診すべき診療科と受診のタイミング
- すぐに受診すべき緊急症状
「異常影」「要精査」とはどういう意味?

健康診断や人間ドックで行われる胸部X線検査は、肺や心臓、大動脈などの状態をスクリーニング(ふるい分け)するための検査です。
結果票に「異常影」「要精査」と記載されている場合、それは「詳しい検査が必要な所見がある」という意味であり、「病気が確定した」わけではありません。
なぜ「要精査」になるのか
胸部X線検査は、背中から胸に向けてX線を照射し、体の内部を1枚の平面画像として撮影します。この検査の特性として、肺の中の血管や肋骨、心臓などの臓器が重なって写るため、実際には問題のない構造物が「異常影」に見えることがあります。
検診では「見落としを防ぐ」ことが重視されるため、少しでも気になる所見があれば「要精査」と判定される傾向があります。そのため、精密検査を受けた結果「異常なし」と診断される方が大半を占めます。
厚生労働省の統計(令和4年度)によると、肺がん検診で要精査となった方のうち、実際に肺がんが見つかる割合は約1.7〜2%程度とされています(集計方法や年度により若干の差があります)。つまり、要精査と判定された方の多くは、精密検査で「問題なし」または「経過観察で十分」と診断されています。
胸部X線で指摘される「異常影」のよくある原因

胸部X線で「異常影」として指摘される所見には、さまざまな原因があります。代表的なものを紹介します。
治療が不要なことが多い所見
陳旧性変化(ちんきゅうせいへんか):過去の肺炎や結核などが治った跡が、傷跡として残っているものです。古い瘢痕(はんこん)組織であり、多くの場合は治療の必要がありません。
胸膜の肥厚・癒着:肺を包む膜(胸膜)が過去の炎症で厚くなったり、くっついたりした状態です。
石灰化(せっかいか):過去の感染などにより、カルシウムが沈着した状態で、通常は問題となりません。
血管や骨の重なり:正常な血管や肋骨が重なって、あたかも異常な影のように見える場合があります。
経過観察や精査が必要な所見
肺結節(はいけっせつ):肺の中にできた小さな丸い影で、良性のものから悪性のものまでさまざまです。肺結節の精査では、サイズや形状、経時的な変化などを詳しく評価します。
浸潤影・すりガラス影:肺炎や間質性肺疾患などで見られることがある所見です。
腫瘤影(しゅりゅうえい):比較的大きな塊状の影で、詳しい精査が必要です。
【よくある相談パターン】 「去年は何も言われなかったのに、今年急に要精査と言われた」というご相談をいただくことがあります。これは、昨年との比較で新たな所見が出現した場合や、読影医の判断基準による違いなどが考えられます。いずれにしても、精密検査で詳しく評価することが大切です。
精査の流れ:胸部CTとX線の違いと検査でわかること
胸部X線で要精査となった場合、一般的には胸部CT検査が行われます。ここでは、胸部CTとX線の違いについて解説します。
胸部X線検査の特徴
胸部X線検査は、背中から胸に向けて1方向からX線を照射し、1枚の平面画像を撮影します。短時間で撮影でき、被ばく量も少ないため、スクリーニング検査として広く用いられています。
ただし、1枚の画像に複数の臓器が重なって写るため、詳細な評価には限界があります。
胸部CT検査の特徴
胸部CT検査は、体の周囲360度からX線を照射し、体を数mm間隔の「輪切り」にした多数の断面画像を撮影します(枚数は撮影範囲や条件により異なります)。これにより、以下のような詳細な評価が可能になります。
- 異常影が本当に肺の中にあるのか、骨や血管の重なりなのかを判別
- 異常影の正確な位置、大きさ、形状の評価
- 周囲の組織との関係の把握
- 肺全体の詳細なチェック
肺癌診療ガイドライン(日本肺癌学会、2024年版)においても、肺の異常影の精査には胸部CT検査が重要とされています。
精密検査の一般的な流れ
- 医療機関を受診:健診結果を持参して、呼吸器内科や内科を受診
- 問診・診察:症状の有無、喫煙歴、既往歴などを確認
- 胸部CT検査:多くの場合、当日または後日にCT検査を実施
- 結果説明:画像をもとに医師が所見を説明(施設により数日〜1週間程度で結果が出ることが多い)
- 必要に応じて追加検査や経過観察:所見によっては気管支鏡検査や定期的なフォローアップ
CT検査自体は短時間の息止めで撮影が完了し、体への負担は比較的少ない検査です。
【よくある相談パターン】 「CT検査の被ばくが心配」というお声をいただくことがあります。近年の医療用CTは低線量化が進んでおり、医学的に必要な検査においては、検査による利益(早期発見の可能性)が被ばくのリスクを上回ると考えられています。ご不安がある方は、受診時に医師にご相談ください。
受診の目安と何科に行くべきか
何科を受診すればよいか
胸部X線で異常影を指摘された場合、以下の診療科が対応可能です。
呼吸器内科:肺の専門科であり、最も適した受診先です。CT検査や気管支鏡検査などの精密検査に対応できる施設が多いです。
内科・総合内科:呼吸器内科がない場合は、内科でも対応可能です。CT検査設備がある医療機関であれば、一次的な精査を行い、必要に応じて専門施設に紹介してもらえます。
かかりつけ医:まずはかかりつけ医に相談し、適切な医療機関を紹介してもらう方法もあります。
受診のタイミング
要精査と判定された場合は、できるだけ早めに精密検査を受けることが推奨されます。所見の内容によっては早急な対応が必要な場合もありますので、結果票を受け取ったら先延ばしにせず受診しましょう。
精密検査を先延ばしにすると、万が一病気があった場合に発見が遅れる可能性があります。「症状がないから大丈夫」と自己判断せず、早めの受診をお勧めします。
受診時に持参するもの
- 健診・検診の結果票(胸部X線の画像があればなお良い)
- 過去の健診結果(経年比較のため)
- 保険証
- お薬手帳(服薬中の方)
緊急で受診すべき症状(胸痛・呼吸困難など)

健診で要精査と判定された場合でも、通常は緊急性はありません。しかし、以下のような症状がある場合は、精密検査の予約を待たず、すぐに医療機関を受診してください。
【緊急で受診すべき症状】
- 胸痛:特に安静時に起こる強い痛み、圧迫感
- 呼吸困難・息切れ:急に息苦しくなった、横になると息ができない
- 血痰・喀血:痰に血が混じる、咳とともに血が出る
- 高熱:38.5℃以上の発熱が続く
- 意識障害:ぼんやりする、意識がもうろうとする
これらの症状は、肺や心臓に関連する緊急性の高い病気のサインである可能性があります。特に胸痛や呼吸困難が強い場合は、救急外来の受診や救急車の要請も検討してください。
症状がなくても注意が必要な方
以下に該当する方は、無症状でも早めの精密検査が特に重要です。
- 喫煙歴がある方(過去に吸っていた方を含む)
- ご家族に肺がんの方がいる
- アスベスト(石綿)への曝露歴がある
- COPDや間質性肺疾患などの肺の持病がある
まとめ:不安なときは早めに相談を
健診の胸部X線で「異常影」「要精査」と指摘されると、誰でも不安になるものです。しかし、要精査の多くは精密検査で「問題なし」と診断されます。
この記事のポイント
- 「要精査」は「がんの疑いがある」という意味ではなく、「詳しい検査が必要」という意味
- 精密検査では主に胸部CT検査が行われ、X線では見えなかった詳細な情報がわかる
- 受診先は呼吸器内科や内科(CT設備のある医療機関が望ましい)
- 胸痛、呼吸困難、血痰などの症状がある場合は、すぐに受診
不安を抱えたまま過ごすよりも、早めに精密検査を受けて結果を確認することが、心身の健康にとって大切です。
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- 胸部X線で異常影と言われましたが、がんの可能性は高いですか?
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要精査と判定された方のうち、実際に肺がんが見つかる割合は約2〜3%程度です。多くの場合、古い炎症の跡や血管・骨の重なりなど、治療不要な所見であることがほとんどです。ただし、自己判断せず精密検査を受けることが大切です。
- 精密検査は何科で受けられますか?
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呼吸器内科が最も専門的ですが、CT検査設備のある内科でも対応可能です。かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらう方法もあります。検査設備の有無を事前に確認しておくとスムーズです。
- 胸部CT検査はどれくらい時間がかかりますか?
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CT撮影時の息止めは10〜20秒程度で終了します。着替えや準備を含めた検査全体の所要時間は施設により異なりますが、15〜30分程度が目安です。ペースメーカーを装着している方も原則として検査可能ですが、事前に医療機関へ申告し、必要に応じて調整を行います。
- 精密検査を受けないとどうなりますか?
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万が一病気があった場合、発見が遅れて進行してしまう可能性があります。早期発見であれば治療の選択肢も広がるため、症状がなくても必ず精密検査を受けることをお勧めします。
- 胸部CTとX線の違いは何ですか?
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X線は1枚の平面画像で臓器が重なって写りますが、CTは体を輪切りにした断面画像を多数撮影するため、異常影の正確な位置や性状を詳しく評価できます。精密検査ではCTが重要な役割を果たします。
- 要精査の結果が出てから、どれくらいで精密検査を受けるべきですか?
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できるだけ早めに受診することが推奨されます。緊急性は所見により異なりますが、先延ばしにせず早めに検査を受けることで、結果を早く知り、安心にもつながります。
- 精密検査の費用はどれくらいかかりますか?
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精密検査は健康保険が適用されます。3割負担の場合、胸部CT検査で数千円〜1万円程度が目安ですが、医療機関の設備や加算、追加検査の有無により異なります。詳細は受診先にお問い合わせください。
参考文献
- 日本CT検診学会 肺がん診断基準部会編.低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第6版.2024年3月改訂.
- MacMahon H, Naidich DP, Goo JM, et al. Guidelines for Management of Incidental Pulmonary Nodules Detected on CT Images: From the Fleischner Society 2017. Radiology. 2017 Jul;284(1):228-243. doi:10.1148/radiol.2017161659.
- 日本肺癌学会.肺癌診療ガイドライン―悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む 2024年版(Web版).公開:2024-10-31/更新:2025-06-30.
- 国立がん研究センター がん情報サービス.がん検診について(随時更新).
- 厚生労働省.がん検診(肺がん検診:要精密検査者に占めるがん発見割合 等、令和4年度データ).
- 国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部.有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン 2025年度版.2025-04-25(改訂があれば併記).

