「健診で肝機能の異常を指摘された」「肝硬変かもしれないと言われて不安」
インターネットで「肝硬変」と検索すると、深刻な情報ばかりが目に入り、心配になってしまうこともあるでしょう。
肝硬変は、慢性的な肝臓へのダメージが積み重なり、肝臓が硬く変化した状態です。初期には自覚症状がほとんどないため、知らないうちに進行していることも珍しくありません。しかし、だからこそ「どんな症状に注意すべきか」「どのような検査で調べるのか」「いつ受診すべきか」を正しく知っておくことが大切です。
この記事では、肝硬変で見逃してはいけない危険サイン、検査の流れ(採血・エコー・必要に応じてCTなど)、合併症の種類、そして受診すべきタイミングについて、一般の方にもわかりやすく解説します。「画像検査が必要になる場面」や「専門医療機関への紹介が必要なケース」もお伝えしますので、ご自身の状況と照らし合わせながらお読みください。
【この記事でわかること】
✓ 肝硬変とは何か(代償期・非代償期の違い)
✓ 注意すべき症状(腹水・黄疸・出血など)と緊急性の判断
✓ 検査の種類と流れ(採血→エコー→必要に応じてCT等)
✓ 画像検査が必要になる具体的な場面
✓ 主な合併症と専門医・基幹病院への紹介基準
✓ 受診すべきタイミングの目安
肝硬変とは?「沈黙の進行」に気づくために

肝硬変の基本的なしくみ
肝硬変とは、肝臓に慢性的な炎症が続いた結果、正常な肝細胞が「線維(せんい)」という硬い組織に置き換わり、肝臓全体が硬くなった状態を指します。健康な肝臓は表面が滑らかで柔らかいのですが、肝硬変になると表面がゴツゴツと不整になり、全体的に縮んでくる傾向があります。
一般に、肝臓の線維化の程度はF0(正常)からF4(肝硬変)まで5段階で評価されます(代表的な分類:METAVIR分類)。F1〜F3が「慢性肝炎」の段階で、F4に達すると「肝硬変」に相当します。肝硬変診療ガイドライン2020(日本消化器病学会・日本肝臓学会)でも、線維化の評価と進行度に応じた管理の重要性が示されています。
主な原因
肝硬変をきたす代表的な原因には、次のようなものがあります。
ウイルス性肝炎
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎が長期間続くと、肝硬変に進行することがあります。かつては肝硬変の主な原因でしたが、近年は抗ウイルス治療の進歩により、ウイルス性肝硬変は減少傾向にあります。
アルコール性肝障害
長期にわたる過度の飲酒は、肝臓に大きな負担をかけます。アルコール性肝炎を繰り返すことで、肝硬変に進行するケースがあります。
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD/MASH)
肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に関連して発症する脂肪肝の一部は、炎症を伴う「MASH(代謝異常関連脂肪肝炎)」に進行し、さらに肝硬変に至ることがあります。最近では、ウイルス性肝炎が減少する一方で、このMASHからの肝硬変が増加傾向にあり、注目されています。
自己免疫性肝疾患
自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(PBC)など、免疫の異常により肝臓に炎症が起こる病気も、肝硬変の原因となることがあります。
「沈黙の臓器」と言われる理由
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり病状が進行するまで自覚症状が出にくいのが特徴です。これは、肝臓には非常に高い予備能力(余力)があり、多少のダメージを受けても残りの部分で機能を補えるためです。
そのため、健診の血液検査で初めて肝機能の異常に気づくケースも多いのです。「症状がないから大丈夫」とは限らないことを覚えておきましょう。
代償期と非代償期の違い
肝硬変は、その進行度によって「代償期」と「非代償期」に分けられます。この区別は治療方針や予後を考える上で非常に重要です。
代償期(だいしょうき)
肝臓の機能がある程度保たれており、目立った症状がない段階です。肝臓の予備能力で日常生活に必要な機能を維持できているため、本人も病気に気づいていないことが少なくありません。この段階で発見し、原因への対処や生活習慣の改善を行うことで、進行を遅らせることが期待できます。
非代償期(ひだいしょうき)
肝臓の機能低下が進み、腹水、黄疸、肝性脳症などの症状が現れる段階です。この段階になると、症状のコントロールや合併症の管理が治療の中心となります。非代償期に進行させないことが、肝硬変管理の大きな目標の一つです。
見逃してはいけない危険サイン(症状一覧)

肝硬変が進行すると(非代償期)、さまざまな症状が現れます。以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
【重要】注意すべき主な症状
1. 腹水(ふくすい)
お腹に水がたまり、腹部が張る症状です。ベルトがきつくなった、お腹周りが急に大きくなった、と感じることがあります。
腹水が起こるメカニズムは複合的です。肝臓が硬くなると門脈(肝臓に血液を送る血管)の圧力が上がり(門脈圧亢進)、血管から水分がしみ出して腹腔内に貯留します。また、肝臓で作られるアルブミンというタンパク質が減少することで、血管内に水分を保持する力が弱まることも原因となります。
腹水の診断・管理についてはAASLDのPractice Guidance(2021)でも詳しく示されており、原因の特定と適切な治療が重要とされています。
2. 黄疸(おうだん)
白目や皮膚が黄色くなる症状です。肝機能が低下すると、ビリルビンという黄色い色素を処理できなくなり、体内に蓄積することで起こります。尿の色がウーロン茶のように濃くなることもあります。また、皮膚のかゆみを伴うこともあります。
黄疸は非代償性肝硬変の代表的な所見ですが、それ自体は必ずしも緊急性を意味するものではなく、程度や経過によって判断が異なります。ただし、急激に黄疸が進行した場合や、他の症状を伴う場合は早めの受診をおすすめします。
3. むくみ(浮腫)
特に足のすね付近や足首がむくみやすくなります。指で押すとへこんで戻りにくい(圧痕性浮腫)のが特徴です。アルブミンの低下により、血管内に水分を保持する力が弱まることが原因です。
朝起きたときは比較的軽く、夕方になると悪化する傾向があります。靴がきつくなった、靴下の跡がつきやすくなった、などで気づくこともあります。
4. 吐血・下血(消化管出血)
食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)という、食道の血管が膨らんだ状態が破裂すると、大量の出血を起こすことがあります。赤い血を吐く(吐血)こともあれば、黒い便(タール便)として出ることもあります。
門脈圧亢進症に関する国際的な合意声明(Baveno VII、2022年)でも、静脈瘤の評価と管理が重要とされています。静脈瘤は内視鏡検査で発見でき、破裂リスクが高い場合は予防的治療を行うことができます。
【緊急受診が必要】
吐血や大量の黒い便がある場合は、すぐに救急医療機関を受診してください。出血量によっては生命に関わることがあります。
5. 肝性脳症(かんせいのうしょう)
意識がぼんやりする、物忘れがひどくなる、昼夜が逆転する、自分のいる場所がわからなくなるなどの症状です。肝臓で処理されるべきアンモニアなどの有害物質が脳に影響を与えることで起こります。
軽症では性格変化や計算力の低下から始まり、重症になると意識障害や昏睡に至ることもあります。「羽ばたき振戦(はばたきしんせん)」という特徴的な手のふるえが見られることもあります。これは両手を前に伸ばしたときに、手首が羽ばたくようにパタパタと動く現象です。
EASLの肝性脳症ガイドライン(2022)でも診断・管理の指針が示されており、早期発見と適切な治療が重要とされています。
6. 出血傾向
歯茎から出血しやすい、鼻血が止まりにくい、あざができやすいなどの症状です。肝臓で作られる血液凝固因子(血を固める成分)が減少することで起こります。
ちょっとぶつけただけで大きなあざができる、歯磨きのたびに出血する、といった症状がある場合は注意が必要です。
よくある相談パターン
「最近、足のむくみがひどくて、お腹も張っている気がします。肝硬変でしょうか?」というご相談をいただくことがあります。むくみや腹部膨満感は肝硬変以外の原因でも起こりますが、複数の症状が重なる場合や、肝臓病のリスク因子(ウイルス性肝炎の既往、長期の飲酒習慣、肥満など)がある場合は、一度検査を受けることをおすすめします。
また、「健診で肝機能異常を指摘されましたが、症状がないので様子を見ています」というケースも多いです。前述の通り、肝臓は「沈黙の臓器」であり、症状がなくても病気が進行していることがあります。異常を指摘されたら、症状がなくても一度は精密検査を受けることが大切です。
肝硬変の検査の流れ(採血・エコー・必要時CT等)

肝硬変が疑われる場合、段階的に検査を進めていきます。検査の組み合わせは個々の状態によって異なりますが、一般的な流れをご説明します。EASLの非侵襲的検査ガイドライン(2021)でも、血液検査とエラストグラフィを組み合わせた二段階評価が推奨されています。
Step 1:血液検査(採血)
まず行われるのが採血です。以下の項目を確認します。
肝機能検査
AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値で、肝臓に炎症があるかどうかを調べます。これらの数値が高いと、肝臓に何らかのダメージがあることを示唆します。
肝合成能の評価
アルブミン(タンパク質の一種)やプロトロンビン時間(血液が固まる時間)を測定します。これらは肝臓で作られる成分であり、数値が低下していると肝機能が落ちていることを示します。
線維化マーカー
血小板数、ヒアルロン酸、M2BPGi、4型コラーゲン7Sなどを測定します。肝臓の線維化が進むと、これらの数値に変化が現れます。
原因検索
肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原、HCV抗体など)を調べ、ウイルス性肝炎の有無を確認します。自己免疫性肝疾患が疑われる場合は、自己抗体の検査も行います。
FIB-4 index(フィブフォー・インデックス)
血液検査データから算出できる指標で、年齢、AST、ALT、血小板数から計算されます。この数値により、線維化の程度をある程度推定することができます。日本肝臓学会や国際的なガイドラインでも活用が推奨されており、1.3未満であれば高度線維化の可能性は低い、2.67以上であれば高度線維化の可能性が高い、とされています。
Step 2:腹部超音波検査(エコー)・エラストグラフィ
腹部エコー検査
エコー検査では、肝臓の形態や表面の状態、脾臓の大きさ、腹水の有無などを確認します。肝硬変が進行すると、肝臓の表面がゴツゴツと不整になり、大きさも小さくなる傾向があります。また、脾臓が腫大(大きくなる)していることも、門脈圧亢進を示唆する所見です。
エコー検査は痛みがなく、放射線被曝もないため、繰り返し検査を受けることができます。検査時間は10〜15分程度です。
フィブロスキャン(超音波エラストグラフィ)
フィブロスキャンは、肝臓の硬さを数値で測定できる検査です。お腹の上から専用のプローブを当て、振動を送って肝臓の硬さを測定します。
この検査は痛みがなく、軽くトントンと叩かれるような振動を感じる程度です。検査時間は5分程度で、繰り返し検査を受けることが可能です。針を刺さずに線維化の程度を推定する一助となりますが、これ単独で確定診断を行うものではなく、他の検査結果と総合して評価します。
フィブロスキャンでは、肝臓の硬さ(kPa:キロパスカル)と脂肪量(CAP値)を同時に測定できます。一般的に、硬さの値が高いほど線維化が進んでいることを示唆します。
Step 3:CT検査・MRI検査(必要に応じて)
CTやMRIは全例にルーチンで行うものではなく、目的に応じて検討されます。主な適応は以下の通りです。
肝臓に腫瘤(しこり)が疑われる場合
エコーで肝臓に影や腫瘤が見つかった場合、肝がんなどの可能性を調べるために造影CT検査やMRI検査を行います。造影剤を使用することで、腫瘍の血流パターンや性質をより詳しく評価できます。
腹水や門脈圧亢進の詳細な評価
腹水の貯留状況や、脾臓の腫大、側副血行路(迂回路となる血管)の発達具合などを詳しく評価する際にCTが役立つことがあります。
肝臓全体の形態把握が必要な場合
肝硬変の進行度や、肝臓全体の状態を把握するために画像検査が行われることがあります。
Step 4:上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
肝硬変では食道静脈瘤や胃静脈瘤の合併が多いため、内視鏡検査で確認することが重要です。静脈瘤は門脈圧亢進により、本来肝臓に流れ込むはずの血液が食道や胃の血管を迂回して流れることで発生します。
内視鏡検査では、静脈瘤の大きさ、形態、表面の色調などを観察します。静脈瘤の表面に赤い斑点(Red Color サイン:RC サイン)がある場合は、破裂リスクが高いと判断されます。
AASLDの門脈圧亢進症Practice Guidance(2024)でも、静脈瘤のリスク層別化と管理が詳述されています。破裂リスクが高い静脈瘤に対しては、予防的な内視鏡治療(結紮術や硬化療法)が検討されます。
Step 5:肝生検(必要に応じて)
肝生検は、肝臓に細い針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。線維化の程度を最も正確に評価できる「ゴールドスタンダード」とされていますが、侵襲的な検査であり、出血などのリスクもあるため、全例に行うわけではありません。実施方法は施設により異なり、日帰りで行う場合もあれば、短期入院で経過観察を行う場合もあります。
近年は、フィブロスキャンなどの非侵襲的検査の精度が向上しており、肝生検の必要性は以前より減少しています。ただし、原因不明の肝障害や、複数の肝疾患の合併が疑われる場合など、肝生検が必要となるケースもあります。
画像検査が必要になる場面とは

すべての方にCTやMRIが必要なわけではありません。では、どのような場面で画像検査が必要になるのでしょうか。
画像検査を検討する主な場面
1. 肝臓に腫瘤(しこり)が疑われるとき
エコーで肝臓に影や腫瘤が見つかった場合、肝がんなどの可能性を調べるためにCTやMRIで精密検査を行います。肝硬変がある方は肝がんのリスクが高いため、定期的な画像検査によるサーベイランス(監視)が推奨されています。
AASLDの肝細胞癌Practice Guidance(2023)でも、肝硬変患者に対する定期的なスクリーニング(6ヶ月ごとのエコー検査など)の重要性が強調されています。早期に発見できれば、治療の選択肢が広がります。
2. 腹水や門脈圧亢進の評価
腹水の貯留状況や、脾臓の腫大、側副血行路(迂回路となる血管)の発達具合などを詳しく評価する際にCTが役立つことがあります。腹水の原因が肝硬変によるものかどうかを判断するためにも、画像検査が参考になります。
3. 肝臓の形態を詳細に把握したいとき
肝硬変の進行度や、肝臓全体の状態を把握するために画像検査が行われることがあります。また、肝移植の適応を検討する際には、詳細な画像評価が必要となります。
4. 肝がんサーベイランス(定期検査)
肝硬変と診断された方は、肝がん発生のリスクが高いため、定期的な画像検査が推奨されています。一般的には、6ヶ月ごとのエコー検査が基本となりますが、状況に応じてCTやMRIを組み合わせることもあります。
よくある相談例
「健診でエコーを受けたら、肝臓の表面が少し不整と言われました。CTは必要ですか?」というご相談をいただくことがあります。
エコーだけでも多くの情報が得られますが、腫瘍が疑われる場合や詳細な評価が必要な場合には、CTやMRIを追加することがあります。必要性は個々の状況により異なりますので、担当医とご相談ください。
「CTの放射線被曝が心配です」というご質問もよくいただきます。確かにCT検査には放射線被曝がありますが、医療目的で行う検査では、得られる情報のメリットがリスクを上回ると判断される場合に実施されます。不必要な検査は行いませんので、ご安心ください。被曝量についてご不安がある場合は、遠慮なく担当医にお尋ねください。
合併症と専門医療機関への紹介基準

肝硬変には、さまざまな合併症が伴う可能性があります。合併症の種類や重症度によっては、専門医療機関や基幹病院との連携が必要になることがあります。
主な合併症
| 合併症 | 概要 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 食道・胃静脈瘤 | 門脈圧亢進により食道や胃に静脈瘤ができる | 内視鏡的治療(結紮術、硬化療法)など |
| 肝がん(肝細胞癌) | 肝硬変を背景に発生しやすい | 画像検査によるサーベイランス、各種治療 |
| 肝性脳症 | アンモニアなどが脳に影響 | 薬物療法、栄養管理など |
| 難治性腹水 | 利尿剤が効きにくい腹水 | 穿刺排液、CART療法など |
| 肝腎症候群 | 肝不全に伴う腎機能低下 | 専門的治療が必要 |
| 特発性細菌性腹膜炎(SBP) | 腹水への細菌感染 | 抗菌薬治療 |
各合併症の詳細
食道・胃静脈瘤
門脈圧が上昇すると、血液が肝臓を迂回して流れるようになり、食道や胃の血管が膨らんで静脈瘤を形成します。静脈瘤が大きくなったり、壁が薄くなったりすると破裂のリスクが高まります。定期的な内視鏡検査で静脈瘤の状態を確認し、必要に応じて予防的治療を行うことが重要です。
肝がん(肝細胞癌)
肝硬変がある方は、肝がん発生のリスクが高いことが知られています。定期的なサーベイランス(6ヶ月ごとのエコー検査と腫瘍マーカー測定)により、早期発見・早期治療を目指します。肝がんの治療法には、手術、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、薬物療法などがあり、がんの大きさや個数、肝機能の状態などによって選択されます。
肝性脳症
肝機能低下により、アンモニアなどの有害物質が体内に蓄積し、脳機能に影響を与える状態です。軽症では性格変化や計算力低下、重症では意識障害や昏睡に至ることもあります。治療には、ラクツロース(腸内でアンモニアを減らす薬)やリファキシミン(腸内細菌を抑える抗菌薬)、分岐鎖アミノ酸製剤などが使用されます。
難治性腹水
通常の利尿剤治療では改善しない腹水を指します。腹水穿刺排液(お腹に針を刺して腹水を抜く処置)や、CART療法(腹水を濾過濃縮して体内に戻す方法)が検討されます。また、TIPSという門脈と肝静脈をつなぐシャント術が行われることもあります。
専門医・基幹病院への紹介が必要なケース
以下のような場合には、より専門的な医療機関での評価・治療が必要となることがあります。当院でも、必要に応じて大学病院や基幹病院と連携して診療を行っています。
- 肝がんが疑われる/発見された場合
- 食道静脈瘤の治療が必要な場合
- 肝移植の適応を検討する段階
- 難治性の合併症が見られる場合
- 原因精査のために肝生検が必要な場合
- 急性増悪(急激な悪化)が見られる場合
【ポイント】
高リスクの方には、専門医や基幹病院への紹介を含めた連携診療を行います。「紹介されたらもう手遅れ」ではなく、適切な時期に適切な医療を受けることが重要です。紹介は「見放される」ことではなく、「より専門的なケアを受けられる」ことを意味します。
受診の目安と相談のタイミング

「どのタイミングで受診すればよいか」は、多くの方が迷われるところです。症状の緊急度に応じた目安をお伝えします。
緊急度別 受診の目安
🔴 すぐに救急受診が必要
- 吐血した(口から血を吐いた)
- 大量の黒い便(タール便)が出た
- 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
- 急激な腹痛と発熱がある(特発性細菌性腹膜炎の可能性)
これらの症状は生命に関わる可能性があります。夜間・休日でも迷わず救急医療機関を受診してください。
🟠 早めに(数日以内に)受診を
- 白目や皮膚が黄色くなってきた
- お腹が急に張ってきた(腹水の疑い)
- 足のむくみがひどくなった
- 微熱が続いている
- 尿の色が濃くなった
- 食欲低下や体重減少が続く
これらの症状は、肝機能の悪化や合併症の出現を示唆している可能性があります。かかりつけ医や専門医に早めに相談しましょう。
🟢 計画的に相談を
- 健診で肝機能異常を指摘された
- 肝臓の数値が以前より悪化している
- 疲れやすい、だるさが続く
- 家族に肝臓病の方がいて心配
- お酒を長年飲み続けている
- 肥満や糖尿病がある
これらに当てはまる方は、症状がなくても定期的な検査をおすすめします。早期発見・早期対応が重要です。
よくある相談例
「健診で肝機能異常を指摘されましたが、自覚症状がないので様子を見ていました。受診したほうがよいでしょうか?」
肝臓は「沈黙の臓器」であり、症状がなくても病気が進行していることがあります。異常を指摘されたら、一度は専門的な評価を受けることをおすすめします。特に、数値の異常が続いている場合や、悪化傾向にある場合は、早めの受診をお勧めします。
「親が肝硬変と診断されました。遺伝しますか?」
肝硬変そのものは遺伝しませんが、原因となる病気の一部には遺伝的要因が関与するものもあります。B型肝炎は母子感染で広がることがあるため、ご家族がB型肝炎の場合は検査をおすすめします。また、生活習慣は家族で似ることが多いため、アルコール性肝障害や脂肪肝のリスクが共有されることもあります。
「肝硬変と診断されましたが、お酒はやめたほうがよいですか?」
肝硬変の原因がアルコールであるかどうかに関わらず、肝臓に負担をかけないために禁酒または節酒が推奨されます。特にアルコール性肝硬変の場合は、禁酒が最も重要な治療となります。担当医と相談しながら、適切な対応を決めていきましょう。
まとめ
肝硬変は、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行していることがある病気です。しかし、腹水・黄疸・吐血などの症状が現れた場合には、すでに非代償期に進行している可能性があります。
この記事でお伝えした主なポイントをまとめます。
- 肝硬変は「沈黙の進行」をする病気:症状がなくても油断は禁物です
- 注意すべき危険サイン:腹水、黄疸、吐血・下血、肝性脳症、むくみ、出血傾向
- 検査の流れ:採血→エコー(フィブロスキャン)→必要に応じてCT/MRI→内視鏡
- 画像検査は目的に応じて:全例ルーチンではなく、必要性を判断して実施
- 合併症の管理が重要:定期的なサーベイランスで早期発見・早期対応
- 専門医との連携:高リスクの方は基幹病院との連携診療を
早期に発見し、適切な管理を行うことで、合併症のリスクを減らすことが期待できます。健診で肝機能異常を指摘された方、ご自身の肝臓の状態が気になる方は、採血やエコー検査など基本的な検査から始めてみることをおすすめします。
症状が続く場合や悪化した場合、また不安が強い場合には、早めに医療機関でご相談ください。一人で抱え込まず、専門家と一緒に対策を考えていきましょう。
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当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)では、野々市中央院・金沢駅前院ともに消化器内科・肝臓内科の診療を行っています。採血、腹部エコー検査に加え、野々市中央院ではフィブロスキャン検査やCT検査にも対応しております。
肝臓のことで気になることがある方、健診で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。必要に応じて、大学病院や基幹病院との連携診療も行っています。
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