「検診で肺に結節があると言われた。経過観察でいいと言われたけれど、本当に大丈夫なのだろうか…」
検診で初めて「肺結節」という言葉を聞くと、「がんではないか」「すぐに治療が必要なのではないか」と心配になるのは自然なことです。
この記事では、肺結節と経過観察の意味、胸部X線異常影とCT検査の違い、確認すべきポイント、精査が必要なケースの見分け方、そして受診の目安について、ガイドラインや専門的な知見に基づいてわかりやすく解説します。
経過観察の多くは「慎重に見守る」という積極的な医療判断であり、決して「放置」ではありません。正しい知識を持つことで、次の検査まで少しでも安心して過ごしていただければ幸いです。
検診で「肺結節・経過観察」と言われたときの心構え

肺結節とは何か
肺結節(はいけっせつ)とは、胸部画像検査で見つかる肺の中の小さな「影」や「しこり」のことです。一般的に直径3cm未満の円形または類円形の陰影を指します。
公的集計(地域保健・健康増進事業報告に基づく集計例)では、要精密検査となった方のうち肺がんが見つかる割合は約1.7%前後と報告されています。つまり、要精査になった方の大多数は肺がんではありません。
多くの場合は、以下のような良性の原因によるものです。
- 過去の炎症(肺炎など)が治った痕跡
- 肺内リンパ節(正常な組織)
- 良性腫瘍(過誤腫など)
- 古い感染症(結核など)の石灰化
「経過観察」は放置ではない
「経過観察」と聞くと、「何もしないで様子を見るだけ?」と不安に思われるかもしれません。しかし、経過観察は医学的に重要な意味を持つ積極的な判断です。
日本CT検診学会や国際的なFleischner Societyのガイドラインでは、結節の大きさや性状に応じて、一定期間ごとにCT検査を行い、変化がないかを確認することが推奨されています。これは「すぐに治療が必要な状態ではない」「慎重に経過を追うことで適切なタイミングで対応できる」という専門的な判断に基づいています。
胸部X線とCTの違い─なぜCTでの精査が推奨されるのか
胸部X線異常影の特徴と限界
健診で最初に行われることが多い胸部X線(レントゲン)検査は、肺全体を1枚の平面画像として撮影します。簡便で被ばく量も少ないというメリットがある一方、以下のような構造的な限界があります。
- 心臓・骨・横隔膜との重なり:肺の一部が他の臓器や骨に隠れてしまい、小さな病変が見えにくい「死角」が生じます
- 淡い陰影の検出困難:すりガラス状の薄い影(ground-glass opacity:GGO)は、X線では映りにくいことがあります
- 大きさの限界:一般的に、2cm以下の小さな結節の検出は困難とされています
ガイドラインによると、胸部X線の肺がん検出感度は約60〜74%であるのに対し、胸部CTは約93〜94%と報告されています。
胸部CTとX線の違い
CT検査(Computed Tomography)は、体の周囲360度からX線を照射し、コンピュータで断層画像を再構成する検査です。
| 比較項目 | 胸部X線 | 胸部CT |
|---|---|---|
| 画像の種類 | 平面(1枚) | 断層(多数のスライス画像) |
| 小さな結節の検出 | 困難(2cm以下) | 5mm程度から検出可能 |
| 死角 | あり(心臓・骨の裏など) | ほぼなし |
| 結節の性状評価 | 困難 | 充実型・すりガラス型など詳細に評価可能 |
| 被ばく量 | 少ない | やや多い(低線量CTで軽減可能) |
【補足】 肺結節の評価には、薄いスライス幅(概ね3mm以下)での撮影が推奨されています。これにより、結節の大きさや形状をより正確に評価できます。
経過観察の意味と確認すべき3つのポイント

経過観察と言われた場合、次の検査までに以下の3点を確認・整理しておくと、医師との相談がスムーズになります。
ポイント1:結節の大きさ(サイズ)
日本CT検診学会のガイドライン(2024年3月改訂 第6版)では、結節の大きさによって対応が分かれます。
- 6mm未満:多くの場合、12か月後の検診CTで経過観察
- 6mm以上:精密医療機関でのthin slice CT(薄いスライス幅での詳細なCT)による再検査が推奨
サイズは「最大径と短径の平均値」で判定されることが一般的です。検診結果の書類に記載されている数値を確認しておきましょう。
ポイント2:結節の性状(タイプ)
CTでは結節を以下の3タイプに分類します。
- 充実型(solid nodule):内部が均一に白く映る
- すりガラス型(pure GGO):薄く淡い影で、内部の血管が透けて見える
- 部分充実型(part-solid nodule):すりガラス成分と充実成分が混在
【重要】 部分充実型は悪性の可能性がやや高いとされますが、炎症性病変でも同様の像を呈することがあるため、3か月後のCTで縮小・消失の有無を確認することが推奨されています(日本CT検診学会ガイドラインより)。
ポイント3:次回検査の時期と場所
経過観察のスケジュールは結節の状態によって異なります。
- 小さな充実型結節:3か月後 → 12か月後 → 24か月後と間隔を空けながら観察
- すりガラス型結節:年1回程度の定期的なCTを数年間継続
2年間サイズに変化がなければ、検診施設での通常の検診CTに戻ることが多いとされています。ただし、すりガラス型の場合は緩徐に進行する腺がんの可能性もあるため、その後も年1回程度の経過観察が推奨される場合があります。
精査が必要になるケースと紹介の流れ
精査(確定診断)が推奨されるケース
日本CT検診学会のガイドラインによると、以下のような場合は確定診断に進むことが推奨されています。
- 結節全体の最大径が15mm以上(部分充実型・すりガラス型の場合)
- 充実成分の径が8mm以上(2024年改訂で5mmから変更)
- 経過観察中に2mm以上の増大が認められた場合
- 肺がんを強く疑う所見(形状の不整、スピキュラ(放射状の突起)など)
紹介が必要なケースとは
検診施設やかかりつけ医から、呼吸器専門医や高次医療機関への紹介が検討されるのは、以下のような場合です。
- 確定診断(生検や手術)が必要と判断された場合
- PET-CT検査など、より詳細な画像評価が必要な場合
- 手術適応の判断が必要な場合
- 患者さん自身の強い希望がある場合
紹介の際には、これまでのCT画像データ(CD-ROMなど)を持参できると、専門医が過去の画像と比較して評価することができます。
よくある相談パターン(一般化した例)
パターン1:「6か月前と比べて少し大きくなったと言われた」
2mm以上の増大であれば確定診断が検討されます。微小な変化の場合は測定誤差の可能性もあるため、さらに3か月後の再検査で慎重に判断されることもあります。
パターン2:「結節は小さいが、喫煙歴が長いので心配」
喫煙歴はリスク因子の一つですが、結節の大きさや性状が経過観察の範囲内であれば、ガイドラインに沿った定期的なCT検査で対応するのが一般的です。
パターン3:「すりガラス状の結節で、3年間変化がない」
消失しないすりガラス結節は腫瘍性病変の可能性がありますが、緩徐に進行するタイプも多く、医師が総合的に判断します。年1回のCT検査を継続することが多いです。
よくある相談パターンと受診目安
不安を整理するための考え方
検診で肺結節を指摘されると、「がんかもしれない」という不安が頭を離れないことがあります。しかし、以下の点を思い出していただければと思います。
- 経過観察と判断されたということは、現時点ですぐに治療が必要な状態ではないと専門的に評価されている
- 定期的なCT検査で変化を追うことで、万が一の変化も早期に捉えられる体制が整っている
- 不安なまま過ごすより、疑問点を主治医に確認することで安心感が得られることも多い
受診目安の整理
| 状況 | 対応目安 |
|---|---|
| 指定された時期に定期検査を受けられる | 予定通りの経過観察でOK |
| 検査結果の内容がよくわからない | かかりつけ医や検診機関に相談 |
| 新たな症状(持続する咳、血痰、胸痛など)が出現 | 早めに医療機関を受診 |
| 次の検査まで待てないほど不安が強い | 早めに専門医に相談 |
【重要】 経過観察中であっても、以下のような症状が新たに現れた場合は、次の定期検査を待たずに医療機関を受診してください。
- 2週間以上続く咳
- 血痰(血が混じった痰)
- 原因不明の体重減少
- 持続する胸の痛みや息苦しさ
要精査と言われたら、できるだけ早く精密検査を
要精密検査と判定された場合は、できるだけ早めに精密検査を受けることが推奨されています。検査結果の書類に記載された医療機関、またはかかりつけ医にご相談ください。
金沢・野々市・白山エリアにお住まいで、検診結果について相談したい方は、お気軽にご連絡ください。当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック野々市中央院・金沢駅前院)では、CT検査に対応しており、検査結果の説明や今後の方針についてご相談いただけます。
まとめ─経過観察中の過ごし方と相談先の選び方
この記事のポイントまとめ
- 肺結節の多くは良性:要精査となった方のうち、肺がんが見つかるのは約1.7%前後です
- 経過観察は積極的な医療判断:「放置」ではなく、ガイドラインに基づいた慎重な経過追跡です
- 胸部CTはX線より検出精度が高い:胸部X線異常影の精査にはCT検査が推奨されます。胸部CTとX線の違いを理解しておくと、検査の意味がわかりやすくなります
- 確認すべき3つのポイント:結節の大きさ、性状(タイプ)、次回検査の時期と場所
- 精査が必要なケース:15mm以上、充実成分8mm以上、2mm以上の増大などは確定診断が検討されます
経過観察中の過ごし方
- 指定された時期に検査を受ける:自己判断で検査を延期・中止しないようにしましょう
- 過去のCT画像データを保管する:転居や医療機関の変更時にも比較ができるよう、CD-ROMなどを保管しておくと安心です
- 禁煙を心がける:喫煙は肺がんの主要なリスク因子です。経過観察中の禁煙は、リスク低減に寄与する可能性があります
- 新たな症状があれば早めに相談:経過観察中でも、気になる症状があれば医師に相談しましょう
相談先の選び方
経過観察中の不安や疑問がある場合、以下のような医療機関に相談できます。
- 検診を受けた施設(検診センター、健診機関)
- かかりつけ医(内科、呼吸器内科など)
- CT検査が可能な医療機関
【重要】 相談の際は、これまでの検査結果や画像データ(CD-ROM)を持参すると、医師が状況を正確に把握しやすくなります。
症状が続く場合や不安がある場合は、早めにご相談ください。
当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック)では、野々市中央院・金沢駅前院ともにCT検査に対応しております。検診結果についてのご相談、経過観察中の不安の解消など、お気軽にお声がけください。女性医師による診療も可能です。
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- 肺結節が見つかったら、すぐに治療が必要ですか?
-
必ずしも治療が必要とは限りません。結節の大きさや性状によっては、定期的なCT検査で経過を観察することが推奨されています。公的集計では、要精査となった方のうち肺がんが見つかる割合は約1〜2%台とされており、大多数の方は肺がんではありません。医師の指示に従い、適切な間隔で検査を受けることが大切です。
- 経過観察中に結節が大きくなったらどうなりますか?
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経過観察中に2mm以上の増大が認められた場合、確定診断(生検や手術)が検討されます。ただし、微小な変化は測定誤差の可能性もあるため、追加のCT検査で慎重に判断されることもあります。増大が確認された場合は、主治医と今後の方針を相談しましょう。
- 胸部X線で「異常影あり」と言われましたが、CTも必要ですか?
-
胸部X線で異常影が指摘された場合、CT検査での精査が推奨されることが多いです。CTはX線より検出精度が高く、結節の大きさや性状を詳しく評価できます。肺癌診療ガイドラインでも、胸部X線異常の精査にはCT検査が原則として推奨されています。
- すりガラス状の結節は危険ですか?
-
すりガラス状の結節(GGO)は、炎症による一時的なものから、緩徐に進行する腺がんまで様々な可能性があります。3か月後のCTで消失すれば問題ないことが多く、消失しない場合も多くは経過観察となります。個別の状況により異なるため、医師の説明をよく聞いて対応しましょう。
- 経過観察はどのくらいの期間続きますか?
-
結節の状態によりますが、一般的に2年間サイズが不変であれば経過観察終了となることが多いです。すりガラス型の場合は、その後も年1回程度のCT検査が推奨されることがあります。具体的な期間は主治医にご確認ください。
- 経過観察中に咳や血痰が出たらどうすべきですか?
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2週間以上続く咳や血痰は、次の定期検査を待たずに医療機関を受診してください。これらの症状は必ずしも結節と関連しているとは限りませんが、早めに医師に相談することで適切な対応が可能になります。
- 肺結節の経過観察中に他の病院に転院できますか?
-
転院は可能です。その際、これまでのCT画像データ(CD-ROM)や検査結果を持参すると、新しい医療機関でも過去の画像と比較した評価ができます。転居などで医療機関を変更する場合は、主治医にデータの提供を依頼しましょう。
参考文献
- 日本CT検診学会 肺がん診断基準部会. 低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第6版(2024年3月改訂).日本CT検診学会.
- 特定非営利活動法人 日本肺癌学会. 肺がん検診ガイドライン 2022年版(2022.7.29).日本肺癌学会. URL:
- Lee JH, Lim WH, Hong JH, et al. Growth and Clinical Impact of 6-mm or Larger Subsolid Nodules after 5 Years of Stability at Chest CT. Radiology. 2020;295(2):448-455. doi:10.1148/radiol.2020191921
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