便通が滞ってしまう便秘は、多くの方にとって悩ましい症状で、腹部の不快感だけでなく、肌荒れや食欲不振など全身に悪影響が及ぶこともあります。
便秘の原因は食生活やストレス、加齢、持病など人それぞれですが、ときに重大な疾患が隠れている場合もあり、大腸カメラや胃カメラなどの内視鏡検査は、便秘の背後にある問題を詳しく調べるうえで重要な手段です。
この記事では、便秘の原因や症状、そして内視鏡検査を用いた診断の流れを解説します。
便秘について
便秘は一時的なものから慢性的なものまで幅広く、人々の生活の質に大きく影響するので、早期に状態を把握し、対処を心がけることが大切です。
便秘に関心を抱く方は、まずその定義や種類、どのような背景があるのかを理解すると予防や改善への第一歩になります。
便秘の一般的な定義
医学的な観点では、排便回数が極端に少ないか、排便時に強い努力を要する状態を便秘と呼び、多くの人が「毎日出ないと便秘」という考えを持ちますが、排便回数には個人差があり、体質や生活習慣によって変わります。
排便回数が週に2~3回でも苦痛がなければ問題ない場合もありますが、便が硬くて出にくい、強くいきまないと出ない、残便感が続くなどの症状があれば、便秘を疑ったほうがよいでしょう。
便秘が気になる方の特徴
慢性の便秘に悩む方は、普段から水分摂取量が少ない、偏った食生活を送っている、運動不足を感じているといった生活習慣上の問題を抱えがちです。
また、仕事や家庭の事情でストレスを多く抱える人や、加齢によって腸の動きが弱くなっている人も便秘になりやすい傾向があります。とくに便秘が長期間継続すると、内科的な原因が隠れている可能性を考えて検査を受けることが大切です。
便秘の分類と特徴
便秘には原因や起こり方によっていくつかの分類があります。代表的なものとして機能性便秘と器質性便秘が挙げられます。
機能性便秘は腸の動きや肛門周辺の機能に問題が生じていても、画像検査などでは大きな異常が見られない状態で、一方、器質性便秘は大腸に腫瘍や狭窄などのはっきりした異常があることで生じるものです。
大腸がんや炎症性腸疾患などが背景にある場合もあるため、便秘が長く続く人は注意が必要になります。
便秘の一般的な人口統計
便秘の有病率は男女差がはっきり見られ、一般的に女性に多く、高齢になるほど増えます。女性ホルモンの影響や妊娠・出産などによる骨盤底筋のダメージも関連すると考えられています。
ただし男性でも、生活習慣が乱れたり運動不足に陥ったりすると便秘を起こしやすいです。
便秘に悩む人が意識したいポイント
- 排便回数だけでなく、便の形状や硬さも確認する
- 生活習慣(食事・水分・運動・睡眠)の乱れを早期にチェックする
- 気になる症状が長引く場合は、病院での受診を検討する
このような点に注意して日々過ごすと、便秘の程度や原因を把握しやすくなります。
便秘に多い背景要因
背景要因 | 内容の例 | 影響の出方 |
---|---|---|
食生活の乱れ | 食物繊維不足、高脂肪食、過度のダイエット | 便が硬くなる、腸内環境の悪化 |
水分摂取不足 | 水やお茶、スープなどをとらない | 便の水分量が減って硬くなる |
運動不足 | デスクワーク中心、体を動かさない | 腸の蠕動運動が弱まり、排便力が低下 |
ストレス過多 | 仕事や人間関係のストレスが強い | 自律神経が乱れ、腸の動きをコントロールできなくなる |
加齢 | 高齢者の筋力低下、臓器の機能低下 | 腹筋や腸管の動きが衰え、便を押し出す力が弱くなる |
便秘の原因とメカニズム
便秘が起こる仕組みは、一言で済むものではなく、腸の蠕動運動の低下、水分不足、食物繊維の不足、ストレスなどが複合的に絡み合い、結果として便が滞りやすい環境を作り出します。
それぞれの原因に対して、生活習慣の見直しや医療機関での検査を検討することが大切です。
食生活や水分摂取の影響
食物繊維が豊富な食事を意識しないと、便の体積が小さくなり、腸内を移動する際にスムーズに排出されにくくなります。
油分の多い食事や甘いものを好む人は便が硬くなりやすく、便秘のリスクが上がり、さらに水分が不足すると、便の水分含有量が足りなくなり、排便時の負担が増大します。
運動不足や筋力低下
現代社会ではデスクワークや自宅での長時間の座り作業など、日常的に体を動かす機会が少なくなりがちで、運動不足によって腸の蠕動運動を助ける腹筋や骨盤底筋が弱り、腸内で便を押し出す力が低下します。
筋力が落ちると、便秘だけでなく内臓下垂などの原因にもつながるため、継続的に体を動かす習慣が大切です。
ストレスや自律神経の関係
強いストレスを受けると自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなるケースがあります。
腸の動きは主に副交感神経が担当しており、交感神経が優位な状態が続くと腸の蠕動運動が抑制され、便がうまく肛門まで運ばれず停滞し、便秘が長引く可能性が高いです。
高齢者が抱える便秘リスク
高齢者は加齢による筋力低下や腸管の動きの減退、さらに服用中の薬の影響などによって便秘が深刻化しやすく、認知機能の低下やうつ症状を抱えている人は、排便の意識や意欲が低下する場合もあります。
加齢による便秘リスクを軽減するためには、日頃の生活習慣の見直しと定期的な医療機関でのチェックが重要です。
便秘の原因を再確認するためのポイント
- 水分と食物繊維を意識した食事を摂る
- 適度な運動習慣を取り入れて筋力を維持する
- ストレスを溜め込まずリラックスする時間を確保する
- 加齢や薬の副作用の影響を考慮し、主治医と相談する
生活を見つめ直すと、便秘の改善に向けたヒントを得られることがあります。
代表的な便秘の成り立ちの仕組み
要因 | 腸内の変化 | 主な影響 |
---|---|---|
食物繊維不足 | 便のかさが減り腸内で滞留しやすくなる | 排便時に強くいきむ必要がある |
水分不足 | 便が硬く乾燥する | 便が肛門付近で詰まりやすくなる |
腸の蠕動運動低下 | 筋力低下・自律神経の乱れで腸の動きが鈍くなる | 便がスムーズに排出されにくい |
ストレス過多 | 交感神経優位で腸の動きが抑制される | 便が長時間とどまり硬くなる |
便秘の症状とチェック方法
便秘は単に「便が出ない」という問題だけでなく、その周辺にさまざまな症状が現れ、中には肌荒れやイライラ感など、一見すると便秘とは無関係に思えるトラブルが発生することもあります。
原因の見極めと同様に、症状を正しく把握し、早めに改善に向けた行動を起こすことが重要です。
腹部膨満感と残便感
便が腸内に長く滞留すると、ガスの発生が増えたり、腸内に硬い便が溜まったりしてお腹が張った状態になりやすく、お腹に違和感が続くことで日常生活にも支障が出やすくなります。
さらに、残便感によって「出し切れていない」という不快感が続き、気持ちの上でもストレスを抱えがちです。
便秘と肌のトラブル
便秘が続くと、体内に老廃物が長時間とどまる形になります。腸内環境が悪化し、体内の代謝やホルモンバランスにも影響を及ぼす可能性があり、肌荒れや吹き出物などの肌トラブルが起きやすくなることが知られています。
慢性的に便が出にくい状況が続くときは、腸内環境の改善を目指すと同時にスキンケアなどにも注意を向けることが望ましいです。
便の性状の見極め方
排便時に出てくる便の形や硬さは、自分の腸内環境を知るバロメーターになり、硬くコロコロした便が続く場合は水分不足や食物繊維不足が考えられ、泥状や水様便に近い便が続く場合は、腸内の炎症や別の病気も疑う必要があります。
日頃から便の状態を観察する習慣をつけると、体調の変化を早期にキャッチしやすいです。
便秘チェックリストの活用
便秘の原因は多岐にわたるため、自分がどの要素に当てはまるのかを整理することが重要で、生活習慣や食事の内容、ストレスの程度などを自分で書き出すと客観的に状況を把握できます。
毎日の排便状況や便の形状、食事と水分摂取量、運動した頻度などを記録しておくと、医療機関を受診する際にも役立ちます。
便秘が疑われるときに意識したい観点
- 1週間の排便回数はどのくらいか
- 便の形状(コロコロ、硬め、普通、やわらかめなど)
- いきみの強さや排便時の痛み
- お腹の張りや残便感の有無
自分がどの程度便秘のリスクを抱えているかを整理すると、治療や生活習慣の改善へつながります。
症状や便の性状でみる主な特徴
便の状態 | 考えられる原因 | 対応策 |
---|---|---|
コロコロ硬い便 | 食物繊維不足、水分不足 | 食事に野菜や果物を取り入れ、水分摂取を意識する |
太く硬い便 | 腸内で便が長時間滞留している | 下剤の検討や腸内環境の整備 |
粘液や血が混じる便 | 炎症性腸疾患、大腸ポリープなどの可能性 | 早めに医療機関を受診し検査を検討する |
やわらかすぎる便 | 腸内環境の乱れ、過敏性腸症候群の疑い | 食事内容の調整や腸の専門検査の検討 |
内視鏡検査とは
大腸カメラや胃カメラなどの内視鏡検査は、消化管の内部を直接観察し、病変や異常がないかを詳しく調べる検査方法です。便秘が長期化している場合、器質的な原因を見逃さないためにも、こうした検査が選択肢に挙がることがあります。
検査のメリットとデメリットを理解し、適切なタイミングで受診すると自身の健康管理に役立ちます。
大腸カメラ・胃カメラ検査の概要
大腸カメラは肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を観察する検査で、胃カメラは口や鼻から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸を調べる検査です。
いずれもリアルタイムで粘膜の状態を確認しながら病変があれば組織検査もできるため、早い段階での診断と治療方針の決定が期待できます。
検査のメリットとデメリット
画像診断ではわかりにくい小さいポリープや出血斑などを直接観察でき、必要に応じてその場でポリープ切除や生検が行える点がメリットです。
一方で、下剤を飲んで腸内を空っぽにする手間がかかることや、検査時に軽い痛みや不快感を伴う可能性があるなどのデメリットもあります。ただし近年は鎮静剤などを使用することで痛みを和らげ、患者さんの負担を減らす工夫が進んでいます。
受診を決めるタイミング
便秘が長期間続いているときや、血便や体重減少などの症状を伴うときは、早めに医療機関を受診することが重要です。
生活習慣を改善しても便秘がまったく良くならない場合や、大腸がんなどの家族歴がある場合にも、内視鏡検査の必要性が高まります。思い当たる点がある方は、主治医や消化器内科専門医に相談することを検討してください。
不安を軽減する工夫
内視鏡検査に対して「痛そう」「恥ずかしい」というイメージを抱く方が多いです。検査が不安な方には鎮静剤の使用や、プライバシーに配慮した検査体制を整えるなど、さまざまな方法で心理的負担を軽減している医療機関があります。
実際に検査を受けた経験があるす人に話を聞いたり、医師や看護師に疑問点を事前に質問したりするのも安心感を得る一助です。
内視鏡検査を受けるか迷ったときに考慮したい点
- 家族歴(大腸がんや胃がんを患った血縁者の有無)
- 便に血液が混じる、体重減少、腹痛がある
- 生活改善をしても改善が見られない
- 負担を減らすために鎮静剤などの利用を検討
いずれかの項目に該当するケースでは、早めに受診し、内視鏡検査も視野に入れてください。
大腸カメラと胃カメラの主な違い
項目 | 大腸カメラ | 胃カメラ |
---|---|---|
検査部位 | 大腸全域(肛門~盲腸、場合によっては回腸末端まで) | 食道、胃、十二指腸 |
アプローチ | 肛門から内視鏡を挿入 | 口または鼻から内視鏡を挿入 |
対象疾患 | 大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患など | 胃潰瘍、胃がん、逆流性食道炎など |
下剤の服用 | 大量の下剤を飲み、腸内を空にする必要がある | 前日夜~当日朝にかけて食事制限を行い、少量の水分は可 |
鎮静剤の使用 | 希望や医師の判断で使用する場合がある | 希望や医師の判断で使用する場合がある |
内視鏡検査による便秘の診断
便秘の背景には、器質的な病変が潜んでいる可能性も考えられ、単なる生活習慣の乱れが原因と思っていた便秘の裏に、大腸ポリープや炎症性腸疾患が見つかるケースはまれではありません。
内視鏡検査によって、腸内環境を直接確認し、必要に応じて治療を進められます。
大腸カメラ検査で見つかる異常
大腸カメラ検査では、大腸内部を観察しながらポリープや腫瘍、炎症の有無を確認でき、便秘が続いている場合、大腸の通過障害が疑われる箇所や狭窄が生じていないかをチェックできます。
仮にポリープが見つかった場合は、検査中に切除できることがあり、将来的ながん化を防ぐ一手です。
胃カメラ検査が役立つケース
便秘の原因は大腸だけとは限らず、胃や十二指腸の消化吸収の状態が悪いと、腸全体の機能に影響を及ぼす可能性があります。胃カメラ検査を行うことで胃潰瘍や逆流性食道炎などの異常を把握し、消化機能に問題がないかを確認できます。
便秘に加えて上腹部の不調がある人は、医師と相談しながら検査を組み合わせることが大切です。
ポリープ・腫瘍の早期発見
内視鏡検査では直接視認が可能なため、小さなポリープや見落とされがちな初期の腫瘍も捉えやすく、とくに大腸がんは早期で発見できれば、外科的処置が軽く済む可能性が高まります。
便秘の原因を探る過程で重大な疾患が見つかったとしても、早めに発見して治療につなげられるのは大きなメリットです。
検査結果と治療方針
組織検査を行った場合あと、良性か悪性かの判断を行い、結果によって治療内容が変わるので、検査結果の説明をしっかり聞き、不明点や不安があれば遠慮なく質問すると安心できます。
生活習慣の改善だけでは解決しづらい便秘も、病変や炎症などの原因が見つかれば治療方針を定められます。
内視鏡検査で便秘診断を行う利点
- 直接観察により、小さな病変も見つけやすい
- ポリープがあれば切除し、病理検査もできる
- 腸全体の状態を把握できる
- 潜在的な大腸がんのリスクも早めに確認できる
便秘の原因がはっきり分かれば、治療の方向性を固めやすくなります。
大腸カメラで把握できる主な病変
病変 | 特徴 | 治療法の例 |
---|---|---|
大腸ポリープ | 粘膜から隆起した良性病変もあれば、悪性化するものもある | 内視鏡的切除、経過観察 |
大腸腫瘍 | 早期がんや進行がんなど多彩な病理 | 手術、内視鏡的治療、化学療法など |
潰瘍性大腸炎 | 粘膜にびらんや潰瘍が広がる炎症性腸疾患 | 薬物療法、栄養療法、外科治療 |
大腸憩室 | 腸壁が部分的に膨らんだ状態 | 食生活指導、便通コントロール |
内視鏡検査の流れと注意点
内視鏡検査は準備段階が重要です。検査前に腸内をきれいにしておかないと、正確な診断に支障が出、また、検査後も体を休める必要があり、検査日に注意すべきことがあります。
正しい知識を身につけ、スムーズに検査を受けられるように準備を進めると安心です。
検査前の準備と下剤の服用
大腸カメラの場合、前日から食事制限を行い、検査当日は大量の下剤を飲む必要があり、腸内に便や残渣があるとカメラで観察しづらくなるため、きれいに排出することが大切です。
下剤は多くの方にとって負担になりますが、腸内を空っぽにすることで検査がスムーズに進み、見落としを減らすことが期待できます。
検査当日の流れ
検査当日は医療機関に到着後着替えや軽い問診を受け、胃カメラや大腸カメラの場合、鎮静剤を使用するかどうかを確認されることが一般的です。大腸カメラでは検査台に横たわった後、肛門から内視鏡を挿入して大腸を隅々まで観察します。
検査時間は個人差があるものの、通常15分~30分程度で終了することが多いです。
検査後の休息とケア
鎮静剤を使った場合は、検査後しばらくベッドで安静にする必要があり、意識がはっきりし、体調に問題がないと判断されると帰宅が可能です。ただし、当日は車の運転を控えるなど、安全面に配慮しましょう。
腹部の張りや軽い痛みを感じる方もいるため、帰宅後も無理をせずに安静を心がけることが重要です。
合併症とリスク
内視鏡検査は安全性の高い医療行為と考えられていますが、まったくリスクがないわけではありません。検査中に腸に傷がついて出血や穿孔が生じたり、鎮静剤の副作用で呼吸や循環が乱れたりする可能性があります。
疑問や不安がある場合は事前に医師にしっかりと相談してください。
スムーズに検査を行うための心得
- 指示された食事制限や下剤の飲み方を守る
- 検査当日は時間に余裕をもって行動する
- 鎮静剤を使う場合は公共交通機関を利用する
- 検査後は休息をとり、急な運動や飲酒は避ける
検査を受ける際に必要な注意点を把握することで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
内視鏡検査日のタイムスケジュール
時間帯 | 主な内容 | ポイント |
---|---|---|
前日夕方 | 軽めの食事をとる | 消化しやすいメニューを選ぶ |
前日夜 | 下剤服用開始 | 指示量を守り、定期的に水分をとる |
当日朝 | 追加の下剤を飲む | 便が透明になるまで続ける |
検査受付~準備 | 受付、着替え、担当医師や看護師の説明を受ける | 疑問点があれば先に聞いておく |
検査実施 | 大腸カメラや胃カメラによる内視鏡検査 | 鎮静剤有無により所要時間が変わる |
検査後 | 安静・モニタリング、検査結果の簡易説明 | 体調に問題なければ帰宅 |
便秘と生活習慣の改善
便秘を軽減するためには、日常の生活習慣そのものを見直すことが欠かせません。内視鏡検査で大きな問題が見つからなかった場合でも、再発を防ぐために正しい食事や運動を取り入れると効果的です。
食事療法と水分補給
食物繊維が豊富な食材(野菜、果物、海藻、豆類、全粒穀物など)を積極的に取り入れると、便のかさが増して排出しやすくなり、また、食物繊維は善玉菌のエサになるため、腸内環境の改善にも寄与します。
水分に関しては、1日に1.5~2.0リットル程度を目安にこまめに摂ることを心がけると良いでしょう。
適度な運動と筋力トレーニング
ウォーキングやジョギング、ヨガなどの軽い有酸素運動は腸の蠕動運動を促進し、排便をスムーズにする手助けになります。加えて、腹筋や骨盤底筋などの筋力トレーニングを組み合わせると、腹圧をかけやすくなり便を押し出す力が高まります。
無理のない範囲で毎日少しずつ運動を行う習慣をつけることが理想的です。
ストレスマネジメント
ストレスが自律神経を乱し、腸の動きを低下させることは前述のとおりで、睡眠をしっかり確保し、自分がリラックスできる方法(音楽を聴く、入浴を楽しむ、趣味に没頭するなど)を取り入れることが大切です。
気軽な気持ちで楽しめるストレス解消法を複数用意しておくと、ストレス過多の状態を防ぎやすくなります。
便秘改善アイテムの活用
市販されている乳酸菌サプリや食物繊維サプリ、あるいはビフィズス菌飲料などを利用すると、腸内環境を整える補助となります。
加えて、ドラッグストアなどで購入できる便秘薬を使う場合は、用法用量を守りながら、一時的なサポートとして活用すると良いでしょう。長期的に便秘薬に頼りすぎると、かえって腸の働きが鈍くなるケースもあるため注意が必要です。
生活習慣を整えるためのヒント
- 朝食をしっかり食べることで腸を目覚めさせる
- 1日数回、軽いストレッチや深呼吸を意識する
- こまめに水分を摂取し、体を冷やしすぎない
- 無理なく継続できる運動を日課にする
便秘改善に役立つ食材
食材 | 特徴 | 食べ方の例 |
---|---|---|
野菜(根菜類) | 食物繊維が豊富で満腹感が得やすい | 煮物やスープ、サラダに加える |
果物 | 水溶性食物繊維やビタミンが多く、腸を刺激しやすい | 朝食やおやつに加えて自然な糖分補給にも |
海藻 | 低カロリーでミネラルが豊富 | 味噌汁、酢の物、和え物などで取り入れる |
豆類 | 食物繊維と植物性タンパク質を同時に摂れる | 煮豆、スープ、サラダのトッピングなど |
発酵食品 | 乳酸菌や麹菌などで腸内環境を整えやすい | ヨーグルト、納豆、味噌などを日常的に摂る |
よくある質問
- 内視鏡検査の痛みはどの程度?
-
大腸カメラや胃カメラの検査中に感じる痛みの程度は個人差があります。大腸の曲がりが強い人はカメラの挿入時にお腹の張りを強く感じることがありますが、鎮静剤を使ってリラックスした状態で検査を受ける方が増えています。
痛みに敏感な場合は遠慮なく医師や看護師に相談して、鎮静剤使用などの検討を進めると良いでしょう。
- 検査後の食事はどうする?
-
大腸カメラ検査や胃カメラ検査の後は、医師から食事再開の指示があります。大腸カメラの場合、腸内を空っぽにした状態で検査を行っているため、検査終了後の数時間は腸に負担をかけないやわらかい食事をすすめています。
あまりに刺激の強い食品やアルコールは避け、消化によいものから少しずつ様子を見て摂取してください。
- 生理中でも検査は受けられる?
-
生理中でも内視鏡検査自体は可能ですが、経血量が多いときは検査時の体勢やプライバシーの面で気になることがあるかもしれません。医療機関によっては生理日をずらせるなら検査日を変更することをすすめる場合もあります。
生理中に検査を受けたい場合は、事前に予約時などにスタッフへ相談しておくと安心できます。
- 便秘外来は何科を受診すればいい?
-
基本的には消化器内科や内科を受診して相談すると、便秘の原因を総合的に調べてもらえます。女性の場合は婦人科系のトラブルが影響している可能性もあり、必要に応じてほかの診療科と連携して検査を行うケースもあります。
初めて受診する際は、かかりつけ医や総合病院の消化器内科に問い合わせると良いでしょう。
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