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内視鏡検査と腹腔鏡手術の違いはどこにあるのか

内視鏡検査と腹腔鏡手術の違いはどこにあるのか

医療の現場でよく耳にする内視鏡と腹腔鏡、どちらも体の中に細いカメラを入れて検査や治療を行うものですが、目的や方法、体への影響には大きな違いがあります。

この記事では、内視鏡と腹腔鏡のそれぞれの特徴や適用範囲、体への負担などを具体的に比較しながら、両者の違いを分かりやすく解説します。

目次

内視鏡と腹腔鏡 基本的な違いを理解する

内視鏡と腹腔鏡は、どちらも鏡という言葉が示す通り、カメラを用いて体内の様子を観察する医療技術ですが、アプローチの仕方や主な目的は大きく異なります。

内視鏡の定義と主な用途

内視鏡は、先端に小型カメラやライトが付いた細長い管状の医療機器です。口や鼻、肛門といった体の自然な開口部から挿入し、食道、胃、十二指腸、大腸などの消化管内部や、気管支、膀胱などの管腔臓器の内部を直接観察します。

主な用途は、病気の早期発見や診断です。例えば、胃カメラ(上部消化管内視鏡)や大腸カメラ(下部消化管内視鏡)は、がんやポリープ、炎症などの病変を直接視認し、必要に応じて組織の一部を採取(生検)して病理診断に役立てます。

また、小さなポリープの切除や出血部位の止血など、検査と同時に簡単な治療を行うこともあります。このように、内視鏡は主に見ることによる診断と、限定的な治療が目的です。

腹腔鏡の定義と主な用途

腹腔鏡は、お腹(腹腔)や胸(胸腔)の内部を観察・治療するために用いる内視鏡の一種ですが、使用方法は異なります。

腹腔鏡手術では、お腹に数カ所、通常5mmから12mm程度の小さな穴(ポート)を開け、そこから腹腔鏡カメラや専用の手術器具を挿入し、医師はモニターに映し出された鮮明な拡大画像を見ながら手術を行います。

主な用途は、開腹手術に代わる低侵襲な外科治療です。胆石症に対する胆嚢摘出術、早期の胃がんや大腸がんの切除、虫垂炎(盲腸)の手術、婦人科領域の良性腫瘍の摘出など、多岐にわたる疾患の治療に用いられます。

腹腔鏡は、観察だけでなく、より複雑な手術操作を行うことが主目的です。

内視鏡検査について詳しく知る

内視鏡検査は、消化器系疾患をはじめとするさまざまな病気の早期発見と正確な診断に重要な役割を果たします。ここでは、内視鏡検査の目的、種類、そして検査の一般的な流れについて掘り下げて解説します。

内視鏡検査の目的:早期発見と精密診断

内視鏡検査の最大の目的は、病気の早期発見と精密な診断で、特に、胃がんや大腸がんといった消化器系のがんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、発見が遅れがちです。

内視鏡検査では、粘膜の微細な変化を直接観察できるため、病変を早期に発見することが可能で、早期に発見できれば、体への負担が少ない治療で根治を目指せます。

また、疑わしい部分が見つかった場合には、その場で組織の一部を採取する生検を行い、顕微鏡で詳しく調べる病理診断にかけることで、確定診断を得られます。

内視鏡検査の種類と対象部位

内視鏡検査にはいくつかの種類があり、観察する部位によって使用する内視鏡の形状や太さ、長さが異なります。代表的なものは、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)です。

内視鏡検査の種類と観察部位

検査の種類主な観察部位挿入経路
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)食道、胃、十二指腸口または鼻
下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)大腸全体(直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)、一部小腸肛門
小腸内視鏡検査小腸口または肛門(ダブルバルーン内視鏡など)

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の詳細

胃カメラと呼ばれるこの検査は、口または鼻から細い内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を観察し、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、食道がんなどの発見に役立ちます。

検査時間は通常10分から15分程度で、経口挿入と経鼻挿入があり、経鼻内視鏡は嘔吐反射が起こりにくく、必要に応じて鎮静剤を使用し、苦痛を軽減することも可能です。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)の詳細

大腸カメラと呼ばれる検査は、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体、場合によっては小腸の一部まで観察し、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)の診断に重要です。

検査時間は通常20分から30分程度ですが、ポリープ切除などを行う場合はもう少し時間がかかります。検査前には、腸管洗浄剤(下剤)を服用して大腸内をきれいにする準備が必要で、鎮静剤の使用が一般的です。

内視鏡検査の流れと準備

内視鏡検査を受けるにあたっては、事前の準備と検査後の注意が必要です。上部消化管内視鏡検査の場合、検査前日の夕食後から絶食となり、当日は水分摂取も制限されることがあります。

下部消化管内視鏡検査では、数日前から食事内容の調整(消化の良いものを選ぶ、種のあるものや繊維の多いものを避けるなど)を行い、検査前日または当日に腸管洗浄剤を服用します。

検査当日は、鎮静剤を使用する場合、検査後に車の運転などができないため、付き添いや公共交通機関の利用を検討する必要があり、検査後は、特に鎮静剤を使用した場合は、しばらく安静にしてから帰宅となります。

生検を行った場合は、結果が出るまでに数日から1週間程度です。

腹腔鏡手術について詳しく知る

腹腔鏡手術は、体に小さな切開を数カ所設けるだけで行える低侵襲手術の一つで、従来の開腹手術に比べて、患者さんの体への負担が少なく、回復も早いといったことが利点です。

腹腔鏡手術の目的:低侵襲な治療の実現

腹腔鏡手術の主な目的は、患者さんの体への負担を可能な限り軽減しつつ、病巣の確実な治療を行うことです。

開腹手術では、病巣に到達するために大きく皮膚や筋肉を切開する必要があり、術後の痛みや回復に時間がかかる一因となっていました。

腹腔鏡手術では、数カ所の小さな切開創からカメラや手術器具を挿入するため、筋肉の損傷が少なく、術後の痛みが軽減されます。また、傷が小さいため美容的な観点からも優れており、早期の社会復帰が可能です。

腹腔鏡手術の仕組みと特徴的な器具

腹腔鏡手術は、まずお腹に小さな切開(ポート)を数カ所作り、そこから炭酸ガスを注入して腹腔内を膨らませ、手術を行うためのスペース(作業空間)を確保します。

このスペースに、先端にカメラが付いた腹腔鏡と、鉗子(かんし)や電気メス、自動縫合器といった細長い専用の手術器具を挿入します。

執刀医は、腹腔鏡カメラが映し出す高精細な拡大画像をモニターで見ながら、これらの器具を操作して手術を進め、鮮明な視野と拡大視効果により、微細な血管や神経の識別が容易になり、より精密な手術操作ができます。

腹腔鏡手術が用いられる代表的な疾患

腹腔鏡手術は、消化器外科、婦人科、泌尿器科など、幅広い分野で多くの疾患に対して行われています。適用範囲は年々拡大しており、以前は開腹手術が一般的だった疾患に対しても、腹腔鏡手術が第一選択となるケースが増えています。

腹腔鏡手術の適用例(消化器外科)

疾患名主な手術内容腹腔鏡手術の利点
胆石症・胆嚢ポリープ腹腔鏡下胆嚢摘出術早期離床、短期入院
早期胃がん・早期大腸がん腹腔鏡下胃切除術・大腸切除術リンパ節郭清の精度向上、術後合併症の低減
虫垂炎(盲腸)腹腔鏡下虫垂切除術傷が小さい、感染リスク低減
鼠径ヘルニア(脱腸)腹腔鏡下ヘルニア修復術両側同時修復可能、術後疼痛軽減

婦人科領域や泌尿器科領域での活用

婦人科領域では、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患、初期の子宮体がんや子宮頸がんなどに対する手術が行われ、泌尿器科領域では、前立腺がんや腎がん、副腎腫瘍などの手術に腹腔鏡技術が活用されています。

腹腔鏡手術の一般的な流れと入院期間

腹腔鏡手術は全身麻酔下で行われます。手術前には、必要な検査(血液検査、画像検査など)を行い、手術の安全性や適応を評価します。

手術当日は、麻酔導入後、お腹にポートを設置し、炭酸ガスで気腹を行い、その後、腹腔鏡カメラと手術器具を挿入し、モニターで腹腔内を確認しながら病巣の切除や再建などの操作を進めます。

手術時間は疾患や術式によって異なりますが、数時間程度かかることが一般的です。手術後は、麻酔から覚醒し、病室で回復を待ちます。術後の痛みは、鎮痛剤でコントロールします。食事は、腸管の動きが回復次第、徐々に開始します。

入院期間は、開腹手術に比べて短縮される傾向にあり、数日から1週間程度です。

目的とアプローチ方法の明確な相違点

内視鏡と腹腔鏡は、どちらも体内にカメラを挿入する医療行為ですが、根本的な目的と体へのアプローチ方法には明確な違いがあります。

観察・検査が主目的の内視鏡

内視鏡の主たる目的は、消化管や気管支といった管腔臓器の内部を直接観察し、病変の有無や状態を詳細に把握すること、つまり「検査」です。粘膜の色調変化、形態異常、出血の有無などをリアルタイムで捉え、病気の早期発見や診断に繋げます。

ポリープ切除や止血術といった治療的な処置も可能ですが、これはあくまで内視鏡による観察の延長線上にある限定的な介入です。内視鏡が提供する詳細な視覚情報は、その後の治療方針を決定する上で非常に重要な根拠となります。

手術・治療が主目的の腹腔鏡

一方、腹腔鏡の主たる目的は、お腹の中や胸の中の病巣に対して外科的な手術・治療を行うことです。

腹腔鏡は手術器具を操作するための目として機能し、医師はモニターに映し出される拡大された鮮明な視野のもとで、病巣の切除、臓器の縫合・再建といった複雑な手技を実施します。

観察も行いますが、それは手術操作を安全かつ正確に進めるための手段であり、最終的なゴールは病気の治療です。

体への負担(侵襲度)と回復期間の違い

医療行為を受ける際に多くの方が気になるのが、体への負担(侵襲度)と、その後の回復にどれくらいの時間がかかるかという点です。

内視鏡検査と腹腔鏡手術は、どちらも低侵襲性を追求した技術ですが、程度や回復の道のりには違いがあります。

内視鏡検査の体への負担と日常生活への復帰

内視鏡検査は、一般的に体への負担が比較的少ない検査で、鎮静剤を使用しない場合や、経鼻内視鏡を選択した場合は、検査後の不快感も少なく、速やかに日常生活に戻れることが多いです。

鎮静剤を使用した場合は、検査後1時間程度安静にし、当日は車の運転や重要な判断を伴う作業は避ける必要がありますが、翌日にはほとんどの方が通常の生活を送れます。

生検やポリープ切除を行った場合でも、多くは日帰りまたは短期の入院で対応可能です。

腹腔鏡手術の体への負担と回復プロセス

腹腔鏡手術は、開腹手術と比較すると格段に体への負担が少ない手術方法です。

傷が小さいため術後の痛みが軽く、出血量も少ない傾向にあります。これにより、術後の早期離床(ベッドから早く起き上がること)や食事開始が可能となり、入院期間の短縮に繋がります。

しかし、手術である以上、全身麻酔が必要であり、術後にはある程度の痛みや倦怠感が伴います。回復プロセスは、数日から1週間程度の入院を経て退院し、その後数週間から数ヶ月かけて徐々に元の生活に戻っていきます。

デスクワークなど軽作業であれば比較的早期に復帰できることもありますが、力仕事や激しい運動は一定期間の制限が必要です。

それぞれのメリットと留意点

内視鏡検査と腹腔鏡手術は、それぞれに優れた点と、受けるにあたって知っておくべき留意点があります。

内視鏡検査の利点と期待されること

内視鏡検査の最大の利点は、消化管などの内部を直接、詳細に観察できることです。レントゲンやCTなどの画像検査では捉えきれない微細な病変や粘膜の色調変化を発見でき、病気の早期診断に繋がります。

また、検査中に疑わしい組織があればその場で生検(組織を一部採取すること)を行い、病理診断によって確定診断を得ることが可能です。

さらに、小さなポリープであれば検査と同時に切除することもでき、診断と治療を一度に行える場合もあります。

内視鏡検査の主な利点

  • 病変の直接観察による早期発見
  • 生検による確定診断
  • 一部の疾患に対する同時治療(ポリープ切除など)
  • 比較的少ない身体的負担

内視鏡検査を受ける上での留意点

内視鏡検査を受ける際には、いくつかの留意点があります。まず、検査前の食事制限や下剤の服用といった準備が必要で、特に大腸内視鏡検査では、腸管をきれいにするための準備が重要です。

検査中は、内視鏡の挿入に伴う不快感や嘔吐反射、腹部の張りなどを感じることがあります。苦痛を軽減するために鎮静剤を使用することもありますが、その場合は検査後に一定時間の安静が必要となり、当日の車の運転などが制限されます。

腹腔鏡手術の利点と期待されること

腹腔鏡手術の最大の利点は、従来の開腹手術に比べて体への負担が格段に少ないことで、お腹に数カ所の小さな傷(ポート)を開けるだけなので、術後の痛みが少なく、回復が早いのが特徴です。

出血量も少なく、入院期間も短縮される傾向にあり、また、傷が小さいため美容的にも優れており、早期の社会復帰が期待できます。

腹腔鏡のカメラは高解像度で拡大視も可能なため、術野を詳細に観察しながら精密な手術操作を行え、複雑な手技も安全に実施できるようになっています。

腹腔鏡手術の主な利点

  • 小さな傷による低侵襲性
  • 術後の痛みの軽減
  • 早期回復と入院期間の短縮
  • 美容面に優れる

腹腔鏡手術を受ける上での留意点

腹腔鏡手術は多くの利点がありますが、留意すべき点もあります。

まず、全身麻酔が必要となるため、麻酔に伴うリスクが伴い、また、手術手技の特性上、触覚が直接伝わりにくいため、執刀医には高度な技術と経験が必要です。

手術時間が開腹手術に比べて長くなる場合もあり、癒着が強かったり、予期せぬ出血があったときなどには、安全を優先して開腹手術に移行することもあります。

術後の合併症としては、創部感染、腹腔内膿瘍、出血、縫合不全などが考えられますが、頻度は開腹手術と同等か、あるいは低いと報告されています。

内視鏡検査と腹腔鏡手術の比較

項目内視鏡検査腹腔鏡手術
主なメリット直接観察、早期診断、生検可能、一部治療も可能、身体的負担が比較的少ない低侵襲(小さな傷、少ない痛み)、早期回復、入院期間短縮、美容面で優れる、精密な手術操作
主な留意点事前準備が必要、検査中の不快感(鎮静剤で軽減可能)、稀に合併症(出血、穿孔など)全身麻酔が必要、高度な技術が必要、開腹移行の可能性、術後合併症のリスク
適応の考え方主に消化管などの管腔臓器の診断、スクリーニング、軽微な治療腹腔内・胸腔内臓器の外科的治療(開腹手術の代替)

どちらを選ぶ?医師との相談が重要

内視鏡検査と腹腔鏡手術は、それぞれ異なる特徴と目的を持つ医療技術です。どちらが適しているかは、患者さんの症状、疾患の種類や進行度、全身状態などを総合的に判断して決定されます。

症状や疾患の特性に応じた適切な選択

例えば、胃の不快感や便通異常といった症状がある場合、まずは内視鏡検査で消化管の状態を詳しく調べることが一般的です。検査の結果、早期のがんやポリープが見つかれば、内視鏡で切除できる場合もあります。

しかし、病変が進行している場合や、内視鏡治療が困難な場合には、腹腔鏡手術や開腹手術といった外科的治療が検討されます。

胆石症や虫垂炎のように、診断がつけば手術が基本的な治療となる疾患では、患者さんの状態や施設の対応力に応じて腹腔鏡手術が選択されることが多いです。

検査と手術の連携

内視鏡検査と腹腔鏡手術は、独立したものではなく、連携して行われることも少なくありません。

大腸内視鏡検査で切除困難な大きなポリープや早期がんが見つかった場合、位置情報を正確に把握した上で、腹腔鏡手術によってより確実に、かつ低侵襲に切除するという流れがあります。

また、手術前に内視鏡で病変の範囲をマーキング(印をつけること)し、腹腔鏡手術の際に切除範囲を正確に決定するのに役立てることもあります。

医師からの十分な説明と理解の重要性

どのような検査や手術を受けるにしても、担当の医師からその必要性、具体的な方法、期待される効果、起こりうる合併症やリスクについて、十分に説明を受けることが重要です。

疑問点や不安なことがあれば質問し、納得した上で治療に同意することが、安心して医療を受けるための基本です。医師は、患者さんの状態を最もよく理解し、最善と考えられる選択肢を提示してくれます。

セカンドオピニオンを活用する視点

診断や治療方針について、主治医以外の医師の意見を聞くセカンドオピニオンも、重要な選択肢の一つです。

特に、大きな手術を勧められた場合や、複数の治療法が考えられる場合には、別の専門医の意見を聞くことで、より納得して治療法を選択できます。

もしご自身の状況についてさらに詳しく知りたい、あるいは他の意見も聞いてみたいと感じられた場合は、最寄りの医療機関や専門医に相談してください。

検査・手術前の準備比較

項目内視鏡検査腹腔鏡手術
食事制限検査前(例:前夜から絶食)手術前(例:前夜から絶食絶飲)
下剤の使用大腸内視鏡検査では必須術式により術前に浣腸などを行う場合あり
麻酔局所麻酔、鎮静剤(任意または推奨)全身麻酔

回復期間の目安比較

項目内視鏡検査(処置なし)腹腔鏡手術(軽度~中等度)
安静期間鎮静剤使用時1時間程度術後数時間~翌日
食事開始検査後数時間~術後当日~翌日(状態による)
通常の活動再開当日~翌日退院後、数日~数週間で徐々に

よくある質問

内視鏡検査や腹腔鏡手術に関して、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめました。

内視鏡検査は麻酔を使いますか?痛みはありますか?

内視鏡検査では、苦痛を軽減するために麻酔を使用することが一般的です。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)では、喉の局所麻酔に加えて、ご希望に応じて鎮静剤(静脈麻酔)を使用します。

鎮静剤を使ると、うとうとと眠っているような状態で検査を受けられ、苦痛をほとんど感じずに済むことが多いです。下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)でも、多くの場合、鎮静剤を使用します。

腹腔鏡手術の傷跡はどのくらいで目立たなくなりますか?

腹腔鏡手術の傷は、通常5mmから12mm程度のものが数カ所で、傷は、丁寧に縫合され、術後しばらくはテープで保護されます。

一般的には数ヶ月から半年程度で徐々に赤みが引き、1年ほど経つと細い白い線状になり、かなり目立たなくなることが多いです。

内視鏡でポリープが見つかった場合、必ず腹腔鏡手術が必要ですか?

必ずしも腹腔鏡手術が必要になるわけではありません。内視鏡検査で発見されたポリープの多くは、その場で内視鏡を使って切除(内視鏡的ポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術:EMRなど)できます。

内視鏡治療は、体への負担が少なく、日帰りまたは短期の入院で行えることが多いです。

しかし、ポリープが大きい場合、がんの疑いが強い場合、内視鏡での切除が技術的に難しい場合(場所や形状などによる)などには、より確実な治療のために腹腔鏡手術や開腹手術が検討されます。

腹腔鏡手術が適さないケースはありますか?

腹腔鏡手術が必ずしも全ての患者さんに適しているわけではありません。

過去に何度も開腹手術を受けていて腹腔内の癒着が非常に強いと予想される、大きな腫瘍で安全な切除が難しい、心臓や肺の機能が著しく低下していて全身麻酔や気腹(お腹にガスを入れて膨らませること)に耐えられない場合には、腹腔鏡手術が適さないことがあります。

また、緊急手術が必要な状況で、迅速な対応が求められる場合にも、開腹手術が選択されます。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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