MENU

腸の内視鏡検査で分かること – 検査前の準備から検査後の注意点

腸の内視鏡検査で分かること - 検査前の準備から検査後の注意点

腸の内視鏡を用いた検査は、大腸ポリープや大腸がんの早期発見だけでなく、大腸炎や潰瘍性大腸炎などの状態を正確に把握するためにも重要です。

消化器症状を見逃さず、早期に原因を突き止めることで、適切な治療につなげられます。

今回の内容では、検査の概要から準備、当日の流れ、検査後の過ごし方、メリットとデメリット、よくある疑問まで幅広く紹介します。

目次

腸の内視鏡検査とは

腸のカメラを使った検査は、消化器疾患の早期診断に役立ちます。大腸がんの有無だけでなく、腸壁の炎症やポリープの大きさなど、さまざまな情報を得られ、また、胃カメラと合わせて受けることで、消化管全体を広く評価できる点も特徴です。

目的と役割

医師が腸内の状態を直接観察し、ポリープや腫瘍などを確認しながら必要に応じて組織を採取することが可能で、消化器症状がある場合はもちろん、無症状の段階でも検査を受けることで将来的なリスクを軽減できます。

大腸がんや炎症性腸疾患などを早い段階で把握するのが主な目的です。

対象となる症状やリスク

便に血が混じる、下痢や便秘を繰り返す、腹痛が持続するなどの症状がある方は検査が勧められ、高齢になるほど大腸がんのリスクが上昇するため、定期的な受診を考えることも大切です。

ポリープが見つかる場合は、その場で切除を行うことができるので、将来的にがん化する可能性を減らせます。

胃の内視鏡との違い

胃の内視鏡は食道や胃、十二指腸までを観察し、腸のカメラは大腸全体を確認し、胃と大腸では病変の種類や症状が異なるため、目的に応じて検査を区別します。

どちらも消化器内視鏡に分類されますが、胃カメラはより短時間で終わることが多く、大腸カメラは腸管の長さから時間を要する傾向があります。

大腸内視鏡と胃内視鏡の比較

種類対象となる消化管一般的な検査時間主な目的
大腸内視鏡大腸全域20~30分程度大腸がんの早期発見、ポリープの発見・切除
胃内視鏡食道・胃・十二指腸10~15分程度胃がんや食道がんの早期発見、胃炎の状態評価

受診のタイミング

腸のカメラを用いた検査は、年齢や症状によって受ける時期が変わり、一般的には40代以降の定期健診で追加検査として検討したり、便潜血検査で陽性が出た場合に早めの受診を行ったりします。

症状が長引く場合は早めに医療機関へ相談することが重要です。

検査前の準備と過ごし方

腸のカメラ検査を受けるうえで、事前の準備が大切で、特に前日からの食事制限や下剤の服用方法によって検査結果の精度が左右されます。

誤った方法で準備を行うと、検査がスムーズに進まないだけでなく、ポリープなどの見落としにつながる可能性もあります。

食事制限のポイント

前日はなるべく消化に良い食事を心がけ、繊維質の多い野菜や種子類、海藻などは腸内に残りやすく、検査の視野を妨げる原因になりかねません。油っこい食事やアルコールも避けましょう。主食はうどんやおかゆなどを選ぶと安心です。

前日に適している食品

食品の種類具体例理由
炭水化物うどん、そうめん、おかゆ消化しやすい
たんぱく質白身魚の煮付け、豆腐、卵負担が少ない
野菜よく煮たにんじんや大根食物繊維を調整しやすい
飲み物水、お茶、スポーツドリンク腸内環境を乱さない

下剤の服用とそのコツ

腸を空っぽにするため、下剤を時間をかけて飲む必要があり、ほとんどの場合、指定された時間帯にスタートし、数時間かけて水や薄めたスポーツドリンクなどと一緒に下剤を飲みます。

短時間で一気に飲み干すと気分が悪くなることがあるため、医師の指示に従って少しずつ飲むと楽です。

主な下剤の種類と特徴

下剤名特徴服用のポイント
ポリエチレングリコール系大量の水分とともに腸管を洗浄少しずつ時間をかけて飲む
ピコスルファート系腸のぜん動運動を促進する水分補給を十分に行う
酸化マグネシウム系塩類で水分を腸内に集める便秘や腸内の停滞を軽減する

薬の服用状況と事前申告

持病がある場合や常用薬がある場合は、検査前に担当医へ申告してください。血液をサラサラにする薬や糖尿病治療薬など、検査前に調整が必要な場合があり、無理に自己判断で休薬せず、必ず医師の判断を仰ぎましょう。

当日の注意点

検査当日は、指定された時間までに絶食を守るのが大切で、水分補給はOKの場合が多いですが、飲んでいいものと量には制限があるケースもあるので、確認を忘れないようにしてください。

検査後におなかが張りやすいため、柔らかい服装で来院することをおすすめします。

検査当日の流れ

腸のカメラ検査をスムーズに行うためには、受付から検査室までの移動や麻酔、検査後の安静など、一連の流れを理解しておくと安心です。

検査時間自体は20~30分程度ですが、準備や検査後の休息を含めて合計で2~3時間程度かかることもあります。

受付から検査室への移動

受付を済ませた後に、更衣室で検査着に着替える流れが一般的で、事前に下剤で腸をきれいにしているため、最終的な排便状況も確認してから検査室へ向かいます。

貴重品やかばんなどはロッカーに預けるか、スタッフの指示に従って保管しましょう。

検査当日のスケジュール

時刻行うこと所要時間
9:00来院・受付約10分
9:10更衣・最終チェック約15分
9:25検査室へ移動数分
9:30検査開始約20~30分
10:00~10:10リカバリー室で休憩約30~60分

麻酔と鎮静剤について

鎮静剤や鎮痛剤を使うことで、痛みや不快感を軽減でき、点滴などで投与し、検査時の負担を下げる方法です。完全に眠るほどの麻酔量ではなく、うとうとした状態になります。

強い鎮静を選ぶときは、検査後に長めの休息が必要になるので、事前に相談してください。

検査にかかる時間とプロセス

医師がカメラを肛門から挿入し、ゆっくりと腸内を観察していき、腸の形状に合わせて内視鏡を進めるため、曲がり角の部分ではわずかな痛みや違和感を覚えることがあります。

ただし、鎮静を使う場合はほとんど意識せずに検査が進むことも多いです。

リカバリールームでの安静

検査終了後は、リカバリールームで30分から1時間ほど横になって休み、鎮静剤を使った場合は意識がはっきりするまで時間がかかることがあります。意識がはっきりしたら軽い水分補給を行い、問題がなければ帰宅可能です。

腸内視鏡検査で分かること

腸内視鏡を用いると、大腸の粘膜やポリープの有無、潰瘍などを直接目視で確認できます。CT検査やレントゲンではわからない細かい病変をその場で把握でき、病変が確認された場合には組織検査に進めます。

ポリープや腫瘍の有無

大腸ポリープは放置するとがん化する可能性があり、腸のカメラ検査で発見できた場合、その場で切除することが多いです。大腸がんの初期症状が見られないケースでも、内視鏡で直接腸内を観察することで早期発見につなげられます。

見つかる主な病変

病変の種類特徴治療方針
大腸ポリープ大きさや形状によってはがん化リスク内視鏡下切除が一般的
早期大腸がん比較的小さく、深達度が浅い内視鏡的切除が可能
進行大腸がん腸壁の深い層まで達している外科的切除や化学療法

大腸炎や潰瘍性大腸炎の状態

腸内視鏡によって、炎症の範囲や程度を評価でき、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の場合、粘膜のただれ具合や出血の有無を観察しながら治療方針を決めやすくなります。

症状が緩解していても、定期的な検査で炎症の再発をチェックすることが重要です。

消化管の粘膜の様子

腸のカメラで観察できる粘膜は、健康状態を色や質感で把握しやすいです。

赤みが強い部分や、ただれた部分、出血しやすい部位があれば、炎症が進行している可能性があり、組織を少し採取して、病理検査を行うケースもあります。

結果を踏まえた追加検査

腸内視鏡で異常が見つかった場合は、CTやMRIなどの画像検査を組み合わせることもあり、腫瘍が大きい場合や周囲のリンパ節転移が疑われる場合は、詳細な画像評価が有用です。

ポリープが多数あるケースでは、経過観察の頻度が増えることもあります。

検査後の注意点

腸内視鏡検査が終わった後は、腸管内にガスが溜まっていることや麻酔の影響などで体調がいつもと違う場合があります。無理せずにゆっくりと日常生活に戻すことが重要です。

食事の再開

検査直後に飲食を摂る場合は、消化しやすいものを選びます。重い食事を急にとると、下痢や腹痛を起こしやすくなるので、おかゆやスープなど、胃腸に優しいメニューがおすすめです。特にポリープ切除などを行った日は刺激物を避けてください。

検査後に向いている食事

分類具体例注意点
主食おかゆ、軟飯、うどん少量から始める
汁物味噌汁(具は柔らかく少なめ)、コンソメスープ塩分や脂質を控えめ
たんぱく質豆腐や白身魚胃腸への負担が少ない
野菜柔らかく煮込んだもの繊維質はやや控えめ

日常生活への復帰

検査当日はなるべく激しい運動や長時間の移動を控えることが大切です。鎮静剤を使用した場合は眠気やふらつきが続くことがあるので自動車の運転は避け、公共交通機関を利用するか、付き添いの方に来てもらいましょう。

合併症の兆候のチェック

まれにですが、腸内をカメラで観察する過程で腸に傷がついたり、出血が起きたりするリスクがあり、検査後に腹痛や血便が続く場合は、早めに医療機関へ連絡してください。

ポリープ切除を行った部位から出血するケースも稀にありますが、ほとんどは自然に止血します。

主な合併症と対処の目安

合併症症状対処
穿孔強い腹痛、発熱、腹部の硬直すぐに医療機関を受診
出血血便、便に鮮血が混じる軽度なら経過観察、増量する場合は医師へ連絡
感染症発熱、腹部不快感抗生剤や再受診が必要なこともある

経過観察の重要性

一度検査を受けて異常がなかった場合でも、年齢や生活習慣によって新たにポリープができる可能性があり、定期的な検査で変化を見逃さないようにすることが健康維持につながります。

ポリープ切除後は再発予防の観点から、医師の指定する時期に再検査を検討してください。

腸内視鏡検査を受けるメリットとデメリット

腸のカメラを使った検査には明確なメリットがある一方で、身体的・心理的な負担も考慮することが必要です。正しい知識をもって受検することで、デメリットを最小限に抑えながら最大限の恩恵を得られます。

メリット:早期発見と予防

大腸がんを早期で見つけることができれば、内視鏡切除などで対応可能なことが多いく、日常的に自覚症状が少ない段階でも、腸内視鏡を行うことでがん化のリスクを下げられます。

特に家族に大腸がんの既往がある場合は積極的な受診が大切です。

メリット:ポリープ切除

ポリープは悪性化する前に切除しておくのが望ましく、腸の内視鏡であれば、そのまま切除できるのが大きな利点です。組織検査によって良性・悪性の判断を行い、悪性が疑われる場合は追加治療にスムーズにつなげられます。

主なメリットと効果

メリット具体的な効果
早期発見内視鏡による直接観察で小さな病変を見逃しにくい
ポリープ切除その場で切除し、がん化を抑える
炎症の評価潰瘍性大腸炎などの診断と治療方針の明確化

デメリット:合併症のリスク

ごく稀ですが、腸壁に傷がつく穿孔や、ポリープ切除部位の出血などのリスクがあり、また、鎮静剤を使う場合は副作用として呼吸抑制や血圧低下に注意しながら施行する必要があります。

安全に実施するためにも、医療スタッフの指示と経過観察を丁寧に行うことが重要です。

費用と時間の負担

検査費用は保険適用の有無や医療機関によって変動し、負担割合に応じて自己負担額が変わるため、受検を予定している医療機関へ問い合わせてください。検査当日は前後の準備や安静時間も含め、半日程度必要となるケースが多いです。

検査を受ける際の不安や疑問

腸のカメラ検査に対して「痛みが強そう」「恥ずかしい」などの心理的ハードルを感じる方もいます。適切な情報を得ておくことで、不安や緊張を軽減できます。

痛みや負担に関して

検査時の痛みは個人差がありますが、腸の形状に合わせて内視鏡を進めるときに圧迫感を覚える場合がありますが、鎮静剤を使うと意識がぼんやりしている間に検査が終わることも多いです。

痛みに弱い方や不安が強い方は、相談しましょう。

不安を軽減するための工夫

  • 医師や看護師に事前に質問する
  • 鎮静剤・鎮痛剤の利用を検討する
  • リラックスできる音楽を利用できる院内環境を探す
  • 帰宅時に付き添いを確保する

恥ずかしさを軽減する工夫

肛門からカメラを挿入するため、恥ずかしさを感じる方は多いですが、検査用の専用パンツやタオルで隠しながら進めるなど、プライバシーへの配慮が行われます。

女性スタッフが対応してくれる医療機関もあるので、事前に相談しておくことが大切です。

セデーションの利用の判断

鎮静剤を使うと検査中の意識レベルが下がり、痛みや不快感をあまり感じませんが、、薬の副作用や検査後にしばらく休憩が必要になることも考慮する必要があります。翌日に仕事がある方は回復時間を想定して予定を組むと安心です。

よくある質問

腸のカメラを使った検査に対して、多くの方が共通して抱く疑問や確認点を紹介します。事前に把握すると、受診準備がスムーズです。

検査の予約はどれくらい前にすればよいですか

医療機関によって予約状況が異なりますが、少なくとも2週間前までに余裕をもって予約することをおすすめします。繁忙期や健康診断シーズンは予約が取りにくい場合があるため、早めに問い合わせると良いでしょう。

生理中に受けても問題ありませんか

生理中でも検査を受けることは可能ですが、出血量が多い場合は不快感やケアが煩雑になることがあります。ナプキンなどの着用方法を相談し、不安があれば検査日程を調整することも一案です。

妊娠の可能性があるときはどうすればよいですか

妊娠中や妊娠の可能性がある方は、腸のカメラ検査を行うかどうか慎重に検討します。医師へ必ず申告し、検査の必要性やリスクをよく話し合ってください。緊急性がない場合は、出産後に改めて検査を行うケースもあります。

ほかの内視鏡検査と同日に受けられますか

胃カメラとの同日検査を実施する医療機関もあります。ただし、体力的な負担が増える可能性があるため、医師と相談して決めるのが一般的です。

費用や検査時間の問題もあるので、受診したい検査の優先度を考慮しながら計画しましょう。

参考文献

Niikura R, Hirata Y, Suzuki N, Yamada A, Hayakawa Y, Suzuki H, Yamamoto S, Nakata R, Komatsu J, Okamoto M, Kodaira M. Colonoscopy reduces colorectal cancer mortality: A multicenter, long-term, colonoscopy-based cohort study. PloS one. 2017 Sep 28;12(9):e0185294.

Saito Y, Oka S, Kawamura T, Shimoda R, Sekiguchi M, Tamai N, Hotta K, Matsuda T, Misawa M, Tanaka S, Iriguchi Y. Colonoscopy screening and surveillance guidelines. Digestive Endoscopy. 2021 May;33(4):486-519.

Hata K, Watanabe T, Kazama S, Suzuki K, Shinozaki M, Yokoyama T, Matsuda K, Muto T, Nagawa H. Earlier surveillance colonoscopy programme improves survival in patients with ulcerative colitis associated colorectal cancer: results of a 23-year surveillance programme in the Japanese population. British journal of cancer. 2003 Oct;89(7):1232-6.

Yamaguchi H, Fukuzawa M, Minami H, Ichimiya T, Takahashi H, Matsue Y, Honjo M, Hirayama Y, Nutahara D, Taira J, Nakamura H. The relationship between post-colonoscopy colorectal cancer and quality indicators of colonoscopy: The latest single-center cohort study with a review of the literature. Internal Medicine. 2020 Jun 15;59(12):1481-8.

Okamoto M, Shiratori Y, Yamaji Y, Kato J, Ikenoue T, Togo G, Yoshida H, Kawabe T, Omata M. Relationship between age and site of colorectal cancer based on colonoscopy findings. Gastrointestinal endoscopy. 2002 Apr 1;55(4):548-51.

Osada T, Ohkusa T, Okayasu I, Yoshida T, Hirai S, Beppu K, Shibuya T, Sakamoto N, Kobayashi O, Nagahara A, Terai T. Correlations among total colonoscopic findings, clinical symptoms, and laboratory markers in ulcerative colitis. Journal of gastroenterology and hepatology. 2008 Dec;23:S262-7.

Cappell MS, Friedel D. The role of sigmoidoscopy and colonoscopy in the diagnosis and management of lower gastrointestinal disorders: endoscopic findings, therapy, and complications. Medical Clinics. 2002 Nov 1;86(6):1253-88.

Brenna E, Skreden K, Waldum HL, Marvik R, Dybdahl JH, Kleveland PM, Sandvik AK, Halvorsen T, Myrvold HE, Petersen H. The benefit of colonoscopy. Scandinavian journal of gastroenterology. 1990 Jan 1;25(1):81-8.

Pan J, Xin L, Ma YF, Hu LH, Li ZS. Colonoscopy reduces colorectal cancer incidence and mortality in patients with non-malignant findings: a meta-analysis. Official journal of the American College of Gastroenterology| ACG. 2016 Mar 1;111(3):355-65.

Click B, Pinsky PF, Hickey T, Doroudi M, Schoen RE. Association of colonoscopy adenoma findings with long-term colorectal cancer incidence. Jama. 2018 May 15;319(19):2021-31.

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

目次