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過敏性腸症候群と便秘の関係性 – 内視鏡検査の重要性

過敏性腸症候群と便秘の関係性 - 内視鏡検査の重要性

お腹の調子が悪い日が続くけれど、原因がよくわからない、過敏性腸症候群かもしれないけれど、特に便秘がひどい、といった悩みを抱えていませんか。

過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が絡み合って発症すると考えられている消化管の機能障害です。

この記事では、過敏性腸症候群と便秘の深い関係性、そして正確な診断と他の病気との鑑別のために内視鏡検査がいかに重要であるかを、分かりやすく解説します。

目次

過敏性腸症候群(IBS)とは何か

過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome、略してIBS)は、主に大腸の運動機能や知覚機能の異常によって起こると考えられている病気です。

IBSの基本的な定義と症状

IBSは、慢性的に腹痛や腹部不快感が続き、それに伴って便通に異常が見られる状態です。症状の現れ方には個人差が大きく、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

主な症状としては、お腹の痛み、お腹が張る感じ(膨満感)、便秘、下痢などがあり、ストレスを感じたときや特定の食事を摂った後などに悪化する傾向があります。

IBSの一般的な症状

症状の種類具体的な内容特徴
腹痛・腹部不快感シクシク、キリキリとした痛み、お腹の張り排便によって一時的に軽快することがある
便通異常便秘、下痢、便秘と下痢の繰り返し便の形状異常(硬い便、泥状便など)を伴う
その他の症状おならが多い、残便感、腹鳴ストレスや食事内容で変動しやすい

IBSの主な原因と考えられるもの

IBSのはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に関与していると考えられています。

主な要因は、消化管の運動異常、内臓知覚過敏、心理的ストレス、腸内細菌叢の乱れ、遺伝的要因、過去の感染性腸炎などです。

  • 消化管の運動機能の亢進または低下
  • 痛みを感じやすい状態(内臓知覚過敏)
  • 精神的なストレスや不安
  • 腸内細菌のバランスの崩れ

IBSの診断基準について

IBSの診断は、特徴的な症状に基づいて行われ、国際的にはローマ基準と呼ばれる診断基準が用いられることが一般的です。

この基準では、過去3ヶ月間に月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、そ症状が排便によって軽快する、排便頻度の変化を伴う、便の形状(外観)の変化を伴う、のうち2項目以上を満たす場合にIBSと診断されます。

ただし、これらの症状を起こす他の病気(例えば、炎症性腸疾患や大腸がんなど)がないことを確認することも重要です。

過敏性腸症候群における便秘のタイプ

過敏性腸症候群は、症状の現れ方によっていくつかのタイプに分類され、その中でも、便秘が主な症状となるのが「便秘型IBS(IBS-C)」です。

便秘型IBS(IBS-C)の特徴

便秘型IBS(IBS-C)は、腹痛やお腹の不快感とともに、便秘が主な症状として現れるタイプです。排便回数が週に3回未満であったり、排便時に強くいきむ必要があったり、硬い便が出たり、残便感があったりといった症状が見られます。

便秘症状が慢性的に続き、便意を感じてもなかなか出ない、出てもスッキリしないといった悩みを抱える方が多いです。

便秘型IBSの主な症状

症状詳細
排便回数の減少週に3回未満の排便
排便困難強くいきむ必要がある、硬い便、残便感
腹部症状腹痛、お腹の張り(排便で軽快することがある)

他のIBSタイプとの違い(下痢型、混合型、分類不能型)

IBSには便秘型の他に、下痢が主な症状となる下痢型IBS(IBS-D)、便秘と下痢を繰り返す混合型IBS(IBS-M)、そして上記のいずれにも当てはまらない分類不能型IBS(IBS-U)があり、便の性状によって分類されます。

ブリストル便形状スケールという指標を用いて、便の硬さや形から判断し、便秘型IBSでは、硬い便や兎糞状の便が多く見られます。

IBSのタイプ分類

IBSのタイプ主な症状便の性状(ブリストル便形状スケールより)
便秘型 (IBS-C)腹痛・腹部不快感、便秘硬い便や兎糞状の便が25%以上、かつ軟便や水様便が25%未満
下痢型 (IBS-D)腹痛・腹部不快感、下痢軟便や水様便が25%以上、かつ硬い便や兎糞状の便が25%未満
混合型 (IBS-M)腹痛・腹部不快感、便秘と下痢の繰り返し硬い便や兎糞状の便が25%以上、かつ軟便や水様便も25%以上
分類不能型 (IBS-U)上記のいずれにも明確に分類できない便の性状の異常が上記の基準を満たさない

便秘型IBSで見られる具体的な便の状態

便秘型IBSの患者さんでは、便の形状にも特徴が見られます。

国際的な指標であるブリストル便形状スケールでは、タイプ1(硬くてコロコロした兎の糞のような便)やタイプ2(ソーセージ状だがゴツゴツして硬い便)が多く見られる傾向があります。

便は、腸管を通過するのに時間がかかり、水分が過剰に吸収された結果、硬く、排出しにくくなり、また、排便後もすっきりしない残便感を伴うことが多いです。

なぜ過敏性腸症候群で便秘が起こるのか

過敏性腸症候群、特に便秘型IBSで便秘が起こる背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。

腸の運動機能の異常

便秘型IBSの患者さんでは、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下していることが多いと考えられていて、蠕動運動とは、腸が内容物を肛門側へ送り出すための収縮運動のことです。

この動きが弱まると、便が腸内に長時間とどまり、水分が過剰に吸収されて硬くなり、排出しにくくなり、また、逆に腸の一部が痙攣(けいれん)するように過剰に収縮し、便の通過を妨げてしまうこともあります。

腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ

私たちの腸内には多種多様な細菌が生息しており、これらは腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)、通称「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内フローラのバランスは、消化吸収の助け、免疫機能の調整、有害物質の分解など、私たちの健康維持に重要な役割を果たしています。IBSの患者さんでは、腸内フローラのバランスが乱れていることが指摘されています。

善玉菌が減少し、悪玉菌が増加することで、腸の運動機能が低下したり、ガスが発生しやすくなったりして、便秘や腹部膨満感を起こすのです。

腸内環境と便秘の関係

腸内細菌のバランス腸への影響便秘との関連
善玉菌が多い状態腸の運動が活発、有害物質の産生抑制便通が整いやすい
悪玉菌が多い状態腸の運動が低下、腐敗物質やガスの産生増加便秘や腹部膨満感を引き起こしやすい
日和見菌優勢な方に加担するバランスが崩れると悪影響も

脳腸相関とストレスの影響

脳と腸は自律神経系やホルモンなどを介して密接に情報をやり取りしており、これを「脳腸相関」と呼び、精神的なストレスを感じると、脳から腸へ信号が送られ、腸の運動機能や知覚に影響を与えることがあります。

便秘型IBSの患者さんでは、ストレスによって腸の動きが抑制されたり、逆に過剰に緊張したりすることで、便秘が悪化する傾向が見られます。

また、腸の不調が脳に伝わり、さらに不安や抑うつ気分を起こすという悪循環に陥ることもあります。

食事内容との関連性

食事の内容も、IBSの症状、便秘に大きく影響し、食物繊維の摂取量が少ないと、便の量が減り、腸の蠕動運動が刺激されにくくなるため、便秘になりやすくなり、また、特定の食品が症状を悪化させることもあります。

近年注目されているのはFODMAP(フォドマップ)と呼ばれる特定の糖質です。

小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすいため、ガスを産生したり、腸の運動に影響を与えたりして、腹痛、腹部膨満感、便秘や下痢を起こす可能性があります。ただし、FODMAPの制限は専門家の指導のもとで行うことが大事です。

過敏性腸症候群の便秘と他の便秘との見分け方

便秘は非常にありふれた症状ですが、原因は様々で、過敏性腸症候群の便秘はそれが本当にIBSによるものなのか、あるいは他の原因による便秘なのかを見分けることは、適切な対処のために非常に重要です。

症状の持続期間と頻度

IBSによる便秘は、慢性的に症状が続くことが特徴です。国際的な診断基準(ローマ基準など)では、腹痛や腹部不快感が過去3ヶ月間に月に3日以上にわたって繰り返し起こり、それに伴い便秘症状が見られる場合にIBSが疑われます。

一時的な便秘ではなく、長期間にわたって症状が改善したり悪化したりを繰り返す場合は、IBSの可能性を考える必要があります。

腹痛やお腹の不快感の有無

IBSによる便秘の大きな特徴は、腹痛やお腹の不快感を伴うことです。痛みや不快感は、排便によって一時的に軽快する傾向があります。

一方、単純な機能性便秘(食事や運動不足による便秘)では、腹痛を伴わないか、伴っても軽度であることが多いです。

ただし、便が長期間腸内に滞留すると、腹痛や腹部膨満感が生じることもあるため、これだけで判断するのは難しい場合があります。

症状による便秘タイプの比較

特徴過敏性腸症候群(便秘型)機能性便秘(弛緩性など)
腹痛・腹部不快感伴うことが多い(排便で軽快傾向)伴わないか、軽度なことが多い
症状の持続性慢性的(数ヶ月以上)一過性の場合も慢性的になる場合もある
ストレスとの関連強いことが多い関連が少ない場合もある

便通異常以外の症状(膨満感など)

IBSの患者さんでは、便秘や腹痛以外にも、お腹が張る感じ(腹部膨満感)、おならが増える、残便感といった症状を伴うことがよくあり、腸の運動異常や知覚過敏、腸内ガスの増加などが原因です。

特に、ガスが溜まってお腹が苦しいという訴えは、便秘型IBSの患者さんにも下痢型IBSの患者さんにも共通して見られることがあります。

鑑別のための検査の概要

IBSの診断は、基本的に症状に基づいて行われますが、他の病気(特に大腸がんや炎症性腸疾患など、見逃してはならない病気)を除外することが非常に重要です。

そのため、問診や身体診察に加えて、必要に応じて血液検査、便検査(便潜血検査など)、そして大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などが行われます。

検査によって、器質的な異常がないことを確認した上で、IBSと診断され、自己判断せずに、医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

  • 血液検査:炎症の有無、貧血の有無などを確認
  • 便検査:出血の有無、感染の有無などを確認
  • 大腸内視鏡検査:大腸の粘膜を直接観察し、ポリープや炎症、がんなどがないか確認

内視鏡検査(大腸カメラ)の重要性

過敏性腸症候群(IBS)の診断において、また、同様の症状を起こす他の重大な病気を見逃さないために、内視鏡検査(大腸カメラ)は非常に重要な役割を果たします。

内視鏡検査で何がわかるのか

大腸内視鏡検査は、先端に小型カメラが付いた細長い管(スコープ)を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体の粘膜を直接観察する検査です。

医師はモニターを通してリアルタイムで大腸の内部を見られ、炎症、潰瘍、ポリープ、がん、憩室(けいしつ:腸壁の一部が外側に袋状に飛び出したもの)などの異常がないかを確認します。

また、疑わしい部分が見つかった場合には、組織の一部を採取して病理検査(顕微鏡で詳しく調べる検査)を行うことも可能です。

内視鏡検査で発見可能な主な病変

病変の種類特徴IBSとの関連
大腸ポリープ粘膜の隆起、一部はがん化する可能性IBSとは直接関係ないが、症状が似ることがある
大腸がん悪性腫瘍、早期発見が重要便秘や腹痛などIBSと類似の症状が出ることがある
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)腸に慢性の炎症や潰瘍が起こる腹痛、便通異常などIBSと症状が似る
大腸憩室症腸壁に袋状のくぼみができる炎症を起こすと腹痛や便秘の原因になることがある

IBS診断における内視鏡検査の役割

IBSは、器質的疾患を除外した上で診断される機能性疾患です。つまり、大腸内視鏡検査などを行っても、症状の原因となるような明らかな異常(炎症や腫瘍など)が見つからない場合に、症状に基づいてIBSと診断されます。

内視鏡検査は、IBSの診断を確定するためというよりは、IBS以外の病気ではないことを確認するために行われる除外診断のための重要な検査です。

特に、40歳以上の方、急激な体重減少がある方、血便がある方、大腸がんの家族歴がある方などでは、内視鏡検査の必要性が高まります。

過敏性腸症候群の便秘への対処法とセルフケア

過敏性腸症候群の便秘型(IBS-C)の症状を和らげ、日常生活をより快適に送るためには、医療機関での治療と並行して、ご自身で行うセルフケアも非常に大切です。食事や生活習慣の見直し、ストレス対策などが中心となります。

食生活の見直しと改善点

便秘型IBSの症状改善には、食生活の見直しが基本で、食物繊維の摂取は重要ですが、バランスが大切です。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、便秘型IBSの場合は、水溶性食物繊維(海藻類、果物、こんにゃくなど)を積極的に摂り、不溶性食物繊維(豆類、きのこ類、玄米など)は摂りすぎるとかえってお腹の張りが強くなることがあるため、様子を見ながら調整するとよいでしょう。

また、十分な水分摂取も便を柔らかくするために必要で、1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂るように心がけてください。

刺激物(香辛料、カフェイン、アルコールなど)や高脂肪食は、症状を悪化させることがあるため、控えるのが望ましいです。

食事療法のポイント

項目具体的な内容注意点
食物繊維水溶性を中心にバランス良く摂取不溶性の摂りすぎに注意
水分摂取1日1.5~2リットルを目安にこまめに摂取する
避けるべきもの(例)高脂肪食、刺激物、過度なアルコール症状が悪化する食品を把握する

生活習慣の改善(運動、睡眠)

規則正しい生活習慣も、腸の調子を整える上で大切で、適度な運動は、腸の蠕動運動を促し、便通を改善する効果が期待できます。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で続けられる運動を取り入れてください。

また、十分な睡眠時間を確保し、質の高い睡眠をとることも、自律神経のバランスを整え、腸の機能を正常に保つために役立ちます。

  • 適度な運動:ウォーキング、ジョギング、ヨガなど
  • 十分な睡眠:質の高い睡眠を7-8時間程度
  • 規則正しい生活リズム:早寝早起きを心がける

ストレスマネジメントの方法

ストレスはIBSの症状を悪化させる大きな要因で、日常生活の中でストレスを完全になくすことは難しいかもしれませんが、自分に合った方法で上手にストレスをコントロールすることが重要です。

リラックスできる時間を作ったり、趣味に没頭したり、軽い運動をしたりするのも良いでしょう。

医療機関での相談と診断の流れ

過敏性腸症候群かもしれないけれど、どのタイミングで病院に行けばいいのだろう、病院ではどんなことを聞かれて、どんな検査をするのだろう、といった疑問や不安を感じる方もいるかもしれません。

ここでは、医療機関を受診する際の目安や、診断までの一般的な流れについて説明します。

どのような症状があれば受診を考えるべきか

以下のような症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関(消化器内科や胃腸科など)を受診することを検討しましょう。

  • 数週間以上続く腹痛やお腹の不快感
  • 便秘や下痢、あるいはその両方が慢性的に続く
  • 市販薬を使用しても症状が改善しない
  • 体重が急に減ってきた
  • 血便が出た
  • 発熱を伴う腹痛や下痢
  • 50歳以上で初めてこのような症状が出た

特に、血便や急な体重減少、発熱などの症状がある場合は、IBS以外の病気の可能性も考えられるため、早めに受診することが重要です。

医師に伝えるべき情報

診察時には、医師にできるだけ正確に症状を伝えることが、適切な診断と治療への第一歩となり、事前に以下の情報を整理しておくとスムーズです。

受診時に医師に伝える情報リスト

情報カテゴリ具体的な内容例
主な症状いつから、どんな症状(腹痛、便秘、下痢、お腹の張りなど)があるか、症状の程度、頻度
症状の誘因・悪化要因食事(特定の食べ物)、ストレス、生活の変化など、症状が出やすい状況
排便の状況排便回数、便の硬さ・形(ブリストル便形状スケールを参考に)、残便感の有無、排便時の痛み
既往歴・家族歴これまでに罹った病気、現在治療中の病気、服用中の薬、アレルギー、家族(血縁者)の病気(特に消化器系疾患)
生活習慣食事内容、運動習慣、睡眠時間、喫煙・飲酒の習慣、ストレスの状況

メモなどにまとめて持参すると、伝え忘れを防げます。

診断までに行われる可能性のある検査

問診や身体診察の結果、IBSが疑われる場合でも、他の病気(特に大腸がんや炎症性腸疾患など)を除外するために、いくつかの検査が行われます。

主な検査

  • 血液検査:貧血の有無、炎症反応の程度、肝機能、腎機能、甲状腺機能などを調べます。
  • 便検査:便潜血検査(便に血液が混じっていないか)、細菌培養検査(感染性腸炎の除外)などを行います。
  • 腹部X線検査:腸内のガスや便の貯留状態を確認します。
  • 腹部超音波(エコー)検査:腹腔内の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓など)の状態を観察します。
  • 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):大腸の粘膜を直接観察し、ポリープ、がん、炎症などがないかを確認します。必要に応じて組織検査(生検)も行います。

検査は、すべての患者さんに行われるわけではなく、年齢、症状、既往歴などを考慮して、医師が必要と判断した場合に行われます。

診断後の治療方針の立て方

各種検査の結果、他の器質的な病気が除外され、症状がIBSの診断基準を満たす場合に、IBSと診断されます。

診断がついた後は、患者さん一人ひとりの症状のタイプ(便秘型、下痢型、混合型など)や重症度、ライフスタイルに合わせて治療方針を立てていきます。治療の基本は、生活習慣の改善(食事療法、運動療法、十分な睡眠、ストレス管理)です。

十分な効果が得られない場合には、薬物療法が検討され、腸の運動を調整する薬、便の硬さを調整する薬、腹痛を和らげる薬、腸内環境を整える薬(プロバイオティクス)、不安を和らげる薬などが用いられます。

よくある質問

IBSは治りますか

IBSは、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な病気ですが、治療やセルフケアによって、症状をコントロールし、日常生活への支障を軽減することは十分に可能です。

「完治」という言葉の定義にもよりますが、症状がほとんど気にならない状態を維持できるようになる方も多くいます。大切なのは、根気強く治療に取り組み、自分に合った対処法を見つけていくことです。

食事療法で気をつけることは何ですか

便秘型のIBSの場合、まず基本となるのは、バランスの取れた食事と十分な水分摂取です。

食物繊維は、水溶性食物繊維(海藻、果物、こんにゃく芋など)を意識して摂り、不溶性食物繊維(穀物、豆類、野菜の筋など)は摂りすぎるとお腹の張りが悪化する場合があるので、ご自身の体調を見ながら調整しましょう。

また、高脂肪食や刺激の強い香辛料、カフェイン、アルコールなどは症状を悪化させる可能性があるため、控えてください。

内視鏡検査は痛いですか

大腸内視鏡検査に対して、「痛い」「苦しい」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

スコープが腸の曲がり角を通過する際などに、お腹の張りや軽い痛みを感じることがありますが、、検査技術の向上や、細くて柔らかいスコープの使用、鎮静剤(軽い眠り薬)や鎮痛剤の使用により、苦痛を大幅に軽減できます。

子供でもIBSになりますか

過敏性腸症候群は大人だけでなく、子供(特に思春期以降)にも見られる病気で、子供の場合、腹痛や便通異常をうまく言葉で表現できなかったり、学校生活でのストレスなどが症状に影響したりすることもあります。

主な症状は大人と同様で、腹痛、便秘、下痢などです。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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