内視鏡検査の苦痛を和らげるために使うペチジンは、主に痛みを和らげる力が強い鎮静剤です。ペチジンを内視鏡検査で用いると、意識は保ちつつも痛みや不快感が軽減され、リラックスした状態で検査を受けやすくなります。
他の鎮静剤と比較して呼吸を抑制する力が比較的弱いとされ、安全管理のもとで使用します。
この記事では、ペチジンの効果、使用方法、安全性、他の薬剤との違いについて、詳しく解説します。
ペチジンとはどのような鎮静剤?
ペチジン(塩酸ペチジン)は、オピオイド系鎮痛薬という分類に属する医療用の薬剤です。
本来は手術後の痛みや、がんによる強い痛みを和らげる目的で使う鎮痛薬ですが、鎮痛作用と同時に得られる鎮静作用(気分を落ち着かせる力)を利用し、内視鏡検査のような処置に伴う苦痛を軽減するために用います。
ペチジンの基本的な特徴
ペチジンの最大の特徴は、鎮痛作用が非常に強い点です。
内視鏡検査、特に大腸内視鏡(大腸カメラ)では、腸が曲がっている部分をスコープが通過する際に、お腹が張るような痛みや違和感を感じることがあり、胃内視鏡(胃カメラ)では、のどを通る際の咽頭反射(吐き気)が苦痛の原因となります。
ペチジンは、不快な感覚や痛みを鈍くすることで、検査をスムーズに進める助けとなります。作用が現れるまでの時間は静脈注射後数分と比較的速く、持続時間は2〜3時間程度です。
ペチジンの主な作用
| 作用の種類 | 主な内容 | 内視鏡検査への応用 |
|---|---|---|
| 鎮痛作用 | 痛みの感覚を鈍くする力 | スコープ通過時の痛みや腹部膨満感の軽減 |
| 鎮静作用 | 不安や緊張を和らげ、気分を落ち着かせる力 | 検査に対する恐怖心の緩和、リラックス効果 |
鎮静剤としての役割
内視鏡検査で使う鎮静剤には、いくつかの種類があり、その中でペチジンが担う役割は、主に鎮痛です。
鎮静剤の中には、主に不安を取り除き、眠気を誘う薬剤(ミダゾラムなど)や、意識レベルを深く下げる薬剤(プロポフォールなど)があります。ペチジンは意識を完全に無くすのではなく、痛みを感じにくくすることに重点を置いています。
鎮痛作用とともにある程度の鎮静作用もあるため、ウトウトとした状態にはなりますが、呼びかけに応じられる程度の意識は保たれることが多いのが特徴です。
検査中に医師が(体の向きを変えてください)といった指示を出す場合、患者さん自身が協力できることもあります。痛みの感覚を抑えつつ、医師の指示にも反応でき点が、ペチジンが鎮静剤として使われる理由の一つです。
なぜ内視鏡検査で使うのか
内視鏡検査でペチジンを選択する理由は、バランスの良さにあり、特に、以下の点を重視する場合に選ばれることがあります。
- 鎮痛作用を重視したい場合(大腸内視鏡など)
- 呼吸抑制のリスクをなるべく低く抑えたい場合
- 意識を完全に失うことに抵抗がある場合
ペチジンは、他の多くの鎮静剤(プロポフォールなど)と比較して、呼吸を抑制する力(呼吸が浅くなったり、回数が減ったりすること)が比較的弱いとされています。
ただし、リスクがゼロになるわけではなく、投与量や患者さんの体質によっては呼吸抑制が起こる可能性もあるため、検査中は血圧や心拍数、呼吸の状態(血液中の酸素飽和度)を常に監視します。
それでもなお、呼吸器系の持病がある方や高齢の方など、深い鎮静が難しいと判断される場合に、ペチジンが選択肢の一つとなることがあります。安全性を確保しながら、検査の苦痛をできるだけ取り除きたい、という場合に適した薬剤です。
内視鏡検査におけるペチジンの鎮静効果
ペチジンを内視鏡検査で使う主な目的は、検査に伴う苦痛や不快感を和らげることで、効果は、強い鎮痛作用と、それに伴う適度な鎮静作用によってもたらされます。
鎮痛作用と鎮静作用
ペチジンの効果を理解する上で、二つの作用を分けて考えることが大切です。鎮痛作用は痛みを抑える力、鎮静作用は意識レベルを下げ、眠気を誘う力です。
ペチジンは、他の代表的な鎮静剤であるミダゾラムやプロポフォールと比較して、鎮痛作用が非常に強く、鎮静作用、特に記憶をなくす健忘効果はそれほど強くありません。
ペチジンを使った鎮静は、意識はあるけれど、痛みは感じにくい、または、ウトウトしているが、完全に眠ってはいない、といった状態を目指すことが多いです。
検査中のことを覚えている場合もありますが、不思議と辛くなかった、楽だったという感覚が残るのが、ペチジンの鎮痛効果によるもので、痛みの信号が脳に伝わるのを抑えるため、不快な刺激として認識されにくくなります。
検査中の苦痛の軽減
内視鏡検査の苦痛は、主に2種類あり、一つは胃カメラ(上部消化管内視鏡)での咽頭反射、もう一つは大腸カメラ(下部消化管内視鏡)でのスコープ通過時や送気による腹部の張りです。
ペチジンの強い鎮痛作用は、大腸カメラで効果を発揮し、腸の曲がり角(屈曲部)をスコープが通過する際に生じる圧迫感や痛みを鈍くします。また、胃カメラにおいても、のどの違和感や不快感を和らげる効果が期待できます。
患者さんはリラックスし、医師もスコープ操作に集中できるため、より丁寧で正確な観察が可能です。
苦痛が少ないと、患者さんの体から余計な力が抜けるため、スコープの挿入もスムーズになり、検査時間全体の短縮につながることもあります。
ペチジンによる苦痛軽減のイメージ
| 検査の種類 | 主な苦痛の原因 | ペチジンの効果 |
|---|---|---|
| 胃内視鏡(胃カメラ) | 咽頭反射(吐き気)、のどの圧迫感 | 不快感の軽減、リラックス効果 |
| 大腸内視鏡(大腸カメラ) | スコープ通過時の圧迫感、空気によるお腹の張り | 鎮痛作用による痛みの軽減 |
意識レベルの変化
ペチジンを使った場合、意識レベルは鎮静状態になりますが、全身麻酔のように完全に意識がなくなり、呼びかけにも反応しない状態になるわけではありません。
個人差はありますが、多くの場合、ぼんやりと周囲の音や会話が聞こえたり、医師からの(右を向いてください)といった簡単な指示に応じたりできる程度の意識は保たれます(意識下鎮静)。
痛みや苦痛は感じにくくなっているため、検査自体は楽に受けることができます。意識が残ることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、呼吸や血圧などの状態が安定しやすいことが利点です。
より深い鎮静を希望する場合や、ペチジンだけでは効果が不十分な場合には、他の鎮静剤(ミダゾラムなど)を併用することもあります。
効果が現れるまでの時間
ペチジンは通常、静脈から注射(静注)して投与し、静脈に直接薬剤を入れるため、効果が現れるのは比較的速いです。
一般的に、投与を開始してから数分(例えば3〜5分)程度で鎮痛・鎮静効果が出始め、体が温かく感じたり、眠気を感じたりするようになります。
医師は患者さんの反応やバイタルサイン(血圧、脈拍、酸素飽和度)を注意深く観察しながら、最適な鎮静レベルになるよう投与速度や投与量を調整します。
検査が始まってからも、効果が薄れてきたと判断されれば、適宜追加の投与を行うこともあります。効果の持続時間は2〜3時間とされていますが、これは体内で薬剤が分解されるまでの時間であり、鎮静から覚醒するまでの時間とは異なります。
検査終了時には、鎮静効果は残っていますが、徐々に薄れていきます。
ペチジンの使用方法と検査の流れ
ペチジンを用いた鎮静は、検査全体の流れの中で、安全に配慮しながら計画的に行います。
検査前の準備
鎮静剤を使う検査では、使わない検査と比べて、より慎重な準備が必要です。
まず、安全に鎮静を行うため、事前にアレルギー歴、現在治療中の病気(特に心臓、肺、肝臓、腎臓の病気)、普段飲んでいる薬、過去の麻酔や鎮静でのトラブルの有無などを詳しく確認します。
ペチジンは特定の薬剤(精神安定剤や睡眠薬、一部の抗うつ薬など)と併用すると作用が強く出すぎることがあるため、お薬手帳などを持参することが重要です。
また、胃カメラ・大腸カメラともに、検査前日の夜からの絶食や、当日の水分制限(水やお茶は検査数時間前まで許可されることが多い)など、消化管の中を空にするための指示を守る必要があります。
鎮静剤を使う場合は、胃の中に食べ物が残っていると、検査中に吐いてしまい、それが気管に入る誤嚥(ごえん)を起こすリスクがあります。誤嚥は重篤な肺炎(誤嚥性肺炎)の原因となるため、食事の指示は厳密に守ってください。
鎮静検査前の主な確認事項
| 確認項目 | 主な内容 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| アレルギー歴 | 薬剤(特に鎮痛薬、麻酔薬)、食べ物など | ペチジンや関連薬剤へのアレルギーを防ぐため |
| 既往歴 | 心臓病、呼吸器疾患、肝機能障害、腎機能障害 | 鎮静剤の代謝や呼吸への影響を予測するため |
| 内服薬 | 精神安定剤、睡眠薬、他の鎮痛薬、抗うつ薬 | 薬剤の相互作用(作用が増強される)を防ぐため |
投与のタイミングと方法
検査当日、検査室に入室したら、まずは血圧計、心電図、パルスオキシメーター(指先に付けて血液中の酸素濃度を測る機械)などを装着します。
次に、腕の静脈に細い針を刺して点滴のライン(静脈路)を確保し、ペチジンはこの点滴ラインから投与します。検査用のマウスピースをくわえたり、体の向きを整えたりした後、検査の直前にペチジンの投与を開始します。
通常、一度に全量を投与するのではなく、患者さんの年齢、体重、体調、そして鎮静剤への反応(効きやすさ)を見ながら、少量ずつゆっくりと静脈注射していきます。
必要最小限の量で適切な鎮静レベルを保ち、副作用のリスクを低減します。急速に投与すると、呼吸抑制や血圧低下が起こりやすくなるため、慎重な投与が重要です。
投与量の調整
ペチジンの投与量に、誰でもこの量、という決まったものはありません。非常に個人差が大きいため、医師が患者さんの状態をリアルタイムで判断しながら調整します。
高齢の方や体の小さい方、肝臓や腎臓の機能が低下している方は、薬剤の分解・排泄に時間がかかるため、少なめの量で十分な効果が得られることが多いです。
日常的にお酒を多く飲む方や、精神安定剤・睡眠薬などを常用している方は、鎮静剤が効きにくい(耐性がある)傾向があり、通常より多めの量が必要になることもあります。
検査が始まってからも、患者さんが痛みを感じている様子が見られたり、鎮静が浅くなってきたと判断されたりした場合には、安全を確認しながら少量ずつ追加投与を行います。
ペチジン鎮静の安全性と副作用
ペチジンは内視鏡検査の苦痛を和らげる有効な薬剤ですが、医療用麻薬であると同時に、他の薬剤と同様に副作用のリスクも伴います。
主な副作用と初期症状
ペチジン使用時に見られる可能性のある副作用の中で、比較的頻度が高いのは、吐き気や嘔吐、眠気、めまい、ふらつきなどで、検査中や検査後に現れることがあります。特に吐き気は、ペチジンの特徴的な副作用の一つです。
また、重要な副作用として呼吸抑制があり、これは呼吸が浅くなったり、回数が減ったりする状態で、血液中の酸素濃度が低下する可能性があります。
ペチジンは他の鎮静剤に比べて呼吸抑制のリスクが低いとされていますが、投与量が多くなったり、他の鎮静剤と併用したりすると、リスクは高まります。
検査中はパルスオキシメーターで常に酸素濃度を監視し、必要に応じて酸素を投与しながら検査を行います。まれに、血圧低下や脈が遅くなる(徐脈)、アレルギー反応(発疹、かゆみなど)が起こることもあるので注意が必要です。
注意すべき主な副作用
| 副作用 | 主な症状 |
|---|---|
| 消化器症状 | 吐き気、嘔吐、便秘(検査後) |
| 精神神経系症状 | 眠気、めまい、ふらつき、頭痛 |
| 呼吸器症状 | 呼吸抑制(呼吸が浅く、遅くなる) |
| 循環器症状 | 血圧低下、脈が遅くなる(徐脈) |
副作用への対策と管理
安全にペチジン鎮静を行うため、医療機関では様々な対策を講じています。
まず、検査中は心電図、血圧計、パルスオキシメーターによるバイタルサインの継続的な監視(モニタリング)を徹底することで、呼吸抑制や血圧低下の兆候を早期に察知できます。
万が一、呼吸抑制が強く現れたり、鎮静が深くなりすぎたりした場合には、ペチジンの作用を打ち消す拮抗薬(きっこうやく、ナロキソンなど)を準備しています。
拮抗薬を注射することで、速やかにペチジンの作用を弱め、呼吸状態などを改善できます。また、吐き気に対する予防として、あらかじめ吐き気止めを併用することもあります。
検査終了後も、鎮静剤の効果が完全に抜けるまで、専用の回復室(リカバリールーム)で一定時間(通常30分〜1時間程度)休み、看護師が覚醒状態やふらつきの有無を確認してから帰宅です。
ペチジンを使えない人
ペチジンは優れた薬剤ですが、すべての人が使えるわけではありません。安全上の理由から、以下のような場合には使用を控えるか、あるいは極めて慎重な判断が求められます。
- 過去にペチジンや他のオピオイド系薬剤でアレルギーを起こした人
- 重篤な呼吸器疾患(重い喘息発作中、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪期など)がある人
- 特定の薬剤(MAO阻害薬という種類の抗うつ薬など)を内服中の人
- 頭部外傷や脳に病変があり、頭蓋内圧が上昇している人
条件に当てはまらなくても、高齢の方、肝臓や腎臓の機能が著しく低下している方、全身状態が非常に悪い方などは、薬剤の作用が強く出たり、副作用のリスクが高まったりするため、投与量を減らすなどの特別な配慮が必要です。
検査前の問診や診察が非常に重要で、自身の健康状態や内服中の薬については、正確に医師に伝えることが大切です。
ペチジンと他の鎮静剤との比較
内視鏡検査で使う鎮静剤はペチジンだけではなく、代表的なものにミダゾラム(ベンゾジアゼピン系)やプロポフォールがあります。
それぞれに特徴があり、患者さんの状態や希望、検査の種類(胃か大腸か)、検査時間などに応じて、医師がな薬剤を選択、あるいは組み合わせて使用します。
ミダゾラムとの違い
ミダゾラムは、ペチジンと並んで内視鏡の鎮静で広く使われる薬剤で、最大の違いは、ミダゾラムは鎮静・催眠作用と健忘効果が主体であるのに対し、ペチジンは鎮痛作用が主体である点です。
ミダゾラムを使うと、不安が和らぎ、速やかに眠気を感じます。また、健忘効果が強いため、検査中のことを覚えていない(あるいは、不快な記憶として残らない)ことが多いのが特徴です。
ミダゾラム自体の鎮痛作用はペチジンほど強くないので、痛みが予想される大腸カメラなどでは、鎮痛のためにペチジンとミダゾラムを併用することもあります。
呼吸抑制のリスクはミダゾラムにもあり、高齢の方やペチジンと併用する際には注意深い監視が必要です。
プロポフォールとの違い
プロポフォールは液体の注射薬で、非常に作用発現が速く(数十秒で眠くなる)、作用時間も短い(投与をやめると数分で覚醒し始める)という特徴があり、切れ味が良いため、検査後の回復が速いという利点があります。
鎮静作用も非常に強く、深い鎮静(呼びかけにも反応しないレベル)を得やすい薬剤ですが、鎮痛作用はほとんどありません。
また、呼吸抑制や血圧低下を来しやすいという欠点もあり、使用にはペチジンやミダゾラム以上に厳重な全身管理と、専門的な知識・技術が必要です。
このため、プロポフォールは主に全身麻酔や集中治療室で使われることが多いですが、内視鏡鎮静に熟練した施設で使われることもあります。
代表的な鎮静剤の比較
| 薬剤名 | 主な作用 | 特徴 |
|---|---|---|
| ペチジン | 鎮痛(強)、鎮静(中) | 痛みを抑える力が強い。健忘効果は弱い。呼吸抑制は比較的少ない。 |
| ミダゾラム | 鎮静(強)、健忘(強) | 不安を取り、眠気を誘う。検査の記憶が残りにくい。鎮痛作用は弱い。 |
| プロポフォール | 鎮静・催眠(非常に強) | 作用が速く、覚醒も速い(切れが良い)。呼吸抑制・血圧低下が起こりやすい。 |
鎮静の深さと回復時間
薬剤によって、到達しやすい鎮静の深さや、検査後の回復にかかる時間が異なります。プロポフォールは深い鎮静レベルに達しやすいですが、覚醒は速やかです。
ミダゾラムは中等度の鎮静(呼びかけに反応できる程度)で使われることが多く、健忘効果が期待できますが、ペチジンやプロポフォールに比べて効果の持続時間がやや長く、検査後に眠気やふらつきが残りやすい傾向があります。
ペチジンは、鎮痛がメインであるため、意識レベルは比較的浅い(傾眠〜中等度)鎮静でコントロールすることが多いです。効果の持続時間は2〜3時間とされていますが、鎮静からの覚醒自体はミダゾラムより速い場合もあります。
ただし、個人差が大きいため、どの薬剤を使った場合でも、検査後の回復室での休息は必要です。
薬剤の選択基準
どの鎮静剤を使うか、あるいは併用するかは、医師が総合的に判断します。
考慮する点
- 患者さんの希望(例:絶対に眠りたい、記憶をなくしたい、意識がなくなるのは怖い、など)
- 患者さんの体質(年齢、体重、全身状態、持病、お酒の強さなど)
- 検査の種類(胃カメラか大腸カメラか、検査時間の長さ)
- 過去の鎮静剤の経験(効きやすさ、副作用の有無)
大腸カメラで痛みが心配な方には鎮痛作用の強いペチジンを、胃カメラで吐き気や不安感が強い方には健忘効果のあるミダゾラムを、といった使い分けや、両方の利点を生かすために併用する場合があります。
鎮静に関して希望や不安があれば、検査前の診察で医師に相談することが大切です。
ペチジン鎮静後の回復と注意点
ペチジンを使った内視鏡検査が終わった後は、薬剤の効果が体から完全に抜けるまで、いくつかの注意点があります。
検査後の回復
検査が終了すると、意識は比較的はっきりしていても、ペチジンの鎮痛作用や鎮静作用はまだ残っているので、安全のため、すぐに帰宅することはできません。
通常、ストレッチャーや車椅子で専用の回復室(リカバリールーム)に移動し、ベッドやリクライニングチェアで30分から1時間程度休みます。
この間も、看護師が定期的に声かけをしたり、血圧や酸素濃度を測定したりして、覚醒の状態や体調に問題がないかを確認します。ペチジンの効果の抜け方には個人差があるため、休む時間はあくまで目安です。
眠気が強く残っていたり、ふらつきがあったり、吐き気を感じたりする場合には、さらに長く休むこともあり、医療スタッフがもう大丈夫と判断するまで、院内で安静にします。
鎮静からの回復過程の目安
| 時間経過 | 状態の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 検査直後 | ぼんやりしているが、呼びかけには応じられる。 | 回復室へ移動。バイタルサインの監視継続。 |
| 検査後30分〜1時間 | 意識がかなりはっきりしてくる。会話が可能。 | ふらつきの有無を確認。医師からの結果説明。 |
| 検査後1時間以降 | 自力で歩行可能。眠気やふらつきが軽快。 | 帰宅の許可。注意事項の説明。 |
当日の行動制限
ペチジン鎮静を受けた当日は、体調が回復したように感じても、薬剤の影響は数時間残っていて、判断力、集中力、反射神経が一時的に低下している可能性があります。
この状態で車、バイク、自転車などを運転することは非常に危険であり、重大な事故につながる恐れがあるため、厳禁です。検査当日は、公共交通機関を利用するか、家族などに送迎を依頼する必要があります。
また、アルコール(お酒)は、ペチジンの作用を増強し、呼吸抑制やふらつきなどを悪化させる可能性があるため、当日の飲酒は禁止です。
重要な契約や会議、危険を伴う作業(高所での作業、機械の操作など)も、判断力が低下している可能性があるため、翌日以降に延期しましょう。
検査当日に避けるべき行動
| 行動 | 理由 |
|---|---|
| 車・バイク・自転車の運転 | 判断力・反射神経の低下による事故防止 |
| 飲酒(アルコール摂取) | 鎮静作用やふらつきの増強、呼吸抑制のリスク |
| 重要な判断・契約 | 集中力・判断力の低下 |
| 危険を伴う作業 | ふらつきや眠気による事故防止 |
帰宅後の過ごし方
無事に帰宅した後も、無理をせず安静に過ごすことが大切です。食事は、のどの麻酔(胃カメラの場合)が切れてから、まずは水分(水やお茶)を少量飲んでみて、むせないことを確認してから、消化の良い柔らかいものから徐々に開始します。
咽頭麻酔は検査後1時間程度で切れますが、不安な場合は2時間程度空けるとより確実です。鎮静の影響で、帰宅後に再び眠気を感じることもありますので、ゆっくりと体を休めてください。
万が一、帰宅後に我慢できないほどの強い腹痛、吐き気・嘔吐が続く、黒い便が出る(出血の兆候)、発熱する、呼吸が苦しいなどの異常を感じた場合は、自己判断せず、速やかに検査を受けた医療機関に連絡してください。
よくある質問
ペチジンによる内視鏡検査の鎮静に関して、多くの方が抱く疑問についてお答えします。
- 検査中に目が覚めることはありますか?
-
ペチジンは意識を完全に失わせる薬剤ではないため、鎮静の深さによっては、検査中にウトウトしながらも、医師や看護師の呼びかけに応じたり、体位を変えたりすることはあります。
これは目が覚めているというより、意識レベルが浅い鎮静状態です。ペチジンの強い鎮痛作用により、意識が多少あっても、検査の強い苦痛は感じにくくなっています。
- 検査の記憶は残りますか?
-
ペチジンは、ミダゾラムなどの薬剤と比較して、健忘(記憶がなくなる)効果は弱いとされているため、検査中のことを部分的に、あるいは全体的に覚えている可能性はあります。
ただし、鎮痛・鎮静作用によって不快感は大幅に軽減されているため、覚えているけれど、辛くはなかったと感じる方が多いです。
- ペチジンにアレルギーはありますか?
-
どのような薬剤でも、アレルギー反応が起こる可能性はゼロではありません。
ペチジンや他のオピオイド系鎮痛薬(モルヒネなど)に対して、過去に発疹、かゆみ、息苦しさなどのアレルギー症状が出た経験がある場合は、絶対に使用できません。
検査前の問診で、薬剤アレルギーの有無は必ず正確に医師に伝えてください。
- 呼吸への影響はどの程度ですか?
-
ペチジンは、呼吸中枢に作用して呼吸を抑制(呼吸が浅く、遅くなる)する可能性があります。
ただし、一般的に内視鏡検査で使う他の鎮静剤(特にプロポフォールなど)と比較すると、その作用は比較的軽度です。
しかし、投与量が多い場合や、体質、他の薬剤との併用によっては、呼吸抑制が強く出ることもあるため、検査中は常に指先にモニターを装着し、血液中の酸素濃度を監視しながら安全に行います。
以上
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