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繰り返し起こる下痢の症状と大腸内視鏡による精密検査

繰り返し起こる下痢の症状と大腸内視鏡による精密検査

繰り返す下痢の症状にお悩みではありませんか。

一時的なものであれば心配いらないこともありますが、長引く下痢や頻繁に起こる下痢は、何らかの体のサインかもしれません。

この記事では、繰り返す下痢の原因や考えられる病気、そしてその診断に役立つ大腸内視鏡検査について詳しく解説します。

目次

繰り返す下痢とは?その定義と注意点

下痢の状態や頻度は人それぞれです。ここでは、医学的な下痢の定義や、繰り返すとはどのような状態を指すのか、そして放置することのリスクについて説明します。

下痢の定義と種類

一般的に、健康な状態の便は適度な水分を含み、形を保っていますが、何らかの原因で腸内の水分バランスが崩れると、便中の水分量が異常に増加し、形状が崩れたり液状になったりし、これが下痢です。

急性下痢と慢性下痢

下痢は、持続する期間によって大きく二つに分けられ、発症してから2週間以内の下痢を急性下痢、4週間以上続く下痢を慢性下痢と呼びます。2週間から4週間の間の下痢は遷延性下痢と分類することもあります。

繰り返す下痢の場合、慢性下痢に該当したり、急性下痢を何度も経験したりする状態が考えられます。

浸透圧性下痢と分泌性下痢

発生の仕組みによる分類もあり、浸透圧性下痢は、腸管内に消化吸収されにくい物質があることで、腸管内の浸透圧が上昇し、水分が腸管内に引き寄せられて起こります。人工甘味料の過剰摂取や、特定の薬剤が原因となることがあります。

一方、分泌性下痢は、細菌の毒素やホルモンなどの影響で、腸管から水分や電解質が過剰に分泌されることで生じ、食中毒などが代表的です。

運動亢進性下痢と滲出性下痢

腸の動き(蠕動運動)が過剰に活発になることで、便が腸内を速く通過しすぎて水分吸収が不十分になるのが運動亢進性下痢で、ストレスや過敏性腸症候群などが原因です。

滲出性下痢は、腸の粘膜に炎症が起こり、血液成分や組織液、粘液などが腸管内に滲み出ることで生じ、炎症性腸疾患などで見られます。

「繰り返す」の目安

繰り返す、という言葉には明確な医学的定義があるわけではありませんが、一般的には、下痢が一旦治まっても、短い期間で再び下痢の症状が現れる状態で、頻度や期間、日常生活への影響度合いが重要な判断材料となります。

頻度と期間

例えば、月に数回以上、数ヶ月にわたって下痢のエピソードがある場合や、特定の状況(食事、ストレスなど)で必ず下痢になる場合などは、「繰り返す下痢」と考えてよいでしょう。

1回の下痢が数日間続くようなケースが頻繁にある場合も注意が必要です。

下痢を繰り返す主な原因

繰り返す下痢の原因は多岐にわたり、食生活や生活習慣といった身近なものから、感染症、薬剤の副作用、そして消化器系の病気まで、様々な要因が考えられます。

食生活や生活習慣に起因するもの

日常の何気ない習慣が、繰り返す下痢の引き金になっていることがあります。食事の内容や食べ方、ストレス、睡眠といった生活全般を見直すことが大切です。

暴飲暴食や偏った食事

一度に大量に食べる、脂っこいものや刺激物を好んで食べる、あるいは特定の食品に対する不耐性(乳糖不耐症など)は、消化管に負担をかけ、下痢を起こす原因です。

食物繊維の不足や過剰な摂取も、便通に影響を与えることがあります。

下痢を起こしやすい食品・成分

種類具体例考えられる理由
脂質の多い食品揚げ物、脂身の多い肉、生クリーム消化に時間がかかり、腸を刺激する
香辛料・刺激物唐辛子、カレー、コーヒー、アルコール腸の蠕動運動を亢進させる
人工甘味料ソルビトール、キシリトール(一部のガムや菓子)消化吸収されにくく、浸透圧性下痢の原因となる

ストレスや精神的な要因

腸は第二の脳とも呼ばれ、精神的なストレスと密接に関連しています。強いストレスや不安、緊張を感じると、自律神経のバランスが乱れ、腸の動きが過敏になったり、逆に鈍くなったりして、下痢や便秘を起こすことがあります。

特に過敏性腸症候群(IBS)の患者さんでは、ストレスが症状を悪化させる大きな要因です。

睡眠不足や不規則な生活

睡眠不足や昼夜逆転といった不規則な生活リズムは、自律神経の乱れを起こし、腸の機能にも影響を与え、腸内環境が悪化し、下痢をしやすい状態になることがあります。規則正しい生活を心がけることは、腸の健康を保つ上でも重要です。

感染症によるもの

ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体に感染することで、急性の下痢が起こり、通常は一過性ですが、原因菌によっては症状が長引いたり、繰り返したりすることもあります。

ウイルス性胃腸炎

ノロウイルスやロタウイルスなどが原因で起こる感染症です。

冬場に流行することが多く、下痢の他に嘔吐や発熱を伴うことがあり、感染力が強く、家庭内や集団生活の場で広がりやすい特徴があります。

細菌性食中毒

サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157など)といった細菌に汚染された食品を摂取することで発症し、激しい下痢や腹痛、血便、発熱などの症状が現れることがあります。

原因菌によって潜伏期間や症状の重症度が異なります。

代表的な食中毒の原因菌と潜伏期間

原因菌主な原因食品潜伏期間(目安)
サルモネラ菌鶏卵、食肉6時間~72時間
カンピロバクター鶏肉(加熱不十分)2日~7日
腸管出血性大腸菌(O157など)牛肉(加熱不十分)、生野菜3日~8日

寄生虫感染症

クリプトスポリジウムやランブル鞭毛虫などの寄生虫が、汚染された水や食品を介して体内に入ることで感染します。慢性的な下痢や腹痛を起こすことがあります。海外渡航歴がある場合に注意が必要です。

薬剤の副作用

治療のために服用している薬が、意図せず下痢を起こすことがあります。薬の説明書をよく読んだり、医師や薬剤師に相談したりすることが大切です。

抗生物質

抗生物質(抗菌薬)は、病気の原因となる細菌を殺す一方で、腸内にいる良い菌(善玉菌)まで殺してしまい、腸内細菌叢のバランスが崩れ、下痢(薬剤性腸炎)が起こることがあります。

特に広範囲の細菌に効くタイプの抗生物質で生じやすいです。

下剤の乱用

便秘解消のために下剤を使用している場合、その種類や量、使用頻度が適切でないと、かえって下痢を起こしたり、腸の機能を低下させたりすることがあり、自己判断での長期連用は避けるべきです。

その他の薬剤

一部の痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)、血糖降下薬、抗がん剤、マグネシウム含有製剤(制酸剤など)なども、副作用として下痢を起こすことがあります。複数の薬を服用している場合は、相互作用も考慮する必要があります。

下痢の副作用がある主な薬剤カテゴリー

薬剤カテゴリー代表的な薬剤(一般名)備考
抗生物質アモキシシリン、セフジニルなど腸内細菌叢の乱れ
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ロキソプロフェン、イブプロフェンなど腸管粘膜障害の可能性
一部の血糖降下薬メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬など消化器症状が出やすいものがある

消化器系の病気

繰り返す下痢の背後には、特定の消化器系の病気が隠れていることがあります。適切な診断と治療を受けることが重要です。

過敏性腸症候群(IBS)

腸に明らかな炎症や潰瘍などがないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感、そして下痢や便秘などの便通異常が慢性的に続く病気です。

ストレスが症状を悪化させる要因の一つと考えられ、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型などのタイプがあります。

  • 下痢型:突然の腹痛とともに水様便や軟便が頻繁に起こる。
  • 便秘型:硬くコロコロとした便が少量しか出ず、排便困難を伴う。
  • 混合型:下痢と便秘を交互に繰り返す。

炎症性腸疾患(IBD)

腸に慢性的な炎症や潰瘍が生じる原因不明の病気で、主にクローン病と潰瘍性大腸炎があり、いずれも厚生労働省の指定難病です。

下痢、血便、腹痛、体重減少などが主な症状で、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化する状態)を繰り返します。

クローン病は口から肛門までの消化管のどの部位にも炎症が起こりうるのに対し、潰瘍性大腸炎は主に大腸の粘膜に炎症が起こり、症状や治療法も異なります。

大腸がん・大腸ポリープ

大腸がんや、がん化する可能性のある大腸ポリープが、下痢や便秘、血便、便が細くなるなどの症状を起こすことがありますが、初期には自覚症状がないことも多いため、定期的な検診が重要です。

40歳を過ぎたら、大腸がん検診(便潜血検査)を受けることが推奨されます。

その他の消化器疾患

上記以外にも、吸収不良症候群(栄養素をうまく吸収できない状態)、慢性膵炎、胆嚢疾患、アレルギー性腸炎、虚血性大腸炎、大腸憩室炎などが、繰り返す下痢の原因となることがあります。正確な診断には専門的な検査が必要です。

繰り返す下痢の検査と診断

繰り返す下痢の原因を正確に突き止めるためには、医療機関での検査が重要です。問診や身体診察に加えて、便検査、血液検査、そして必要に応じて大腸内視鏡検査などが行われます。

問診と身体診察

診断の第一歩は、医師による詳しい問診と身体診察で、患者さんから症状や生活習慣について丁寧に聞き取り、原因を探る手がかりとします。

症状の詳しい聴取

いつから下痢が始まったか、どのようなきっかけで起こるか、下痢の頻度、便の性状(水様便、泥状便、血が混じるかなど)、量、色、におい、伴う症状(腹痛、発熱、吐き気など)について詳しく尋ねます。

食事内容や生活習慣の確認

普段の食事内容、特定の食品を摂取した後に症状が出るか、飲酒や喫煙の習慣、ストレスの状況、睡眠時間、海外渡航歴、家族歴(血縁者に同様の症状や消化器系の病気の人がいるか)なども確認します。

服用中の薬(市販薬やサプリメントも含む)についても必ず伝えましょう。

腹部の触診など

医師がお腹を触って、圧痛(押すと痛む場所)の有無や程度、しこりがないか、腸の動き(蠕動音)などを確認し、その他、必要に応じて聴診や打診なども行います。

便検査

便そのものを調べることで、消化管の状態や感染症の有無など、多くの情報が得られます。

便潜血検査

便の中に微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。主に大腸がん検診として行われますが、消化管からの出血が疑われる場合にも有用で、陽性の場合は、精密検査(大腸内視鏡検査など)が必要です。

便培養検査(細菌検査)

下痢の原因となる細菌(サルモネラ菌、カンピロバクターなど)が便の中にいないかを調べる検査です。

食中毒が疑われる場合などに行い、原因菌が特定できれば、適切な抗菌薬の選択に役立ちます。

寄生虫検査

便の中に寄生虫の卵や虫体が含まれていないかを顕微鏡で調べ、海外渡航歴がある場合や、長引く下痢の原因が不明な場合などに行われることがあります。

血液検査

血液検査からは、体内の炎症の程度、貧血の有無、栄養状態、特定の臓器の機能などを評価できます。

炎症反応の確認

白血球数やCRP(C反応性タンパク)、赤沈(赤血球沈降速度)といった項目を調べることで、体内で炎症が起きているかどうか、またその程度を把握でき、感染症や炎症性腸疾患などで数値が上昇します。

貧血の有無

慢性的な消化管出血や栄養吸収不良があると、貧血(ヘモグロビン値の低下)が起こることがあるので、貧血の種類や程度を調べることで、原因疾患の手がかりになります。

栄養状態の評価

アルブミン値や総タンパク質量などを調べることで、栄養状態を評価します。長引く下痢や吸収不良によって、数値が低下することがあります。

血液検査で確認する主な項目と目的

検査項目目的異常値で考えられること(下痢関連)
白血球数、CRP炎症の有無・程度の確認感染症、炎症性腸疾患などで上昇
ヘモグロビン、赤血球数貧血の有無の確認消化管出血、栄養吸収不良などで低下
アルブミン、総タンパク栄養状態の評価栄養吸収不良、タンパク漏出性胃腸症などで低下

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

繰り返す下痢の原因を特定し、大腸の粘膜を直接観察するために非常に有用な検査です。ポリープやがん、炎症性腸疾患などの診断に役立ちます。

検査の目的とわかること

先端に小型カメラが付いた細長い管(内視鏡)を肛門から挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体の粘膜をリアルタイムで観察し、炎症、潰瘍、ポリープ、がんなどの病変の有無、大きさや形状、範囲などを詳細に確認できます。

検査の実際と流れ

検査前には、腸内をきれいにするために下剤を服用し、検査中は、必要に応じて鎮静剤や鎮痛剤を使用することもあります。検査時間は通常15分から30分程度ですが、ポリープ切除などを行う場合はもう少し時間がかかることがあります。

生検(組織検査)の重要性

検査中に疑わしい病変が見つかった場合、一部を少量採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査(生検)を行い、病変が良性か悪性か、炎症の種類や程度などを確定診断できます。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査の詳細

大腸内視鏡検査は、繰り返す下痢の原因究明や、大腸がんなどの早期発見に非常に有効な検査です。

大腸内視鏡検査とは

大腸内視鏡検査は、一般的に「大腸カメラ」とも呼ばれ、大腸の内部を直接観察する検査方法です。レントゲン検査などでは分かりにくい微細な病変も見つけられます。

内視鏡の仕組みと機能

大腸内視鏡は、柔軟性のある細いチューブの先端に高性能なCCDカメラと光源が搭載されていて、医師はモニターに映し出される鮮明な画像を見ながら、大腸の粘膜を隅々まで観察します。

内視鏡には、送気・送水機能や、組織を採取したりポリープを切除したりするための処置具を通すための穴(鉗子口)も備わっています。

観察できる範囲

肛門から挿入された内視鏡は、直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸を経て、大腸の一番奥にある盲腸まで到達します。

場合によっては、小腸の末端(回腸末端)の一部も観察し、大腸全体の粘膜状態を把握できます。

検査で発見できる主な病気

大腸内視鏡検査は、様々な大腸の病気を発見するのに役立ち、早期発見が治療成績の向上につながる病気も多くあります。

大腸ポリープ

大腸の粘膜にできるイボのような隆起性の病変です。

多くは良性ですが、一部のポリープ(特に腺腫性ポリープ)は、放置するとがん化する可能性があり、検査中に発見されたポリープは、その場で切除することも可能です(内視鏡的ポリープ切除術)。

大腸がん

大腸の粘膜から発生する悪性腫瘍です。早期の段階では自覚症状がほとんどないため、検査による発見が重要です。内視鏡検査では、がんの存在だけでなく、その大きさや深達度(がんがどのくらい深く進行しているか)もある程度推測できます。

早期に発見できれば、内視鏡治療で根治できる可能性も高まります。

炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)

腸に慢性的な炎症や潰瘍を引き起こす病気です。特徴的な内視鏡所見(縦走潰瘍、敷石像、びらん、易出血性など)を確認することで診断の手がかりとなります。また、炎症の範囲や程度を評価し、治療効果の判定にも用いられます。

大腸内視鏡検査で発見可能な主な疾患

疾患名主な内視鏡所見備考
大腸ポリープ粘膜の隆起、イボ状の形態良性・悪性の鑑別、切除も可能
大腸がん不整形の隆起、潰瘍形成、易出血性早期発見が重要
潰瘍性大腸炎びまん性の粘膜発赤、血管透見像消失、びらん、潰瘍直腸から連続的に広がる炎症
クローン病縦走潰瘍、敷石像、非連続性の病変(スキップリージョン)消化管のあらゆる部位に起こりうる

大腸憩室症

大腸の壁の一部が外側に袋状に突出した状態を憩室といいます。多くは無症状ですが、時に出血(憩室出血)や炎症(憩室炎)を起こすことがあり、内視鏡検査で憩室の有無や状態を確認できます。

検査前の準備

安全で正確な検査を行うためには、事前の準備が非常に重要です。医療機関の指示に従って、食事制限や下剤の服用を適切に行ってください。

食事制限について

検査前日(場合によっては数日前から)は、消化の良い食事を摂るように指示されます。きのこ類、海藻類、種実類、繊維の多い野菜や果物など、消化されにくいものは避け、検査当日の朝食は絶食となるのが一般的です。

下剤(腸管洗浄剤)の服用

大腸内を空っぽにしてきれいな状態にするために、検査当日の朝(または前日の夜から)に、多量(通常1~2リットル程度)の液体状の下剤(腸管洗浄剤)を服用します。

数回から十数回の排便があり、最終的には便が水様透明になります。この準備が不十分だと、正確な観察が困難になることがあるので注意が必要です。

服用中の薬に関する注意点

普段から服用している薬がある場合は、事前に必ず医師に申し出てください。特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬や抗血小板薬)を服用している場合は、ポリープ切除などを行う際に影響があるため、休薬や変更になることがあります。

糖尿病の薬も、食事制限に伴い調整が必要な場合があります。

検査当日の流れと所要時間

検査当日は、医療機関の指示に従って来院し、検査を受け、検査後の過ごし方についても説明があります。

来院から検査終了まで

指定された時間に来院し、受付を済ませます。検査着に着替え、検査室に入ります。鎮静剤を使用する場合は、点滴の準備をします。検査は通常、左側を下にして横になった体勢で行います。

検査時間は、観察のみであれば15分~30分程度ですが、ポリープ切除などの処置を行う場合は、さらに時間がかかることがあります。

鎮静剤・鎮痛剤の使用について

検査に伴う苦痛や不安を軽減するために、鎮静剤や鎮痛剤を使用することがあり、うとうとした状態や眠ったような状態で検査を受けることができます。

ただし、鎮静剤を使用した場合は、検査後に一定時間の安静が必要となり、当日の車や自転車の運転はできません。

検査後の注意点

検査終了後は、リカバリールームなどでしばらく安静にし、鎮静剤を使用した場合は、完全に覚醒するまで1~2時間程度かかることがあります。

医師から検査結果の説明があり、飲食は、医師の指示に従って開始してください。お腹の張りを感じることがありますが、これは検査中に大腸を膨らませるために送気した空気が残っているためで、排ガス(おなら)とともに自然に軽減します。

繰り返す下痢のセルフケアと予防策

医療機関での診断と治療が基本ですが、日常生活におけるセルフケアや予防策も、繰り返す下痢の症状をコントロールし、再発を防ぐ上で大切です。

食生活の見直し

腸に負担をかけない食生活は、下痢の予防と症状緩和の基本で、何をどのように食べるかが重要になります。

消化の良い食事を心がける

下痢をしている時や、腸の調子が悪いと感じる時は、おかゆ、うどん、白身魚、鶏のささみ、豆腐、よく煮た野菜など、消化の良い食品を選びましょう。ゆっくりよく噛んで食べることも、消化を助けます。

刺激物を避ける

香辛料の多い料理、脂っこいもの、炭酸飲料、アルコール、カフェインを多く含む飲み物(コーヒー、紅茶、エナジードリンクなど)は、腸を刺激して下痢を悪化させることがあります。

症状がある時は、これらの摂取を控えるか、少量にしましょう。

バランスの取れた栄養摂取

下痢が続くと栄養が偏りがちになりますが、回復のためにはバランスの取れた食事が大切です。特定の食品に偏らず、主食、主菜、副菜を揃えることを意識しましょう。ただし、症状が強い時は無理せず、医師や管理栄養士に相談してください。

下痢の時に避けたい食品と推奨される食品

分類避けたい食品・成分の例推奨される食品・成分の例
脂質揚げ物、バラ肉、バター、生クリーム鶏むね肉(皮なし)、白身魚、豆腐
食物繊維ごぼう、きのこ類、海藻類(症状が強い時)りんご(すりおろし)、バナナ、おかゆ
刺激物香辛料、炭酸飲料、アルコール、コーヒー白湯、麦茶、スポーツドリンク(薄めたもの)

生活習慣の改善

健康的な生活習慣は、腸内環境を整え、自律神経のバランスを保つために重要です。ストレス管理や十分な睡眠も、下痢の予防につながります。

十分な睡眠と休息

睡眠不足は自律神経の乱れを起こし、腸の働きに悪影響を与えます。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい睡眠習慣を心がけましょう。疲れている時は無理せず、十分な休息を取ることも大切です。

ストレスマネジメント

ストレスは万病のもとと言われますが、特に腸はストレスの影響を受けやすい臓器なので、自分なりのストレス解消法を見つけ、上手に気分転換をすることが重要です。

  • 深呼吸をする
  • 軽いストレッチや散歩をする
  • 好きな音楽を聴く
  • 親しい人と話す

適度な運動

ウォーキングやジョギング、ヨガなどの適度な運動は、血行を促進し、腸の働きを整える効果が期待でき、また、ストレス解消にも役立ちます。

市販薬の適切な使用

急な下痢の際に、市販薬が役立つこともありますが、使い方を誤ると症状を悪化させたり、原因疾患の発見を遅らせたりする可能性もあるため、注意が必要です。

下痢止めの種類と注意点

市販の下痢止めには、腸の動きを抑えるタイプ(ロペラミドなど)や、腸内の有害物質を吸着するタイプ、腸粘膜を保護するタイプなどがあります。

感染性の下痢の場合、腸の動きを無理に止めると、かえって病原体の排出を妨げ、症状を長引かせる可能性があり、自己判断での長期連用は避け、数日使用しても改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

整腸剤の役割

乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を補給し、乱れた腸内細菌叢のバランスを整えるのが整腸剤です。

下痢や便秘の改善、腹部膨満感の軽減などが期待でき、比較的副作用は少ないですが、これも漫然と使用するのではなく、症状が続く場合は医師に相談することが大切です。

よくある質問

繰り返す下痢や大腸内視鏡検査に関して、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

下痢が続いていますが、市販薬で様子を見ても良いですか?

一時的な軽い下痢で、他に気になる症状がなければ、数日間市販の整腸剤などで様子を見ることも可能です。

しかし、症状が改善しない、悪化する、あるいは血便や高熱など他の症状を伴う場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。

市販薬を2~3日使用しても下痢が改善しない場合や、一旦良くなってもすぐに再発する場合は、何らかの原因が隠れている可能性があります。

大腸内視鏡検査は痛いですか?苦しいですか?

大腸内視鏡検査では、お腹の張りや多少の不快感を感じることがあります。痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの医療機関では、希望に応じて鎮静剤や鎮痛剤を使用することで、苦痛を大幅に軽減することができます。

うとうとしている間や眠っている間に検査が終わることが多いです。

大腸内視鏡検査の費用はどのくらいですか?

症状があり医師が必要と判断して行う大腸内視鏡検査は、基本的に健康保険が適用されます。人間ドックなど、症状がない場合の予防的な検査は自由診療(全額自己負担)となることがあります。

保険診療の場合、観察のみであれば3割負担で数千円から1万円程度、生検やポリープ切除を行うと1万5千円から3万円程度が目安となることが多いですが、医療機関や使用する薬剤によっても変動します。

検査後、すぐに普段通りの生活ができますか?

鎮静剤を使用した場合は、検査後1~2時間程度はリカバリールームなどで安静にしていただく必要があります。

完全に覚醒するまでは、ふらつきや判断力の低下が見られることがあるため、検査当日は車、バイク、自転車の運転はできません。公共交通機関を利用するか、ご家族に送迎を依頼してください。

食事は、検査終了後、医師の指示に従って開始でき、通常は消化の良いものから摂り始めます。ポリープ切除を行った場合は、数日間はアルコールや刺激物を避けるなど、食事制限が必要になることがあります。

激しい運動も、数日間は控えるように指示されるのが一般的です。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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