小腸は消化管の大部分を占めながら、その長さと複雑な位置から詳細な検査が難しい臓器とされてきました。
しかし、近年の医療技術の進歩により、小腸内視鏡やカプセル内視鏡といった専門的な検査方法が登場し、これまで診断が困難だった小腸疾患の発見・治療に貢献しています。
この記事では、小腸検査の種類、それぞれの特徴、そしてどのような場合にどちらの検査が選択されるのかについて、分かりやすく解説します。
小腸の病気と検査の重要性
小腸は、胃と大腸の間に位置し、全長約6~7メートルにも及ぶ長い管状の臓器で、食物の消化と吸収の大部分を担う、生命維持に必要不可欠な役割を果たしています。
しかし、その長さと体内の深い位置にあることから、長らく「暗黒大陸」とも呼ばれ、精密な検査が難しい領域でした。
小腸の解剖学的位置と主な機能
小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分けられ、胃から送られてきた食物をさらに細かく分解し、栄養素や水分を吸収する主要な場所です。十二指腸では膵液や胆汁といった消化液と食物が混ざり合い、本格的な消化が始まります。
続く空腸と回腸で、アミノ酸、ブドウ糖、脂肪酸、ビタミン、ミネラルなど、体に必要な栄養素のほとんどが吸収され、また、免疫機能にも関与しており、腸管免疫という重要な役割も担っています。
小腸に起こりやすい代表的な病気
小腸には様々な病気が発生する可能性があり、原因不明の消化管出血、クローン病や非特異性多発性潰瘍といった炎症性腸疾患、小腸腫瘍(良性・悪性)、吸収不良症候群、薬剤性小腸炎などが挙げられます。
小腸の代表的な疾患
疾患名 | 主な症状 | 考えられる原因・特徴 |
---|---|---|
クローン病 | 腹痛、下痢、体重減少、発熱 | 免疫異常が関与する炎症性疾患。消化管のどの部位にも起こりうる。 |
小腸腫瘍 | 腹痛、出血(黒色便、血便)、貧血、腸閉塞症状 | 良性・悪性ともに発生。早期発見が重要。 |
原因不明の消化管出血 | 黒色便、血便、貧血 | 胃カメラや大腸カメラで出血源が特定できない場合、小腸からの出血を疑う。 |
小腸検査が従来難しかった背景
小腸が長く、曲がりくねっているという解剖学的な特徴に加え、口からも肛門からも遠い位置にあるため、従来の胃カメラや大腸カメラでは全体の観察が困難でした。
また、X線を用いたバリウム検査も行われますが、微細な病変の描出には限界があります。
症状が現れた際の早期検査の勧め
原因不明の腹痛が続く、貧血が改善しない、体重が急に減ったなどの症状がある場合、小腸の病気が隠れている可能性があります。
特に、胃カメラや大腸カメラで異常が見つからないにもかかわらず症状が持続する場合は、小腸検査を検討することが大切です。
小腸内視鏡検査(バルーン内視鏡)の概要
小腸内視鏡検査、特にバルーン内視鏡は、これまで観察が難しかった小腸の深部まで到達し、直接観察や組織採取、場合によっては治療まで行うことができる画期的な検査方法です。
バルーン内視鏡とは何か
バルーン内視鏡は、先端にカメラが付いた細長いスコープ(内視鏡)と、スコープを小腸内で進めるためのバルーン(風船)システムを組み合わせた医療機器です。
スコープの外側に装着されたオーバーチューブにもバルーンが付いており、バルーンを膨らませたり縮めたりしながら、アコーディオンのように小腸を手繰り寄せることで、スコープを小腸の奥深くへと進めていきます。
口から挿入する経口ルートと、肛門から挿入する経肛門ルートがあり、疑われる病変の部位に応じて使い分けます。
バルーン内視鏡で観察できる範囲と診断可能な病変
バルーン内視鏡を用いることで、十二指腸の奥から回腸末端までの広範囲な小腸粘膜を直接観察でき、潰瘍、びらん、ポリープ、腫瘍、出血部位、血管異形成、狭窄など、様々な病変を発見することが可能です。
また、病変が疑われる部位から組織を採取して病理検査(生検)を行ったり、出血部位に対して止血処置を施したり、狭窄部位を拡張したりといった治療的処置も行えます。
どのような場合にバルーン内視鏡検査を検討するか
バルーン内視鏡検査は、以下のような場合に検討され。
まず、原因不明の消化管出血(特に胃カメラ・大腸カメラで出血源が特定できない場合)、次に、クローン病やその他の炎症性腸疾患が疑われる場合や、その病変範囲・活動性の評価のためです。
また、小腸腫瘍が疑われる場合、あるいは他の画像検査(CT、MRI、カプセル内視鏡など)で異常が指摘された場合の精密検査としても行われます。
バルーン内視鏡検査を検討する主な症状・状況
症状・状況 | 考えられる小腸疾患 | 検査の目的 |
---|---|---|
原因不明の貧血・消化管出血 | 小腸出血(潰瘍、腫瘍、血管異形成など) | 出血源の特定、止血処置 |
持続する腹痛・下痢 | クローン病、小腸腫瘍、小腸炎 | 病変の確認、組織採取 |
画像検査での異常所見 | 小腸腫瘍、ポリープ、狭窄など | 精密検査、組織採取、治療 |
バルーン内視鏡による治療の可能性
バルーン内視鏡は診断だけでなく、治療にも応用でき、出血している部位に対してクリップを用いたり、薬剤を局所注入したりして止血を行えます。また、小さなポリープであれば切除することも可能です。
狭窄している部分に対しては、バルーンカテーテルを用いて拡張する治療も行え、従来であれば開腹手術が必要だったケースでも、内視鏡的に低侵襲な治療が可能となる場合があります。
小腸内視鏡検査の種類とそれぞれの特徴
バルーン内視鏡には、主に「ダブルバルーン内視鏡」と「シングルバルーン内視鏡」の2種類があり、また、近年では「スパイラル内視鏡」という新しいタイプの小腸内視鏡も登場しています。
ダブルバルーン内視鏡の特徴と手技
ダブルバルーン内視鏡は、内視鏡の先端部とオーバーチューブの先端部にそれぞれバルーンが付いているタイプです。
2つのバルーンを交互に膨らませたり縮めたりしながら、尺取り虫のように小腸を手繰り寄せて進んでいき、経口、経肛門のどちらからでも挿入可能で、全小腸の観察を目指すせます。
ダブルバルーン内視鏡の具体的な操作方法
経口挿入の場合、まず内視鏡とオーバーチューブを一緒に口から挿入し、十二指腸下行脚付近でオーバーチューブのバルーンを膨らませて固定し、次に内視鏡を進めます。
進んだところで内視鏡先端のバルーンを膨らませて固定し、オーバーチューブのバルーンを縮めて内視鏡先端まで引き寄せ、操作を繰り返すことで、小腸の深部へと到達します。
ダブルバルーン内視鏡の長所と短所
長所としては、高い小腸深部到達率と、比較的安定したスコープ操作性が挙げられ、組織採取や止血処置などの治療的処置も行いやすいです。
短所としては、手技がやや煩雑で、検査時間が長くなる傾向があること、また、バルーンによる腸管への圧迫が起こりうることなどが挙げられます。
シングルバルーン内視鏡の特徴と手技
シングルバルーン内視鏡は、オーバーチューブの先端部にのみバルーンが付いているタイプです。内視鏡先端にはバルーンがありません。操作方法はダブルバルーン内視鏡と似ていますが、バルーンが一つ少ない分、構造がシンプルです。
シングルバルーン内視鏡の具体的な操作方法
基本的な操作原理はダブルバルーン内視鏡と同様で、オーバーチューブのバルーンを支点として内視鏡を挿入し、腸管を手繰り寄せます。内視鏡先端のバルーンがないため、その分の操作が異なりますが、腸管の屈曲を利用して進むこともあります。
シングルバルーン内視鏡の長所と短所
長所は、ダブルバルーン内視鏡に比べて準備や操作がやや簡便であること、検査時間が若干短縮される可能性があることなどです。
短所としては、状況によって小腸深部への到達性がダブルバルーンに比べてやや劣る場合があること、スコープの安定性が若干低い場合があることなどが指摘されています。
スパイラル内視鏡の特徴と手技
スパイラル内視鏡は、オーバーチューブの先端に螺旋状のフィンが付いている新しいタイプの小腸内視鏡です。オーバーチューブを回転させることで、螺旋が腸管壁に食い込み、内視鏡を効率的に小腸深部へ進められます。
スパイラル内視鏡の具体的な操作方法
電動または手動でオーバーチューブを回転させると、スクリューのように内視鏡が腸管内を進んでいきます。バルーンを使用しないため、バルーンの膨張・収縮といった操作が不要です。
スパイラル内視鏡の長所と短所
長所としては、バルーン方式に比べて短時間で深部到達が可能となる場合があること、手技が比較的容易であるとされる点です。
短所としては、腸管壁への負荷がバルーン方式と異なる可能性があること、まだ導入施設が限られていることなどがあります。
バルーン内視鏡各種類の比較
種類 | バルーンの数 | 主な特徴 |
---|---|---|
ダブルバルーン内視鏡 | 2つ(スコープ先端、オーバーチューブ先端) | 高い深部到達率、安定した操作性 |
シングルバルーン内視鏡 | 1つ(オーバーチューブ先端) | 比較的簡便な操作、準備時間の短縮 |
スパイラル内視鏡 | なし(螺旋状フィンを使用) | 迅速な挿入の可能性、新しい手技 |
カプセル内視鏡検査の概要
カプセル内視鏡検査は、ビタミン剤のような小型のカプセル型カメラを飲み込むだけで、小腸全体を撮影できる画期的な検査方法です。患者さんの身体的負担が少なく、日常生活を送りながら検査を受けることができます。
カプセル内視鏡とは何か
カプセル内視鏡は、超小型カメラ、光源(LED)、バッテリー、無線送信機などを内蔵した、長さ約2.6cm、直径約1.1cm程度のカプセルです。
口から飲み込むと、消化管の蠕動運動によって自然に食道、胃、小腸、大腸へと進みながら、1秒間に数枚の画像を撮影し続け、撮影された画像は、体外に装着した記録装置に無線で転送されます。
カプセル内視鏡の検査原理と撮影の仕組み
カプセルは消化管内を通過する間、内蔵されたカメラが自動的に連続撮影を行い、光源が腸管内を照らし、鮮明な画像を得られます。
撮影されたデータは、腰に装着する小型の記録装置(レコーダー)にリアルタイムで送信され保存され、検査終了後、医師がこの記録装置内の画像を解析し、診断を行います。カプセルは通常、1~2日後には便と一緒に自然に排出されます。
カプセル内視鏡で発見が期待できる病変
カプセル内視鏡は、特に小腸の出血源の特定に有用です。潰瘍、びらん、ポリープ、腫瘍、血管異形成、炎症性病変(クローン病など)の発見に役立ちます。
胃カメラや大腸カメラでは観察できない小腸全域を比較的容易に観察できるため、原因不明の消化管出血や貧血の精査において、重要な検査法です。
カプセル内視鏡の利点と注意を要する点
項目 | 内容 | 詳細・補足 |
---|---|---|
利点 | 低侵襲性 | 痛みや苦痛がほとんどなく、鎮静剤も不要。 |
利点 | 小腸全域の観察 | 経口的に飲み込むだけで小腸全体を観察可能。 |
注意点 | 滞留リスク | 腸管狭窄がある場合、カプセルが滞留する可能性がある。 |
注意点 | 生検・治療不可 | 観察のみで、組織採取や治療はできない。 |
カプセル内視鏡は、患者さんにとって負担の少ない検査ですが、腸管に狭窄(狭い部分)があるとカプセルが詰まってしまう(滞留する)リスクがあるため、事前に画像検査などで狭窄の有無を確認することが大事です。
また、カプセル内視鏡はあくまで観察・診断のための検査であり、病変を発見しても組織を採ったり治療したりすることはできません。異常が見つかった場合は、バルーン内視鏡などによる追加検査や治療が必要です。
小腸内視鏡とカプセル内視鏡の使い分け
小腸内視鏡(バルーン内視鏡)とカプセル内視鏡は、それぞれに優れた特徴と限界があります。どちらの検査を選択するかは、患者さんの症状、疑われる疾患、検査の目的、患者さんの状態などを総合的に考慮して、医師が判断します。
診断が主目的か、治療も視野に入れるか
まず、検査の目的が重要です。小腸の病変を広範囲にスクリーニングし、診断の手がかりを得ることが主目的であれば、身体的負担の少ないカプセル内視鏡が第一選択となることが多いです。
特に原因不明の消化管出血で、出血源の特定が急務でない場合などに適しています。
一方、既に他の検査で病変が疑われており、組織採取による確定診断や、出血に対する止血処置、ポリープ切除などの治療が必要と考えられる場合は、バルーン内視鏡が選択され、バルーン内視鏡は観察と同時に治療的介入が可能です。
患者さんの身体的負担と検査の侵襲度
カプセル内視鏡は、カプセルを飲み込むだけで、検査中の苦痛はほとんどありません。鎮静剤も不要で、日常生活への影響も少ないので、高齢の方や、他の合併症をお持ちで侵襲的な検査が難しい方にも適しています。
バルーン内視鏡は、鎮静剤を使用することが一般的ですが、検査時間が長く、ある程度の身体的負担を伴いますが、得られる情報量が多く、治療も可能です。
疑われる病変の部位や性質による判断
疑われる病変の部位や性質も選択に影響します。例えば、CTやMRIなどの画像検査で、小腸の特定の場所に明らかな腫瘍性病変や狭窄が疑われる場合は、最初からバルーン内視鏡でアプローチし、組織診断や治療を試みることがあります。
カプセル内視鏡では、狭窄部位でカプセルが滞留するリスクがあるためです。逆に、広範囲に散在する微細な出血源や炎症性病変を検索する場合は、カプセル内視鏡の広角な観察能力が活かされます。
検査選択の目安
状況・症状 | 推奨される最初の検査(一例) | 主な理由 |
---|---|---|
原因不明の消化管出血(緊急性低) | カプセル内視鏡 | 低侵襲で小腸全体をスクリーニング |
クローン病の疑い(活動性評価) | カプセル内視鏡またはバルーン内視鏡 | 病変の範囲や活動性により判断 |
画像検査で明らかな小腸腫瘍の疑い | バルーン内視鏡 | 組織採取・治療の可能性 |
小腸狭窄が強く疑われる場合 | バルーン内視鏡(慎重に検討) | カプセル滞留リスク回避 |
医師との相談の重要性
最終的にどの検査方法を選択するかは、専門医が患者さん一人ひとりの状態を詳細に評価し、検査のメリット・デメリットを十分に説明した上で決定します。
患者さん自身も、検査に対する不安や疑問、希望などを遠慮なく医師に伝え、納得のいく形で検査を受けることが大切です。
各検査の準備・流れ・検査後
小腸内視鏡検査(バルーン内視鏡)とカプセル内視鏡検査は、それぞれ準備や当日の流れ、検査後の注意点が異なります。
バルーン内視鏡検査の準備と当日の流れ
バルーン内視鏡検査は、小腸内をきれいにして観察しやすくするために、事前の食事制限や下剤の服用が必要です。検査は通常、入院して行われます。
前処置(食事、下剤)の詳細
検査前日は、消化の良い食事をとり、指定された時間以降は絶食となり、水分は水やお茶など、透明なものに限り摂取可能です。検査当日は、腸管洗浄液(下剤)を数リットル服用し、腸内を空にします。
経口挿入の場合は胃内を、経肛門挿入の場合は大腸内をきれいにする必要があるので、医師の指示に従い、正確に下剤を服用してください。
検査中の鎮静・鎮痛について
検査は通常、鎮静剤や鎮痛剤を使用して、苦痛を和らげた状態で行い、検査時間は、観察範囲や処置の有無によって異なりますが、1時間から2時間程度です。
検査中は血圧や酸素飽和度などをモニターしながら、安全に配慮して行います。
カプセル内視鏡検査の準備と当日の流れ
カプセル内視鏡検査は、バルーン内視鏡に比べて準備が簡便で、外来で行うことが一般的です。
検査前の注意事項とカプセルの飲み方
検査前日の夕食後から絶食となることが多いので、医療機関の指示に従いましょう。
検査当日は、少量の水でカプセルを飲み込みます。カプセルを飲み込んだ後、数時間は絶飲食ですが、その後は水分摂取や軽い食事も可能となる場合があります。これも医師の指示を確認してください。
記録装置の装着と検査中の過ごし方
カプセルを飲み込む前に、腰にデータ記録用のレコーダーとセンサーアレイ(体に貼り付けるアンテナ)を装着します。
検査中は、通常通りの日常生活を送ることができますが、激しい運動やMRI検査は避ける必要があり、記録装置は8時間から12時間程度装着し、その後医療機関に返却します。
検査後の一般的な注意点と回復期間
検査種類 | 食事再開の目安 | 活動制限の目安 |
---|---|---|
バルーン内視鏡(鎮静あり) | 医師の許可後(通常、検査後数時間) | 当日は安静、車の運転不可 |
カプセル内視鏡 | 医師の指示に従う(通常、カプセル服用後数時間で水分可) | 記録装置装着中は激しい運動を避ける |
起こりうる偶発症と対応
どのような医療行為にも、稀に偶発症(合併症)が起こる可能性があります。小腸内視鏡検査(バルーン内視鏡)では、出血、穿孔(腸に穴が開くこと)、膵炎(経口挿入の場合)、鎮静剤による呼吸抑制や血圧低下などが考えられます。
カプセル内視鏡では、最も注意すべきはカプセルの滞留で、予期せぬ狭窄があった場合にカプセルが腸管内に留まってしまう状態です。
- バルーン内視鏡の偶発症の例: 出血、穿孔、膵炎
- カプセル内視鏡の偶発症の例: カプセル滞留
小腸検査にかかる費用と公的医療保険
小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査は、専門性の高い検査であるため、費用について心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、検査は、一定の条件を満たせば公的医療保険の適用となります。
バルーン内視鏡検査の費用の内訳と目安
バルーン内視鏡検査の費用は、使用する内視鏡の種類(ダブルかシングルか)、挿入経路(経口か経肛門か)、観察範囲、生検やポリープ切除などの処置の有無、入院日数などによって変動します。
一般的には、保険適用(3割負担の場合)で数万円から十数万円程度が目安となりますが、具体的な金額は医療機関や検査内容によって異なります。検査前に医療機関に確認してください。
カプセル内視鏡検査の費用の内訳と目安
カプセル内視鏡検査の費用も保険適用で、費用には、カプセル本体の費用、記録装置の使用料、読影料などが含まれます。保険適用(3割負担の場合)で、おおよそ3万円から5万円程度が目安です。
小腸検査の費用目安(保険3割負担の場合)
検査種類 | おおよその費用 | 備考 |
---|---|---|
バルーン内視鏡検査 | 50,000円~150,000円程度 | 処置内容、入院日数により変動 |
カプセル内視鏡検査 | 30,000円~50,000円程度 | 外来検査が一般的 |
保険適用の条件の詳細
小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査が保険適用となるためには、医師がその検査を必要と判断した場合に限られます。
例えば、原因不明の消化管出血があり、胃カメラや大腸カメラで異常が見つからない場合や、クローン病などの小腸疾患が強く疑われる場合などが該当します。単に「小腸を調べてみたい」という希望だけでは保険適用とならない場合があります。
保険適用が考慮される主なケース
- 原因不明の消化管出血
- クローン病の診断・評価
- 小腸腫瘍の疑い
よくあるご質問
小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査について、患者さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。検査に対する不安の解消にお役立てください。
- バルーン内視鏡検査は苦しいですか?鎮静剤は使いますか?
-
バルーン内視鏡検査は、ある程度の時間を要し、お腹の張りなどを感じることがあるため、多くの医療機関では、患者さんの苦痛を軽減するために鎮静剤や鎮痛剤を使用します。
鎮静剤を使用することで、うとうとした状態や眠ったような状態で検査を受けられます。
- カプセル内視鏡は体内で詰まったりしませんか?
-
カプセル内視鏡が腸管内で詰まってしまう「滞留」という偶発症は、頻度は低いものの起こる可能性があります。特に、クローン病などで腸管に狭窄がある場合や、過去に腹部の手術歴がある方などでリスクが高いです。
そのため、カプセル内視鏡検査を行う前には、CT検査やパテンシーカプセル(ダミーのカプセル)を用いた通過試験を行い、安全性を確認します。万が一滞留した場合は、バルーン内視鏡や手術で回収することもあります。
- 検査結果はいつ頃わかりますか?
-
バルーン内視鏡検査の場合、検査中にある程度の所見は判明しますが、生検(組織検査)を行った場合は、結果が出るまでに1~2週間程度かかります。
カプセル内視鏡検査の場合は、記録装置を返却した後、医師が膨大な量の画像を読影(解析)するため、結果説明までに数日から1週間程度かかることが一般的です。
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