便秘や下腹の張りなどに悩む人は多く、普段から腸の不調を抱えていると生活の質も下がりやすくなります。
腸もみは、腸周りの筋肉や大腸・小腸を手技で刺激し、排便や血流の流れを促すことで、便秘改善やストレス緩和、身体のリラックス効果を目指す方法です。
この記事では、腸もみとは何か、どういう人におすすめなのか、どのように行うかなどを解説しながら、腸もみを継続していくうえで意識するとよいポイントを詳しく紹介します。
腸もみとは何か
腸もみはお腹の上から腸の周辺をゆっくりと押したり、円を描くように動かしながら刺激を与えるマッサージで、大腸や小腸の位置を意識しつつ、腸の動きをスムーズにすることを狙いとし、便秘解消に役立つ可能性があります。
腸と自律神経のつながり
腸には数多くの神経が集まっているとされ、しばしば「第二の脳」と呼ばれるほど脳との連携が深い器官です。
交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで消化や吸収が正常に行われ、腸もみのような刺激が腸管の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促し、自律神経を整える助けになるともいわれています。
腸の基本構造
名称 | 位置・長さ | 主な役割 |
---|---|---|
小腸 | 胃の下から続き約6m | 食べたものを細かく分解し、大部分の栄養素を吸収する |
大腸 | 小腸の後に続き約1.5m | 水分やミネラルを再吸収して便を形成し、体外へ排出する働きを担う |
小腸と大腸の働きが円滑だと便通も整いやすく、腸内の状態も良好になりがちです。
腸もみが注目される理由
- 便秘や下痢など便通トラブルの緩和
- 下腹のぽっこり感がスッキリする可能性
- 腸内環境を整えることで免疫力やリラックス効果も期待
- 自宅で手軽に始められるセルフケアとして人気
腸もみで得られる効果
腸もみには、便秘改善や下腹の張りの解消など分かりやすい効果のほか、循環を促して身体を温めたり、ホルモンバランスや自律神経の調整に役立つ可能性が示唆されています。
個人差があるものの、続けていくことで腸もみのメリットを感じやすくなるでしょう。
腸もみがもたらす効果
効果 | 詳細 |
---|---|
便秘やガス溜まりの緩和 | 大腸を直接刺激することで蠕動運動を促し、便が移動しやすくなる可能性がある |
ストレス緩和 | 腸内でのセロトニン分泌をサポートし、自律神経のバランスに良い影響を与える |
下腹の見た目改善 | 胃腸の動きが鈍いと下腹にガスや便が溜まりやすいため、腸もみでお腹の張りが軽くなる |
免疫機能へのアプローチ | 腸内環境が整うと有益菌が増え、免疫力向上に寄与すると考えられている |
便秘が続くとどうなるか
- 食欲不振、肌荒れ、吹き出物などが起こりやすい
- 腹部膨満感や重苦しさを感じる
- ガスが溜まってお腹が張り、不快感を抱きやすい
- 体全体がなんとなくだるい、疲れが取れにくい
こうした症状が長期化すると生活の質(QOL)が低下しがちなので、腸もみを取り入れたり、専門医へ相談を検討するのも一案です。
腸もみを始める前のポイント
いざ腸もみを始めようとしても、自己流で適当にお腹を強く押すと痛めてしまうリスクもあるため、基本的なポイントを理解しておくとよいです。
特に、空腹時や入浴後など血行が良いタイミングで行うと、腸まわりの緊張がゆるみやすく、より効率的に刺激を与えられます。
腸もみ前に意識すること
- 食後すぐは避け、食後1〜2時間後や空腹時に行う
- トイレを済ませ、お腹をリラックスできる状況を作る
- 入浴後は体が温まっており、筋肉もほぐれやすい
- 爪は短く切り、腹部に直接爪が当たらないようにする
心地よい強さを把握する
痛みを我慢して強く押すよりも、心地よい刺激を意識しながら呼吸に合わせて優しく行うことが重要です。強すぎる押圧はかえって筋肉や腸に負担をかけ、内出血や不快感を招くことがあります。
腸もみ時の注意点
項目 | 内容 |
---|---|
目安の力加減 | 指先が数cm沈む程度で十分 |
痛みがある場合の対処 | すぐに力を緩めるか、場所を変えて様子をみる |
傷みや違和感が続く際 | 医療機関で相談し、重大な疾患がないか確認してもらう |
腸もみの具体的なやり方
腸もみには、小腸を中心に行う方法や、大腸を一巡するように押し流すような方法など、複数のバリエーションがあり、ここでは代表的な腸もみを紹介します。セルフケアとして取り入れる場合は、無理のない姿勢で行うのがコツです。
全体の流れ
- 腸もみ前の準備:仰向けになり、腹式呼吸でお腹をリラックス
- 小腸もみ:おへそ付近に円を描くように指の腹で押し回す
- 大腸もみ:大腸の走行に沿って、時計回りに優しく刺激する
- 仕上げ:軽いストレッチや飲水で腸内を整える
腸の位置関係
部位 | 主な位置 |
---|---|
小腸 | おへその周囲、腹部の中央部付近 |
上行結腸 | おへその右側、肋骨下あたりまで上がる |
横行結腸 | みぞおち付近の横方向に走っている |
下行結腸 | おへその左側を通り、さらに骨盤付近まで下がる |
S状結腸 | 下腹部左側でS字に曲がり、直腸へつながっていく |
小腸もみ
おへそから半径3〜5cmの範囲を、小さな円を描くように押し回す方法で、軽い痛みがある場合は力を緩め、痛みが強ければ専門家に相談してください。
小腸は栄養吸収に重要な役割があるため、丁寧にマッサージを行うことで蠕動運動を後押しできます。
小腸もみの手順
- 仰向けになり、両膝を少し立てる
- おへそ周囲を指の腹で押しながら円を描く
- 力は軽めから始め、痛くない程度に調整
- 30秒〜1分ほどかけてゆっくり円を描く
大腸もみ
大腸は時計回りに走行するため、右下腹部(盲腸付近)→右上腹部→みぞおち周辺→左上腹部→左下腹部→下腹部中央付近という順番で、円を大きく描くイメージで揉み込むとよいです。
大腸もみの手順
- 右下腹部に手のひらを当て、軽く押す
- そこから右上腹部、みぞおち付近、左上腹部、左下腹部へと時計回りに移動
- 各ポイントで指の腹、または手のひら全体でゆっくり圧をかける
- 全体を2〜3周する
腸もみに合わせて使える呼吸法
腸もみ中は呼吸を意識するとリラックス効果が上がり、腹式呼吸を行うと副交感神経が優位になり、腸の動きがより活発になりやすいです。
腸もみ呼吸の流れ
ステップ | 内容 |
---|---|
息を吐き切る | 鼻か口からゆっくりとお腹をへこませながら息を吐き切る |
息を吸う | お腹を膨らませるイメージで鼻から吸う |
腸もみと合わせる | 吐くときに指を押し込む、吸うときに少し力を緩める |
腸もみを行うときの注意点
セルフマッサージとして気軽に取り入れられる一方で、誤った方法で行うと負担がかかる場合があります。以下のケースに当てはまる人は、一度医師に相談してから行うか、専門家の施術を受けたほうが安心です。
注意が必要なケース
- 妊娠中や産後間もない人
- 消化器系に疾患(炎症性腸疾患、潰瘍など)がある、または疑いがある人
- 腹部に手術歴があり痛みや違和感を感じる人
- 腹部に強い痛みや出血がある人
腸もみを避けるタイミング
- 食後30分以内(消化の邪魔になる可能性)
- 高熱時や体調が悪いとき
- 空腹すぎて気分が悪いとき
腸もみと合わせたい習慣
腸もみだけでなく、毎日の生活習慣の見直しも重要で食事、や運動習慣をバランスよく整えることで、より効率的に腸内環境が改善しやすくなります。
食事習慣のポイント
食材 | 役割 |
---|---|
食物繊維 | 腸内で便を形成し、善玉菌の増殖をサポート |
発酵食品 | 腸内の善玉菌を増やし、便通や免疫力をサポート |
水分 | 十分な水分摂取により便が固くなるのを防ぎ、排出を助ける |
良質のたんぱく質 | 筋肉や組織の修復や、腸の細胞の再生を支える |
運動習慣
- ウォーキングや軽いジョギング:腸の蠕動運動を活発化
- 腹筋運動:お腹まわりを鍛え、便を押し出す力をサポート
- ヨガやピラティス:深呼吸や体幹を鍛えながら、腸全体を刺激
ストレス対策
ストレスは自律神経のバランスを乱し、腸の動きにも影響を与えます。腸もみだけでなく、十分な睡眠や趣味の時間などでストレス緩和を図ることも大切です。
腸もみの継続と効果実感のコツ
腸もみの効果は個人差があり、すぐに劇的な改善を感じる場合もあれば、徐々に変化を実感する人もいます。大切なのは生活習慣の中に無理なく組み込み継続することです。
効果を引き出すコツ
- 毎日1回、寝る前や朝起きたときなど一定の時間に行う
- 便通の変化やお腹の張り具合を記録してみる
- 食事のバランスや水分量も同時に管理
- 無理に長時間や強い力で行わず、短い時間をこまめに続ける
腸もみの効果が不十分なとき
長期間続けても便秘や不調が改善しない場合は、医療機関で診察を受け、器質的な疾患(大腸ポリープ、過敏性腸症候群など)がないかチェックすることが重要です。腸もみでカバーしきれない原因があるかもしれません。
病院を受診すべきサイン
症状 | 可能性のある問題 |
---|---|
長期間の便秘、下痢を繰り返す | 過敏性腸症候群、甲状腺機能などの内分泌異常などの可能性 |
血便、黒い便が出る | 大腸ポリープ、大腸がん、胃や十二指腸潰瘍などの出血が疑われる |
体重減少や食欲不振を伴う | 消化器系の重篤な疾患や感染症 |
腹痛が激しく嘔吐も起きる | 腸閉塞や腹膜炎などの緊急性が高い病態 |
まとめ
腸もみは、自宅で気軽に行えるセルフマッサージとして人気があり、便秘や下腹の張り、ポッコリお腹などの悩みを緩和する手立てです。
ポイントは強く押し込みすぎず、痛くない程度の力で腸の走行をイメージしながら行うことです。腸は免疫や自律神経など、健康全般に深く関わる大切な器官であり、腸もみはケアの一種ともいえます。
腸もみを行うときは、腸の位置や大腸・小腸の役割を理解し、リラックスした状態で腹式呼吸を組み合わせると、より効果を感じやすくなるかもしれません。
あわせて、食物繊維や発酵食品を取り入れた食生活や、適度な運動、ストレスケアなどを行うことで腸内環境がトータルに改善しやすいです。
ただし、もし腸もみを続けてもなかなか改善が見られない、激しい痛みや血便など気になる症状がある場合は、消化器内科などの専門医に相談してください。
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