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運動不足による便秘と下痢 – 生活習慣改善と検査の必要性

運動不足による便秘と下痢 - 生活習慣改善と検査の必要性

運動不足は、私たちの体にさまざまな影響を及ぼしますが、消化器系の不調である便秘や下痢の原因となることがあります。

この記事では、運動不足がなぜ便秘や下痢を引き起こすのか、その背景にある理由を解説し、生活習慣の改善策や、症状が続く場合に医療機関での検査を検討する重要性について、分かりやすくお伝えします。

目次

運動不足が引き起こす便秘と下痢の基礎知識

私たちの体は、適度な運動によって正常な機能が保たれています。運動不足の状態が続くと、体のさまざまな部分に影響が現れますが、消化器系も例外ではありません。

運動不足と便秘の関係性

運動不足が便秘を起こす主な理由の一つは、腸の蠕動(ぜんどう)運動の低下です。蠕動運動とは、腸が内容物を先へ押し出す動きのことで、この動きが活発であるほど便通はスムーズになります。

体を動かすことで腹筋が刺激され腸の動きも活発化しますが、運動量が不足すると刺激が減少し、腸の動きが鈍くなり、便が腸内に滞留しやすくなります。これが便秘の一因です。

また、運動不足は血行不良も招き、消化管への血流が悪くなると腸の機能全体が低下し、便秘を助長することがあります。

さらに、運動習慣がないと、排便に必要な腹筋の力も弱まりがちです。特に高齢者や長時間座り仕事をする人に、この傾向が見られます。

運動不足と下痢の関係性

意外に思われるかもしれませんが、運動不足は下痢の原因にもなり、主に自律神経の乱れと関連しています。

自律神経は交感神経と副交感神経のバランスによって、内臓の働きを含む体のさまざまな機能を調整していて、適度な運動は自律神経のバランスを整える効果がありますが、運動不足が続くとこのバランスが崩れやすいです。

自律神経のバランスが乱れると、腸が過敏になったり逆に動きが悪くなったりします。腸が過敏になると、少しの刺激で腸が過剰に反応し、内容物が急速に通過することで下痢を起こすことがあります。

また、ストレスも自律神経の乱れを介して下痢の原因となりますが、運動不足がストレス解消の機会を奪い、間接的に下痢を誘発する可能性も考えられます。

なぜ運動不足が消化器系に影響するのか

運動不足が消化器系に影響を及ぼす理由は多岐にわたり、蠕動運動の低下や血行不良、自律神経の乱れに加え、腸内環境の悪化も挙げられます。

適度な運動は腸内細菌のバランスを良好に保つ助けとなりますが、運動不足は悪玉菌の増加を招きやすい環境を作り出すことがあります。腸内環境の悪化は、便秘だけでなく、下痢やその他の消化器症状にもつながります。

さらに、運動は体全体の代謝を促進し、代謝が低下すると消化吸収能力も影響を受け、消化不良を起こしやすくなることもあります。このように、運動不足は直接的および間接的に、消化器系のさまざまな機能に影響を与えるのです。

運動不足による消化器系への影響要因

影響要因具体的な内容結果として起こりうること
蠕動運動の低下腸の動きが鈍くなる便秘
血行不良消化管への血流悪化腸機能低下、便秘
自律神経の乱れ腸の過敏化または機能低下下痢、便秘

便秘の具体的な症状とセルフチェック

便秘は多くの人が経験する症状ですが、その定義や種類、身体への影響はさまざまです。運動不足が原因の一つとなり得る便秘について、具体的な症状を理解し、セルフチェックを行うことで、早期の対策につなげられます。

便秘の種類とそれぞれの特徴

便秘は、原因や状態によっていくつかの種類に分類され、主に「機能性便秘」と「器質性便秘」に大別されます。

機能性便秘

機能性便秘は、大腸や直腸の働きに問題が生じることで起こる便秘で、生活習慣やストレスなどが原因となることが多いです。さらにいくつかのタイプに分けられます。

  • 弛緩性便秘:大腸の蠕動運動が弱まり、便を押し出す力が低下するタイプ。運動不足や食物繊維不足、加齢などが原因。
  • 痙攣性便秘:ストレスなどにより自律神経が乱れ、大腸が過度に緊張して痙攣し、便がスムーズに運ばれなくなるタイプ。ウサギの糞のようなコロコロとした便が特徴。
  • 直腸性便秘:便が直腸まで到達しても、便意を感じにくくなったり、排便を我慢する習慣があったりすることで起こるタイプ。

器質性便秘

器質性便秘は、腸管そのものに病気や異常(炎症、腫瘍、狭窄など)があり、それが原因で便の通過が物理的に妨げられるタイプの便秘で、原因となる病気の治療が必要です。

急に便秘が悪化した場合や、血便、腹痛、体重減少などを伴う場合は、医療機関での検査が重要になります。

便秘が続くことによる身体への影響

便秘が長期間続くと、単にお腹が張る苦しいといった不快感だけでなく、身体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 腹部膨満感、腹痛
  • 食欲不振、吐き気
  • 肌荒れ、ニキビ
  • 痔、裂肛
  • イライラ、集中力の低下

また、腸内に便が長時間滞留することで悪玉菌が増殖しやすくなり、腸内環境が悪化し、有害物質が体内に吸収されやすくなり、免疫力の低下など全身の健康状態にも影響を与える可能性があります。

たかが便秘と軽視せず、慢性化する前に対処することが大切です。

自宅でできる便秘のセルフチェック項目

ご自身が便秘かどうか、またどの程度なのかを把握するために、簡単なセルフチェックを行ってみましょう。

便秘セルフチェックリスト

チェック項目はいいいえ
排便が週に3回未満である
排便時に強くいきむ必要がある
便が硬く、コロコロしていることが多い
残便感がある(すっきり出ない感じ)
排便に時間がかかる
お腹が張って苦しいことが多い

項目に複数当てはまる場合は便秘の可能性があります。症状が長引く場合や、生活に支障を感じる場合は、専門医に相談することを検討しましょう。

便秘の記録と医療機関受診の目安

便秘の症状を正確に把握し医療機関を受診する際に役立つのが、排便記録です。いつ、どのような便が出たか、症状の変化などを記録しておくと、医師が診断を下す上で重要な情報となります。

排便記録のポイント

記録項目記録内容の例
排便の頻度週に何回、何日に1回など
便の形状・硬さブリストル便形状スケールなどを参考に(硬い、コロコロ、普通、泥状など)
排便時の状態スムーズに出た、いきんだ、残便感ありなど
その他の症状腹痛、腹部膨満感、血便の有無など
食事内容や運動量特に変化があった日など

市販の便秘薬を長期間使用しても改善しない、急に便秘の症状が悪化した、血便がある、原因不明の体重減少がある、激しい腹痛を伴うなどの場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。

下痢の具体的な症状とセルフチェック

下痢もまた、多くの人が経験する消化器症状の一つです。運動不足が間接的な原因となることもあります。

下痢の種類とそれぞれの特徴

下痢は、持続期間や原因によって主に「急性下痢」と「慢性下痢」に分けられます。

急性下痢

急性下痢は発症から2週間以内に治まるものであり、主な原因としては、ウイルスや細菌による感染性腸炎(食中毒など)、暴飲暴食、冷え、特定の薬剤の副作用などが挙げられます。

症状が激しい場合や、脱水症状が見られる場合は注意が必要です。

慢性下痢

慢性下痢は、4週間以上続くもので、原因は多岐にわたり、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、乳糖不耐症、吸収不良症候群、甲状腺機能亢進症、慢性膵炎などが考えられます。

運動不足による自律神経の乱れが、過敏性腸症候群の一因となることもあり、慢性的な下痢は、原因を特定し、治療を行うことが大切です。

下痢の主な原因分類

分類主な原因特徴的な症状・注意点
感染性ウイルス、細菌、寄生虫発熱、腹痛、嘔吐を伴うことも。脱水に注意。
非感染性 (機能性)過敏性腸症候群、ストレス腹痛を伴い、排便で軽快。便秘と下痢を繰り返すことも。
非感染性 (器質性)炎症性腸疾患、大腸がん血便、体重減少、発熱など。専門的な検査が必要。
その他薬剤性、食物アレルギー、乳糖不耐症原因となる物質の特定が重要。

下痢が続くことによる身体への影響

下痢が続くと、水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)が大量に失われ、脱水症状を起こす可能性があります。特に乳幼児や高齢者は脱水になりやすいため注意が必要です。

また、慢性的な下痢は栄養の吸収障害を招き、体重減少や栄養失調につながることもあり、消化管の炎症が原因である場合は、炎症自体が身体に負担をかけます。

自宅でできる下痢のセルフチェック項目

下痢の症状について、以下の項目をチェックしてみましょう。

  • 下痢が始まったのはいつからか(突然か、徐々にか)
  • 下痢の頻度(1日に何回くらいか)
  • 便の性状(水様便、泥状便、粘液や血液の混入はあるか)
  • 腹痛の有無、程度、場所
  • 発熱、嘔吐、体重減少などの他の症状はあるか
  • 最近、生ものや普段食べ慣れないものを食べたか
  • 海外渡航歴はあるか
  • 服用中の薬はあるか(市販薬、処方薬、サプリメントなど)
  • ストレスを感じる状況はあるか

下痢の記録と医療機関受診の目安

下痢の症状も便秘と同様に記録をつけておくことが診断の助けになり、慢性的な下痢の場合は、症状のパターンや食事との関連性などが見えてくることがあります。

次のような場合は、速やかに医療機関を受診することを推奨します。

高熱を伴う下痢、激しい腹痛、血便、嘔吐が続く、水分が摂れない、脱水症状(口の渇き、尿が少ない、ぐったりしているなど)が見られる、2週間以上下痢が続く、原因不明の体重減少がある場合などです。

運動不足解消のための生活習慣改善アプローチ

運動不足が便秘や下痢の一因となっている場合、生活習慣を見直し、適度な運動を取り入れることが症状改善への第一歩となります。無理なく続けられる方法を見つけ、日常生活の中に運動を組み込んでいきましょう。

日常生活に取り入れやすい運動のすすめ

特別な道具や場所を必要とせず、日常生活の中で手軽に始められる運動から試し、大切なのは継続することです。

ウォーキング

ウォーキングは最も手軽で効果的な有酸素運動の一つで、全身の血行を促進し、腸の蠕動運動を活発にする効果が期待できます。1日20~30分程度を目安に、少し汗ばむくらいのペースで歩くのが理想です。

通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常生活の中で歩く機会を増やす工夫も有効です。

ストレッチ

ストレッチは体の柔軟性を高め血行を改善する効果があり、特に腹部や腰回りのストレッチは腸の動きを刺激し、便秘解消に役立つことがあります。起床時や就寝前、仕事の合間など、リラックスできる時間に取り入れてみましょう。

深い呼吸を意識しながら行うと、自律神経を整える効果も期待できます。

軽い筋力トレーニング

腹筋や背筋など体幹を支える筋肉を鍛えることは、排便力を高める上で重要です。スクワットや腹筋運動、プランクなどを、無理のない範囲で週に数回行うと良いでしょう。

特別な器具がなくても、自重で行えるトレーニングはたくさんあります。

食事内容の見直しと水分補給の重要性

運動だけでなく、食事内容や水分補給も便通を整える上で非常に重要です。バランスの取れた食事を心がけ、特に食物繊維を意識して摂取しましょう。

食物繊維は便の量を増やし、腸の蠕動運動を促進する働きがあり、野菜、果物、きのこ類、海藻類、豆類などに多く含まれています。

また、十分な水分補給は、便を柔らかくし、排出しやすくするために必要です。1日に1.5~2リットル程度の水を、こまめに飲みましょう。

睡眠の質と腸内環境

質の高い睡眠も腸内環境を整え、便通を改善するために重要です。睡眠不足や不規則な睡眠は自律神経の乱れを起こし、腸の働きに悪影響を与える可能性があります。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい生活リズムを心がけましょう。

また、睡眠中に腸の活動が活発になるため、十分な睡眠時間を確保することで腸内環境の改善も期待できます。

運動以外の便秘・下痢対策

運動習慣の確立と並行して食事や生活習慣全般を見直すことで、便秘や下痢の改善効果を高めます。ここでは、運動以外で取り組める対策について解説します。

食物繊維の適切な摂取方法

食物繊維は便通改善に役立ちますが、種類と摂取方法には注意が必要で、食物繊維には「不溶性食物繊維」と「水溶性食物繊維」の2種類があり、バランス良く摂取することが大切です。

食物繊維の種類と働き、多く含む食品

食物繊維の種類主な働き多く含む食品の例
不溶性食物繊維便のカサを増やし、腸を刺激して蠕動運動を促す穀類(玄米、全粒粉パン)、豆類、きのこ類、根菜類(ごぼう、にんじん)
水溶性食物繊維便を柔らかくし、善玉菌のエサとなって腸内環境を整える果物(りんご、バナナ)、海藻類(わかめ、昆布)、大麦、こんにゃく

便秘のタイプによっては、不溶性食物繊維を摂りすぎるとかえってお腹が張ることがあります。特に痙攣性便秘の場合は、水溶性食物繊維を中心に摂取し、不溶性食物繊維は摂りすぎないように注意が必要です。

発酵食品とプロバイオティクスの活用

腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やすことが重要です。発酵食品やプロバイオティクスを含む食品を積極的に摂取しましょう。

発酵食品には、ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、漬物などがあり、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が含まれており、腸内フローラのバランス改善に役立ちます。

プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届き、体に良い影響を与える微生物のことです。ヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどで摂取できます。

ストレス管理とリラックス法

ストレスは自律神経のバランスを乱し、腸の働きに大きな影響を与え、過敏性腸症候群などストレスが関与する便秘や下痢の場合、ストレス管理が症状改善の鍵です。

自分なりのリラックス法を見つけ、日常生活に取り入れましょう。趣味の時間を持つ、音楽を聴く、アロマテラピー、瞑想、ヨガ、深呼吸などがあります。十分な睡眠時間を確保し、休息をしっかりとることも重要です。

便意を我慢しない生活習慣

便意を感じたら、我慢せずにトイレに行く習慣をつけましょう。便意を我慢することが続くと直腸の感受性が鈍くなり、便意を感じにくくなってしまう「直腸性便秘」の原因となります。

特に朝食後は腸の動きが活発になりやすく、便意を感じやすい時間帯です。時間に余裕を持ってトイレに行く習慣をつけてください。

また、トイレにゆっくり座る時間を確保することも大切で、焦らずリラックスして排便できる環境を整えましょう。

医療機関での検査と診断の重要性

生活習慣の改善を試みても便秘や下痢の症状が改善しない場合や、特定の症状が見られる場合には、医療機関を受診し検査と診断を受けることが重要です。

どのような場合に医療機関を受診すべきか

以下のような症状や状況が見られる場合は、消化器内科などの専門医に相談することを検討してください。

  • 便秘や下痢の症状が長期間(目安として数週間以上)続く
  • 市販薬を使用しても症状が改善しない、または悪化する
  • 急に排便習慣が変化した(例:これまで快便だったのに急に頑固な便秘になった)
  • 血便(便に血が混じる、便器が赤くなる、黒っぽい便が出るなど)がある
  • 激しい腹痛、持続する腹痛がある
  • 原因不明の体重減少がある
  • 発熱を伴う下痢
  • 貧血の症状(めまい、立ちくらみ、動悸など)がある
  • 家族に大腸がんや炎症性腸疾患の人がいる

症状は、単なる便秘や下痢ではなく、他の病気が隠れているサインである可能性があるので、早期発見・早期対応が重要です。

消化器内科で行われる主な検査

医療機関では、症状や状況に応じてさまざまな検査が行われます。

消化器内科での主な検査内容

検査の種類検査内容検査でわかることの例
問診・触診症状、既往歴、生活習慣などを詳しく聞き取り、腹部の状態を触って確認する症状の全体像把握、緊急性の判断、必要な検査の選択
便検査便中の血液の有無(便潜血検査)、細菌やウイルスの感染の有無などを調べる消化管出血の有無、感染性腸炎の原因特定など
血液検査貧血の有無、炎症反応、肝機能、腎機能、甲状腺機能などを調べる全身状態の把握、炎症の程度、特定の病気のスクリーニング
腹部X線検査腹部のレントゲン撮影を行い、腸内のガスや便のたまり具合、腸閉塞の有無などを確認する便秘の程度、腸閉塞の診断など
腹部超音波(エコー)検査超音波を使って腹腔内の臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、腸管など)の状態を調べる腫瘍、炎症、結石などの有無、腸管壁の肥厚など
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を直接観察する。必要に応じて組織を採取(生検)したり、ポリープを切除したりすることも可能大腸がん、ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、憩室症などの診断

検査は医師が患者さんの状態を総合的に判断して、必要なものを選択します。

検査結果に基づく診断と今後の対応

各種検査の結果を総合的に評価し、医師が診断を下し、診断結果に基づいて、今後の治療方針や生活指導が決定されます。

運動不足や食生活の乱れによる機能性の便秘や下痢と診断された場合は、引き続き生活習慣の改善(食事療法、運動療法)が中心です。

また、必要に応じて、症状を和らげるための薬物療法(便秘薬、整腸剤、下痢止めなど)が行われることもあります。

大腸がんや炎症性腸疾患などの器質的な病気が見つかった場合は、専門的な治療が必要となります。早期に発見できれば、治療の選択肢も広がり、良好な経過が期待できることが多いです。

よくある質問 (Q&A)

運動不足による便秘や下痢に関して、患者さんからよく寄せられる質問と回答をまとめました。

どのくらいの運動量が必要ですか?

健康維持のためには週に150分程度の中等度の有酸素運動(早歩きなど)か、週に75分程度の高強度の有酸素運動(ランニングなど)、またはこれらの組み合わせが推奨されています。

便秘や下痢の改善を目的とする場合も、まずはこのあたりを目安に、無理のない範囲で始めるのが良いでしょう。

運動以外で気をつけることはありますか?

運動以外にも気をつけるべき点は多くあり、まず、バランスの取れた食事が基本です。特に食物繊維を豊富に含む野菜、果物、海藻類、きのこ類を積極的に摂取しましょう。

また、十分な水分補給も便通を整えるために重要で、1日に1.5~2リットルの水を目安にこまめに飲むことが大切です。

さらに、毎日決まった時間に食事を摂り十分な睡眠時間を確保することで、自律神経のバランスが整い、腸の働きも安定しやすくなります。

市販薬を使い続けても良いですか?

市販の便秘薬や下痢止めは一時的な症状の緩和には役立ちますが、長期間漫然と使い続けることは推奨できません。

便秘薬の中には連用することで腸の動きを悪化させたり、薬がないと排便できなくなったりするものもあります(刺激性下剤など)。

症状が続く場合は自己判断で薬を使い続けるのではなく、一度医療機関を受診し、医師に相談することが大切です。

サプリメントは効果がありますか?

便秘や下痢の改善を謳ったサプリメントは数多くありますが、効果は科学的根拠が十分でないものも少なくありません。

食物繊維や乳酸菌、ビフィズス菌などのサプリメントは、一部の人には効果が見られることもありますが、あくまで食事の補助として考え、頼りすぎないことが大切です。

サプリメントを利用する場合は成分や含有量を確認し、過剰摂取にならないように注意しましょう。

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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