逆流性食道炎の原因と治し方|胃カメラでわかること
逆流性食道炎の原因と治し方|胃カメラで食道の状態をチェック
- 逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流して炎症を起こす疾患で、食生活の欧米化に伴い患者数が増加している
- 下部食道括約筋(LES)の緩み・食道裂孔ヘルニア・腹圧上昇・蠕動運動低下・内服薬の副作用が主な原因
- 胃カメラ検査で炎症の範囲・重症度を直接確認でき、組織採取による確定診断も可能
- PPI・P-CABを中心とした薬物療法と、食事・姿勢・睡眠の見直しで再発を防ぐ
- 慢性化するとバレット食道や食道がんのリスクが高まるため、症状が続く場合は早めに消化器内科を受診する
「胸のあたりが焼けるように痛い」「酸っぱいものがこみ上げてくる」——こうした症状にお悩みではありませんか。逆流性食道炎は、胃酸を含む胃の内容物が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症を起こす疾患です。日本では食生活の欧米化や高齢化を背景に患者数が増え続けており、成人の約10〜20%が罹患しているとされています[1][2]。
食道の粘膜は胃と異なり酸への防御機能を持たないため、逆流が繰り返されるとただれ(びらん)や潰瘍が生じます。症状が軽いうちは市販薬で緩和できることもありますが、自己判断のまま放置すると炎症が慢性化し、バレット食道や食道がんへ進行するリスクが指摘されています[1]。当院は金沢駅から徒歩5分に位置し、2024年8月に開院した消化器内科・内視鏡クリニックです。お仕事帰りや通勤途中でも通いやすい環境で、専門医が胃カメラ検査から治療・生活指導までを一貫して担当いたします。この記事では、逆流性食道炎の原因・症状・治療法を消化器専門医の視点でわかりやすくご説明します。
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は、胃酸や消化酵素を含む胃の内容物が食道へ逆流し、食道粘膜に炎症やびらんを生じさせる疾患です。医学的には、びらんを伴う「逆流性食道炎」と、びらんのない「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」をあわせて「胃食道逆流症(GERD)」と総称します[1]。胃酸は pH 1〜2 の強酸であり、食道粘膜は胃粘膜のように粘液と重炭酸イオンによる防御層を持たないため、胃酸に繰り返し曝露されることで組織が傷つきます。
食道に逆流した胃酸が迷走神経を刺激すると、胸やけや呑酸といった典型的な症状だけでなく、咳・喘息様症状・のどの違和感・声のかすれなど、一見すると食道とは関連がなさそうな症状を引き起こすこともあります。これらは「食道外症状」と呼ばれ、耳鼻科や呼吸器科を受診しても改善しない場合に、逆流性食道炎が原因であったと判明するケースも少なくありません。慢性的な炎症が長期間にわたると、食道の扁平上皮が胃に近い円柱上皮に置き換わる「バレット食道」へと進行し、食道腺がんの発生リスクが上昇することが報告されています[1]。
逆流性食道炎のよくある症状
代表的な症状は「胸やけ」と「呑酸(酸っぱい液体がこみ上げる感覚)」です。このほか、みぞおちの痛み、げっぷ、胃もたれ、のどの違和感やつかえ感、飲み込みにくさ、慢性的な咳、声がれといった症状が現れることがあります。就寝中に咳き込んで目が覚める、横になると胸のあたりが締めつけられるように感じる、といった訴えも多くみられます。
注意すべき点は、これらの症状が他の消化器疾患——たとえば胃潰瘍や食道がん——でも起こりうることです。症状だけで原因疾患を正確に判別することは難しいため、胸やけや呑酸が2週間以上続く場合は、胃カメラ検査による客観的な評価をおすすめします。
逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎は単一の原因で起こるものではなく、複数の要因が重なって発症します。以下では主な5つのメカニズムを順に解説します。
食道裂孔ヘルニア・食道裂孔の弛緩
胸部と腹部を隔てる横隔膜には食道が通る「食道裂孔」があり、この裂孔が胃と食道の接合部を外側から締めつけることで逆流を防いでいます。加齢や肥満、慢性的な腹圧上昇などにより食道裂孔が弛緩すると、胃の上部が胸腔側に滑り上がる「食道裂孔ヘルニア」が生じやすくなります。食道裂孔ヘルニアがあると、下部食道括約筋の機能が低下し、胃酸の逆流が起こりやすくなります[1]。
下部食道括約筋(LES)の緩み
食道と胃の接合部にある筋肉のリング——下部食道括約筋(LES: Lower Esophageal Sphincter)——は、食べ物が通過するとき以外は収縮して逆流を防いでいます。加齢による筋力低下、脂肪分の多い食事、カフェイン、アルコール、喫煙などはLESの圧を低下させる因子として知られています。また、一過性LES弛緩(TLESR)と呼ばれる食事とは無関係に起こる短時間の弛緩が、逆流の主なきっかけとなることがLyon consensus 2.0でも言及されています[4]。
腹圧の上昇
腹圧が高まると、胃の内容物が食道側へ押し上げられやすくなります。肥満、妊娠、猫背や前かがみの姿勢、ベルトやガードルなどによる腹部の締めつけ、重い荷物の持ち上げ、慢性的な便秘などが腹圧を上昇させる代表的な要因です。とくに内臓脂肪型の肥満は胃を持続的に圧迫するため、減量によって症状が大幅に改善するケースも少なくありません。
蠕動運動の低下
食道の蠕動運動には、逆流した胃酸を速やかに胃へ押し戻す「クリアランス機能」があります。加齢や糖尿病などで蠕動運動が低下すると、逆流した酸が食道に長くとどまり、炎症が重症化しやすくなります。蠕動運動の低下そのものが逆流を引き起こすわけではありませんが、症状の遷延や重症度の悪化に深く関与します。
内服薬の副作用
心疾患に使われるカルシウム拮抗薬や硝酸薬、気管支喘息の治療薬であるテオフィリン、一部の抗コリン薬などには、LESの圧を低下させる作用があります。こうした薬剤を服用中に胸やけや呑酸が出現した場合は、薬の副作用が原因である可能性があります。自己判断で中止せず、お薬手帳を持参のうえ主治医にご相談ください。逆流症状の程度と既往症の状態に応じて、処方内容の調整や逆流を抑える薬の追加を検討します。
胃カメラ検査で逆流性食道炎を診断する
逆流性食道炎の確定診断と重症度評価には、胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査が最も有用です。食道粘膜の発赤・びらん・潰瘍の有無を直接観察し、改訂ロサンゼルス分類(Grade N/M/A/B/C/D)[4]によって重症度を客観的に評価します。疑わしい病変があれば検査中に組織を採取し、病理検査で確定診断につなげることができます。また、逆流を起こしやすくする食道裂孔ヘルニアの有無もあわせて確認します。
当院(金沢駅前院)では、オリンパス社の最先端内視鏡システム「EVIS X1」を導入しており、NBI(狭帯域光観察)や拡大観察機能により、ごく初期の食道病変や微小ながんまで高精度に検出できます。経鼻・経口いずれの検査にも対応しており、鎮静剤を用いてウトウトと眠ったような状態で受けていただくことも可能です。女性医師による検査も承っておりますので、お気軽にご相談ください。土曜日の検査、朝9時からの早朝検査にも対応しており、平日お忙しい方にもご利用いただきやすい体制を整えています。さらに、当日検査にもできる限り対応しております(前日・当日の食事内容によってはご案内できない場合があります)。
検査前の絶食については、当院では前日21時までに夕食を済ませていただくようお願いしております。一般的な目安としては、固形物は検査の6時間前まで、透明な飲料(水・薄いお茶)は2時間前まで摂取可能です。鎮静剤を使用された場合は、検査当日から翌朝までは車・バイク・自転車の運転をお控えください。金沢駅から徒歩5分の立地ですので、公共交通機関でのご来院が便利です。
逆流性食道炎の治療
逆流性食道炎の治療は、胃酸分泌を抑える薬物療法を軸に、生活習慣の改善を組み合わせて行います。症状が消えても食道の炎症が完治していないことは少なくないため、医師の指示に従って一定期間は服薬を継続し、並行して再発を防ぐための生活改善に取り組むことが大切です。
薬物療法
薬物療法では、胃酸分泌抑制薬を基本とし、症状や病態に応じて補助的な薬剤を併用します。以下に代表的な薬剤を整理します。
| 薬剤分類 | 代表的な薬剤 | 作用と特徴 |
|---|---|---|
| PPI(プロトンポンプ阻害薬) | エソメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール など | 胃酸分泌の最終段階であるプロトンポンプを阻害し、強力に酸分泌を抑制する。GERDガイドラインで第一選択薬に位置づけられている[1]。 |
| P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー) | ボノプラザン(タケキャブ) | PPIよりも速やかに効果が発現し、初回投与から強力な酸分泌抑制が得られる。PPIで改善しにくい症例への有効性も報告されている[3]。 |
| H2ブロッカー | ファモチジン など | ヒスタミンH2受容体を遮断して胃酸分泌を抑制する。市販薬にも同成分の製品があるが、医師の処方により適切な用量を設定できる。 |
| 消化管運動機能改善薬 | モサプリド など | 食道・胃の蠕動運動を促進し、胃内容物の停滞を防ぐことで逆流リスクを低減する。 |
| 制酸薬 | 水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム配合剤 など | 胃酸を直接中和し、一時的に症状を緩和する。速効性がある反面、持続時間は短い。 |
| 粘膜保護薬 | アルギン酸ナトリウム など | 食道粘膜を物理的に保護し、胃酸による刺激を和らげる。 |
薬は食前・食後・食間など、処方ごとに最適な服用タイミングが設定されています。指示されたタイミングで内服することで十分な効果が発揮され、副作用のリスクも抑えられます。症状が改善しても自己判断で服用を中止せず、医師が指示した期間は服薬を継続してください。
生活習慣の見直し
薬物療法と並行して、生活習慣を見直すことは再発防止に不可欠です。以下の3つの視点から日常生活を振り返りましょう。
食生活の改善
脂肪分の多い食事、チョコレート、柑橘類、トマト製品、香辛料、炭酸飲料、カフェインなどは胃酸の分泌を増加させたりLESの圧を低下させたりすることが知られています。これらの摂取を控えめにし、食事は腹八分目を心がけてゆっくり噛んで食べることが望ましいとされています。アルコールは症状を悪化させることがあるため、量や頻度を控えるのが無難です[1]。また、喫煙もLESの弛緩を促し、食道の粘液分泌を低下させるため、禁煙が強く推奨されます。肥満がある場合は、長期的な視点でカロリー制限と適度な運動による減量に取り組むことが重要です。
腹圧を上げない工夫
前かがみや猫背の姿勢は腹圧を上昇させるため、日頃から背筋を伸ばした姿勢を意識しましょう。デスクワークが長時間に及ぶ場合は、定期的に立ち上がって姿勢をリセットすることをおすすめします。ベルトやガードルなど腹部を締めつける衣類はゆるめのものに替え、重い荷物を持ち上げる動作もできるだけ避けてください。便秘は腹圧を慢性的に高める要因になりますので、食物繊維や水分を十分にとり、必要に応じて便秘の治療を行いましょう。
睡眠時の工夫
食後すぐに横になると胃酸が食道に流れ込みやすくなります。ACG(米国消化器病学会)のガイドラインおよびGERDガイドライン2021では、就寝の2〜3時間前までに食事を済ませることが推奨されています。就寝中に呑酸や咳の症状がある方は、上半身を15〜20cm程度高くして寝ること(ヘッドアップ)で、重力の作用により逆流が軽減されることが期待できます。クッションや専用のベッドウェッジを活用するとよいでしょう。なお、就寝前の飲酒はLESを弛緩させるため控えてください。
- [1] 日本消化器病学会 編.『胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2021(改訂第3版)』南江堂, 2021.
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/gerd.html - [2] Kinoshita Y, et al. J Gastroenterol. 2011;46(9):1092-1103. DOI:10.1007/s00535-011-0429-3
- [3] Zhou X, et al. Scand J Gastroenterol. 2024;59(7):788-797. DOI:10.1080/00365521.2024.2349638
- [4] Gyawali CP, et al. Gut. 2024;73(2):361-371. DOI:10.1136/gutjnl-2023-330616


