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CPAPをやめたいと思ったら|楽に続ける5つの調整法

「CPAPを始めたけれど、マスクの跡が顔に残る」「朝起きると喉がカラカラ」「圧迫感で逆に眠れなくなった」――そんな声は決して珍しくありません。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療としてCPAPは有効とされていますが、毎晩のことだけに、小さな不快感が積み重なると「もう続けられない」と感じてしまうのも無理はないでしょう。

この記事では、CPAPにまつわる代表的な5つの悩み(マスク跡・鼻の痛み・口の乾燥・喉のイガイガ・圧迫感)について、機器の設定変更や便利グッズを活用した調整法を解説します。多くの方が経験する悩みには、それぞれ具体的な対処法があります。ご自身に合った工夫を見つけるヒントにしていただければ幸いです。


目次

CPAPが「苦しい・眠れない」と感じるのはあなただけではありません

CPAP治療の継続(アドヒアランス)を表す概念図

CPAP療法は、睡眠中に気道へ持続的に空気を送り込むことで無呼吸を防ぐ治療法です。効果が高い一方で、アドヒアランス(治療継続率)が課題とされています。

CPAPのアドヒアランスは研究によって定義が異なり、「1晩4時間以上の使用」を基準とする場合や「完全に中断した割合」を見る場合など様々です。そのため報告される数値にも幅がありますが、十分な使用時間を確保できていない方が一定数いることは多くの研究で共通しています。

日本国内でも「最初の数週間が特に慣れにくい」という声は多く、継続に悩んでいる方は少なくありません。

【ポイント】 「自分だけがうまく使えていない」と感じる必要はありません。多くの方が同じ壁にぶつかり、調整を重ねながら続けています。

よくある相談パターンとして、以下のような声が聞かれます。

  • 「毎朝マスクの跡がくっきり残って、人に会うのが恥ずかしい」
  • 「鼻の頭が赤くなって痛い。絆創膏を貼っている」
  • 「朝起きると口の中がカピカピで、水を飲まないと声が出ない」

こうした悩みは、マスクの種類や機器の設定を見直すことで改善できる可能性があります。次のセクションから、具体的な原因と調整法を見ていきましょう。

よくある5つの悩みと原因を整理する

CPAPでよくある5つの悩み(マスク跡・鼻の痛み・口の乾燥・喉の痛み・圧迫感)を示すアイコン図解

CPAPの不快感には、大きく分けて5つのパターンがあります。それぞれ原因が異なるため、対処法も変わってきます。

悩み主な原因
①マスクの跡が残るストラップの締めすぎ、マスクサイズの不一致
②鼻の頭・頬が痛いマスクの圧迫、素材との相性
③口が乾燥する口呼吸による空気漏れ、加湿不足
④喉がイガイガする加湿設定が低い、室内の乾燥
⑤圧迫感・息苦しさ圧力設定が体感に合っていない、慣れの問題

特に①〜③はリーク(空気漏れ)と密接に関係しています。マスクと顔の間に隙間があると、空気が漏れて乾燥や騒音の原因になるだけでなく、「漏れを防ごう」とストラップを強く締めすぎることで、跡や痛みにつながる悪循環が生まれます。

【重要】 リーク対策がうまくいくと、乾燥・跡・痛みの3つが同時に改善することも珍しくありません。

【調整法①②】マスクの跡・痛みを解消する

調整法①:ストラップは「ゆるめ」から始める

マスクの跡が残る最大の原因は、ストラップの締めすぎです。多くの方が「漏れないように」と強く締めがちですが、実際には逆効果になることがあります。

試してみたい調整

  • 仰向けに寝た状態でマスクを装着し、指1本がストラップの下に入る程度のゆるさに調整する
  • 空気を流しながら、リークが最小限になるポイントを探す
  • 寝返りを打っても大きくずれなければOK

調整法②:マスクの種類・サイズを見直す

顔の形は人それぞれ異なるため、最初に処方されたマスクが必ずしもベストとは限りません。

マスクタイプ特徴向いている方
鼻マスク(ネーザル)鼻だけを覆う。圧迫感が少ない口呼吸が少ない方
鼻ピローマスク鼻孔に直接装着。跡が残りにくいマスク跡が気になる方
フルフェイスマスク鼻と口を覆う。口呼吸でも対応可口呼吸が多い方、鼻詰まりがある方

鼻の頭が痛い場合は、鼻ピロータイプに変更することで改善するケースもあります。また、シリコン製のマスクパッドやジェルクッションを追加する方法もあります。

【ポイント】 マスク交換は医療機関で相談できます。「今のマスクが合わない気がする」と伝えるだけで、別の選択肢を提案してもらえることが多いです。


【調整法③④】口・喉の乾燥を防ぐ

調整法③:加湿器の設定を見直す

CPAP機器に内蔵されている加湿器は、送り込む空気に水分を加えて乾燥を防ぐ機能です。デフォルト設定のままでは加湿が不十分なことがあるため、季節や体調に合わせて調整することをおすすめします。

一般的な加湿器の調整ポイント

  • 加湿レベルを少しずつ上げてみる(機種により段階数は異なります)
  • 加温チューブ(ヒーテッドチューブ)がある機種では、チューブ内の結露防止設定も確認する
  • 水タンクの水は毎日交換し、清潔に保つ

冬場や暖房使用時は室内が特に乾燥するため、加湿レベルを高めに設定すると効果的です。

調整法④:口呼吸対策をする

朝起きて口がカラカラになる場合、睡眠中に口が開いて空気が漏れている可能性があります(マウスリーク)。

試してみたい対策

  • チンストラップ(顎を支えるバンド)を使用して口が開くのを防ぐ
  • 鼻マスクからフルフェイスマスクに変更する
  • 就寝前に鼻づまりを解消しておく(必要に応じて医師に相談)

【重要】 加湿器の水タンクやチューブは定期的な洗浄が必要です。消耗品(フィルター、マスククッションなど)も劣化すると空気漏れや衛生面の問題につながります。交換目安はメーカーや保険制度によって異なり(クッションは数週間〜数か月、チューブは3か月程度など)、漏れや皮膚トラブルがあれば前倒しでの交換が推奨されることもあります。

【調整法⑤】圧迫感・息苦しさを和らげる


CPAPの空気圧が「強すぎる」「息を吐くときに苦しい」と感じる場合、ランプ機能の活用が有効です。

ランプ機能とは

ランプ機能は、CPAP使用開始時に低い圧力からスタートし、設定した時間をかけて処方圧力まで徐々に上げていく機能です。多くの機種に搭載されており、入眠時の違和感を軽減する効果が期待できます。

設定の一例(機種により設定範囲は異なります)

  • ランプ時間:15〜30分程度(0〜45分など幅広い設定が可能な機種もあります)
  • 開始圧力:4cmH₂O前後から開始し、処方圧まで徐々に上昇

眠りにつくまでの時間は個人差があるため、「いつも寝つくまでに何分くらいかかるか」を目安に調整します。具体的な設定値は機種や処方内容によって異なるため、医療機関で確認してください。

呼気圧リリーフ機能(EPR/Flex/A-Flexなど)

メーカーによって名称は異なりますが、息を吐くときだけ圧力を下げる機能も搭載されている機種があります。「吸うのは平気だけど吐くときに苦しい」という方は、この機能が有効かどうか医療機関で確認してみてください。

【ポイント】 圧力設定の変更は自己判断で行わず、必ず担当医や臨床検査技師に相談しましょう。適切な圧力は無呼吸の重症度によって異なります。


それでも辛いときは|受診の目安とやめた場合のリスク

調整を試しても改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

受診をおすすめする目安

状況対応
調整しても毎晩4時間以上使えない日が続く※受診推奨
マスクによる皮膚トラブル(赤み・ただれ)がある受診推奨
使用中に胸の痛みや息切れを感じる早めに受診
日中の眠気が改善しない受診推奨

※「4時間以上/夜」は治療効果の目安として多く用いられる基準ですが、国や保険制度、研究によって定義は異なります。

「もう限界だからやめたい」と感じたときこそ、自己判断で中断する前に一度相談してみてください。マスクの変更や圧力の再調整など、まだ試していない選択肢があるかもしれません。

CPAPをやめた場合に考えられること

CPAPは睡眠時無呼吸による低酸素状態を防ぎ、心臓や血管への負担を軽減する目的で処方されています。治療を中断すると、日中の眠気や集中力低下が再発するだけでなく、長期的には高血圧や心疾患などのリスクが高まる可能性があるとされています。

【重要】 治療継続が難しいと感じたら、遠慮なく医師に伝えてください。アドヒアランスを維持するための工夫は、医療者も一緒に考えます。

まとめ

CPAPは慣れるまでに時間がかかる治療ですが、マスクの選び直しや加湿設定の調整、ランプ機能の活用など、不快感を軽減する方法は複数あります。

この記事のポイント

  • マスク跡や痛みはストラップのゆるめ調整とマスク変更で改善しやすい
  • 口・喉の乾燥には加湿器設定の見直しと口呼吸対策が有効
  • 圧迫感にはランプ機能や呼気圧リリーフ機能の活用を検討
  • 消耗品の劣化も不快感の原因になるため、メーカーや医療機関の案内に沿って交換を

「調整しても改善しない」「毎晩使うのが苦痛」という場合は、我慢を続けるのではなく、担当医や医療スタッフに相談してください。CPAPは「一度決まったら変えられない」ものではなく、使いながら調整していく治療です。

継続が難しいと感じたとき、やめてしまう前にできることはまだあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療の総合ガイドはこちら


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CPAPのマスク跡を目立たなくする方法はありますか?

ストラップを締めすぎないことが基本です。仰向けでフィッティングし、指1本入る程度のゆるさに調整してください。鼻ピロータイプのマスクは顔への接触面が少なく、跡が残りにくい傾向があります。

朝起きると喉がカラカラになるのはなぜですか?

加湿が不足しているか、口呼吸で空気が漏れている可能性があります。加湿器の設定を上げる、チンストラップを使う、フルフェイスマスクに変更するなどの対策が考えられます。

CPAPの圧力が強くて眠れません。自分で下げてもいいですか?

圧力設定は無呼吸の重症度に応じて処方されているため、自己判断での変更は避けてください。ランプ機能で開始時の圧力を下げる方法や、呼気圧リリーフ機能の活用について医師に相談することをおすすめします。

CPAPを使っても日中の眠気が取れません。

マスクの装着時間が短い、リークが多いなどの理由で治療効果が十分でない可能性があります。機器のデータを医療機関で確認してもらうことで、原因を特定しやすくなります。

CPAPのマスクやチューブはどのくらいで交換すべきですか?

交換目安はメーカーや保険制度によって幅があります。マスククッションは数週間〜数か月、チューブは約3か月程度が目安とされることが多いですが、漏れや劣化、皮膚トラブルがあれば早めの交換が推奨されます。具体的な時期は医療機関やメーカーの案内を確認してください。

CPAPをやめたらどうなりますか?

治療を中断すると、日中の眠気や集中力低下が再発する可能性があります。長期的には高血圧や心臓病のリスクが高まるとする研究報告もあるため、中断を検討する前に医師に相談することをおすすめします。

CPAPに慣れるまでどのくらいかかりますか?

個人差がありますが、1〜2週間で慣れる方もいれば、数ヶ月かかる方もいます。最初から長時間使おうとせず、昼間に短時間装着して練習する方法も有効です。

参考文献

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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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