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睡眠時無呼吸と脂肪肝を同時に治す!負の連鎖を断つ生活習慣5選

睡眠時無呼吸と脂肪肝を同時に治す

「健康診断で肝臓の数値を指摘された」「家族からいびきが止まっていると言われた」

もしあなたがこのような悩みを同時に抱えているなら、それは単なる偶然ではないかもしれません。実は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脂肪肝は、非常に密接に関連しており、互いに病状を悪化させ合う「負の連鎖」にあることが近年の医学研究で明らかになっています。

「いびき」と「肝臓」。一見無関係に見えるこの2つの病気ですが、根本的な原因を理解し、正しい生活習慣を取り入れることで、同時に改善を目指すことが可能です。

この記事では、消化器専門医の視点から、医学的根拠(EBM)に基づいた「今日からできる改善策」を具体的に解説します。


目次

なぜ併発する?睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脂肪肝の「危険な関係」

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と脂肪肝。これらが同時に見つかるケースは決して珍しくありません。実際、SAS患者さんの多くに脂肪肝が見られ、逆に脂肪肝患者さんの多くにSASのリスクがあることが報告されています。

なぜ、この2つはセットで現れることが多いのでしょうか。そこには、2つの大きな要因が隠されています。

睡眠時無呼吸症候群による酸素不足が脂肪肝を悪化させるメカニズムの図解

共通の犯人は「内臓脂肪」

最も分かりやすい共通点は、過剰な内臓脂肪です。

体重が増加し、お腹周りに脂肪がつくと、外見からは見えない体の中にも脂肪が蓄積します。

  • 肝臓への蓄積: 肝細胞の中に脂肪滴がたまり、「脂肪肝」を引き起こします。
  • のど周辺への蓄積: 気道の周りや舌の根元に脂肪がつくと、空気の通り道が狭くなります。これが睡眠中に塞がることで「無呼吸」が発生します。

つまり、「肥満」という一つの根っこから生えた、2つの枝がSASと脂肪肝なのです。

酸素不足が肝臓を壊す?「間欠的低酸素」の脅威

しかし、単に「太っているから」だけでは説明がつかない、より深い医学的な関連があります。それが「間欠的低酸素(かんけつてきていさんそ)」の影響です。

SASになると、睡眠中に何度も呼吸が止まり、そのたびに体内の酸素濃度が低下します。そして呼吸が再開すると急激に酸素が戻ります。この「酸素不足」と「再酸素化」の繰り返しは、体にとって強烈なストレス(酸化ストレス)となります。

【重要】 肝臓は非常に多くの酸素を必要とする臓器です。SASによる低酸素状態は、肝臓の細胞に直接ダメージを与え、炎症や線維化(肝臓が硬くなること)を進行させる要因になると考えられています。

これにより、単なる脂肪肝から、より重症な脂肪肝炎(NASH/MASH)へと進行するリスクが高まることが示唆されています。

「意志が弱い」ではありません。SAS患者さんが痩せにくい医学的な理由

「食事を減らしているのに体重が減らない」 「夕食後、どうしても甘いものや炭水化物を食べたくなってしまう」

もしあなたがこのような悩みを抱えているなら、自分を責める必要はありません。それはあなたの根性が足りないからではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって「太りやすくさせるホルモン」が暴走しているからです。

SASと肥満の悪循環を断ち切るために、まずは敵(ホルモン異常)の正体を知りましょう。

食欲のブレーキとアクセルが壊れている?「レプチン」と「グレリン」

私たちの食欲は、主に2つのホルモンによってコントロールされています。

  • レプチン(ブレーキ役): 脂肪細胞から分泌され、「もう満腹だ」と脳に伝えて食欲を抑える。
  • グレリン(アクセル役): 胃から分泌され、「空腹だ、もっと食べろ」と脳に指令を出す。

健康な人は、十分な睡眠をとることでこの2つのバランスが保たれます。しかし、SASによって睡眠が分断(細切れ睡眠)されたり、深い睡眠(ノンレム睡眠)が取れなくなったりすると、このバランスが劇的に崩壊します。

SASや睡眠不足では、レプチンやグレリンなどの食欲ホルモンの分泌や感受性が乱れ、食欲のブレーキが利きにくく、過食につながると考えられています。

つまり、SASを未治療のままダイエットをすることは、「壊れたブレーキで坂道を下りながら、必死に足で止めようとしている」ようなものです。非常に辛く、リバウンドのリスクも高くなります。

夜間の「酸欠」が招く「甘いもの中毒」

もう一つ、SAS患者特有の太る原因があります。それは「インスリン抵抗性」です。

睡眠中に無呼吸(酸欠)状態になると、ストレスホルモンである「コルチゾール」「交感神経」を活性化させます。これらは血糖値を無理やり上昇させる作用があります。

その結果、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じます。 脳は「エネルギーが細胞に届いていない」と勘違いし、手っ取り早くエネルギーになる「糖質(甘いもの、白米、パン)」を強烈に欲するようになります。

  • 夜中に目が覚めて何か食べてしまう
  • 無意識にドカ食いをしてしまう

これらは、酸欠に対する脳の防衛反応なのです。

CPAP治療が「ダイエット治療」になる理由

CPAP治療により食欲・代謝が良い方向に変化する可能性があります。つまり「痩せられない原因」が睡眠にあるなら、「睡眠を治せば痩せるスイッチが入る」ということです。

実際に、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を適切に使用して睡眠の質を確保すると、以下のような変化が期待できることが研究で示唆されています。

  • 食欲の正常化: レプチンとグレリンのバランスが整い、ドカ食いが減る。
  • 代謝アップ: 成長ホルモン(脂肪を分解する働きがある)が寝ている間にしっかり分泌される。
  • 活動量の増加: 昼間の眠気が消え、「運動しよう」という気力が自然と湧いてくる。

「まずはCPAPで睡眠環境を整える。本格的な食事制限はそれからでも遅くない」 これが、SASと脂肪肝(MASLD)を同時に治すための、非常に効率的なアプローチであり、推奨される組み合わせの一つです。

放置は厳禁!動脈硬化・心疾患リスクが倍増する理由

「たかがいびき」「少し肝臓の数値が高いだけ」と放置してはいけません。この2つが合併している状態は、将来的な心臓や脳の病気のリスクが高くなることが知られています。

動脈硬化が進行した血管の断面図と心疾患・脳卒中リスクのイメージ

肝臓だけの問題では済まない全身への影響

脂肪肝とSASが合併すると、体内ではインスリン(血糖値を下げるホルモン)が効きにくくなる「インスリン抵抗性」が強まります。これは糖尿病の発症や悪化に関与します。

さらに、SASによる睡眠中の交感神経の興奮(呼吸しようと体が無理をする状態)は、夜間の血圧を上昇させ、高血圧を招きます。これらはすべて、血管を傷つける要因です。

命に関わる心血管イベントのリスク

複数の研究により、SASと脂肪肝を併発している患者さんは、どちらか一方だけの患者さんに比べて、以下のような致命的な病気(心血管イベント)のリスクが高いことが示唆されています。

  • 心筋梗塞・狭心症
  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
  • 不整脈(心房細動など)

自覚症状が乏しいうちに、水面下で動脈硬化が進行してしまう点が、この合併症の最も怖いところです。

【食事編】減量こそ最大の特効薬!肝臓と喉の脂肪を落とす食事法

ここまで怖い話をしてきましたが、希望はあります。原因が「内臓脂肪」と「生活習慣」にあるということは、生活習慣を変えることで劇的な改善が期待できるということです。

治療の第一歩は、やはり「食事」です。

まずは現体重の7%減量を目指す

医学的なガイドラインでは、脂肪肝の改善のために「現在の体重の7%」の減量が推奨されています。例えば、体重80kgの方であれば、約5.6kgの減量が目標です。

急激な減量は逆に肝臓に負担をかけることがあるため、1ヶ月に1〜2kg程度のペースで、半年かけて落としていくのが理想的です。体重が減れば、首周りの脂肪も落ち、気道が広がりやすくなります。

肝臓を守る「地中海式」の要素を取り入れる

肝臓に脂肪をためにくく、抗酸化作用(低酸素によるダメージを防ぐ作用)が高い食事として**「地中海式食事法」**の考え方が推奨されます。これを日本の食卓に取り入れやすい形にアレンジしましょう。

  • 青魚を積極的に: サバ、イワシ、サンマなどに含まれるEPA・DHAは、中性脂肪を減らす効果が期待できます。
  • 良質な油: サラダ油やバターを控え、抗酸化作用のあるオリーブオイルを活用しましょう。
  • 食物繊維: 野菜、海藻、きのこ類を毎食取り入れ、糖質の吸収を緩やかにします。
青魚や野菜、オリーブオイルを取り入れた肝臓に優しい和食の献立例

アルコールと夜食はなぜNGなのか

SASと脂肪肝の両方にとって、最大の敵となるのが「お酒」と「寝る前の食事」です。

  1. アルコール:
    • 肝臓への負担: アルコール自体が肝臓で中性脂肪の合成を促進します。
    • SASの悪化: アルコールの筋弛緩作用により、舌根(舌の付け根)が沈下しやすくなり、いびきや無呼吸が劇的に悪化します。
  2. 夜遅くの食事:
    • 寝る前に食べると、消化活動のために胃腸が働き続け、睡眠の質が低下します。また、夜間はエネルギーが消費されにくいため、食べたものがそのまま脂肪として蓄積されやすくなります。

【生活習慣のポイント】 夕食は就寝の3時間前までに済ませ、アルコールは可能な限り控える(または休肝日を週2日以上設ける)ことが、治療のスタートラインです。

【運動編】酸素を取り込み脂肪を燃やす!効果的な運動メニュー

食事で「摂取するエネルギー」を減らしたら、次は運動で「消費するエネルギー」を増やし、肝臓に溜まった脂肪を燃焼させましょう。

運動は単にカロリーを消費するだけでなく、SASの原因となる「喉周りの脂肪」を減らし、かつ肝臓の「インスリン感受性(血糖値の下がりやすさ)」を改善するダブルの効果があります。

公園で快活にウォーキングを行う中高年の男女(有酸素運動のイメージ)

「有酸素運動」と「筋トレ」の最強コンビ

肝臓の脂肪を落とすために最も効率が良いのは、以下の2つを組み合わせることです。

  1. 有酸素運動(脂肪を燃やす)
    • 内容: ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど。
    • 目安: 1日30分以上、週3〜4回。「少し息が弾むけれど会話ができる程度」の強度がベストです。酸素を体内に取り込むことで、SASで低下しがちな酸素レベルの底上げにも寄与します。
  2. レジスタンス運動(基礎代謝を上げる)
    • 内容: スクワット、腕立て伏せ、ダンベル運動などの筋力トレーニング。
    • 効果: 筋肉が増えると基礎代謝が上がり、寝ている間も脂肪が燃えやすい体になります。特に下半身の筋肉(太もも)を鍛えるスクワットは効果的です。

「週末だけ」より「毎日少しずつ」が効く

「平日は忙しいから週末にまとめてジムへ」という方もいますが、肝臓のためには継続性が重要です。

運動をしてから48時間程度は、インスリンの効きが良い状態が続きます。間隔を空けすぎると効果が薄れてしまうため、「エスカレーターではなく階段を使う」「一駅分歩く」といった、日常の活動量を増やす意識から始めましょう。

生活習慣以外のアプローチ:CPAP治療と医療機関の役割

食事と運動は基本ですが、すでに中等症〜重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)を発症している場合、自力での改善には限界があります。その場合は、適切な医療機器の力を借りることが、肝臓を守ることにも繋がります。

CPAP(シーパップ)で「夜間の酸欠」を解消する

SASの標準的な治療法であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、寝ている間に鼻から空気を送り込み、気道を広げて無呼吸を防ぐ装置です。

近年の研究では、CPAP治療によって夜間の酸素状態が改善されると、肝臓の炎症マーカー(ALT/AST)が改善するという報告があります。肝臓への直接的な酸素供給不足(低酸素血症)を解消することで、脂肪肝の悪化(NASHへの進行)を食い止める効果が期待されています。

自己判断のサプリメントより、まずは「検査」を

「肝臓に良いサプリ」や「いびき防止グッズ」は数多くありますが、医学的な診断なしに頼るのは危険です。

  • いびき・無呼吸: 簡易検査やPSG検査(睡眠ポリグラフ検査)で重症度を判定する必要があります。
  • 肝臓: 血液検査だけでなく、腹部エコーやフィブロスキャンなどで「硬さ(線維化)」をチェックすることが重要です。

これらを同時に評価できる総合内科や消化器内科を受診し、「今の自分のステージ」を正確に知ることが、最短の解決策です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 太っていない(痩せ型)のに、SASと脂肪肝だと言われました。なぜですか?
A. 日本人は欧米人に比べて、「脂肪を蓄える能力」が低く、少しの体重増加でも脂肪肝になりやすい体質です。また、顎が小さい骨格の人は、痩せていても気道が狭くなりやすくSASを発症します。見た目が痩せていても「隠れ肥満」や「骨格的な問題」があるため、注意が必要です。

Q2. CPAPを使えば、脂肪肝は治りますか?
A. CPAPは酸素不足を解消し、肝臓へのダメージを減らす効果は期待できますが、それだけで内臓脂肪が消えるわけではありません。 CPAPはあくまで「悪化を防ぐ強力なサポーター」と考え、並行して食事・運動療法による減量を行うことが、脂肪肝完治への必須条件です。

まとめ:負の連鎖を断ち切るために

睡眠時無呼吸症候群と脂肪肝は、どちらも「沈黙の病気」と言われますが、水面下では手を組んで動脈硬化を進行させています。

しかし、これは逆に言えば「片方を良くすれば、もう片方も良くなる」というチャンスでもあります。

  • 体重を少し落とすだけで、喉も肝臓も軽くなる。
  • 運動をすれば、睡眠の質が上がり、代謝も良くなる。

もし、いびきや倦怠感、健康診断の数値が気になっているなら、自己判断で放置せずに早めに専門医へご相談ください。適切な検査と治療が、あなたの将来の健康を守ります。


参考文献

  1. [NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)]
    • 著者: 日本消化器病学会・日本肝臓学会(編)
    • 発行: 南江堂, 2020年
    • URL: https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524225460/ (日本消化器病学会・日本肝臓学会合同ガイドライン)
  2. [The impact of obstructive sleep apnea on nonalcoholic fatty liver disease]
    • 著者: Chen L, et al.
    • 掲載誌: Frontiers in Endocrinology, 2023
  3. [Association Between Metabolic-Associated Fatty Liver Disease and Obstructive Sleep Apnea: A Cross-Sectional Study]
    • 著者: Huang J, et al.
    • 掲載誌: Nature and Science of Sleep, 2023
  4. [Continuous Positive Airway Pressure Does Not Improve Nonalcoholic Fatty Liver Disease in Patients with Obstructive Sleep Apnea. A Randomized Clinical Trial]
    • 著者:Ng SSS, et al.
    • 掲載誌: American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 2021
  5. [Hypoxia and Non-alcoholic Fatty Liver Disease]
    • 著者: González-Rocafort A, et al.
    • 掲載誌: Frontiers in Medicine, 2020
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この記事を書いた人

Dr.中村文保のアバター Dr.中村文保 医療法人社団心匡会 理事長

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 院長
日本内科学会 総合内科専門医
日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会 消化器病専門医
日本肝臓学会 肝臓専門医

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