胃痛は、日常生活の中で突然起こるケースや、慢性的に続くケースなど、さまざまなパターンで悩む人が多い症状です。
暴飲暴食やストレス、ピロリ菌、胃潰瘍など原因は多岐にわたり、単なる胃もたれから深刻な病気まで隠れている可能性があります。
いつ、どのような時に悪化するのかを把握し、必要に応じて医療機関に相談したり生活習慣を見直すことが大切です。
本記事では、胃痛の種類や原因、検査方法や治療、セルフケアのポイントなどを詳しく解説し、日々の健康管理に役立つ情報を提供します。
胃痛とはどのような症状か
胃痛は、みぞおち付近（上腹部中央）や左右の上腹部を中心に感じる痛みや違和感を指し、時間帯や食事の有無、ストレスの有無などによって強弱が変わるケースが多いです。
単なる胃もたれや軽い不快感の場合もあれば、激しい痛みや嘔吐、吐き気を伴う重い状態になることもあり、受診が必要なこともあります。
胃痛が起こるときに見られる特徴
- みぞおち付近がキリキリ痛む
- 胃粘膜が荒れている感じがする
- 胸やけや胃酸の逆流による不快感を覚える
- 空腹時や食後に痛みのタイミングが変化する
- 嘔吐や吐き気がともない、食欲が低下する
胃痛と胃の役割の関係
胃は、口から入ってきた食べ物を消化液（胃酸など）と混ぜ合わせ、粥状にして十二指腸に送り出す機能を担っています。
胃粘膜がストレスなどによる過剰な胃酸分泌や、ピロリ菌の感染、生活習慣の乱れなどによって傷つくと、痛みや炎症が起こりやすくなります。
食事や生活習慣の影響
暴飲暴食や脂っこい食事、香辛料などの強い刺激物、アルコールなどを習慣的に摂取することは、胃粘膜に負担をかける原因になりやすいです。
また、ストレスが自律神経を乱し、消化機能を低下させたり、胃酸の分泌を促進させたりすることも胃痛に関係しています。
胃痛を感じる主なタイミングと考えられる要因
| タイミング | 考えられる要因 | 代表的な症状 |
|---|---|---|
| 食後すぐ | 胃腸の機能低下、暴飲暴食、脂肪分過剰 | 胸やけ、もたれ、吐き気 |
| 空腹時 | 胃酸過多、胃粘膜の過敏 | キリキリした痛み、むかつき |
| 夜間や就寝前 | 逆流性食道炎、ストレス | 胸やけ、みぞおちの焼ける感じ |
| 急激に痛み出す場合 | 急性胃炎、潰瘍の悪化、過剰な胃酸分泌 | 激しい痛み、嘔吐 |
| 長期にわたって続く場合 | 機能性ディスペプシア、慢性胃炎など | 軽度の持続的痛み、食欲不振 |
胃痛の主な原因は何か
胃痛が起こる原因はさまざまで、生活習慣、ストレス、消化器系疾患、ピロリ菌など、多くの要素が絡み合って発生します。
ストレスと自律神経の乱れ
ストレスが続くと自律神経が乱れ、胃酸の分泌が過剰になったり、反対に分泌量が低下して消化機能が落ちたりすることがあり、いずれの場合も胃粘膜の防御機能が衰えやすくなり、痛みや不快感を招きます。
食生活の乱れ
暴飲暴食や香辛料の強い食事、アルコールの摂取量が多い人は、胃の粘膜を強く刺激する生活を続けていることになります。刺激や炎症が慢性化すると、胃潰瘍や胃炎などの原因となり、特に空腹の時間が長すぎると、胃酸が粘膜を傷つけるリスクも高いです。
ピロリ菌の感染
ピロリ菌は胃の粘膜に長期間住み着き、炎症や潰瘍などを引き起こす要因です。感染してもすぐに症状が出るわけではありませんが、慢性的な胃炎につながるケースが多く、胃がんや胃潰瘍の原因となるだけでなく、胃痛が生じる場合があります。
消化器系の疾患
急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など、消化器系には胃痛の原因となる疾患が多いです。
いずれも放置すると症状が悪化する可能性があり、生活の質を大きく下げてしまいます。
胃痛を招く主な生活習慣と要素
- 暴飲暴食・早食い
- 脂質・塩分の過剰摂取
- アルコールや喫煙
- 不規則な食事時間
- 強いストレス（仕事・人間関係など）
- 睡眠不足や慢性的な疲労
胃痛の原因となる疾患
胃痛は一時的な症状で収まる場合もありますが、背景に深刻な病気が潜んでいる可能性も否定できません。ここでは胃痛を起こしやすい主な疾患を紹介します。
急性胃炎と慢性胃炎
急性胃炎は、一時的な暴飲暴食や薬剤の副作用などによって胃の粘膜が急激に炎症を起こす状態で、短期間で激しい痛みが起こりやすく、嘔吐や吐き気を伴うことも多いです。
一方、慢性胃炎は長期的な刺激やピロリ菌感染などによって粘膜がじわじわと炎症を起こす形で、症状が軽度～中等度で持続します。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍
胃酸の過剰分泌や粘膜防御機能の低下が原因で、胃や十二指腸の壁に潰瘍が形成される病気です。空腹時や食後に強い痛みが出るのが特徴で、悪化すると吐血や黒色便を引き起こすこともあります。
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流してしまうことで、胸やけや胃もたれ、みぞおちの不快感を起こす病気です。食事後や就寝時に悪化するケースが多く、胃痛とともに胸やけが顕著なときは逆流性食道炎を疑うことが必要です。
機能性ディスペプシア
内視鏡などの検査で異常が見つからないにもかかわらず、胃痛や胃もたれなどの消化器症状が持続する疾患です。
ストレスや自律神経の乱れが大きく関わるといわれており、慢性的な痛みや不快感が続く反面、検査では器質的異常が見つかりません。
代表的な胃痛関連疾患と特徴
| 疾患名 | 主な原因・要因 | 症状の特徴 |
|---|---|---|
| 急性胃炎 | 暴飲暴食、薬剤の副作用、ストレスなど | 突発的に強い痛みや吐き気、嘔吐が起こりやすい |
| 慢性胃炎 | ピロリ菌感染、長期的な刺激（アルコール・喫煙など） | 軽度～中等度の痛みやむかつきが続く |
| 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | 胃酸過剰、粘膜防御力低下 | 空腹時や夜間に強い痛み、吐血・黒色便の可能性 |
| 逆流性食道炎 | 食道括約筋の弛緩、過剰な胃酸分泌など | 胸やけ、みぞおちの焼けるような痛み、腹部不快感 |
| 機能性ディスペプシア | ストレス、自律神経乱れ、検査で異常なし | 検査異常なしでも慢性的な胃痛・胃もたれ |
胃痛の検査と診断
胃痛の原因を特定し、適切な治療を行うためには、必要に応じて医療機関で検査を受けることが重要です。放置してしまうと症状が悪化し、長期的な通院が必要になる可能性があります。
胃カメラ（上部内視鏡検査）
胃内を直接観察できる最も有効な検査手段です。食道、胃、十二指腸の状態を確認し、炎症や潰瘍、腫瘍などの病変を詳細に調べることができます。必要であれば組織を採取し、ピロリ菌の有無や悪性腫瘍の有無を検査する場合もあります。
バリウム検査
造影剤（バリウム）を飲み、X線を用いて胃や十二指腸の形状や動きを調べる検査です。内視鏡が苦手な方や大規模健診で行われることが多いですが、微小病変を見落としやすいというデメリットもあります。
腹部エコー検査
超音波を用いて腹部内の臓器を調べる検査で、主に胆のうや肝臓、腎臓などの異常を確認するのに用いられます。上腹部痛の原因となる膵臓や胆のうの病気や、胃の周囲に異常がないかチェックするうえでも役に立ちます。
血液検査や便潜血検査
血液検査では、貧血や炎症反応、ピロリ菌感染の有無（抗体検査）などを調べる場合があります。便潜血検査では吐血や黒色便が疑われるような出血性病変を間接的にチェックすることが可能です。
胃痛診断に用いられる主な検査方法
| 検査名 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 胃カメラ | 直接観察と組織採取が可能 | 病変の発見率が高い、ピロリ菌検査も同時に可能 | 検査時の不快感がある場合がある |
| バリウム検査 | 造影剤で胃の形状や蠕動運動を確認 | 大規模健診などで実施しやすい | 微細な病変を見落とすリスクがある |
| 腹部エコー | 超音波で臓器の形状と血流などを観察 | 放射線被ばくがない、簡易的に実施できる | 胃の詳細観察にはやや不向き |
| 血液検査 | 貧血や炎症、ピロリ菌感染、肝・腎機能などを確認 | 全身状態を同時に把握できる | 原因を特定するには不十分な場合がある |
| 便潜血検査 | 消化管からの出血があるかを調べる | 痛みがなく手軽 | 胃より大腸病変の検出に有効なことが多い |
胃痛に対する治療と対処法
胃痛の治療や対処法は原因によって異なりますが、基本的には生活習慣の改善や薬物療法が中心で、治療を行わないと症状が慢性化したり、重症化したりすることがあります。
薬物療法
- 制酸薬：胃酸の中和や分泌抑制を行い、粘膜を保護する
- 抗潰瘍薬（H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬など）：胃酸の分泌を大幅に減らし、潰瘍の治癒を促進
- 健胃薬：胃の働きを助け、胃もたれや消化不良の改善を目指す
- 漢方薬：体質や症状に応じて、消化管の機能調整やストレス緩和を狙う
生活習慣の見直し
食事内容を胃に優しいものに切り替え、香辛料や脂肪分を控えるほか、食事時間を規則正しくすることが大切です。また、ストレスを強く感じている場合は、自律神経を整える工夫としてリラックスできる活動や十分な休息を心がけましょう。
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌が感染している場合、医師の判断で除菌療法を行うことがあります。抗生物質を含む薬剤を一定期間服用し、菌を減少・排除することで、胃炎や潰瘍の再発リスクを下げられると期待されています。
ただし、除菌後も定期的な検査で状態を確認することが望ましいです。
手術が必要なケース
極めてまれですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が穿孔を起こして腹膜炎になった場合や、潰瘍・炎症による大量出血、あるいは悪性腫瘍が発見された場合などは外科手術が検討されます。
放置すると命にかかわるおそれもあるため、痛みが激しいときや出血が疑われるときは早急に医療機関に相談が必要です。
胃痛軽減のために心がけたいポイント
- 脂質や香辛料の多い食事を控える
- 食事時間を規則正しくし、暴飲暴食を避ける
- ストレスを適度に発散し、十分な睡眠をとる
- 喫煙や過度の飲酒を控える
- 食後はすぐに横にならず、胃酸逆流を防ぐ
胃痛を予防するセルフケアと生活習慣
胃痛を繰り返さない、あるいは症状を軽減するためには、日々の生活の中で意識的なケアが求められます。以下に挙げるセルフケアのヒントを実践して、胃に優しい毎日を目指しましょう。
ストレスマネジメント
定期的な運動やリラクゼーションを取り入れて、自律神経を安定させることが大切で、呼吸法やヨガ、散歩など、無理なく続けられる方法を探してみてください。
仕事や人間関係の悩みがある場合、信頼できる人に相談するだけでも気持ちが楽になります。
適度な運動と睡眠
軽い有酸素運動やストレッチを日常的に行うことで、消化器官の血流が改善し、胃の機能が整いやすくなります。睡眠不足はストレス反応を強め、自律神経の乱れを引き起こすため、7時間程度の睡眠を意識するとよいでしょう。
ストレスマネジメントに役立つ取り組み例
| 方法 | 具体的な実践例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 運動・ストレッチ | ウォーキング、軽いジョギング、ヨガなど | 血流向上、リラックス効果 |
| 深呼吸・瞑想 | ゆっくりした深呼吸、マインドフルネス瞑想など | 自律神経の安定、精神的負荷の軽減 |
| 趣味・余暇活動 | 音楽鑑賞、読書、料理、芸術活動など | ストレス発散、気分転換 |
| 社会的つながりの活用 | 家族や友人との会話、カウンセリング、SNSの活用など | 情報共有や心理的サポート |
胃を休める工夫
腹八分目を心がける、噛む回数を増やすなど、胃への負担を軽減する工夫を行うと、過剰な胃酸分泌を抑えたり、胃粘膜が傷つくリスクを下げられます。食後すぐに激しい運動や入浴をするのは控えるなど、食後の過ごし方にも気を配ってください。
胃に優しい食生活のポイント
- 食物繊維やビタミンを多く含む野菜や果物をバランスよく摂る
- 温度が極端に高い・低い食品や飲み物は避ける
- 香辛料やカフェインを含む飲み物は適度な量にとどめる
- ゆっくりとよく噛んで食べ、胃酸分泌を安定させる
- 夜遅い時間の食事は控える
胃痛が続くときの受診の目安
一時的な胃痛であれば、市販薬の使用や生活習慣の改善で様子を見るケースもありますが、痛みが長引いたり、次のような症状を伴う場合は医療機関への受診を検討してください。
受診が必要なサイン
- 強い痛みが数日以上続く
- 吐血や黒色便など出血が疑われる
- 吐き気や嘔吐が止まらない
- 高熱や激しい下痢を併発している
- 食欲不振がひどく、体重が急激に減少している
内科・消化器科の受診の流れ
医療機関では、問診や腹部診察のあと、必要に応じて胃カメラや腹部エコー、血液検査などを行います。原因が判明すれば薬物療法や除菌治療などを進め、重症の場合には専門医との連携でさらなる検査や入院治療が考慮されます。
受診時に伝えると役立つ情報例
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 痛みの場所 | みぞおち付近、右上腹部、左上腹部など |
| 痛みの性質や強さ | キリキリ、シクシク、鈍痛、激痛など |
| 痛みの継続時間や頻度 | 数分～数時間、毎日続く、断続的になど |
| 食事との関係 | 空腹時・満腹時で痛みが増えるかどうか |
| 伴う症状 | 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、背中の痛みなど |
| 生活習慣やストレス要因 | 食事内容、睡眠時間、勤務環境など |
重症化を防ぐために
胃痛が続くときは自己判断をせず、特に吐血や黒色便などの出血症状がある場合は速やかに受診することが大切です。放置している間に潰瘍が悪化して穿孔を起こし、手術が必要になることもあるので、早期受診を心がけてください。
胃痛と上手につきあうまとめ
胃痛はよくある症状の一つですが、原因はストレス性の軽度なものから、胃潰瘍や消化器疾患といった重い病気まで多岐にわたります。
痛みがあるときは、まず生活習慣を見直し、ストレスケアや食事管理に取り組んでみることが大切です。
それでも痛みが続いたり悪化した場合は、胃カメラ検査などを行える医療機関を受診し、しっかりと原因を特定する必要があります。
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