腹部CTで何がわかる?臓器ごとの病気と検査の流れ早見表
腹部CTで何がわかる?肝臓から大腸まで臓器ごとのチェックポイント
- 腹部CTはX線で体の断面を撮影し、肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・脾臓・大腸・大血管を一度に評価できる
- 臓器ごとに見つかる病気が異なる——早見表で代表的な疾患を整理
- 単純CTと造影CTで得られる情報が異なり、医師が目的に応じて使い分ける
- エコー検査と組み合わせることで診断精度が向上する
- 検査前の食事制限は施設の指示に従う——ACRはルーチン絶食を必須としていない
「健診で腹部に異常があると言われた」「原因不明の腹痛が続いている」——こうした不安をお持ちの方に知っていただきたいのが、腹部CT検査で何がわかるかという点です。腹部CTは、お腹の中の臓器を広範囲にわたって画像で確認できる検査で、撮影自体は数分で完了します[1]。この記事では、腹部CTで臓器ごとにどんな病気が見つかるのかを早見表で整理し、単純CTと造影CTの違い、エコーとの使い分け、検査前の準備までを消化器専門医がまとめました。
腹部CT検査の基本——広い範囲を短時間で評価
腹部CT検査はX線を使って体の断面画像を撮影する検査です。一度の撮影で肝臓・胆嚢・膵臓・腎臓・脾臓・大腸・腹部大動脈・リンパ節など広い範囲を評価でき、エコー検査では観察しにくい深部の臓器やガスに覆われた部位も描出できます。息止めの時間は装置によって異なりますが数秒〜十数秒程度です[1]。
CTには造影剤を使わない「単純CT」と、ヨード系造影剤を静脈から注入する「造影CT」の2種類があります。単純CTは結石の検出や出血の有無の確認に向いており、造影CTは腫瘍の血流評価や膵炎の重症度判定に威力を発揮します。造影剤の使用にあたっては、腎機能(eGFR)やアレルギー歴を事前に確認し、医師が必要性を判断します。腎機能が保たれている場合、造影剤は約24時間で尿中に排泄されますが、腎機能が低下している方では排泄が遅れることがあり、投与の可否を慎重に検討します。
臓器ごとの早見表——腹部CTで見つかる主な病気
以下に、腹部CTで評価できる臓器と代表的な疾患を早見表にまとめました。疾患名からは関連記事へリンクしています。
肝臓
| 疾患名 | CTの見えかた | 補足 |
|---|---|---|
| 脂肪肝 | 肝CT値の低下(脾臓との比較) | 中等度以上で評価しやすい。軽度はエコーのほうが感度が高いことがある |
| 肝嚢胞・肝血管腫 | 境界明瞭な低吸収域・造影パターン | 良性が多いが、造影CTで性状を確認する場合がある |
| 肝腫瘍(肝細胞がん等) | 動脈相濃染・門脈相の洗い出し | 肝硬変を背景に発生しやすい。造影CTまたはMRIで確定 |
| 肝硬変のサイン | 肝表面の凹凸・脾腫・腹水 | フィブロスキャンや血液検査と組み合わせて総合的に評価 |
胆嚢・胆道
| 疾患名 | CTの見えかた | 補足 |
|---|---|---|
| 胆石症・胆嚢炎 | 高吸収結石・胆嚢壁肥厚・周囲脂肪織混濁 | コレステロール結石はCTで写りにくい。エコーが第一選択[3] |
| 総胆管結石 | 胆管拡張・管内結石像 | CTは補助的。確定診断にはMRCPやEUS(超音波内視鏡)が高精度[3][4] |
| 胆嚢ポリープ | 胆嚢壁の隆起性病変 | 10mm以上は精査推奨。エコーでの定期観察が基本 |
膵臓
| 疾患名 | CTの見えかた | 補足 |
|---|---|---|
| 急性膵炎・慢性膵炎 | 膵腫大・周囲炎症波及・石灰化・仮性嚢胞 | 造影CTで重症度と合併症を評価。発症直後はCT所見が出そろわないことがある[2] |
| 膵嚢胞・IPMN | 嚢胞性病変・膵管拡張 | IPMNの一部にがん化リスク。サイズや形態に応じた定期フォローが推奨 |
| 膵臓がん | 造影CTで乏血性腫瘤・膵管や胆管の狭窄 | 早期膵がんはCTで描出困難な場合がありEUSの併用が有用 |
腎臓・泌尿器
| 疾患名 | CTの見えかた | 補足 |
|---|---|---|
| 腎嚢胞・水腎症 | 嚢胞性病変・腎盂拡張 | 単純性嚢胞は経過観察のみで問題ないことが多い |
| 尿路結石(CTとエコーの比較) | 単純CTで高吸収の結石を描出 | 造影なしの単純CTが結石検出のゴールドスタンダード |
| 尿潜血の精査 | 腎・尿管・膀胱の腫瘤や結石 | リスク因子に応じてCT・エコー・膀胱鏡を組み合わせる |
消化管(CTで評価可能な範囲)
| 疾患名 | CTの見えかた | 補足 |
|---|---|---|
| 急性虫垂炎(盲腸) | 虫垂の腫大・壁肥厚・周囲脂肪織混濁 | 成人の虫垂炎診断でCTは高精度[2] |
| 大腸憩室炎 | 憩室周囲の脂肪織混濁・壁肥厚 | 穿孔・膿瘍形成の評価にもCTが有用 |
| 虚血性腸炎 | 腸管壁の肥厚・造影不良域 | 確定診断には大腸カメラが必要な場合がある |
| 腸閉塞(詳しい解説) | 拡張腸管・液面形成・閉塞移行部 | 絞扼性の判断にも造影CTが役立つ |
| 大腸がん | 壁肥厚・腫瘤・リンパ節腫大 | 早期がんの検出には大腸カメラが必須。CTは進行度評価に有用 |
その他
単純CTと造影CTの違い——どちらが必要か
単純CTは造影剤を使わずに撮影する方法で、尿路結石の検出や出血の確認に優れています。一方、造影CTはヨード系造影剤を静脈から注入することで臓器の血流状態を可視化し、肝腫瘍の鑑別、膵がんの診断、膵炎の重症度判定などで不可欠な情報を提供します。どちらを選択するかは、症状・検査目的・患者さんの状態を踏まえて医師が判断します。
造影剤使用後は水分を多めに摂取して排泄を促すことが一般的に推奨されます。腎機能が保たれている場合は約24時間で尿中に排泄されますが、腎機能が低下している方では排泄が遅れることがあります。腎機能やアレルギー歴に不安がある方は、事前に医師にご相談ください。
エコー(超音波検査)との使い分け
エコー検査は放射線被ばくがなく、ベッドサイドで手軽に繰り返し実施できます。胆石や脂肪肝のスクリーニング、腎嚢胞や水腎症の経過観察にはエコーが適しています。一方、CTはエコーで見えにくい膵臓深部や腸管ガスに覆われた領域まで広範囲に評価できる強みがあります。両者の得意分野が異なるため、症状や検査目的に応じて組み合わせることが診断精度の向上につながります。
なお、胃や大腸の粘膜表面にできる小さな病変(早期がんやポリープ)の検出は内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)が圧倒的に優れており、CTで代替することはできません。CTと内視鏡は「どちらが優れているか」ではなく、得意分野が異なる検査として使い分けるものです。
検査前の準備——食事制限と注意点
腹部CT検査の前に食事を控える必要があるかどうかは、撮影方法や検査の目的によって異なります。ACR(米国放射線学会)はルーチンの絶食を必須としていませんが、造影CTでは嘔気や誤嚥のリスク低減、画像の質向上を目的として食事や水分の制限を設ける施設が一般的です。検査前の食事制限については、受診する医療機関の指示に従ってください[4]。
撮影は数分で終了し、息止めの時間は装置によって数秒〜十数秒程度です。造影CTの場合は事前の血液検査(腎機能確認)やアレルギー歴の問診が必要です。検査後に特別な安静は不要で、通常どおりの生活に戻れます。
- [1] 国立がん研究センター がん情報サービス「CT検査とは」https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/ct.html(参照 2026-02-27)
- [2] 急性腹症診療ガイドライン2025 第2版. 医学書院, 2025. ISBN: 978-4-260-05773-8. https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/115447
- [3] 日本消化器病学会 編.「胆石症診療ガイドライン2021(改訂第3版)」. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00700/
- [4] Defined SS, et al. "ACR Appropriateness Criteria® Right Upper Quadrant Pain: 2022 Update." J Am Coll Radiol. 2023;20(5S):S64-S79. DOI:10.1016/j.jacr.2023.02.011

