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SASと不整脈|夜中の動悸が示す低酸素リスクと検査の進め方

睡眠時無呼吸症候群

SASと不整脈|夜中の動悸が示す低酸素リスクと検査の進め方

この記事のポイント
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は夜間の低酸素を通じて不整脈リスクを高める
  • SAS患者では夜間に心臓突然死が集中する時間帯が逆転するというデータがある
  • 動悸や脈の乱れを放置すると心房細動→脳梗塞の連鎖につながる可能性がある
  • SASの簡易検査は自宅で1晩、仕事を休まず受けられる

「最近、夜中に脈が飛ぶ感じがして目が覚める」「出張先のホテルで動悸がひどかった」——こうした症状を、疲れやストレスのせいだと片づけていないでしょうか。夜間の動悸の背景に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)による低酸素状態が隠れている場合があります。

この記事では、SASがどのように心臓のリズムを乱すのか、忙しい方でも効率的に進められる検査のステップを整理しました。

動悸の原因がSASかもしれない—まず確認すべきポイント

夜間に限って脈が乱れる場合はSASを疑う

動悸にはさまざまな原因がありますが、「日中は気にならないのに夜中だけ起きる」場合は、睡眠中の呼吸異常が関与している可能性を考えてみてください。SASでは無呼吸のたびに血中の酸素が下がり、その反動で交感神経が過剰に活性化します。心拍数と血圧が急変動する状態が一晩に何十回も続くため、心臓の電気的な安定が保てなくなるのです。

SASの医学的な定義は、1時間あたり5回以上の無呼吸・低呼吸(AHI 5以上)に加え、日中の眠気や高血圧などの症状・併存疾患が認められる場合に診断されます。ただし、自覚症状がなくてもSASが潜在しているケースは珍しくありません。

「いびきがうるさい」と言われたことはありませんか

同居のパートナーや出張先の同室者から指摘を受けた経験があれば、SASの可能性は一段上がります。Tanakaらの研究(Circulation Journal、2021年)では、心房細動患者のうちSAS基準を満たした方の約82%がESSスコア正常、つまり「眠気を感じていなかった」と報告されています。眠くないから大丈夫、とは言えないのがこの病気の特徴です。

低酸素が心臓を追い込むメカニズム—3つの経路

経路1:自律神経の急激な切り替え

無呼吸で酸素が低下するたびに交感神経が一気に興奮し、血圧と心拍が跳ね上がります。呼吸再開後は副交感神経が急にリバウンドします。このアクセルとブレーキの激しい反復が、心房の電気信号を不安定にします。

経路2:胸のなかの圧力変動

塞がった気道で呼吸しようともがくと、胸腔内に強い陰圧が生じます。心房が物理的に引き伸ばされ、不整脈の引き金になります。

経路3:慢性炎症による心房のリモデリング

「酸素が下がって戻る」を毎晩繰り返すと、心房に慢性的な炎症が起こり、組織の線維化が進みます。硬くなった心房は電気信号が乱れやすく、不整脈の「下地」がじわじわと出来上がっていきます。ちなみに、この変化は自覚症状として感じにくい分、発覚が遅れがちです。

この3つの経路は独立しておらず同時に進行します。AHAが2022年に発表したScientific Statement(Mehraら、Circulation)でも、複合的なメカニズムとして整理されています。詳しい研究データは「睡眠中の動悸は危険?睡眠時無呼吸症候群と心房細動」に譲ります。

放置した場合に起こりうること—心房細動と脳梗塞の連鎖

SAS患者では「危ない時間帯」が深夜に集中する

通常、心臓が原因の突然死は午前中に多いとされています。ところがSAS患者では深夜0時〜午前6時に心臓突然死の46%が集中していたというデータがあります(Gamiら、N Engl J Med、2005年)。SASのない方では同じ時間帯が21%ですから、夜間のリスクが逆転しているのがわかります。

もちろん、無呼吸が起きても多くの場合は脳が覚醒反応を起こし呼吸は再開されます。ただし、覚醒反応のたびに起きる血圧の急変動や不整脈の誘発が、長年にわたって心臓へダメージを蓄積させるのが問題です。

心房細動から脳梗塞へ——見えにくいリスクの連鎖

心房細動が起きると心房は正しく収縮せず、血液が淀んで血栓ができやすくなります。その血栓が脳の血管に詰まれば脳梗塞です。2023年のACC/AHA心房細動ガイドライン(Joglarら、Circulation、2024年発表)でも、SAS合併例では心房細動の管理にSAS治療を組み込むことの重要性が言及されています。

仕事に追われるなかで「ちょっとした動悸」を放置しがちですが、SAS→不整脈→脳梗塞という流れを頭に入れておくだけで、行動は変わるはずです。

忙しい方向け—SAS検査の効率的な進め方

ステップ1:初診で状況を整理する

予約時に「動悸・いびきの相談」と伝えていただければ、問診がスムーズです。現在飲んでいる薬があればお持ちください。当院は金沢駅から徒歩圏内にあり、お仕事帰りや通勤途中にも立ち寄りやすい立地です。

ステップ2:自宅で簡易検査(仕事を休む必要なし)

簡易検査機器をお渡しし、ご自宅でいつも通り眠っていただくだけです。指先・鼻・胸にセンサーを装着して就寝し、翌朝外すだけなので、翌日の仕事にも影響しません。具体的な装着手順は「睡眠時無呼吸の簡易検査|自宅でのセンサー装着手順と数値の読み方」で確認できます。

ステップ3:結果説明と治療方針の決定

簡易検査の結果、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の指数(簡易検査ではREIと呼ばれますが、保険上はAHIと表記されます)が40以上であれば、精密検査(PSG)を経ずにSASと診断し、CPAP療法を保険適用で開始できます。不整脈の精査が必要な場合は、循環器内科への紹介状を当日中に作成します。検査結果の説明から治療開始までを最短ルートで進められるよう、院内の連携体制を整えています。

よくあるご質問

夜間の動悸はすべてSASが原因ですか?
すべてではありません。甲状腺の異常や心疾患、ストレスなど複数の原因が考えられます。ただし、いびきや無呼吸の指摘がある方は、SASが動悸に関与している可能性が高いため、一度検査をお勧めします。
SASの簡易検査を受けるために仕事を休む必要はありますか?
ありません。機器をお渡しするための来院と結果説明の来院は必要ですが、検査自体はご自宅で一晩眠るだけです。翌日も通常通り出勤できます。
不整脈の検査もこちらで受けられますか?
SASの簡易検査は呼吸と酸素濃度を計測するもので、不整脈の確定診断には心電図が必要です。SASが判明し不整脈の精査が必要な場合は、循環器内科への紹介をスムーズに行います。
CPAP治療の通院頻度はどの程度ですか?
保険適用でCPAPを使用する場合、月1回の通院が必要です。当院は金沢駅近くに位置しており、お仕事帰りにも通いやすい環境です。状態が安定した場合、施設の対応状況によりオンライン診療に切り替えられることもあります。
SASを治療すれば不整脈も治りますか?
観察研究やメタ解析ではCPAP療法によって心房細動の再発リスクが低下する傾向が示唆されていますが、高水準のランダム化比較試験(RCT)では結論が一様でない部分もあります。不整脈そのものの治療は循環器内科の領域であり、SASの治療は不整脈管理の重要な土台として位置づけられています。両方を並行してケアすることが大切です。

まとめ

夜間の動悸や脈の乱れが繰り返される場合、その背景に睡眠時無呼吸症候群による低酸素が隠れていることがあります。SASは自律神経の乱れ、胸腔内圧の変動、心房の慢性炎症という3つのルートで心臓のリズムを崩し、放置すれば心房細動から脳梗塞へとつながるリスクがあります。

SASの簡易検査は自宅で1晩行うだけで、仕事への影響はほとんどありません。動悸やいびきの指摘が気になっている方は、後回しにせず消化器内科へご相談ください。

当院で相談する目安

夜中に動悸で目が覚めることがある方、いびきや無呼吸を指摘されたことがある方、降圧薬を飲んでも血圧がコントロールしにくい方は、SASの検査を検討してみてください。当院(金沢消化器内科・内視鏡クリニック金沢駅前院)は金沢駅から徒歩圏内にあり、お仕事帰りや通勤途中にも通いやすい立地です。当日検査にも可能な限り対応しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。不整脈の精査が必要な場合は、循環器内科への紹介もスムーズに行います。

金沢消化器内科・内視鏡クリニック 金沢駅前院
金沢駅より徒歩圏内・お仕事帰りにも通いやすい立地
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。症状や検査の要否については、医師にご相談ください。

参考文献
  1. Mehra R, Chung MK, Olshansky B, et al. Sleep-Disordered Breathing and Cardiac Arrhythmias in Adults: Mechanistic Insights and Clinical Implications (AHA Scientific Statement). Circulation. 2022;146(9):e119–e136. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000001082
  2. 日本循環器学会. 2023年改訂版 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_kasai.pdf
  3. Joglar JA, et al. 2023 ACC/AHA/ACCP/HRS Guideline for the Diagnosis and Management of Atrial Fibrillation. Circulation. 2024;149(1):e1–e156. https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000001193
  4. Gami AS, Howard DE, Olson EJ, Somers VK. Day-Night Pattern of Sudden Death in Obstructive Sleep Apnea. N Engl J Med. 2005;352(12):1206–1214. https://doi.org/10.1056/NEJMoa041832
文責
中村 文保
金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院/金沢駅前院(医療法人社団心匡会 理事長)
日本内科学会 総合内科専門医/日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本肝臓学会 肝臓専門医